Vol.92
タイトルでソンしてるかも『初体験』
いつも前置きが長いので
今回は結論から。
え〜と
「初体験」は、いい。
・・・
え?だから、
どこがいいかって、
伝えるのが難しいんだけど、
なんていうか、
つまり、
“格調さえ感じる”
とまで言っちゃったら、
大袈裟?
だけど
わかってもらえるかな。
“格調”っていっても
たとえばNHKみたい
ってことじゃなくて。
NHKって、最近でも
「海図のない旅」とか「君を見上げて」とか
視聴率を気にすることなく、
志の高いドラマをいろいろつくってるけど、
それはそれ。
そういう意味では、
この「初体験」
いかにも民放らしい正統派のラブコメ。
ではあるんだけど、
もちろんそれだけじゃなくて。
そこがこのドラマの
不思議なところなんだけど。
たとえば
第7話のラスト
真智(水野美紀さん)がフサちゃん(藤木直人さん)に
告白するシーン、
憶えてます?
「あなたが好き」って
言ってしまった後で、
堰を切ったようにしゃべり出す真智。
その後半
「私は・・私は今まで、
男の人と・・なんていうか・・
ちゃんとつきあったことがないの、
28になるまで。
今まで誰にも言えなかった。
でもね、今ならわかるの。
私、今まで誰も
ちゃんと好きになったこと、なかったんだって。
だから、
今まで大事にしてきた自分を
ほめてあげたい」
もちろん、
告白して思いが叶うこと、
それが真智にとってどうでもいいこと
だとは言わない。
でもこの後半の台詞、
フサちゃんに対する思い
じゃなくて、
自分のことを
しゃべってるじゃないですか。
このとき、
彼女の中で大切だったのは、
この恋がうまくいくか、どうか
じゃなくて、
そのままの自分を愛せるか、どうか、
だったんじゃないかな、
おばあちゃん(加藤治子さん)からの
メッセージのようにね。
このあとフサちゃんは
答を言うかわりにビールを差し出す、
つまり答は保留のままなんだけど、
真智の吹っ切れた笑顔といったら。
それにその後、
雪のベランダで言った最後の台詞
「いいの、もう。
私、じゅうぶんよ。
ありがとう。」
ク〜〜〜、
ここは泣くとこでしょ。
だから、
これは
ただのラブコメじゃない、
つまり
ワタシの好きなタイプのドラマ
ってことなんだけど。
なんていうか
誰と誰がくっついた
とかじゃなくて、
もうちょっと深いところに
ちゃんとテーマがある。
そんでもって、
弟の歩(小泉幸太郎さん)と美佐(畑野浩子さん)の恋とか
喫茶店のマスター(矢島健一さん)の話とか
サブのエピソードが
みんなこのテーマに沿って
展開してる、
そしてそのすべてが
あの同窓会の日の
「フサちゃ〜〜〜ん!」に
収束してる。
そういう意味では、
とても言葉にしにくい
(なんていうか感覚的な)
ものを扱ってるのに、
ものすごく計算された
ドラマですよね。
だから、
たとえばさっき言った
「海図のない旅」や「君を見上げて」なんかは、
登場人物の心情とか機微とかを
ていねいに描くことで
リアリティを追求するタイプなのに、
この「初体験」は、
真智と由加里(篠原涼子さん)と琴美(坂井真紀さん)
三人が三様にフサちゃんに絡んでくるあたりから、
ちょっと寓話っぽい感じになってくる。
なんともいえない不思議な味。
そう、
なんだか、
いろいろ理屈っぽいこと
言っちゃったけど、
つまりワタシが言いたいのは、
毎回観終わった後、
こんなに後味がさわやかで、
それでいて上品な余韻を残して。
そういうのが
“格調”っぽい
ってことかも知れない。
それにしても、
こういうドラマが
年に1つか2つはあるから、
ドラマファンはやめられないのよ、
ほんっっっとにもう。
さてさて、
最終回まではまだ数回ありますけど、
無事告白までしちゃった今、
どんなラストを見せてくれるんでしょう。
だって、
これってカタチ的には、
初体験をめぐるラブコメ
じゃないですか、やっぱり。
ってことは最後は無事ベッドイン・・
がお約束、ですよね。
でももう、
真智にとって大切なのは
初体験そのものじゃない、
ってことは
うすうすわかっちゃった。
きっと神山由美子さんの脚本は、
安易な落とし方をしないで、
今の路線できっちりと
落とし前をつけてくれると思います。
楽しみです。
ところで、
好きなドラマのいいところで
主題歌がスッと入ってくると
それだけでグッとくるもんだけど、
これ、いいなぁ、Do As Infinity。
ストリングスのイントロに
アナログっぽいシンセサイザーが
ポワーっと絡んでくるともう・・。
それになにより
歌詞がテーマにピタッときてますよね。
(MARCH.3)
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