Vol.52
土屋和彦は実在する?「ある日、嵐のように」
どういうわけだか、
役者さんのことを書くのって、
気が引けるんですよね。
シロートがプロの方に
「いい役者だねぇ」なんて
なんだかセンエツですよね。
ましてや「演技がうまい」も論外。
テレビ業界、演劇業界の人や
関係者が言うのであれば
いざ知らず、
ワタシのような一視聴者がいうのであれば、
「思わず泣いちゃいました!」
「ムチャクチャ笑っちゃいました!」
「ジンときちゃいました!」
というのが
スジというものだと
ワタシは思います。
だったら脚本や演出についても
同じことだろう、
という話もありますが、
これについては、
こちらも文章を書いている人間として、
いろいろ見えてくる、
というか、
すごいなぁーって、
素直に敬服することも
たくさんあって、
客席から拍手喝采を送るつもりで、
「よかったよーっ」て
ここで書いたりしてるワケです。
まあ、届いてるかどうかは、
別として。
でも、
それもちょっと
フェアじゃないかな、
と思ったりしてるんです、最近。
「ある日、嵐のように」を観みてると、
ドラマって
やっぱり“コラボレーション”、
なんですね。
あるシーンで、
そう、たとえば、
佐藤浩市さんが中井貴一さんに
息子のことを聞いたりする、
そんなシーン、
佐藤浩市さんが
とっても複雑な表情をするわけです。
それを
ドラマとしてジンと胸で味わいながら、
どっかで
「ああ、佐藤浩市はなんてうまいんだろ」
なんて感心してたりするワタシも
まだ未熟者なんですが。
でも、気がついたんです。
佐藤浩市にそれを要求しているのは、
脚本であり、
演出なんだなぁって。
つまり、
中井貴一の言葉に
反応する佐藤浩市の表情を
その時、カメラはアップで
捉えている。
しゃべっているのは中井貴一なのに。
そういう、
演出なんですね。
そういうふうに
撮ってるんですね。
逆に、
役者がそういう演出の要求に
応えたからこそ、
演出が報われる。
脚本のよさが生きてくる。
つまり
演技と演出と脚本とが
なんか、あうんの呼吸で、
すごいものを創り出してる
って感じがするんです。
このドラマ、
佐藤浩市さん、中井貴一さんをはじめ、
斉藤由貴さん、夏川結衣さん
江守徹さん、佐藤慶さん、岸辺一徳さん、
石丸謙二郎さん、上田耕一さん、高橋長英さんなどなど、
もうホントに視聴者に媚びたところのない、
実質重視のキャスティングで
それだけでスタッフの気合いが伝わってくるけれども、
やっぱり今回は
佐藤浩市さん。
今は悪徳弁護士
なんだけど、
昔は東京地検特捜部のエース、
中井貴一とは親友で敵役、
中井の妻の昔の恋人、その息子の実の父親、
謎の失踪の過去があり、
妻と子供をなくしていて・・・
という
実に複雑な設定を
上手、というよりは
あまりにもありのままに(見えるように)演じていて、
演技がうまい
とかって感心する以前に、
ワタシ、実は、
“土屋和彦という男”がホントにいる、
みたいな感覚になってしまったのでした。
これって、
テレビではホントに稀なことで、
なんだかんだ言ってもやっぱり
“桜子さん”は松嶋菜々子だし、
“青島刑事”は織田裕二だし、
それはそれで
そういうものなんだけど、
今回に限っては、
なんていうか、
土屋和彦そのものが、
伝わって来る、
手応えなんですよね。
料理の鉄人風に言えば、
役者・佐藤浩一
という素材の持ち味を
脚本と演出が
余すところなく、十分に、
引き出した、
というところでしょうか。
このドラマが
佐藤浩市さんの代表作
と言えるかどうかは
ワタシ知りませんが、
もしも、
佐藤浩市を知らない誰かに、
それってどんな役者さん?
って聞かれたら、
ワタシは迷わず
「ある日、嵐のように」を観なさい
って言いますね。
あ、
でもこれ、
ビデオになんないか、
NHKだし。
(MAY.25)
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