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シルクロードを行く( 1/10 )ーシルクロード最新ルポ


はじめに
 4月13日から、旅行社が企画したシルクロードの旅にでかけた。
 シルクロードといえば、ラクダの隊商がゆく、オアシスをつたいながらの砂漠の旅をイメージする、あこがれの地である。
 今回、チャンスがおとずれたので、さっそく出かけることにした。
 旅のコースは、福岡―青島経由で唐の古都・西安で一泊し、今回のシルクロードの旅では最西端にあたる、新疆(しんきょう)ウイグル自治区のウルムチまで飛行機でいき、そこからUターンしてトルファン、敦煌をめぐってまた西安に帰ってくるコースである。

 たしかに、わずか8日間という短期間で、しかも、シルクロードの一部分だけの駆け足旅行で、西安からヨーロッパのローマまでのアジア大陸を横断するスケールの大きなシルクロードのすべてを語るのは、口はばったいことではある。
 しかも、好奇心がつよいだけの未熟者のため、聞きちがい、見まちがい、勘ちがいなど多々あることをご容赦願いたい。
 お気づきの点、みなさんのご指摘をいただければ幸いである。


青島空港
 福岡空港から青島(チンタオ)まで飛行機でとび、そこから西安行きの飛行機に乗り換える。
 ところが、実際に飛ぶルートはモニターでわかるのだが、韓国の釜山とソウルの上空を経由しながらのフライトなので、時間がかかる。
 なぜ、福岡・青島を直線でむすぶ最短ルートをとらないのか疑問におもうのだが、そこはいろいろな事情があるのだろう。
 福岡から西安への直行便はいまのところない。
 ここ数日、北京、上海での反日デモが報道されていただけに、最初の乗り換えの青島空港の到着ロビーで家族、友人らを出迎えるおおぜいのひとたちを見たときには一瞬緊張したが、そんな空気は感じられなかった。

 「自然を愛する会」と書かれたワッペンをつけたグループと、福岡空港からいっしょになった。
 みなさんお揃いのオレンジ色のヤッケ姿で、西安から西方のタジキスタンとの国境の町・カシュガルまでのシルクロードを、20日間かけて旅をするという豪華版である。
 うらやましいかぎりで、そちらのほうに付いていきたいくらいだった。
 このグループは、60歳以上の女性が15人ほどと、男性はそれより年上とおもわれる3人の計18人ほどで、女性のなかには75歳のご婦人もいて、その元気さと旺盛な冒険心には感心させられた。

 青島空港の待合室で気づいたのは、ノートパソコンを開いているビジネスマン風の中国人が5・6人も見受けられたことである。
 福岡空港では、こんな光景はみられなかった。
 中国の沿海部ではIT部門は日本よりはるかに進んでいる、とは聞いてはいた。それを肌で感じた。

西安へ到着
西安賓館  西安空港につくと、中国人のガイドに迎えられた。
 彼は姜さんという青年で、実直そうな人柄がうかがえて安心した。
 バスで今晩のホテル「西安賓館」へ向かう。
 「賓館」とは、ホテルの意味だとはじめて知った。
 ホテルの一階のレストランで、食事が待っている。

 旅のしおりによると、夕食は「地方料理」と書いてある。
 中華料理をいただいたのは、去年の夏、息子夫婦にさそわれて横浜の中華街でたべて以来のこと。
 あのときの料理のおいしかったことは、いまでも忘れられない。
 今夜、ふたたびあのようなおいしい料理を味わえると思うだけで、胸がわくわくしてきた。

 ここでの料理は、おなじみのガラス盤を手でまわす例の円卓のテーブルである。
 このガラス盤のうえに、料理が盛られた皿がつぎつぎにならぶ。
 皿をならべるところがないと、皿をずらして空きをつくり、そのうえに皿を乗せる。
 春雨のいためもの、チャーハン、スープなどもある。
 生まれついての食い意地の張った性格で、いずれにも箸をつけた。
 どれもおいしいものばかりである。

 なかに肉とじゃがいもの煮たものがあった。
 日本でいうなら「肉じゃが」だが、味はそれとはまったくちがう。
 この肉じゃがは、香辛料がきいてピリッと辛いが、それはそれでまたおいしく、食欲をそそられた。
 今回のツアー参加者は10人である。
 きょうの朝、福岡空港で会ったばかりで、名前も知らないひとたちのせいか、どこか会話もぎごちない。

 夜の9時をまわっているのに、外はまだ明るい。
 ここは緯度が日本より西側にあるため、日の入りがずいぶん遅いらしい。
 ツアー最初の夜は、静かにふけていった。

長丁場
 きょうは、シルクロードの東の起点であるここ西安から、今回のシルクロードの旅ではいちばん西側に位置する新疆(しんきょう)ウイグル自治区の、烏魯木斉と書いてウルムチとよむ砂漠のなかのオアシスの町まで空路で一気に飛ぶ。
 そこから「天池」という高地にある湖をたずねる。

 「烏魯木斉」とは、視覚的にもまたその響きにも、いかにも中央アジアの名にふさわしいエキゾチックなイメージがわいてくる。
 機内放送の乗り換え案内では、ウルムチの発音は後半のムチの部分にアクセントをつけていた。
 西安からウルムチまで飛行機で3時間あまりの旅となり、そのウルムチの空港から天池までは約150キロほど離れているという。
 したがって、きょうは長丁場となりそうだ、といまから覚悟する。

西安の朝の風景
黄砂にけむるホテルから見た西安の町並み  ホテルの13階の部屋から西安の町をみわたす。
 都市は、黄砂でけむっている。
 そういえば異国のこの地は、黄砂(こうさ)の本場である。
 したがって町が黄砂でけむっているのは、当たり前といえばしごく当たり前のことである。

 さすがに唐の時代は「長安」とよばれ、長く中国の都として政治、経済の中心として栄えただけあって、ホテルのまわりには高層ビルがいくつも建っている。
 なかでも円筒形をした超高層ビルの2棟は、近代都市としての威容を誇っている。

濡れた路面を疾走する通勤の車  出発まで時間があるので、ホテルの前で朝の通勤する人たちをウオッチングする。
 道路は、中央の幹線の両側にもう一本ずつ道路があり、幹線とその道路との間はプラタナスの並木の分離帯となっている。

 中央の道路だけがぬれている。
 ここはホコリがすごいので、散水車が水をまいて通ったのだろう。
 自転車、原動機のついた自転車、バイク、スクーター、三輪車、荷台をひいて走るバイクが圧倒的に多い。
 タクシーは上がみどり、下がねずみ色のツートンの車がほとんどである。
 あとでガイドの姜さんに聞いたのだが、ここのタクシーの営業形態は、個人タクシーでも法人タクシーでもなく、いわゆる日本でいうところの「個人営業」だという。
 したがって、車の購入は運転手の負担となる。

横断歩道で待つバイクと歩行者  横断歩道はあるのだが、歩行者用の信号はない。
 ここでは車のほうが歩行者より優先するのかとさえ思われる。
 自転車と歩行者が、車のとぎれるのを待っている。

 少しでも車の往来がとぎれると、果敢に道路を横断する。
 気の弱いひとは、ここでは生活できないかもしれない。

買わないときは
 その様子をカメラにおさめていたら、「ヤスイヨ、ヤスイヨ」と後ろから声をかけられた。
 振り向くと、人なつこい顔をしたおばあさんが手にした絵はがきをさしだしていた。
 なんだ、外国人相手のキャッチセールスか。
 エーとこんなとき中国語では何といえばいいのだろう。

 そうだ、たしか「旅のしおり」に書いてあった。
 ポケットからしおりをとりだし、急いでページをめくった。
 エーと、「いらないとき、いらないときにいうことばはーと」、あった! 「ぶーやお」(不要の意味)である。
 そこで「ぶーやお! 」といったら、彼女はそれ以上すすめることもなく素直にひきさがったので、こちらの方が調子抜けした。
 通じたぞ! よし今度からはこの調子で「ぶーやお! 」だ。
 「ぶーやお、ぶーやお」と何度も声をだして練習した。

街頭お好み焼き
 ホテルの付近をあるいていたら、路地でなにやら4・5人の人だかりができている。
 なんだ? なんだ? こんなときすぐ野次馬の血がさわぎだす。
 近寄ってみると、白い帽子に白い上着の太ったおばさんが、ワゴンのうえでお好み焼きを焼いている。
 朝の通勤客をターゲットにした商売だろう。
 これはいい被写体になりそうだ。

 ところが、写真をとっていいものやら、どうやら。
 肖像権の問題もあるし、つい先日も反日デモが北京で起こっているし。
 ホテルまで走って帰り、ガイドの姜さんに写真をとってもいいかと聞いたら、OKとのことであったので急いで先ほどの場所にもどり、写真をとった。
 おかげで古都・西安の庶民のくらしの一端を垣間見ることができ、そのうえ写真として切り取ることができた。
 今回の旅の目的が庶民のくらしを切り撮ることだったので、まず朝いちばんに、この被写体にいきあてたのは幸運といえよう。(つづく)


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