Vol.61

詰め合わせならではの味わい「恋がしたい×3」


このタイトルはいいなぁ、って
始まる前から目をつけてたんだけど、
正直言って、
初回を観たときには、
「う〜〜ん?」って思いました、
「恋がしたい、恋がしたい、恋がしたい」。
なんて言うか、
あまりにもキャラクターがベタ、
な気がして。
婚約者に逃げられた冴えない高校教師、渡部篤郎さん。
内気なくせに彼に一目惚れしちゃう、菅野美穂さん。
気の優しい牛丼屋の店長、所ジョージさん。
自由に生きたい、けど、どこか弱い女、水野美紀さん。
キザな流行作家、及川光博さん。
生活に疲れた主婦、岡江久美子さん。
性に目覚め悶々とする高校生、山田孝之さん。
う〜ん、
なんか分かりやすすぎない?
とくに、ミッチーの
あのキャラって、
もう、いいんじゃない?
って感じ。

ところが、
今にして思えば、
初回は対局が始まる前の
チェスの駒の配置みたいなもので、
いったん動き出したら、
これが面白いんですよ。
この7人が
出会ったり、ニアミスしたりしながら、
複雑に絡み合って、
ストーリーが展開するんだけど、
こうなってくると、
ひとりひとりがベタなキャラであっても
あまり気にならない。
むしろ駒が動き出して、
むこうがこう来たら、
こちらはこう、
すると横からこう来て・・
っていう、
ダイナミックな動きのなかで、
逆に、ひとりひとりの
微妙な機微
みたいなものが際立って。

たとえば
第4話では、
渡部さん、菅野さん、所さん、水野さんの4人が
横浜にデートに。
この局面を解説すると、
渡部さんは水野さんときちんと付き合いたい、
水野さんはクールな関係でいたい。
菅野さんは渡部さんが好きだけど、言い出せない。
所さんは菅野さんが気になってる。
それを渡部さんは知ってて、
所さんと菅野さんをくっつけようと
たくらんでる、という状況。
で、チグハグなデートになるんだけど、
最後、所さん(文平)と菅野さん(蜜柑)の
こんなシーン。

路上。二人残された蜜柑と文平、
赤井(渡部)の車を見送る。
蜜柑「それじゃ」
と、去ろうとする。
文平「赤井先生なんでしょ」
蜜柑「!(振り向いて)え?」
文平「あなたが好きな人」
蜜柑「(首を振って)ちがいます」
文平「だから、今日来たんでしょ」
蜜柑「ちがうって言ってるじゃないですか」
蜜柑、そそくさと去ろうとする。その背中に
文平「あの、私、応援しますから」
蜜柑「(声を荒げて)だからぁ、
ちがうって言ってるでしょ!」
去る蜜柑。を、見送る文平の寂しげな表情・・。

なんでもないシーンだけど、
なんかいいよね。
それぞれの気持ちと態度のウラハラさが
キュンとくる感じ。

他にもいろいろ
いいシーンあったけど、
結局、駒の動きの面白さもさることながら、
こういう細かいところの
ていねいさが、
とってもいい感じ。
なんていうか、
遊川和彦さんの脚本って
手際のよさにカムフラージュされてるけど、
基本的に
“優しい”ですよね。

まあ、とにかく
この「恋がしたい×3」、
言ってみれば、
ヨックモックと
泉屋のクッキーと
小川軒のレーズンウィッチが
全部詰め合わせになった
お中元セット、
みたい。
ひとつひとつは珍しくないけど、
あれもこれもって食べると
また新鮮というか、
そもそも、
ひとつひとつが、
やっぱり美味しいというか。

う〜ん、
最初あなどったりして
ごめんなさい。
ワタシがわるかったよぉ〜。

(JULY.27)


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