Vol.72
野沢流、正しいハヤシライス「反乱のボヤージュ」
いやぁ〜
ホントによかった、
「反乱のボヤージュ」。
ドラマファンとしては
たっぷり充実の約4時間でした。
どことどこが良かったって、
重箱のスミを褒めてもキリがないので、
全体的な印象で言うと、
素直で骨太。
まあ、骨太なのは、
いつものことだけど、
最近の野沢尚作品の中では、
とっても素直で、泣けました、ワタシは。
ある大学の寮を舞台に
寮生たちと、新しくやってきた管理人の話なんだけど、
「この国には、いつから父親がいなくなったんだろう。」
って番宣コピーが言っているように、
まあ、
父親像と息子の行き方
の話ですよね。
父親像=名倉さん(渡哲也さん)も
自分の信念に真っ直ぐで、屈折がない。
息子=薫平(岡田准一さん)も、
そういう父親に対する憧れに、屈折がない。
いやぁ〜、真っ直ぐだなぁ。
野沢作品には、
だいたい円満な家庭って出てこないですよね。
母親が亡くなっていて、
父親がやもめ状態っていうのが多いんだけど、
(「眠れる森」「結婚前夜」「青い鳥」)
そうじゃない場合は、父親がいなくて
女手ひとつで子供を育ててる、
っていうパターン。
(「リミット」とか)
両親が揃ってるって
あんまり記憶にないなぁ。
で、そういうふうに
家族がすでに崩壊してしまったところから、
擬似的な親子関係を探し求める
というのが
いつもこれ、
“隠れテーマ”なんじゃないかと。
(以前にも書いたけど、
たとえば「青い鳥」って、
不倫モノ、悲恋モノじゃなくて、
怪しい親子関係モノ?)
そういう意味では、
この「反乱のボヤージュ」は、
“父親問題”に
正面から堂々と取り組んだ、
という感じですね。
で、しかも全共闘。
以前、野沢さんが脚本を担当した
「喪服のランデヴー」は、
コーネル・ウールリッチ原作の翻訳物だったけど、
野沢脚本では、
いくつか原作にはない肉付けをしてました。
そのひとつが、
犯人たちは
(塩見三省さん、岸部一徳さん、寺田農さん、吉田日出子さん)
かつて全共闘の学生運動仲間だった
という設定。
これは原作にはない(当たり前だって)。
他の肉付けしたエピソードと違って、
なんて言ったらいいのか、
ドラマそのものにかかわる工夫、
というワケじゃ特にないから、
これ、野沢さんのこだわり、
のような気がするんですよ。
そして
またしても全共闘。
名倉さん(渡哲也さん)が
全共闘世代(しかも機動隊員)なのは、
まあいいとしても、
イマの大学で、
イマの学生たちが、
寮に立て籠もって、
ロージョーだとか、
ハンランだとかしちゃうのって、
冷静に考えると
ちょっとヘンかも。
親父世代のノスタルジー
はいってんじゃないの?
なんて思われても・・。
でも、
ちょっと待って。
(って呼び止めてスイマセン)
ここで重大な事実が!?
野沢さんて、
1960年生まれなんですよね。
このドラマの中でも
実写フィルムが使われてた
浅間山荘事件は1972年。
このドラマを連想させる
安田講堂事件は1869年。
野沢さんは、
それぞれ12才、9才で体験してる、
いや、
でしか体験してない、
ことになるんですよ。
全共闘運動っていうのは、
1968年から70年にかけて起こった
大学の管理の構造に対する反乱運動、
ということは、
野沢さんって、
全共闘世代ではないわけです。
そして、そのジュニア世代でもない。
つまり、
世代的に言えば、
名倉さんでも、
薫平くんでも、
ない、
ということになります。
ところで、後半
渡辺いっけいさん扮する刑事が
わざわざ名倉さんを訪ねてきて、
こんなことを言いますよね。
「生まれたのは60年安保の年だった。
あんたが暴れてた70年代、
俺は空き地で遊んでるただのガキだった。
大学生だった80年代は、
見事に空っぽの時代だった。
警察に入ったら、
あんたたちの背中がそびえていた。
うっとうしくてしょうがなかった。」
これって、
つまり、
あの刑事こそが、
野沢さんの実像なんじゃないかって、
あの台詞が
野沢さんの素直な心情なんじゃないかって、
ワタシ思うんですよね。
むしろ、
名倉さんは
野沢さんが全共闘世代に見た、
虚像=理想の父親像なんじゃないかって、
薫平くんは
全共闘世代の父親の息子でいたかった、
虚像=理想の自分像なんじゃないかって。
どちらの世代でもない
宙ぶらりんの世代に生まれてしまった野沢さんは、
だから今、
時代遅れといわれようが、
理想の父親像にならって
きちんと一度、反乱をやっとかないと
いけなかったんだって。
そういう意味で、
この「反乱のボヤージュ」って、
野沢さんが抱えてたものを、
全部素直に吐き出したんじゃないかって、
思ったりしてるんですけど、
考え過ぎかなぁ。
野沢シェフとしては、
昔食べて美味しかったハヤシライスを
一度つくっとかないと、
新しい洋食はできないぞ、
みたいな。
これ、
岡田惠和さんにとっての
「彼女たちの時代」のように、
野沢さんにとっての
ひとつのピリオドになるような気がします。
(おっと、エラそうだぞ、ワタシは)
それにしても、
いいなぁ〜、
麻生祐未さんの菊さん。
ああいう味のあるキャラが、
もっともっとドラマで見たいなぁ〜。
う〜ん、
結婚してくださ〜い!
(ってやりすぎだっつーの)
(OCTOBER.12)
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