Vol.47
今度は江戸前寿司だ、再び「ある日、嵐のように」
最近よくテレビで
「寿司はいいよなぁ〜」
とか言って目を細めてるおじさんを
みかけるけど、
寿司職人の言葉に
“仕事”というのがありますよね。
ワタシはLOTOなんぞに当たったことないから、
そんな高い寿司屋には行ったことないけど、
本当の江戸前寿司というのは、
ひとつひとつのネタに
“仕事”がしてあるのだそうです。
穴子は煮る。小はだはしめる。赤身はヅケにする。
ただ酢飯に刺身をのっけて、
握ればいいというもんではない、
のだそうで、
そういう寿司をぜひとも一度
いただいてみたいものです。
なんで突然
こんなことを思い出したかというと、
それは
「ある日、嵐のように」
を観たからなのでした。
といっても何も
寿司屋のシーンが出てきたわけではなくて、
このドラマ、
この奥行きのある味わい、
う〜ん、その秘密は、
すべてのシーン、すべてのせりふに
“仕事”がしてあるんだなぁ、と。
16日の放送が、はや第三話。
ちょうど第一章終了、
てところなんだけど、
この時間、『Love Revolution』観てる人が
多いだろうから、
ちょっと説明ぎみに話をしますね。
学生時代の旧友、佐藤浩市さんと中井貴一さんが
ともに検事になって東京地検で再会する。
実は中井の妻の斉藤由貴さんは、
昔、佐藤とつきあっていたんだけど、
ある日突然姿を消してしまったもんだから
その後中井とつきあって・・・
ていうフクザツな過去があり。
そういう三人の人間関係のあれこれと、
佐藤や中井が追っている汚職事件やらなにやら、
いろんな世界が重層的に進行していくんだけど、
やっぱり見所は、
そういういろんなレベルのエピソードが
多層的に関わり合っていて
無駄な要素がひとつもない、
ってところ。
3回の放送を観てようやく見えてくるような、
大きな流れの中で、
しっかりと組み上げられている、
というのが見事。
ひとつ例を挙げると、
たとえば
大滝秀治さんの下着ドロ。
最初は大筋とはあまり関係のない
小さな事件かと思わせて、
実は、
中井のいる世界=あたたかいこちら側の世界と
中井の知らない世界=佐藤の知っているむこう側の世界
=寒くて冷たい世界の
中間に立って
どちらに転がるかわからないという、
危うい、
しかも重要な役だったりするわけ。
結局、最後には
中井には理解できない理由で
もう一度罪を犯して
“寒くて冷たい”向こう側の世界へ
行ってしまうんだけど、
このエピソードが
佐藤が“再び消えてしまった”ことと
重なってくるんですね。
第三話の最後で
再び消えてしまった佐藤を思うとき、
そこには
あの大滝秀治さんの
「まあ、仕方のないことなんで」
とでもいいたげな
諦めたような、
寂しげな表情が重なって、
佐藤が行ってしまった
向こう側の世界の存在が
浮かび上がってくるわけです。
なんてまあ、
ひとつのポイントをとっても
こうだから、
ホントきりがないんだけど、
もうひとつだけ。
斉藤由貴が佐藤浩市に
“子供のこと”を告げるシーン。
斉藤由貴は、
中井が“そのこと”で
佐藤とギクシャクするのを
見ていられなくなる。
そして佐藤に会って、
ほんとうのことを言うんだけど、
このシーンの最初は---
斉藤「15年前、あなたがいなくなったあの日、
ものすごいショックだったわ。
今でも思い出すと、
背中のあたりがすぅ---っと寒くなるの」
これで第一話で
「私はもうぜんぜんふっきれてるから」
なんて言ってたのは、
やっぱウソじゃん、
てわかっちゃう。
で、その後中井貴一とつきあいはじめて、
みたいなことを、淡々と語って。
斉藤「でもそのうち私、
妊娠してるってわかって。
別れようと思ってね。
だって、
子供どうしても生みたかったから。
そしたらあの人が
別れたくない、
俺がその子供の父親になるって
言ってくれて。
あたし、
あーー、たすかったぁー、なんて思って・・」
こういうこと
ホントに
淡々と言うわけですよ。
佐藤も徐々に気が付いて
え?ええええ!?みたいな。
で、
この後のシーンがまたよくて、
中井の自宅で夜、
言い争いになる。
中井「こんな大切なこと・・・
どうしてそんなかんたんにしゃべっちまうんだ!」
斉藤「・・(ポツリと)
かんたんじゃなかったわ」
向き直って強い口調でもう一度
斉藤「私がさぁ、
かんたんにしゃべったなんて
思わないでよ」
う〜ん、
この一連の流れで、
実は斉藤が中井以上に
このことについて
考えて、考えて、考えていたことが、
よくわかっちゃう。
それと同時に、
斉藤にとっての
佐藤の重さと中井の大切さが
よくわかっちゃう、
でしょ?
まだまだ書きたいことはいろいろあるんだけど
こういうのってなんだか
うまい寿司を人にすすめながら、
「この寿司はなんでうまいかというとぉ」
なんて野暮を言ってるみたいで。
だけど、このドラマ、
ほんとに隅々まで神経を使って、
時間をかけて練り上げられている。
そういうていねいな“仕事”が
してあるんだなぁ、
なんて、味わいながら
しみじみ思いますね。
でもまあ、
寿司は高いけど、
こっちはタダだし。
(あ、受信料払ってるか)
寿司は食べたらなくなっちゃうけど、
こっちはビデオで何度でも観られるし。
(そんなことする人はいないと思うけど)
さっきこの原稿書くんで
巻き戻して観てたら、
飛ばし飛ばし観ただけで、
またジンときちゃいました。
夏川結衣さんの“うさぎさん”のシーンで。
う〜ん、
やっぱり寿司は江戸前ですね。
(APRIL.20)
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