VNAVモードは、ピッチモードの中でも、もっとも分かりずらいモードです。実際、VNAVモードの理解度は、グラスコクピットとパイロットとの間の意思疎通がどれくらいうまく取れているかを評価する題材にされることも多いようです[1][2]。VNAVモードの理解を深めるため、PMDG 747-400を動かしながら、747-400のVNAVモードについて整理しました。
VNAVモードでは、FMCに入力された速度、高度の条件を満たしながら、飛行機の垂直方向の制御を行います。ピッチモード表示に現れるモードには3種類あります。
- VNAV SPD
指定された速度を保つようにピッチが制御されます。オートスロットルは、THR REF、THR、IDLE、HOLD等が適切に選択されます。主にクライム中や、クルーズ・ディセンド中に見られます。
- VNAV PTH
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FMCのターゲット高度やVNAVパスを保つようにピッチが制御されます。オートスロットルは、SPDモードになります。FMCで指定された高度や、クルーズ高度でレベルオフした場合や、ECONディセンド中に見られます。
- VNAV ALT
MCPで選択された高度を保つようにピッチが制御されます。オートスロットルは、SPDモードになります。MCPのALTがクルーズ高度以下に設定されており、クライム中に設定高度でレベルオフした場合や、ディセンド中にMCPのALTにVNAVパスよりも高い高度が設定されており、その設定高度に到達して水平飛行に入った際に見られます。そのままの状態では、クライムもディセンドもしないので、放置しておくと、ずっと水平飛行したままです。重要なルールは、MCPのALTに入力された高度を超えてクライムしたり、ディセンドしたりしない、という点です。また、複雑な高度制限がFMCに指定されている場合、MCPにその制限を越える高度が入力されていても、FMCの高度制限に沿って飛行してくれます。氏原キャプテンがVNAVを薦めるのも、まさにこの点なんでしょうね。
羽田から大阪伊丹までをVNAVで飛行する場合の、高度の遷移を以下に示します。
@…速度を250ノット10,000フィートまで上昇。
A…高度は,10,000フィートのまま。速度を250ノットから 経済速度の311ノットまで増速。
B…HYE14の10,000フィートの高度制限が終わり、クルーズ高度まで上昇。
C…FL240をクルーズ
D…290ノットまで減速した後、約10,000フィートまで降下。
E…10,000フィート以下の速度制限を満たすため、240ノットまで減速。高度は非常に僅かづつ下げ、240ノットで10,000フィートに到達。
F…MIDOHの3,500フィートに向け降下。
G…フラップや速度を調整し、MIDOHの手前でAPPプッシュ。
H…LOCとG/S に沿って、rwy32Lに向け降下、着陸。
VNAVでは、飛行経路の途中途中に、緑色の○が現れます。これは、垂直方向やスピードなどの重要なポイントを表しています。ところどころの数字は、下線が引かれているものは、高度の下限制限を示し、上下に線が引かれているものは、ちょうどその高度を通過する高度制限を示します。また、それぞれのフェーズに合った高度を、MCPのALTにタイミングよく入力しておきます。
- T/C
トップ・オブ・クライム。上昇の頂点。ここからクルーズに入ります。
- S/C
ステップ・クライム。燃料消費により、さらに高い高度にクライムできるポイントを示す。東京→伊丹では見ることは殆ど無いでしょう。
- T/D
トップ・オブ・ディセンド。クルーズからディセンドのフェーズに入るポイント。
- 無名の○
データベースに記録されている、SPD TRANによる速度制限を満たすための減速開始点と減速終了点。日本では、10,000フィート以下では、250ノット以下に減速する必要があります[4]。747-400では、データベースにSPD TRANに関する情報が無い場合は、デフォルトで10,000フィート以下で240ノット以下の制限が適用されます。「査察機長」という作品にに出てきた村井キャプテンは、この機能を意識して使ったことがあまり無くて、チェックライドのときに初めてこの機能を体験。「10,000フィート手前でスビードノブを押して、スピード・インターベーション機能で速度を落とすべきだろうか。査察機長はVNAV大好き人間なので、VNAVで下げたい。ああっでも、本当に速度落ちるんだよねぇ?」ってドキドキしていたら、自動的に速度が下がってきて、「やっぱり自動的に下がるんだ」とホッとする、というエピソードがあります。
- E/D
エンド・オブ・ディセンド。 ディセンドフェーズでもっとも低い地点。
T/C
T/D
減速区間 E/D
つぎに、最初にクルーズ高度よりも低い高度がアサインされ、その後、クルーズ高度への上昇が承認された場合の例を示します。例では、FL240でのクルーズをフライトプランとして提出しており、離陸直後にFL200を割り当てられた場合です。
ポイントとなるのは、FL200からFL240に上昇する際に、MCPのALTに高度を設定するだけではなく、ALTノブをプッシュすることです。767では、ALTを設定するだけで、自動的に上昇を開始するらしく、AVSIMで「PMDG 747-400では上昇できない」という質問が上がっていました。
この状況は、[2]に載っていたシチュエーションの一つ。「あらかじめプログラムされていたクルーズ高度よりも低い高度でレベル・オフするようにATCからリクエストされ、その後、低い高度が最終的なクルーズ高度に割り当てられる。その結果、VNAV ALTがアクティブ・ピッチモードになり、もはやT/Dで自動的にディセンドを開始しない」というシチュエーションに機長が気がつくかどうかを試す、という課題。
実際、VNAV ALTのまま飛んでいると、T/CがどんどんT/Dに近づいてゆき、さいごにはT/CもT/Dも消えてしまう。 対処方法は、FMCのVNAVのページを開き、FL300を新たなクルーズ高度に設定する。すると、FL300がクルーズ高度になり、ピッチモードがVNAV PTHに変わります。
あとは、普通にT/Dに到達する前にMCPのALTに例えば、3500などの適切な高度を設定しておけば、T/Dでディセンドを開始してくれます。
@ VNAVを押し、スクラッチパッドに300と入力A1L を押し、CRZ ALTをFL300に設定。EXECボタンを押す。
HYE14の高度制限が解除され、直接FL240への上昇が許可された場合の例を下に示します。MCPのALTを24000に変更し、ノブをプッシュすると、高度制限が解除され、即座に上昇を開始します。上昇が早まると、その分、クルーズ高度に達するのが早まるため、T/Cが手前に移ります。
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クルーズ高度を上げたい場合は、クルーズ中もしくは上昇中にMCPに新たなクルーズ高度を入力し、ノブをプッシュすることで、クルーズ高度を変更することが出来ます。上昇中は、ECON CRZ CLBになります。クルーズ高度が上昇すると、その分ディセンドに時間がかかるので、T/Dは手前側に移動します。
クルーズ高度を下げたい場合も、MCPに新しいクルーズ高度を設定して、ノブをプッシュすることでクルーズ高度を下げることが出来ます。ただし注意点として、T/Dよりも50NM以上遠いところでないと、アーリー・ディセンドになってしまうことだけは、注意してください。
また、クルーズ高度をさげると、その分降下しなければならない高度が減るので、T/Dは遠くに移動します。
アーリーディセンドとは、T/Dよりも手前でディセンドを開始することです。ディセンドするときのレートは、毎分1250フィート程度で、ECON ディセンドよりもゆっくりと降下します。したがって、アイドル状態でディセンドするT/Dからのディセンドにくらべると、より多い燃料を消費します。燃料消費の増加分は、アーリーディセンド開始点とT/Dとの距離に比例します。
MCPのALTにディセンドの途中の高度を設定し、そのままその高度まで到達すると、ピッチモードがVNAV ALTに切り替わり、水平飛行に移ってしまう。VNAV ALTになってから、MCPのALTを低い高度に設定しなおしても、再降下しはじめない。ノブをプッシュすると、再び降下を続行し、VNAV PTH に戻る。
(解説を書くこと)
[1] Federal Aviation Administration Human Factors Team:"The
Interfaces
Between Flightcrews and Modern Flight Deck Systems", 1996.
[2] N. Sarter, C.Wickens, R. Mumaw, S. Kimball, R. Marsh, M. Nikolic, and W.Xu:"Modern
Flight Deck Automation: Pilots’ Mental Model and Monitoring Patterns
and
Performance",
International Symposium an Aviation Psychology, 20003.
[3].内田幹樹:"査察機長",新潮社,ISBN 4-10-477601-7, 2005
[4] 国土交通省:"Aeronautical Information Manual Japan",社団法人 日本航空機操縦協会, 2005
[5] Mike Ray,"Mike Ray's The Boeing 747-400
Simulator
and Checkride", ISBN 978-0-936283-05-0,
UTP, 2005