BOOKS REVUE  By SYO-GIKU ASUKA 2003-2005

ジャンル別・作家50音順
ぐわーんと感動した作品にはがついてます。
タイトルをクリックするとアマゾンで購入できます。



↓カテゴリへジェンプ↓
新着レビュー
SF
ファンタジー
時代物
文学
外国文学
推理・サスペンス

WHAT'S NEW? 新着レビュー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

クロスファイア 上・下』宮部みゆき、カッパノベルス、1998

パイロキネシスト=発火能力者である青木淳子は、「力を解放」していた廃工場で、少年たちによる殺人を目撃し、能力を使って彼らを追うことを決意する。話は青木淳子と放火班の刑事の二人の視点から進んでいく。
作品を通して、孤独に生きようとした主人公でさえ、多くの人の記憶に残っているのを感じた。
宮部がS・キング『ファイアースターター』、筒井道隆『七瀬ふたたび』に触発されて書いたSF異色サスペンス。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

パーフェクト・ブルー』宮部みゆき、創元推理文庫、1992(オリジナルは東京創元社、1989)

蓮見探偵事務所のボディーガードである元警察犬・マサの視点から、高校野球界のエースが焼殺された事件を追っていく。人間が主人公の作品と異なり、犬ならではの活躍が楽しい。一筋縄ではいかない展開も見もの。
宮部みゆき長編第一作となる、原点的作品。巻末には2004年までの宮部の著作リストがあり(これを最初に買っていれば宮部作品を探すのに苦労しなかったのに!)、宮部ファン必携の一冊。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


レベル7(セブン)』宮部みゆき、新潮文庫、1993(オリジナルは新潮社、1990)

朝起きたら知らない部屋で知らない女と寝ていた。そして腕にはLEVEL7の刻印があった。
「レベル7までいったら、もう戻れない」。自分の名前さえ思い出せない二人の男女が、謎を解くにつれ明かされるある医療機関の重大犯罪。
登場する人物や風物が1990年代初頭のため、現代の社会生活との間に違和感を感じたが、長編の謎解きとしてはよくできている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ダ・ヴィンチ・コード 上・下』ダン・ブラウン、角川書店、2004

奇怪な殺人事件を機に、象徴学教授であるラングドンは、黄金比、シオン修道会、ウィトルウィウス的人体図・・・多くのキーワードが盛り込まれた謎解きの旅へ巻き込まれていく。フィクションとノンフィクションを織り交ぜながら、現代の聖杯伝説の秘密へと迫る。読解の楽しさと、書く楽しさを刺激させられる作品。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



SCIENCE FICTION 空想科学小説

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

チグリスとユーフラテス』 新井素子、集英社(1999)

惑星ナインへの移民後、出産率は低下を続けとうとう最後の子供が産まれた。老婆にして幼女であることを運命付けられたルナの行く末は。
日本人を母体とする集団が惑星ナインへ移民した後の400年を、4人の女性の目を通してオムニバス形式で描かれている。
新井素子が数年をかけ完成させた、渾身の力作である。読み応えあり。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

球形の季節』恩田陸、新潮社(1999)、341P 、541円

四つの高校が居並ぶ、東北の平穏な田舎町で奇妙な噂が広がった。高校生・みのりは噂の真相に迫っていく。
高校というなじみ深い設定のなか飛び交うおまじないや、消える少女、石にまつわる民話などに魅かれた。
平穏な田舎町の持つ非現実的なラストには驚きだが、読後納得はいかず。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

海底二万里 (上)』ジューヌ・ヴェルヌ、石川湧 訳、岩波少年文庫、(1956(上)、1957(下))

フランス古典の傑作。まず科学・海洋の知識に圧倒され、潜水艦ノーチラス号に乗っておどろきとときめきの知られざる海の世界に出会える。
古いのにそれを感じさせず、登場人物に女性がいないにもかかわらず海の神秘の魅力により最後までわくわくして読めた。
ネモ船長の正体は明かされないままだが、随所に現れる船長の行動には弱者に味方する作者の考えが現れている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

キャリー』スティーヴン・キング、永井淳 訳、新潮文庫(1985)

細くて醜いいじめられっ子キャリーは、クラスメイトからの非情ないじめによってサイキックパワーが目覚める。
クリスマス、ダンスホールの夜、キャリーの暴走によって平凡だった町は炎に包まれる。
クライマックスまで語られる綿密な経緯。キャリーの起こす惨劇に息を呑み、救いのなさが涙を誘う、キング初期の代表作。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

吸血鬼ドラキュラ』ブラム・ストーカー、平井呈一訳(1963)創元推理文庫

19世紀ロンドンに生きる、不動産のつかいっぱしり、その妻、その妻の友人、その妻の友人の婚約者三名、医者で博学な博士など様々な登場人物の日記や手紙でつづられていく長編作品。ブラム・ストーカー唯一のヒット作。
古典作品ではあるものの、吸血鬼と人間の対決が事細かに書かれているため興味深い。
平井氏の劇のセリフのような、すっとんきょうな訳のおかげで面白く読めた。近年注訳もついた完訳版が出版されている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

バイオハザード』牧野修、角川ホラー文庫

頻繁な改行とアクション重視の軽快な文でつづられた、CAPCOM同名のゲーム、映画のノベライズ版。
記憶喪失の主人公と超巨大企業アンブレラにまつわる謎解きが物語の核をなす。
問答無用に最強な女主人公アリスの、ゲームとは異なるエンディングが個人的には好き。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夏への扉』ロバート・A・ ハインライン、福島正実 訳、ハヤカワ文庫 SF、(1979)

辛い現実に嫌気がさしたら、愛猫と一緒にコールドスリープで未来へ行きませんか―――
ロボット工場経営に失敗し、開発したロボットも恋人も奪われた主人公は、20年先の未来へ行くことを決意する。
SF設定をうまく利用し人間のアップダウンを描く。読後感さわやかなSF傑作。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

BackToTop




FANTSY 幻想的
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
新版 指輪物語〈8〉王の帰還 上 上・下』
J.R.トールキン, (1992)評論社文庫

ロードオブザリング日本語版の最終章。それぞれの登場人物の活躍と指輪の最後、その後の話。
エメルの子らの王への忠誠、悪鬼に立ち向かうエオウィン姫の場面に感動した。
エルフの時代の終焉、人間の時代の始まりを予感させる終わりになっており、ここまで詳しく書ききったトールキンに敬意さえ感じた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『THE ROAD OF THE RING return of the king』J.R.Torlkin (1955) Harper Collins.

ストーリーは上の日本語版と同じだが、巻末に中つ国の歴史を始めホビット家系図、エルフ語表などがついている。
J.R.torlkinが言語学に関心を持ったことからこの話を書いたことがよくわかる。
(評論社から『付録』日本語版が出版されました。)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

BackToTop




PERIOD PIECE 時代物

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
火の国の城 上 ・下』池波正太郎(1978・新装版2002)文春文庫

甲賀忍者の丹波大介は忍者の暮らしを離れ新妻もよと平穏な暮らしをしていたが、ふと京都見物に出かけたことから大介の忍びの血が騒ぐ。
豊臣秀吉亡き後の家康の天下平定までを名忍者・丹波大介と於蝶の活躍を通して描く。
大介の義理堅く人間的な面と、忍者のプロとしての仕事っぷりがかっこいい。池波忍者小説にはまる要因となった作品。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

蝶の戦記 上・下』池波正太郎(新装版2002)文春文庫

甲賀忍者のくのいち於蝶は、上杉謙信の人柄にほれこみ青春をかけて忍び働きをする。
於蝶をめぐる男たちの愛が読みどころ。謙信と信玄の戦いを中心に、信長の策略、家康の剛勇ぶりが描かれる。
歴史背景をしっかり書くという考えのもと、下巻にいたってはほとんど於蝶は登場せず武将同士の戦いが中心で少々飽きがきた一作。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

梟の城』司馬遼太郎、新潮社(1959)

信長亡き後、秀吉を打つ命を受けた伊賀忍者・葛籠重蔵を軸として、彼を取り巻く伊賀・甲賀忍者たちの戦いと交錯模様を長編で描く。
司馬の研究から見られる独自の人物解釈や多彩な語彙もさることながら、作品を通して「己のあり方とは何か」を探す人々の生き様が印象深い。
「忍者小説」というジャンルを世に印象付け、後に火付け役となった必読の作品である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

御宿かわせみ〈新装版〉 (一)』平岩弓枝、文春文庫(新装版2004)

江戸に起こった怪事件を、与力の次男坊で色男、剣も達者な神林東吾と、同心畝源三郎が八丁堀と大川端を中心に、江戸をせましと駆け回って解決に導く。東吾とかわばたの女主人・るいとの恋も読みどころ。性格の強い登場人物や、人情味あふれる事件、四季折々の江戸情緒が話に色を添える。
同名のテレビシリーズが好きで読み始めたのだが、御宿かわせみは江戸時代の時代性、風俗など非常に研究されているのにそれがさらりと話の中に出てきて読みやすい。テレビやケイタイなどのカタカナは一切登場しないにもかかわらず、人間関係に情が移るのはいつの時代も変わらないゆえか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

白萩屋敷の月―御宿かわせみ 8』平岩弓枝、文春文庫(1989)

美男の医者や東吾の兄の秘めた恋など新しいエピソードも盛り込んで読み応え充分の第7巻。
今までに登場した人物や事件が再び登場するのが増えてくるのもファンにはうれしいところ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

蝉しぐれ』藤沢周平、文藝春秋(1991)

牧文四郎は、藩の争いにより切腹させられた父親の死を乗り越え、武家の子として忍従の少年時代を送る。
文四郎は幼馴染であったおふくへの想いに気付くものの、表に出すこともなく、静かに大人へと成長していく。しかし、仕事で関わったある権力者におふくが娶られていると知って、文四郎の心は騒ぎ・・・。
必要なことのみさくさく語ってゆく独特の書きかたもさることながら、筋が通った話は、読後感さわやかである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

BackToTop




LITERATURE 文学

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


青の炎』貴志祐介作(2002)角川書店

「17歳の完全犯罪」というと狂気に駆られた非現実的な少年を思い描きがちだが、この主人公は、家族を懸命に守ろうとする懸命で優しい、私たちの知っている17歳だった。
犯罪の工程の緻密な描写のみならず、主人公の恋や揺れ動く思春期の心がていねいに書かれている。
「怒り」という青の炎に呑まれていく主人公のラストシーンが、読後もずっと精神的に後を引いた作品。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

サヨナライツカ』辻仁成、幻冬舎文庫(2001)

出世を約束され、申し分ない婚約者もいる好青年・豊は、赴任先のバンコクで凛として情熱的な女性・沓子と出会う。
若く、互いを強く愛し合った二人は、やがてその日々も終わることを知る。豊は沓子と別れた後、家庭を持ってからも、彼女を思い続けていた。
熱情に焦がれた青春を、ずしん、とくる言葉が紡ぐ。死がおとずれた時、あなたは愛したことと愛されたこと、どちらを思い出しますか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

秘密』東野圭吾 作、(1998)文藝春秋
母娘が一緒にスキーバスの転落事故にあい、娘だけが奇跡的に生還した。しかし、目覚めた娘の精神は妻のものだった。
体は娘のまま学校に通い進学を志す妻に、夫の心には嫉妬、疑い、そしてどうしようもない妻への愛情がうずまく。
テンポのいいストーリーと、妻の死という暗くなりがちな設定を明るく描き、最後までじんわりと心をあったかくさせる作品。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

西の魔女が死んだ』梨野香歩、小学館(1996)
中学生のまいには、イギリスからお嫁に来た『魔女』ばあちゃんがいる。いわゆる登校拒否をしているまいは、西の魔女の家で生活することになり、自然と暮らすおばあちゃんからいろんなことを教わっていく。魔法も異次元でもないのに、まいのおばあちゃんとのくらしには「魔法」がたくさんあった。そして、魔女修をしてくれたおばあちゃんは、亡くなってからまいとの「約束」を果たしてくれた。あっさり読める児童文学なのにラストは思わず涙が。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
終戦のローレライ (4)』福井晴敏、講談社文庫(2005)
第二次世界大戦末期、日本に向け発射される「第三の核」を防ぐために軍に属さない潜水艦伊507はテニアンへ向かっていた。
水中の『鋼鉄の魔女』ローレライ一機に対しと立ち向かう米軍艦隊。果たして、核発射はとめらるのか。
17歳の折笠征人とパウラ・アツコ・エブナーのエピソードや、艦長の絹見真一ほか、戦時に生きる人間の生き様をフィクションとして書き出す。緻密な状況描写と、見せ所で盛り上げる書き方が好感。読後、戦争から、60年前の人々が作った未来である今の日本に思いをはせることになった。映画『ローレライ』原作。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


青のフェルマータ』村山由佳、集英社文庫(2000)

両親の争いから心に傷を負い、声の出ない「りお」は、オーストラリアの海で様々な出会いの中、自分の心を解きほぐしていく。
深い悲しみ、激しく傷つけあう心、そして、癒しの音と波。イルカとチェロと恋がせつなく痛く美しい曲を奏で出す。
心がズキズキして、ドキドキして、最後には涙が出る。心に残る一文がきっと見つかる作品。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
長崎・人魚伝説』山崎洋子、集英社(1992)

江戸時代後期。長崎では「オランダ行き」と呼ばれる丸山の女郎・瑠璃が海を見つめていた。
「お前の名前は海の色、いつか海の泡ととけ・・・」(文中より)。アンデルセンの人魚姫をモチーフに、司馬江漢、平賀源内など歴史的人物を登場させミステリー風に話は展開する。開国迫る日本を舞台にした一人の女郎のおとぎ話。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

BackToTop



FOREIGN LITERATURE 外国文学
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あしながおじさん』J・ウェブスター、新潮文庫

孤児院のしっかり娘アニーが名前しか知らないあしながおじさんの援助を受け、小説家になるという夢を抱き、勉強し、いっちょまえのレディに成長する話。
思春期になりあしながおじさんの存在に葛藤するも、最後にはその正体に気付き、目覚める愛がまた新鮮で、感動的。
日記形式でつづられており成長ぶりがよく分かる。個人的には著者の描いたへたくそな絵が好き。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

BackToTop



SUSPENCE & DETECTIVE STORY サスペンス・推理小説
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

火車』宮部みゆき、双葉社(1992)

休職中の刑事・本間俊介は、親しくなかった親戚から失踪した婚約者を探してほしいと頼まれる。リハビリついでに探し始めたその女性を追うにつれ、次々と浮かび上がる謎と疑惑。
自己破産、消費者金融の落とし穴をリアルに描き、主人公とその息子、同僚など、人間同士の人情話を幾重にも織り交ぜて、東京をはじめとして日本各地を舞台に書いた長編ミステリー。人は他人の不幸をおもしろがるが、『温室栽培』で生きてきた自分の境遇と比べてどうとれるのか。この世界を、現代の借金という火の車を通して見る。読むのに頭も使うが、読み応えは十二分にある。山本周五郎賞受賞作品。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


クロスファイア 上・下』宮部みゆき、カッパノベルス、1998

パイロキネシスト=発火能力者である青木淳子は、「力を解放」していた廃工場で、少年たちによる殺人を目撃し、能力を使って彼らを追うことを決意する。話は青木淳子と放火班の刑事の二人の視点から進んでいく。
作品を通して、孤独に生きようとした主人公でさえ、多くの人の記憶に残っているのを感じた。
宮部がS・キング『ファイアースターター』、筒井道隆『七瀬ふたたび』に触発されて書いたSF異色サスペンス。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

返事はいらない』宮部みゆき、新潮社(1991)

短いながらもミステリーと人情がおりまぜられて、満足感がある。
どの話も東京を舞台に、表題のほか『言わずにおいて』『聞こえていますか』など6篇の短編集。
カード詐欺、孤独な老人、カード破産など現代の問題を取り上げている。東京に抱いている夢や幻想、そして現実を手短に感じることができる秀作。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


パーフェクト・ブルー』宮部みゆき、創元推理文庫、1992(オリジナルは東京創元社、1989)

蓮見探偵事務所のボディーガードである元警察犬・マサの視点から、高校野球界のエースが焼殺された事件を追っていく。人間が主人公の作品と異なり、犬ならではの活躍が楽しい。一筋縄ではいかない展開も見もの。
宮部みゆき長編第一作となる、原点的作品。巻末には2004年までの宮部の著作リストがあり(これを最初に買っていれば宮部作品を探すのに苦労しなかったのに!)、宮部ファン必携の一冊。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

魔術はささやく』宮部みゆき、新潮社(1989)

高校生・日下守は幼い頃父親が横領事件を起こして蒸発した後、後ろ指を指される人生を送ってきたが、あるどんな鍵をも開けられるという特技があった。
タクシードライバーの守の義父が交通事故で若い女性を轢き殺してしまい、義父の無罪を証明しようとする守に、接触してくる者があった。
何の関連もない事故死に繋がりが浮かび、解き明かされる謎と、主人公の父親自身の謎。高校生の視点から物語が描かれるので読みやすく、関連して起こる出来事の繋がり、そして解決は見事というしかない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


レベル7(セブン)』宮部みゆき、新潮文庫、1993(オリジナルは新潮社、1990)

朝起きたら知らない部屋で知らない女と寝ていた。そして腕にはLEVEL7の刻印があった。
「レベル7までいったら、もう戻れない」。自分の名前さえ思い出せない二人の男女が、謎を解くにつれ明かされるある医療機関の重大犯罪。
登場する人物や風物が1990年代初頭のため、現代の社会生活との間に違和感を感じたが、長編の謎解きとしてはよくできている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ダ・ヴィンチ・コード 上・下』ダン・ブラウン、角川書店、2004

奇怪な殺人事件を機に、象徴学教授であるラングドンは、黄金比、シオン修道会、ウィトルウィウス的人体図・・・多くのキーワードが盛り込まれた謎解きの旅へ巻き込まれていく。フィクションとノンフィクションを織り交ぜながら、現代の聖杯伝説の秘密へと迫る。読解の楽しさと、書く楽しさを刺激させられる作品。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
サイコ』ロバート・ブロック作 夏来健次訳、創元推理文庫(1999)

アメリカの田舎、町外れのモーテルで起こる猟奇殺人に隠された恐るべき秘密。それは、モーテルを経営する母と息子にあった。
短くて読みやすく、ラストに暴かれる精神異常者=サイコの真実は期待を裏切らない。
娯楽小説を多く残したブロックの、ヒッチコック監督で映画化され有名になった作品。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

BackToTop