Vol.32
その“ウラハラさ”がたまらなかった「やまとなでしこ」
ラヴストーリーには
ハマったことのないワタシが
初めてハマッてしまった、
あ〜〜〜「やまとなでしこ」。
このドラマに関しては、
なんだかしつこいぐらいに
中園ミホさんにラヴコールを
送ってしまいましたが、
これって
なにもワタシが
中園さんの熱烈なファンだとか、
脚本家おたくだとか
そういうわけじゃなくて、
たとえば
おいしいローストチキンを
骨までしゃぶるみたいに、
このドラマを観てただけなんだよね。
だから、ちょっとした味の違いも
「あ、コレ、ワタシの好きなアレじゃない!」
って、つい思っちゃうんだよね。
だって、
せっかく楽しみにしてかぶりついたのに、
「今日はシェフが違うんですよ」
なんて言い訳、
納得できない!
でしょ?
(あ、いや、
つい声が大きくなってゴメン。)
このドラマっていわゆる
“ラブコメ”
なんだろうけど、
でも、
「お金持ちと結婚したい
ヒロインが引き起こす
ドタバタコメディー。
最後はホントの愛とかに気づいて
メデタシ、メデタシ」
っていうレベルの話じゃ
ぜんぜんないってこと。
特にワタシが好きだったのは、
桜子のお父さん(小野武彦さん)が
上京してくる回。
東十条家で、
貧しい漁師の桜子父が、
豪華客船の船長を必死で演じるシーン。
あそこはフツー笑いをとりにいくでしょ。
あそこで泣かせるか、フツー?
そういう脚本と演出が好きだなぁ。
その後クルマの中で、
「あの男ぁ、ボンクラだ」と
寂しそうに言い捨てるのもよかったし、
バスターミナルで
父と別れるまでの
松嶋菜々子さんの子供のような表情もよかった。
でも白眉はやっぱりその後、
「これでよかったのよ。
私はよくやったわ」
と自分に言い聞かせる桜子に
「つらかったこと、
忘れられる日がきっと来るから」
と、声をかける欧介。
ここで桜子の今までの“ウラハラさ”が
はっきりとヴェールをはがされてしまう
わけじゃないですか。
ここからラストまで、
“ウラハラさ”に揺れる桜子と
受け入れる欧介という関係がとても素敵で、
「いつか王子様が来るって信じてた。
でもそれはあなたじゃない」
と言うとき、
それは
「あなたか、あなたじゃないか」
というところまで近づいている
という“告白”だし、
寂しさにこらえきれず、
「10秒だけこのままで」
ともたれかかった後で、
「たいへん失礼いたしました」
と“いつもの”笑顔にもどっていく桜子に、
ワタシは思わず涙してしまったのでした。
結局、
最終回を観ればよくわかるように、
これは、
桜子も欧介も
過去の心の傷から癒されていくという話だったし、
そのためにお互いを求めていた、
という
“きちんとていねいに描かれたラブストーリー”
だったんですよね、きっと。
そして、そうしたことをすべて
“いかにも月9にふさわしいラブコメの王道”
という様式美の中で
やってくれちゃったことに
ワタシはとっても感謝したい。
だって、
こういうドラマが観たかったんだもん。
なにもテレビで
シリアスな恋愛なんて観たくないし、
くっつくか、くっつかないか
にしか興味ないみたいな、
中身のないラブストーリーも勘弁して欲しい。
思うにこれって
あまりにも高度な
“ドラマ・センス”
なんじゃないかな。
(脚本中園ミホ、演出若松節朗の
コンビでなかった回は
そのへんがちょっと・・・)
すべては、
周到に計算され、
確信的に意図されたものであって、
それはたとえば、
タイトルバックの最後、
ステュワーデスの桜子が機内で
子供に微笑みかけるカット、
そして何よりも
「やまとなでしこ」
という
“ウラハラ”なタイトルに
象徴されていたような
気がします。
20世紀マイベスト10入り決定。
(DECEMBER.20)
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