Vol.57
これって社会派?それとも寓話?「蜜蜂の休暇」
ワタシが初めて池端俊策さんの作品を観たのは、
1994年の「僕が彼女に、借金をした理由。」だから、
1970年にデビューされてる
池端さんのキャリア全体から言えば、
後期、と言ったら失礼ですが、
どちらかというと円熟期に入ってから。
つまり、
いわゆる
“バリバリの頃”を
知らないワケですよね。
しかもその後
「協奏曲」でシビれたワタシは、
池端ファンとしては
ちょっと偏ってるのかな?
と思ったりするんですよ。
ていうのは、
池端さんて
“バリバリの頃”は、
「木曜ゴールデンドラマ」とか「ドラマ人間模様」とか
単発ものがほとんどで、
NHKもかなり多くて。
そういうこともあって、
池端俊策といえば、
“社会派”って
今でも言われるわけだけれども
これってなんだか
違和感あるんだなぁ、
ワタシには。
池端さんのドラマで
よく出てくるモチーフって
いくつかあって、
たとえば“家”。
「僕が彼女に借金をした理由。」では、
真田広之さんの庭付きマイホームを、
小泉今日子さんが
隣のアパートの窓からみて憧れていたのが
そもそもの発端。
「百年の男」では、
家を手に入れるために
清水美紗さんが緒方拳さんをだまそうとする。
「協奏曲」では
今度は、木村拓哉さんと田村正和さんが、
その“家”を造る建築家だし。
えーと、それから、
“一攫千金の夢(とその挫折)”。
「烏鯉」は
1匹500万円の鯉を探しに行く話だし、
「並木家の人々」では大滝秀治さんが
沈没船の引き揚げを夢見ている。
それは単に大金が欲しい、
というよりは、
見果てぬ夢
のようなかたちで昇華されてて、
で、たいていの場合、
挫折する。
最後に、
“家族”。
これはもう池端作品の永遠のテーマみたいなもんで、
失われた“家族”を取り戻す、
というのはほとんどの作品に出てきますよね。
「僕が彼女に〜」も結局、
奥さんである斉藤慶子さんの元に戻るわけだし。
今回の「蜜蜂の休暇」でも、
やっぱり全部が揃ってる。
主人公の鹿賀丈史さんは、
記憶喪失になって、
学生時代までは覚えているけど、
それ以降の記憶を失ってしまった。
いろいろ調べていくと、
会社のためにいろいろと汚いこともさせられ、
人も変わってしまって、
そのために奥さんと離婚したばかりで・・・。
この鹿賀さんと奥さんのかたせ梨乃さんの
離婚のきっかけになっているのが“家”。
記憶喪失になった鹿賀さんを助けた樋口可南子さんは
怪しい水で“一攫千金”を夢見てるし。
鹿賀さんは、
“家族”を、文字通り
記憶として失ってしまうことで、
もう一度、ゼロから向き合うことを
余儀なくされる。
もちろん、
それこそが池端さんが作家として、
“言いたいこと”だし、
こうしてみると
これはもうぜったいに“社会派”。
高度成長とバブルのただ中にあった世代ならではの
骨太のドラマ、
ではあります。
でも、
“ワタシが池端作品を好きな理由。”は
もうちょっと違うところにあるような
気がするんですよ。
たとえば、
この「蜜蜂の休暇」で、
記憶をなくした鹿賀さんが
別れた奥さんと再会するシーン。
鹿賀さんは
彼女と結婚してたこと、
うまくいかなくなって離婚したこと、
全部覚えてなくて、
学生時代に好きだった“万里ちゃん”だと思ってる。
自分が片思いしてて、
でも故郷へ帰ってしまった万里ちゃんだと思って、
再会を喜び、しきりに昔を懐かしむ。
もうこれだけで
ムチャクチャ切ないじゃないですか。
グサリとくるじゃないですか。
こういうの、
なんていうのかな、
象徴?寓話?
そういう手法の切れ味が鋭い!
家とかお金とか、
ともするとドロ臭い素材を扱いながら、
一方で、
どこか現代のおとぎ話のような後味を残してて、
そういうところが、
ワタシ、好きなんですよ。
他にいないじゃないですか、
そういう人。
そこが、
なんていうか、
“社会派”という語感と
なにかそぐわないところがあるようで。
いわゆる“社会派”と言われる作家よりもむしろ、
唐突ですが、
唐十郎とか、ポール・オースターとかを
思い出しちゃうんですよね。
そういう観方をすると、
いろいろわかりやすいところもあって。
「蜜蜂の休暇」で5000万円が宙に浮いてしまったり、
「協奏曲」の初回、田村正和がなんと海から登場したりって、
おとぎ話だからこそ、でしょ。
特に、
「協奏曲」のラストシーン。
田村正和さんと木村拓哉さんのいる仕事場に
宮沢りえさんが帰ってきて、クルマから降りる。
で、終わってるんだけど、
これってリアルに観ちゃうと
えええええ?いったいどっちに帰ってきたの?
田村さん?木村さん?はっきりしてよ!
ってなるわけだけど、
これってほんとは、
「家を創る喜びを取り戻した“二人”のもとに、
彼女は帰ってきた」
ってことですよね。
(これはご本人がそうおっしゃってました。)
ワタシ、
このラストも大好きだし、
「僕が彼女に〜」のラストも
とても印象に残ってます。
以前にも書いたかもしれないけど、
池端さんは、書き始めるときから、
もう、ラストのイメージは
はっきりとあるのだそうで。
さて、
「蜜蜂の休暇」
どんなラストになるのか、楽しみです。
ああ、でも
最後の2回、
CX「できちゃった結婚」とダブるんだよなぁ〜、
どうしよ。
(JUNE.29)
back

mail to:
ueno-no-panda@geocities.co.jp