Vol.70
一粒で三度おいしい?「ブラックジャック3」
まず、天ぷらそばとご飯を用意する。
おもむろに天ぷらそばを半分ほど味わった後、
天ぷらをご飯の上に。
すると今度は、天丼とたぬきそばが味わえる。
一粒で、いや一食で、
三度おいしい
B級グルメな食べ方、
というのを
どこかで読んだことがあるけど、
なんか思い出してしまったんですよね、
これ観てたら。
これってつまり、
9.26放送の「ブラックジャック3」なんだけど。
今までの2作より
よかったなぁ、
ワタシ的には。
まず、そもそもの話の筋っていうか、
オーソドックスな人情物として、
楽しめました。
天才的なフランス料理のシェフ(蟹江敬三さん)には
ひとり娘(須藤理彩さん)がいる。
彼女には、結婚したい相手がいるんだけど、
これがかつての弟子(池内博之さん)で、
師匠の味を批判したことから破門され、
今は二人で小さな洋食屋を開いている。
という、なんとも
微笑ましい設定なんですけど、
ところがある日、
この天才シェフの脳に障害が生じ、
味覚が失われてしまう・・・。
でまあ、最後は
おきまりなんだけど、
ウルッと来るんですよねぇ〜、これが。
で、こういうオーソドックスな
話をやりながら、
一方で、堤幸彦さんならではの
エキセントリックな演出があって。
不安定な構図、
青っぽくザラついた画面。
叶姉妹は出てくる、
不思議な老夫婦は出てくる。
しまいには、
厨房で料理をつくってる隣で外科手術をする
なんて悪趣味ギリギリ。
でも、今回がいちばん、
堤ワールド、冴えてたような気がして、
マル、ですね、
ワタシ的には。
もう、ここまでで
すでに2度美味しい?
で、本題はこれからなんだけど、
最初にブラックジャックは、
ドクターキリコから一枚の絵を渡される。
大胆な太い線で描かれた林檎の絵。
これがドラマ全体のテーマに絡んで、
重要な意味を持つんだけど、
それはかつてブラックジャックが手術した画家が描いたもので、
手術前は精緻なタッチが身上で・・
って、詳しくは
ネタバレになるから言わないけど、
結局最後で、この絵の解釈が
重要なポイントになるわけ。
ここで拍手!したいのは、
“ちゃんとそういう絵になってる”
ということなんですよね。
よくあるじゃないですか、
主人公に絵とか作曲とかの才能がある、
っていう設定で、
ドラマの中ではみんな
「スゴイ!」
って言ってるんだけど、
ぜんぜんフツーだったり、
どーみてもチンプだったりって。
たとえば、
ここで引き合いに出して、
申し訳ないけれども
「できちゃった結婚」の竹野内豊さん、
「タクさん、入ってます。タップリン!」
なんてCFつくってるディレクターに、
大企業から
しかも指名で
長編ドキュメンタリーの依頼が来る、
なんて、無理ありすぎ。
一度だけマジな路線でつくった時計のCFだって、
悪いけど
CFとしてデキがいいとは
言えないでしょう。
もっとも竹野内氏には前科があって、
かつて作曲家だったとき(「With Love」)
CF用に用意していた
自信の楽曲がNGだったので、
クライアントの前で
即興でつくり直してOKをもらう、
というシーンで、
なんかとんでもない曲、歌ってたし。
こういうのって、
脚本家の責任ではないし、
演出家の責任範囲でもない
のかもしれないけど、
ドラマとして、
やっぱり
大事なんじゃないのかな。
ワタシ、
絵画についてはシロウトなんで
この林檎の絵がどのくらいスゴイのか
わからないけれども、
少なくともストーリーの中で、
違和感なかった。
ちゃんと一視聴者として、
納得したもん。
ドラマはここで、
命を救うって、
それだけで例外なく善なのか?
生きるって何なの?
ていう深いところに
触れてくるわけで、
けっこうポイントですよね。
言ってみれば、
一粒で三度美味しい、
というか、
“全体を奥行きのあるものにしている”
わけですよね。
ストーリー自体、どこまで、
手塚治虫さんの原作によるものなのか、
清水東さんの脚本によるものなのか、
わからないけど、
楽しませて、深かった。
堤さんの演出も
マジになるとクサい話を
上手に異化するところが絶妙。
“天ぷらそばご飯”はB級グルメだけど、
「ブラックジャック3」は、
もちろんA級のドラマでした。
ごちそうさま。
(SEPTEMBER.28)
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