Vol.89

リアリティより美学のあるラーメン『海図のない旅』

最近はラーメンブームなんだか
よく知らないけど、
どんどん新しいお店ができてるみたいで、
どのお店も
それぞれ趣向を凝らして
“話題の名店”になろうと
頑張ってるようです。
豚骨ベースの醤油味だの、
秘伝のタレ入りだの。
あ〜〜
昔はラーメンと言えば、
すっきりと澄んだ醤油味のスープに
麺はちりちり麺。
具には、玉子とシナチクと
チャーシューが一枚。
というのがほとんどだったけど、
あ〜〜、
今じゃこんなオーソドックスなラーメン、
なかなか見つかりませんよね。

というわけで、
もう終わっちゃったけど、
NHKの“月9”でやってた
「海図のない旅」。
これって、
客に媚びず、
ハッタリかまさず、
これぞラーメン、
いや、
これぞドラマ、
っていうドラマを、
突き詰めてみましょう、
みたいな。
まあ、
NHKらしい
っていえばそうだし、
NHKだからできる
っていえば、
それまでなんだけど。

能登の漁村に生まれた兄弟、
兄は家業を継いで漁師になり、
弟は学があるもんで都会に出て
大企業に就職してっていう、
それでもって
それぞれの家族があって、
そんなこんなの葛藤を描いてたワケだけど。
だいたい、
主役の2人が
竹中直人さんと柄本明さんで
それぞれ46歳と53歳っていう設定、
そこからして、
もう世の中にウケよう
なんて思ってない。
出汁には最高級の利尻昆布
麺は国産の小麦粉だ、
うまけりゃ文句あっか!
みたいな。
兄vs弟=地元vs大都市、
漁師vs資本主義、
肉体労働vs頭脳労働、
この黄金分割のごとき王道の構図、
ラーメンっちゃやっぱり醤油だ!
みたいな。
でもって具、
“リゾート開発に絡んだ借金”
これは
“醤油がよく絡んだ煮玉子”。
“男のロマンといえば「漁師になる!」”、
これは
“やっぱり具といえばシナチク!”。
こんなふうにしてつくったラーメンが、
うまくないわけがない。
とうぜん
とっても食べ応えのある、
いや、
とっても見応えのあるドラマ
でした。
ごちそうさま。

って、それじゃ
「おいしい!」
しか言わない
グルメレポーターみたいですね。
すいません。
だから、えーと、
たとえば
第1話のラスト、
息子の了(小谷幸弘さん)が
いきなり雄一(柄本さん)に
「船に乗ってみるか」
と言われて、
思わず飛び乗ってしまう。
そこへ駆けつけた
修二(竹中さん)たちが
なすすべもなく見送る、
っていうシーン。
NA「これが我が家の漂流の始まりだった。
家族という名の船が、
行く先を見失いはじめていた・・」
ってかぶってきて
とっても象徴的でした。
それから、
途中の展開で、
工場跡地のリゾート開発をめぐって、
騙されているのは、
兄か弟、どっち?
ってなるんだけど、
結局、
「両方とも」
騙されていた、
っていう展開、
これも象徴的、
って言えなくもない。
他にもいろいろあるけど、
つまり、これって
“リアリティ”じゃなくて“美学”の
ドラマなんだ、
って思いました。
なんていうか
アタマの中でこしらえたラーメン、
っぽいかもしれないけど、
それにはそれなりの
美味しさがやっぱり
ある。
でもって
けっこう好きだったりするんだな、
こういうのが、ワタシは。

このドラマの脚本は
龍居由佳里さん、
NHKは初めてだそうで、
ちょっと意外。
「ピュア」とか「バージンロード」は、
家族のあたたかさや悩みなんかも
ちゃんと伝わってきて、
しっかり心に残ってるドラマです、
ワタシ的には。
今度は民放でも
こういう観てみたいです。

ところで、
この「海図のない旅」と「逃亡」
NHKの二つのドラマは、
全5回、でしたけど、
これってアリだな
って思うんですけど。
ときどき
ワンクール=10〜12回って
長すぎるんじゃないか
って思うときありません?
明らかに、
途中でダレてるっていうか。
もちろん、
12回で終わってしまうのが残念なドラマもあるけど、
だから、
もっといろんなカタチ
があってもいいんじゃないかと。
たとえば
5回連続の4シリーズが
テレコで出てくるとか。
どうでしょう?
ダメ?
(ワニのワリーか?)

(FEBRUARY.9)


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