| home>読書感想文>ア〜イの作家 | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
藍川さとる 「晴天なり。1 ぷろぺら青空」 | |
| マンガ 学園 | 新書館ウィングス・コミック文庫 2005年4月25日発行 | |
| バスケ部新キャプテンの加藤は、副部長に藤井が選ばれたのが納得できない。だが、ちゃんと藤井と向き合った時、加藤の中で何かが動き出す…。単行本未収録の表題作他、全8編。 | ||
| 藍川さとる(現在のペンネームは古張乃莉)の主人公持ち回り制の連作マンガ。 主人公の友達だった人物が、その後主人公になると意外な内面が見えてきて、そうすると前作も読み返したくなって。人と知り合っていくように、物語に引き込まれていきます。 ウィングスコミックス版で揃えているのに、単行本未収録作につられて買いました。だからってウィングスコミックスのほうも手放せないんですよね。あとがきコメントがあるから。 「『見えない不幸』だな 誰にも気付かれない 自分でも気付かないたぐいの不幸だ 万一誰かが気付いても 哀れんだり同情したりなんかしてくれない 自分でも笑えるような ささいな不幸 でも本当はそういうのが 一番辛くて不幸なんだよ 知ってた?」 この巻収録の「さかなのf」に出てくる言葉が、シリーズを通して描かれ続けたものを端的に表していると思います。 この作品は言葉にできない小さな心のトゲを、細やかな心理描写ですくいとってくれます。 そうして彼らが自分の抱えていた痛みの正体を知り、ちゃんと向き合えた時、世界の見え方が変わります。そのカタルシスに読んでいる私も救われるのです。 この物語には、作者自身がグルグル考えて続けてたどり着いたのであろう、ひとつの「答え」があります。今10代の人、昔10代だった人、それぞれの胸に響くと思います。 辛気くさい感想になってしまったので、最後にこれだけは書いておかなくちゃ。 このシリーズは基本、コメディです。バカやったりドタバタしたりの学校生活(高校の話を中心に小・中学校話もアリ)。まずはお気楽に読んでみてくださいな。(2005/06/04) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
藍川さとる 「晴天なり。2 異星人交差点」 | |
| マンガ 学園 | 新書館ウィングス・コミック文庫 2005年4月25日発行 | |
| 和希は、いとこの真理亜の友達で、自分そっくりの琴子に出会う。“真理亜にとっての自分は顔が好みなだけで、特別な存在ではない”と落ち込む和希だが…? 表題作他、全3編。 | ||
| この巻は単行本未収録話はないのですが、買ってしまいました。文庫版で読み返す時、この巻収録の分のためにウィングスコミックス版を掘り出すのも面倒だなと。 収録作は「異星人交差点」「サンクス ア ミリオン」「週末の恋人」の3作。 この中では「サンクス ア ミリオン」が印象深いです。 主人公の新尾は何事にも冷めていて、評判の女タラシだけど本気の恋を知らない。期待を裏切られるのが怖くて、無意識に自分にリミッターをかけているようなヤツです。 可愛げのなさがカワイイ…というのも妙ですが、新尾の自覚のなさ、不器用さがなんとももどかしくて応援したくなります。ホントに身近にいたら殴り飛ばしたくなりそうなヤツなのに。 文庫版の収録順は単行本とも発表順とも違っていて…じゃあ何が基準なんだろう? 1巻は、みさを・たもつ・まことの藤井3姉弟(姉+弟2人)の話が多めな印象。見た目小さく幼くてカワイイんだけれど、中身は見た目どおりじゃないんだよ…という3人です。 で、この巻は文化祭特集…かな。3作中2作が文化祭絡み。姉妹校3校の合同文化祭とあってオールスターキャストだし、2つの話がクロスする場面もうれしいです。(2005/06/04) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
藍川さとる 「晴天なり。3 自由になあれ」 | |
| マンガ 学園 | 新書館ウィングス・コミック文庫 2005年4月25日発行 | |
| “特殊系問題児”悠二、父親と折り合いの悪い和希、女としての自分を持て余す真理亜。問題を抱え、中学の屋上に集まった3人が、そこで見つけたものは? 表題作の他、全5編。 | ||
| 3巻は、家族公認カップルになっちゃった悠二と静太郎が多く登場する巻。 「晴天なり。」シリーズを知ったのが「愛していると言ってくれ。」からなので、私にとっては、この2人がシリーズ全体の軸。文庫版の中でも思い入れひとしおの巻です。 「自由になあれ」で描かれた悠二の幼少時の不安定さと、中学生時代のグレっぷりは、なかなか衝撃でした。「愛して〜」で才色兼備のスカした優等生だとばかり思っていたから。 それと、この巻には「女であること」をテーマにした話も多いです。 「フレンズ オア ラバーズ」「自由になあれ」では男の子とばかり遊んで育った真理亜が、中学に入った頃からの男子の態度の変化に戸惑うことに。「ウィーカーセックス スピーカーセックス」は、静太郎以外は女ばかりで姦しい吉峰家の、ある騒動を描きます。 読んでいて「わかるなぁ」と思うセリフが多いです。もう胸がシクシクするくらい。 それだけに、女という性を「そういうもの」として受け容れられた登場人物を見ると、なんだか無性にうれしくて、気持ちが軽くなります。 この巻のお気に入りのセリフは、「自由になあれ」の中で静太郎の姉・世津子が言う「自分から欲しがらないような人にはね 幸せになる権利なんかないのよ」。 文庫版1巻の「49センチのテンション」での如月 円(欲望という名の女)「坂道見たらね 悩む前に走っちゃえばいいのよ そしたら止まれなくなるから」という言葉と合わせると、「じっとしてちゃダメだ!」って気分になります。 アニメ「交響詩篇エウレカセブン」の「ねだるな 勝ち取れ さすれば与えられん」って言葉とも通じるかも。そういう気合が今の私には必要なのです…。 文庫版発売で「晴天なり。」シリーズは完結だと何かで読んだような。モテモテだけれど、一番好きな人との恋には絶望したらしい理香ちゃんの物語が書かれることはないのね。 いやでも「晴天なり。」シリーズの新作が読みたいなんて無理は言いません。 藍川さとる、もとい古張乃莉の新作を待っています。切に。そりゃもう切に。(2005/06/04) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() ![]() あさのあつこ・作 佐藤真紀子・絵 「バッテリー」「バッテリーII」 ヤングアダルト スポーツ 教育画劇 I:1996年12月10日・II:1998年4月15日発行 ※文庫版も発売 | ||
| 野球で“最高の球”を投げることに情熱を傾ける巧。だが、その球を受けきれるキャッチャーはなく、力を発揮できずにいた。中学入学を前に、一家で田舎町に越してきた巧は同い年の豪に出会い、バッテリーとして力を出しきれる相手だと確信する。
約3年前の日記から感想文をサルベージしてきました。 読んだ時に2冊分まとめて書いたので、ここでもその形式です。(2003/12/16) *** 昨晩から今朝4時までかけて、2冊一気読みしました。 印象がすごく強烈で、その日1日、何かにつけて反芻していました。 この本を知ったきっかけは、NHK-FM「青春アドベンチャー」枠のラジオドラマです。 方言の大らかな会話や、“最高の球”を投げることに懸ける巧の内に秘めた情熱の熱さ、そしてボーイズラブっぽい登場人物の配置や場面がひっかかりまして。 いや、ぶっちゃけ、ボーイズラブくさい邪まな気配を感じたからこそ、読み始めたのですよ。 だって、お互いに「こいつしかいない」と思っているバッテリーに、人の心など目に見えないものを敏感に感じ取る巧の弟の青波(せいは。このネーミングも、ほのかに耽美だし、ほら)とか、いかにもソレっぽい気が。「II」での巧をやっかんだ野球部の先輩によるリンチ場面なんて「え? これ、ルビー文庫!?」と思うようなドキドキ加減でした。 邪まに読み始めたものの、読んでいると、巧の“熱”がうらやましいわ、痛いわ。 巧はピッチャーとして、より速い球を投げることに対する揺らがない自信があります。 でも、強烈なプライドと、親や学校の「かくあるべし」という枠組みとの折り合いがつけられずに苛立ち、ますます野球だけに打ち込んでいきます。自分が折れればいいと分かっていても素直になれず、自信と、それに見合う実力とで周囲をねじ伏せていきます。 この鼻っ柱の強い巧とバッテリーを組み、向き合うことになるのが豪です。 豪は巧が投げる球に惚れこみ、「こいつとなら、すごいことができそう」と夢を託します。 医者の息子というボンボンながら、自分を甘やかさず、精神的に自立していて分別もあるバランスのいい子です。これくらいの度量がないと、巧とは組めないでしょう。 豪の周囲と調和できる人柄もうらやましいけれど、それ以上に、巧の強さ、自分の力への圧倒的な確信が眩しかったです。 と同時に、情熱のために周りと衝突する道しか選べない巧が痛々しくもありました。 続きが読みたいですが、そうすると巧の挫折話になりそうでツライです。伏線というには、あからさますぎるほど挫折が示唆されているから。 巧の向こう気の強さが羨ましい私としては、折れてしまうのは見たくない気もします。 挫折も乗り越えてくれるのでしょうか? 乗り越えてほしいです。(2001/01/10) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
あさのあつこ・作 佐藤真紀子・絵 「バッテリーIII 」 | |
| ヤングアダルト スポーツ | 教育画劇 2000年4月15日発行 ※文庫版も発売 | |
| 中学野球部のピッチャー・巧。“最高の球”を追求する彼の自己中心的な態度は反感を買い、ついには暴行事件に発展。事件による活動停止明けの紅白戦、巧は力を爆発させる。 | ||
| 図書館で「V」を借りるついでに、ずいぶん前に読んで内容が不安な「IV」も借り、いざ「IV」を読み始めると「III」の内容をはっきりとは覚えていないと気づき、慌てて図書館を再訪して借りてきました。そんなこんなで慌しく再読した「III」です。 再読のせいか、ちゃんと野球ものとして読めました。ヒリヒリするような試合の緊張感と高揚感、野球部員、特に引退間近の3年生たちの野球が好きだというシンプルな思いとか。 初めて読んだ時は、そのへんの描写が吹っ飛ぶくらい、巧の性格が強烈でした。 自分の力だけにこだわり、無愛想で、先輩や先生であっても物怖じしない。“最高の球を投げる”以外のことには徹底的に冷淡です。表紙見返しにも引用されたセリフなんて呆気にとられます。「勝利をみんなで喜び合うことも、敗北をいっしょに悔しがることも、仲間と心が通じあうことも、まとまったいいチームになることも、なんの意味もない。そう、思わないか」。 本当に鼻持ちならない、殴り飛ばしてやりたくなるなるようなヤツです。 でも、巧の痛々しいほどの純粋さと、そうやって磨き上げてきた力は眩しくもあります。自分の力だけを突きつめて、どこまでいけるものか見届けてみたいと思わせます。 巧とバッテリーを組む豪の「自分のためだけの野球を絶対、やりとおせよ」という思いも、巧を嫌って部を去った展西の「ぼろぼろになって潰されていくとこ、笑って見ててやる」という言葉の両方に共感できます。巧には良くも悪くも心に波風を立てる存在感があるのです。 感想を書きながら、「SLUM DUNK」の流川楓と、彼を評した“selfish”という言葉を連想。「SLUM DUNK」の「selfish」の回は、流川が圧倒的実力で「自己中心的」という非難を一掃する話だったはず。巧もそうなってほしいような、一度挫折を味わってほしいような。 さらに余談。NHK-FM「青春アドベンチャー」でのラジオドラマ化の際、巧役だった宮野真守さんは、アニメ「WOLF'S RAIN」の主役キバも演じています。鼻っ柱の強さと、心に決めた目標だけを追い、それ以外は目もくれないところが似ていて、キバを見るとつい巧とダブらせてしまいます。キバのほうが人生経験が多いせいか、ややこなれていますが。(2003/07/06) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
あさのあつこ・作 佐藤真紀子・絵 「バッテリーIV 」 | |
| ヤングアダルト スポーツ | 教育画劇 2001年9月5日発行 ※文庫版も発売 | |
| 横手二中との練習試合で巧は強打者・門脇を打ち取る。だが豪は巧の速球を受けきれない。バッテリーの呼吸は狂い、ついに降板。それ以来、豪は巧の球を受けようとしなくなる。 | ||
| 巧と豪は単なるチームメイトではなく、もはや“運命の相手”です。 初めて全力で球を投げられる相手を見つけた巧。巧が投げるボールの、速さや重さなんて言葉では語れない、ゾクゾクするような生命力に魅せられた豪。 今回は、そんな2人の関係が決裂します。生まれて初めて徹底的に打ち込まれて降板し、巧もいよいよ挫折?…と思いきや、悩んでいるのはむしろ豪のほうのような。 豪は、巧の球を取れなかったことで、巧との力の差を見せつけられます。これからさらに力をつけていくであろう巧に、自分は置いていかれるのではないか? 混乱し恐怖すら覚える豪。巧は「いっしょに頑張ろう」なんて励ますようなキャラじゃないし。報われないったら。 そして豪は気持ちを見つめなおし、腹をくくります。ある種、王道です。 対して、巧の思考は驚くほどシンプル。すべての結論は「投げる」です。 結局、投げることしか知らないのです。豪との関係修復も、豪に向かって球を投げるしかないと思っています。挫折から立ち直る姿を期待した私には予想外。でも、これこそ巧です。 巧には豪の迷いや苦しさは一生理解できないかもしれません。巧の野球への情熱は、そんな感情さえ不純物として切り捨てた、最高の球を投げることだけに純化したものだから。 今回の出来事は、今まで気づきもしなかったチームメイトたちの思いに目を向ける機会になったでしょうが、巧の芯の部分を変えるには至っていないように思います。 もう、このまま突き進んで、スゴイ領域を見せてほしいです。挫折を味わえとは言いません。本当に野球以外に何もないヤツから野球を奪うなんて残酷すぎると思うので。 今作のもう1組の“天才と、その才能を見せつけられた男”が横手二中の門脇・瑞垣コンビ。瑞垣のコンプレックスと、それを押し隠した饒舌な軽口にグッときました。語ると長くなりすぎそうなのでこのへんで。次の「V」にも登場すると思うので、その時に書きたいです。 またも余談。私の中で、あさのあつこ作品は高村薫作品と近い位置づけです。男くさい題材と、同人女の心を揺さぶる執着心の描写ってあたりが似た印象。(2003/07/07) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
あさのあつこ・作 佐藤真紀子・絵 「バッテリーV」 | |
| ヤングアダルト スポーツ | 教育画劇 2003年1月10日発行 ※文庫版も発売 | |
| 横手二中との再戦に向け、力を蓄える野球部。また横手二中の門脇と瑞垣も、巧を打ち崩そうと燃えていた。その裏には巧への対抗心だけでなく、2人の複雑な関係があった。 | ||
| 「気合入れて読まねば!」と思っていたら、4巻を読んで2週間経ってました。3巻から一気読みの予定だったのに、気合がなかなかたまらなくてねぇ…。 今作は、4巻で噴出した心理的ゴタゴタを整理しなおす話というところでしょうか。巧と豪、門脇と瑞垣の2組の関係の変化を見つめ直すというか。 楽しみにしていた横手二中との再戦は次巻に持ち越しです。ひっぱるなぁ。 このシリーズ、やはりとんでもない長期戦を覚悟しなきゃいけないようです。 巧にも変化の兆しが見られます。これまでなら気にも留めなかった、豪の気持ちが気にかかるようになったし、人間関係を切り捨ててきた自分にも疑問を感じはじめたし。 そういう感情を持てあまし気味の巧が見どころ。豪に妙な絡み方をして、自分が恥ずかしくなる場面とか妙に新鮮です。チームメイト相手の巧のクールなツッコミもカワイイですが。 でもこういう人情欠落キャラがまっとうになっちゃうと、うれしい反面、ツマラナイ気もしちゃうのは、なぜなんでしょう? 巧はとんでもなく極端なキャラだっただけに、特に。 それに豪も胆が据わってきた感じです。ついでのように書くのも申し訳ないですが。 相手に引きずられたり、押さえつけられたりするのじゃなく、ちゃんと対等に向き合えるようになった時、何が生まれるのか。次の試合が楽しみです。 この巻の準主役的存在が門脇・瑞垣コンビ。特に瑞垣のコンプレックスが描かれます。 横手二中の4番・5番を打つ、幼なじみの2人。門脇は全国レベルの天才バッターです。 瑞垣にとって門脇は、身近にいるだけに才能の差を見せつけられ、うちひしがれ、憎しみさえ感じる相手です。でもその憎しみは“親友”の門脇にはけして見せられないし、それ以前に自分の弱みを見せることは瑞垣のプライドが許しません。 饒舌な軽口の裏に、割り切れない思いを秘めていた瑞垣。その思いが、巧との本気の対決を通して、さらけだされていきます。 なまじ頭がよくて、いろいろ見通せる分、ガムシャラな本気にはなれないヤツです。賢く生きようとして身動きが取れない臆病者。「見る前に跳べ」と蹴飛ばしてやりたくなります。 こんな瑞垣から、ある同人誌(「バッテリー」本ではないのですが)を思い出したので、あとがきを勝手に引用。長々引用するのは申し訳ないので、ちょっとだけにします。 「『わかっている』と『思う事』が 欠けている所だとしたら 『好き』というキモチひとつで 開く門もあるとしたら」 これだけじゃ意味不明でしょうか? ネタ元が分かった方は「フフン」と思ってください。 あとは雑感をつらつらと。 ・本文中でも書きましたが、「バッテリー」、えらく長いシリーズになりそうです。 作中で経過した月日は、5巻にしてやっと1年です。次巻は横手二中との再戦がメインの話になりそうだから、日数の経過は、これまたほとんどなさそうな予感がします。 これまでの刊行ペースは、1年に1冊出るかでないか。1巻の発売は6年前です。6年と言えば、巧と同年代で読み始めた子が、高校卒業を迎えようかって年月ですよ。 マンガ「SLAM DUNK」が、試合描写が濃い分、時間経過が遅く、「卒業まで描くなら何巻までかかるんだよ、おい」という感じでしたが(実際は予想外のところでイキナリ断絶しましたが)、「バッテリー」にも同じようなことを感じています。しかも週刊連載で即続きが読めた「SLAM DUNK」と違い、次の巻が出るまでじりじり待たなきゃいけない分、さらにツライ。 いっそ京極夏彦作品並みの分厚さで一気に出してくれないかと思ってしまいます。でも、それではますます刊行ペースが落ちて、じりじりする期間が延びるだけですね。 何年後かには「ズッコケ三人組」シリーズ並に図書館にずらーっと並んじゃうのかも。 ・プライドの高いピッチャーと、気は優しくて力持ちのキャッチャーと言う取り合わせから、「バッテリー」から水島新司のマンガ「ドカベン」の里中・山田のバッテリーを連想する人も多そうです。私自身、豪のビジュアルイメージは、かなり山田太郎にひきずられています。 それともうひとつ連想したマンガが、ちばあきお「キャプテン」。20年以上前の作品です。とことん地に足の着いた野球マンガで、登場人物も徹底して等身大。天才なんていない無名校が地道な練習で強くなる様子を、4代のキャプテンを軸に描いていきます。 作品自体の雰囲気はずいぶん違うのですが、野球マンガとしては珍しく「バッテリー」と同じ中学野球が舞台であることと、巧たちの部で、地味だけど芯から野球好きの野々村が新キャプテンになった経緯が連想を誘いました。 ・酒、タバコの描写がさらっと出てくるので、ドキッとさせられます。「それが中学生の現実かもな」と頭では分かるのですが、「子どもが読む本だし…」と考えてしまいます。 さも当然のように酒・タバコが出てくるのは、それを容認するようにも受け取れて違和感があります。人物描写の一部だし、表現の一部を取り上げて難癖をつけるのもよくないとは思います。でも、どうしても「教育上よくない」という漠然とした不安が拭えません。 作中に、よくないことだと示唆するセリフなどのフォローがあればよかったかな、と思いつつ、そんな大人の思考が入り込んでくるのもイヤな気がして、考え込んでしまいます。 えらくダラダラと長く書いてしまいました。次に感想を書くのは、いつになるか分からないので、「バッテリー」ネタは、この機会に全部書いておけ、といったところです。(2003/07/22) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
あさのあつこ・作 佐藤真紀子・絵 「バッテリーVI」 | |
| ヤングアダルト スポーツ | 教育画劇 2005月1月15日発行 ※文庫版も発売 | |
| 卒業式も終わり、残すは横手二中との再戦のみ。新田東中は前キャプテン・海音寺のもと練習に励む。一方、対戦相手の門脇や瑞垣も対決に期するものが…。シリーズ完結編。 | ||
| 完結までの長期戦を覚悟していたのに、意外にも完結しちゃいましたよ…。ま、第1巻から数えて約8年というのは十分長期ですが。目次の「最終章」の文字が胸に痛かったです。 読みながら「この残りページ数で、どこまで描かれるの?」と気もそぞろでした。巧や豪だけでなく、チームメイトや対戦相手の門脇や瑞垣たちが総登場する勢いで、それぞれの心情が細やかに描かれます。その分「このペースで試合終了まで行き着くの!?」と心配で。 落ち着かない状態で読んだので、「完」の文字を見ても完結した実感がないです。そんな生半可な状態ですが、一旦、感想を書こうと思います。素直な第一印象ってことで。 完結巻で原田・永倉のバッテリーに突きつけられた命題は「キャッチャーが永倉でなくても投げられるのか?」「ピッチャーが原田でなくても受けられるのか?」。 “そこに行くか!”とハッとしました。これからずっと2人でいられるわけじゃない。2人だけで野球をしているわけじゃない。2人の関係にハラハラしどおしだったせいで見落としていたけれど、これからも2人でいるためには絶対必要な問いだと思います。 その問いに、2人が出した答えは作中でも明確に語られるわけじゃないし、やっぱり巧は相変わらず“投げることがすべて”の巧ではあるのですが、それでも確かに何かが変わりました。それが何か…ひと言ふた言ではまとめられないです。もう「読んでください」としか。 前巻の感想に続き、また「SLUM DUNK」を引き合いに出しますが、あれも「え、ここで終わっちゃうの!?」という幕切れでした。作者いわく、物語上の最終戦となった山王戦以上のテンションで、今後の試合を描けそうにない…といったことだったような。 「バッテリー」も、同じような理由であってほしい…と思います。そりゃ、彼らのその後は気になりますとも。主役バッテリーは、これからどんな関係を築くのか? 巧たち新田東の新チームは全国でどれだけ通用するのか? 野球に興味を持ち始めた青波のその後は? …もう書ききれないくらい。というか、登場人物全員の先行きが知りたいです。 でも、続けるために続けるのはイヤだとも思います。生半可な気持ちじゃ書けない物語だと思いますし。何せ文庫版はとんでもなく売れているらしいので、やめるほうが大変だろうに、それでも(だからこそ?)作者がここで完結すると決めたなら、受け容れたいです。 それに眩しいほど真剣な巧たちの1年間は全6巻の中に確かに存在しているのです。彼らが1年間で得たものや、それを今後どう生かすかは、読者に託されたのだと思います。 そう言えばNHK-BS2「週刊ブックレビュー」の、あさのあつこさん出演回によれば、もともとの構想は2巻までだったそうです。ここまで続くとは予想外だったそうで。 余談。原田・永倉というと新選組ですね、今さらですが。大河ドラマ「新選組!」には大ハマリしたのに、つい最近まで気づかず…。名字より名前の巧や豪のほうで認識していたし、大河の山本太郎・山口智充コンビとはキャラがかけ離れているしね。(2005/09/19) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
あさのあつこ・作 塚越文雄・絵 「髑髏は知っていた―テレパシー少女「蘭」事件ノート5−」 | |
| 児童書 SF ミステリー | 講談社 青い鳥文庫 2003年2月14日発行 | |
| 土砂崩れ現場で見つかった人骨を調べていた男が消息不明に。その姪に相談された超能力少女の蘭と翠。2人の頭に浮かんだ光る眼球のビジョン、そして骨に隠された真実とは? | ||
| 「バッテリー」のあさのあつこの、もうひとつの長期シリーズ。こちらはかなり軽めのノリです。主人公のひとり・翠が関西弁でガンガンしゃべって、もうひとりの主人公・蘭と漫才状態。この漫才ノリと、翠の二重人格的ブリっ子キャラは楽しいです。が、多少鼻につく時も。そのせいか、読み続けてはいるのに、今ひとつハマりきれないシリーズです。 ジャンルとしては、背表紙の解説文によるとSFライト・ミステリー。トリックとか鮮やかな推理というより、冒険もののジュブナイルに近い印象です。 徐々に事件の核心に近づく展開は読ませますし、真相も意外で、面白く読めました。いや、ちゃんと面白いから、なんだかんだ言ってシリーズを読み続けているわけですが。 大人への反発や、超能力者ゆえの苦悩といった要素もあります。事件も口封じだ殺人だってドギツイし、翠は、超能力を疎まれてきた経緯もあり、大人の汚さには容赦ないですし。 でも、そのへんの心理描写は食い足りない印象。やや説明的な感じで、「バッテリー」のように刺さってくる感じはしません。シリーズも5作目で、超能力者の葛藤は一度通り抜けているのもありますし、話の比重が謎解き寄りってことかも。(2003/07/21) 追記: 読後、「バッテリーV」を読んだら、このシリーズの心理描写が食い足りない理由が分かりました。読んでいて不意打ちがないのです。自分とは全然違う考え方や、漠然としか感じていなかった違和感が鮮やかに切り取られて、ハッとさせられる瞬間、と言うか。 ただ「蘭」シリーズの登場人物も、けっこうヤヤコシイ内面を抱えていそうではあります。マイペース型の蘭はともかく、超能力を疎まれてきた翠や、思慮深い分コミュニケーション下手の蘭のボーイフレンド・留衣にはヘビーなエピソードがありそうだし。そのへんの心情をみっちり書いた話も読んでみたい気もします。(2003/07/22) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
あさのあつこ・作 塚越文雄・絵 「人面瘡は夜笑う−テレパシー少女「蘭」事件ノート6−」 | |
| 児童書 SF ミステリー | 講談社 青い鳥文庫 2004年2月15日発行 | |
| 白い着物の少女が「助けて」と言い残して消えた。彼女のひじには奇怪な人面瘡が。その言葉に導かれ、蘭たちは山奥の旧家の伝承にたどり着く。その裏には恐るべき事件が! | ||
| えーっと…感想が書きにくいです。 面白いんですよ、面白かったんですって。蘭と二重人格美少女・翠のボケツッコミトークも快調だし、オカルト系の事件と思いきや、意外な展開を見せる謎解きも面白かったし。 ただ「ココ!」という推したいポイントというか、心震わすものが足りない感じ。そのへんは、前作の感想でも書いたとおりです。このへんは、もはや好みの問題じゃないかと。 それでも続巻が出たら、きっと読むと思います。(2004/05/13) | ||
| >>home △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
あさのあつこ・作 塚越文雄・絵 「ゴースト館の謎―テレパシー少女「蘭」事件ノート〈7〉」 | |
| 児童書 SF ミステリー | 講談社 青い鳥文庫 2005年2月15日発行 | |
| 花火大会の最中、蘭の心に届いた声。「もうだめだ…死ぬしかない…。」声の主である老舗旅館の若主人は、旅館の幽霊騒動に苦しんでいた。蘭たちは幽霊の正体を暴けるか? | ||
| このシリーズを読むのも久々。そうか、ミステリーでしたね。 今回は、けっこうトリックや謎解き要素があって、例によって推理なんてする気もなく読み進めていた私は、「そうだったのか!」と思うことしばしば。楽しませていただきました。 …すみません。前にも書きましたが、このシリーズ、感想が書きにくいんです。 楽しく、サクサク読めるのは確かなのですが…。 ま、読み続けてますよということで。2008/05/19) | ||
| >>home △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
あさのあつこ・作 塚越文雄・絵 「さらわれた花嫁―テレパシー少女「蘭」事件ノート〈8〉」 | |
| 児童書 SF ミステリー | 講談社 青い鳥文庫 2006年3月15日発行 | |
| 商店街の福引きを当てた蘭たちは、南海の孤島・蛇の目島へ旅立つ。そこは何十年に一度、奇跡の祭りがおこなわれる神秘の島。蘭と翠のテレパシーは事件の兆しをキャッチして…!? | ||
| 「読みましたよー」という記録だけの文章です。感想は第6巻の感想参照で十分かな、と。気軽に安心して楽しめるシリーズではあります。 手元にある本とカバーイラストの絵柄が違うのですが、全作、装丁がリニューアルされたようです。アニメ化を機にイメージチェンジしたのでしょうか。コミック版のビジュアルに歩み寄った印象。でもアニメ版って、小説とコミック、どちらとも違う絵だったような。(2009/03/15) | ||
| >>home △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
あさのあつこ・作 塚越文雄・絵 「 宇宙からの訪問者―テレパシー少女「蘭」事件ノート〈9〉」 | |
| 児童書 SF ミステリー | 講談社 青い鳥文庫 2008年7月15日発行 | |
| 嵐の夜、海辺のホテルから男が姿を消した。同じ頃、蘭と翠は怪しい波動を感じ、発生源と思われる山に登る。そこで蘭たちを待っていたものは? そして2つの事件を結ぶ糸とは!? | ||
| 前巻の感想同様、「読みましたよー」というだけの文章です。 徹底した管理社会と、それに縛られることの抵抗…というモチーフが出てきて、正直「またかよ!」と思いました。 まさに、そのまんまの話である「NO.6」をはじめ、ここで感想を書いているあさのあつこ作品全部に、このモチーフは通底しているんじゃないだろうか。テーマ設定が悪いというより、それを露骨に言葉にしてしまうのが興醒めです。 それと「The MANZAI3」でも感じたのですが、どこか食い足りない。キャラの掛け合い漫才が楽しいというじゃない、密度とか熱量とか、そんなものがほしいです。(2011/06/30) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
あさのあつこ・作 鈴木びんこ・絵 「The MANZAI」 | |
| 学園 青春 | 岩崎書店 1999年10月15日発行 ※文庫版も発売 | |
| 歩はクラスメイトの秋本から漫才コンビ結成を申し込まれる。困惑する歩だが、文化祭で「漫才ロミオとジュリエット」を上演することに。でもコンビ仲も文化祭準備も順調ではなく…? | ||
| 「2」を読むのを機に、前作を再読。でも、どうにも照れちゃって、マトモに読めません。 だって、秋本があまりにも歩にベタ惚れだから。 小柄でジュリエットの衣装も似合っちゃう、多分美少年であろう歩と、それより頭ひとつ分以上大きい、快活なサッカー部員の秋本。2人は男のコどうしです。 秋本は転校生の歩に“相方はコイツだ”と直感し、その思いをストレートに歩にぶつけます…ああ、こっ恥ずかしい。いかがわしく感じる私に問題があるのは自覚していますが…。 前回読んだ時も相当舞い上がっていたのか、中身はかなり忘れていました。印象的だったキスシーンも、する側とされる側を逆に覚えていたし。願望が入っていたんですかね…。 歩は、いろいろワケありで、その分、“普通”であることに必死で、周囲への気遣いから窮屈な思いをしています。同じ作者の小説「バッテリー」の主人公・巧が、自分を貫き通そうとして、何かと周りと衝突しているのと、まるで正反対。 主人公の印象はかなり違いますが、どちらも中学生。この年頃の、ままならない感情をすくい上げる作者の視線には、読みながら度々ドキッとさせられます。 教師や友人の何気ないひと言に決定的な心の傷を負ったり、大人の欺瞞を冷静に嗅ぎ取っていたり。かと思えば、女のコを前にしてドギマギしている様子もかわいらしい。 あさのあつこ作品は、このページでもいくつか紹介していますが、特徴はコンビものが多いこと。唯一無二と見込んだ相手との濃密な関係が、それぞれの内面に変化をもたらし、そのドラマが読者の心も揺さぶります。今作ももちろん、その流れにある作品。秋本のまっすぐな愛情(って言っちゃうよ、もう)が、縮こまっていた歩の心を解きほぐしていきます。 友情なんて軽々しく呼びたくない深い関係の物語なので、2人のラブラブぶりにあてられちゃうのも無理からぬことなのです…なんて、言い訳がましいですかね。(2005/07/24) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
あさのあつこ・作 鈴木びんこ・絵 「The MANZAI 2」 | |
| 学園 青春 | ジャイブ カラフル文庫 2004年9月18日発行 | |
| 「漫才ロミオとジュリエット」から約半年、歩は中3に。夏祭りで漫才をしようという秋本から逃げ回る毎日だ。そんな中、“ゲロゲロ事件”をきっかけに、ロミジュリ仲間が再集結する。 | ||
| 1巻ほどは照れずに読めました。 秋本の歩へのベタ惚れぶりは相変わらずですが、それにも馴染んできたようです。 個性がくっきりした登場人物の生き生きした活躍は、前作同様に楽しいです。 お気に入りは、しっかり者の元2-3クラス委員で文芸部部長の森口京美。まじめな優等生かと思いきや、“愛と恋とエロ”な妄想をたくましくしているところに親近感が湧きます。妄想を押し隠して密かに楽しむのではなく、カラッとオープンなのが好印象。 秋本に片思いの幼なじみ・萩本恵菜も好きです。前作では、歩にライバル心を燃やし、何かと突っかかってくる子くらいの印象でしたが、芯が強くて面白い子だなと。 男子はデリケートな登場人物が目立つだけに、女子の現実的なたくましさが爽快です。 キャラの個性を出そうとすれば、エキセントリックに走りたくなるところ。でも、この作品はそうではなく、本当にクラスにいてもおかしくない感じがします。 彼らのポンポン軽快な会話を読んでいると、その一員になったような心地よさがあります。 それに、この子たちの、歩へのさりげない気遣いもうれしい。 人一倍、人の心に敏感で、それだけに自分の無力を情けなく感じてしまう歩。口ごもりがちな彼の心を読みとって、そのまま受け止めてくれる友達の存在が温かく、心強いです。 そんな彼らが、人の悪意について考えさせられる事件に、どう向き合うのか? 私のように多感なはずの中学時代をボンヤリ過ごしてしまった人間からしてみると、素敵な仲間と、あの頃をやり直しているようで、切なくも、うれしく読みました。(2005/08/07) | ||
| >>home △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
あさのあつこ・作 鈴木びんこ・絵 「The MANZAI3」 | |
| 学園 青春 | ジャイブ カラフル文庫 2006年7月16日発行 | |
| 中3の夏。歩は片思い相手の恵菜が病院で暗い表情をしていたのが気になっていた。一方、夏祭りの開催が危ぶまれると聞いた“ロミジュリ仲間”は、祭り実現のため動き出す。 | ||
| 続きが出てたんだなぁ…って、5年前に出てた本ですね。約1年半ぶりくらいに図書館に行ったとはいえ、置いていかれぶりがヒドイ。 さて、話のほうは、まるで進んでないような。前の巻のあらすじを読み返したら、この巻と同じ中3の夏祭りの話ですよ。 ざっくり話をまとめると“ずっと立ちすくんでいたな歩が、やっと自分から前に出るようになったかな”と。で、前に出た結果どうなったかは、次巻…なのか? 次の巻は別の話だったら、どうしよう。 恵菜にとってショッキングな事件や、夏祭り実現までの右往左往が、思いのほかサラッと流されていたような。 メインストーリーの隙間を埋める日常エピソードという印象で、なんだか同人誌のような読後感でした。歩と秋本の、それこそ漫才みたいな日常会話が魅力のシリーズではあるので、十分楽しく読んだのですが、なんだか間延びした印象でした。(2011/05/15) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
あさのあつこ 「NO.6(ナンバーシックス)#1」 | |
| SF サスペンス | 講談社
YA!ENTERTAINMENT 2003年10月10日発行 | |
| 2013年、理想都市・NO.6。エリート居住区の紫苑は、特別警戒地域から逃亡した少年・ネズミを助ける。4年後、連続変死事件に巻き込まれた紫苑は、ネズミと再会することに。 | ||
| 「No.6」というと、往年の海外ドラマ「プリズナーNO.6」? 見たことはないのですが、「人間を番号で呼ぶ村の虜囚となった男の孤独な戦いを描いたスパイアクション」だそうです。 管理社会に圧殺されようとする人物を描く点で、2作品に通底するものはあるのかも。 だからってことはないでしょうが、設定がやけに懐かしい、というか古風です。 幼くして将来が決定づけられる管理社会、都市をとり囲む壁、その外で暮らす支配者側から切り捨てられた人々…その古風さはSFとして読むには気恥ずかしいですが、ジュブナイルSFとしては王道かもしれません。“わたしを束ねないで”はジュブナイル世代の基本テーマの1つだと思いますし、それを表現するのに近未来の管理社会は適した題材でしょう。 あるいは、もっと単純に、作者自身がかつてドキドキしながら読み、共感した物語を、現代に甦らせようとしているのかもしれません。 第1巻は登場人物と設定の紹介まで、といったところ。でも面白くなりそうな予感はします。 清潔な都市の暗部や、都市と決別した紫苑の葛藤、謎多き少年・ネズミの過去を、胸をえぐるように描写してくれることを期待。古風な印象が拭えるかも、そのへん次第と思います。 「バッテリー」で邪まにドキドキした方にも、もちろんオススメ。今作のほうが対象年齢がやや高いのか、エロさが分かりやすくなった気がします。“なんかエロくない?”から“うわっ、エロっ!”(男子中学生のようなリアクション…)になった感じです。でもあくまで寸止め。 以下、余談。 NHK教育「ドラマ愛の詩 ミニモニ。でブレーメンの音楽隊」第11話に「No.6」を思わせる場面が。病弱・ひねくれ者のお坊ちゃま・健志と、彼に借りがあるという戦災孤児・進との会話が、なんだか紫苑とネズミみたい。それに「No.6」で紫苑が小ネズミたち(動物ほうのネズミ)に本を読み聞かせる場面がありましたが、健志も進の孤児仲間であるチビっ子たちにお話を読み聞かせしておりました。なんでしょう、このシンクロニシティ?(2004/03/27) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
あさのあつこ 「NO.6(ナンバーシックス)#2」 | |
| SF サスペンス | 講談社 YA!ENTERTAINMENT 2004年2月10日発行 | |
| 連続変死事件に巻き込まれ、理想都市・NO.6から逃亡した紫苑。彼を助けたネズミとともに、NO.6の“ゴミ箱”西ブロックで暮らし始める。2人は紫苑の母の情報で、ある男を訪ねる。 | ||
| 後半でやっと話が動き出したかな…という感じで、あまり進展がないような。まだ人物紹介の段階という印象です。思わせぶりに登場したのに、名前もわからない人もいるし。 派手な展開と話の盛り上がりを期待していた身としては、ちょっと肩透かし。 メッセージ性の強い作品なのですが、私にはその部分が響いてきていないです。 あとがきには「世界を理解していこうとする若く稚拙な魂」を描きたいとあります。でも私は前作の感想で書いたとおり、もっと個人的な感情の揺れや、事件の謎解きの部分のほうに興味を持って読んでいますし、そもそも普段から世界への問題意識に欠けているので。 もっと言えば「欠けている」でなく「見ないようにしている」というのが正確。考え始めるとイヤな結論になるのは分かりきっているから、最初から考えない。心の老化とも言えそう。 その硬直した心理、心のガードに、作者の思いも遮られているのだと思います。 ただ、台詞に「そういう考えもあるのか!」と目を開かれるような感動は薄い気がします。 ネズミの“自分のことだけ考えろ”と、生きる厳しさを伝える言葉も、人を信じ、他者の窮状を放っておけない紫苑の言葉も、どこかで聞いた言葉のような気がしてなりません。私がスレた本読みだからなのか、先述した心のガードの問題かは分からないのですが。 だから言葉でなく行動で示してほしいです。紫苑が絶体絶命の決断を迫られた時、ドラマの盛り上がりともに、考え方、生き方が心に響いてくるんじゃないかと思うのです。 それもあって、話の早い展開を希望。 作者の意図どおり楽しむ義務はないとは思うのですが、あとがきを読みながら、意図のあまりの受け取れていなさ加減が申し訳なく、またやるせなく思えたので。(2004/04/28) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
あさのあつこ 「NO.6(ナンバーシックス)#3」 | |
| SF サスペンス | 講談社 2004年10月8日発行 | |
| 紫苑に思いを寄せる少女・沙布が「NO.6」の研究員に連れ去られた。紫苑の母の報せを受けたネズミだが、紫苑にはそれを隠す。沙布が収容された矯正施設は危険すぎる場所なのだ…。 | ||
| 紫苑の愛されっぷりしか覚えてないや。だって話が進まないんだもん。 紫苑がいい子なのも、その紫苑に心動かされ、彼を弱みとして抱え込んでしまったネズミが危険なのも十分解ったのだけれど、でも読みたいのは“その先”なのです。 ネズミやイヌカシの口の減らない言い合いが楽しいので、退屈とまでは言いませんが、なんとももどかしい。次巻こそホントにアクションてんこ盛りなのですよね? 前の巻の感想にも書きましたが、彼らの生き方を言葉でなく行動で示してほしいのです。 ここから少しだけネタバレです。ストーリーというより、紫苑とネズミのラブラブぶりの進展が気になる人にとってのネタバレ。念のため文字色反転します。 この巻は、とにかくあのキスシーンに尽きるんじゃないかと。 たかがキスシーンなのに、けっこうビックリしたしドキドキしました。だって予想外でしたもの。ヤングアダルトとはいえ少年少女向けレーベルなのに…なのに…! キスに関するネズミから紫苑への小生意気な文句もイカしてました。(2006/05/23) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
あさのあつこ 「No.6(ナンバーシックス)#4」 | |
| SF サスペンス | 講談社 2005年8月22日発行 | |
| NO.6の治安局員に連行された沙布を救うため、紫苑とネズミは「人狩」に乗じて、矯正施設の内部への潜入を計画する。生きて帰った者のない施設で待ち受けるものは…? | ||
| 話が進まないったら、もう。じれったい。この巻こそ派手に展開すると期待していたのに。 心のひだを掻き分けるような描写は読ませるんですが、ごく短時間を拡大して描いているわけなので、当然、作中の経過時間は大したことがないのです。 いろんな謎が謎のままでズーッとお預けくらっている気分。しかも謎は増えるばかりだし。 この巻では、紫苑にも何やら謎があるらしいことも仄めかされていて、気になるところ。その事実が、ネズミのラブラブぶりに冷や水をかけそうな気配だし。やっぱ恋には障害がないと。 紫苑とネズミの蜜月ぶりに比して、女性キャラの恋心が報われなさ過ぎるような。「この作者、女がキライなんじゃないか」なんて思っちゃいます。で、同じようなことを別の作品でも考えた気がすると思ったら、アニメ「獣王星」ですよ。あさのあつこ作品と樹なつみ作品…あ、けっこう近いものがある気がする。なんだか腑に落ちました。(2006/11/20) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
あさのあつこ 「No.6(ナンバーシックス)#5」 | |
| SF サスペンス | 講談社 2006年9月11日発行 | |
| 矯正施設に送り込まれた紫苑とネズミは、生き残りをかけて、施設の最奥部を目指す。2人は“理想都市”NO.6の暗部を目の当たりにする。一方、救出を待つ沙布の身体には異変が…!? | ||
| 日付を見たら、前の巻を読んだのって6年前なの!? 恐ろしい! 案の定、話はそんなに進んでないや。潜入した矯正施設の奥深くで出会ったものは…!? くらいの感じ。前回書いた感想「心のひだを掻き分けるような描写は読ませるんですが、ごく短時間を拡大して描いているわけなので、当然、作中の経過時間は大したことがないのです」をもう1度書いておけばいいかも。 早く次の巻を読もう。次は6年後なんて悠長なことはしないようにしなくては。(2012/06/17) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
新井素子 「ハッピー・バースディ」 | |
| サイコホラー | 角川書店 2002年9月30日発行 | |
| 幸せな結婚と小説の新人賞受賞で“黄金の時”を過ごす、あきら。大学受験失敗で“最悪の時”の裕司。偶然から、裕司の鬱屈はあきらへと向けられ、2人の人生は意外な展開へ…。 | ||
| 新井素子の文体は、うつる。 感想をまとめようと、考えを巡らせる。と、新井素子口調で考えている自分に気がつく。くだけた話し言葉で書かれた文章は、語りかけられているようにテンポよく読める。そのテンポが気持ちよくて、読むうちに、いつの間にか染み付いてしまうのだろう。 新井素子ぶった口調で考えたから、感想文の文体も真似よう。そう思って書いているのだけれど…まるで似ない…。独特のテンポや、くだけた雰囲気が出ないし、何より論理展開が違う。「そして」「ならば」と接続詞をきちんきちんと挟みながら続く文章は案外、理屈っぽい(すらすら読めるのは、語り口のうまさだろう)。だから真似るなら論理の組み立て方からだ。 …で、ここからは通常の文章に戻します。文体模倣は無理です。文体と思考法は一体なので、文体を型にはめようとすると、思考もギクシャクして、進まないったらありゃしない。 夫に精神的に依存しすぎるあきら。母親の押しつけがましい“愛情”にうんざりしながらも、愛情からの言動だからと無碍にもできない裕司。 ごく普通の家族に潜む人間関係の闇を浮かび上がらせる物語は、新井作品の中では「くますけと一緒に」「おしまいの日」の系譜と言えるでしょう。 身も蓋もない言い方をすれば、今作の事件は、思いやりのなさが起こす事件です。 ちょっとした無神経や、ささいな悪意が、受け取る側には残酷な仕打ちになるかもしれない。相手の都合を考えない善意の押し売りは、悪意以上にタチが悪い。 そんな頭ではよく判っていることも、具体的な人物像の言動として描かれると、人間関係の怖さがひしひし伝わってきます。特に、自分を善意の人間だと信じて疑わない裕司の母のうっとうしさなんて、もう。しかも「こういう人、いる」って思えるのが、なおのこと怖いです。 新井素子は一人称でしか書けないそうで、以前、三人称小説に挑戦した時はエライ目にあったとか。でも今作は、一人称のような三人称のような…。 主語は「あきらは」「裕司は」と三人称。でも語り口は、いつもの話し言葉。どうしたって主観的な印象で、三人称小説の“神の視点”の感じでがありません。で、読みながら語り手に「そういうお前は誰?」と、普通の三人称小説ならありえないツッコミを入れてしまいます。 「おしまいの日」では主人公の専業主婦の視点からの、どこまでも主観的な一人語りが、壊れていく精神状態を際立たせていました。でも今作では他人事として眺めているようで緊迫感に欠ける印象。むしろ、くだけた語り口が雰囲気を軽くしているような。 こんな不思議な文体になったのは、主人公が壊れた精神状態だし、しかも一方は男性だしで、気持ちが同化しにくかったから? あるいは、あきらと裕司が互いの意図を知らずに行動しているから、状況説明のために三人称的視点が必要だったとか? 思いやりの欠如の話だし、あきらと裕司、それぞれの主観に徹して書いたほうが、緊迫感は増した気がします。章ごとに各々の視点から書いているのに、そこがなんだか中途半端。 終盤、絶望的な事件をきっかけに現実を拒絶したあきらが、どう現実と折り合いをつけるかってあたりでは、新井素子の一人称語りならではの不思議な論理展開に引き込まれただけに、語り口の中途半端さがなおのこと惜しい気がしました。(2003/11/04) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
有川浩・作 昭次・絵 「塩の街―wish on my precious」 | |
| SF 恋愛 | メディアワークス 電撃文庫 2004年2月25日発行 ※ハードカバー版も発売 | |
| 人が塩の結晶に変わる“塩害”で崩壊寸前の東京で、少女と青年に芽生えた絆。人の死に居合わせたのをきっかけに、2人の関係に変化が…!? 第10回電撃ゲーム小説大賞作。 | ||
| 滅びかけた世界で、海を目指して歩き続ける青年という第1話のエピソードで、新井素子「ひとめあなたに…」を連想。 「ひとめあなたに…」は、地球が1週間後に滅ぶという状況で、恋人に会うため、ひたすら歩き続け、その途上で、さまざまな愛の形を知ることになる…という短編連作。私がSFにハマるきっかけとなった作品でもあります。なんだか再読したくなってきたな。 だからこの本も、主人公たちがいろいろな出会いを通して、愛や人生について考えを深めていく短編連作で、世界が滅びようとしていても、2人だけの世界に閉じていく物語なのかな…と思っていたのです。実際、最初2章はそんな雰囲気だったし。 ところが途中で危機に立ち向かう話になって、なんだかビックリ。 世界を襲う“塩害”についても、単に危機的状況での恋愛を描くための背景に過ぎず、特に原因などの説明はないだろうと思っていたのに、あれこれ説明してくれるし。 こういうところが、なんとなくライトノベルぽくない感触がしました。ただ説明をしてくれるマッドサイエンティスト的人物はクセのある極端なキャラで、やけにラノベっぽく思えましたが。 作中に「男は理屈を越えられないけど、女は越えちゃう。頭以外のどっかでね、理屈を追い越した先にある何かをしっかり掴んでるんだろうね」というセリフがあります。 それでいくと、この物語は前半が女の感性で進んでいたのが、後半から男性の理屈が入ってきた感じ。私が展開を意外に感じたのも、それが原因じゃないかと。ヒロイン視点だけで進んでいたら、「ひとめあなたに…」のような愛を掘り下げた物語になったのかも。 愛する女を守るために戦いを決意する男と、愛する男に先に死なれるくらいなら、世界なんて滅びてもいい女…という男女の齟齬をどう乗り越えていくかも物語の肝だったので、男女両方の言い分を書き込むことが必要だったのかも…とも思います。それならそれで、序盤から男女の視点をバランスよく展開していたら読みやすかったんじゃないかと。 いろいろ書きましたが、総合すると面白かったです。 人が塩の柱と化す“塩害”という突拍子もない設定ながら、ディテールは「この状況なら、こうなるよ」と納得できます。モラルの崩壊、街の暴動・襲撃、極限状況だからこその恋心…ウソくさくなく受け入れられましたし、だからこそ主人公2人の恋の行方にドキドキしました。 この本の前に読んだのが、あさのあつこ「NO.6 #3」(感想はこのページの上のほうに)。 清らかな心の少女/少年と、彼女/彼を宝物と思い、自分の弱みになると知りながらも守ろうとする男という話を2冊続けて読んだわけです。しかもどっちもキスどまりの清純派。 ま、肉欲で結ばれた関係になっちゃうと、2人の絆の意味が違ってきちゃいますしね。 こういう関係で“宝物”になりえるのは、無知ゆえの無垢ではなく、ひどい経験でも汚されない無垢なんだな、と思いました。その強さこそ稀有な宝物なのだろうと。(2006/05/25) 追記 作者が「図書館戦争」でブレイクしたからか、デビュー作にあたる「塩の街」 もハードカバー版が出てます。「本編大幅改稿、番外編短編四篇を加えた」だそうです。
(2009/03/15) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
アンデルセン・作 大畑末吉・訳 「アンデルセン童話集 3」 | |
| 児童書 ファンタジー | 岩波書店 岩波少年文庫 1986年3月12日発行 | |
| 雪の女王に連れ去られた幼なじみを探し、少女は旅を続ける…。「雪の女王」の他、「赤いくつ」「さやからとび出た5つのエンドウ豆」「とうさんのすることはいつもよし」など全10編。 | ||
| 岩波少年文庫を読むのも、ずいぶん久しぶりです。藤田貴美「雪の女王」を読んで、アンデルセンの原作を読んでみたくなったので。有名な話ですが、原作を読むのは初めてです。 原作を読むと、藤田版のエピソードが入っていないことが不思議に思えたほど。藤田版は原作のセリフをそのまま使いながらも、山賊の娘の行動や心情をかなりふくらませてあったようです。その、ふくらませられた部分に泣かされたものです。 「雪の女王」に限らず、収録作には賛美歌や天使への言及が多く、アンデルセンの敬虔で素朴な信仰がうかがえます。でも説教くささはさほど感じないのは、やはり話の展開自体が面白く、しかも映像的な想像力をかきたててくれるからでしょう。 ビジュアル面では、「年の話」の植物の四季の変化の描写の瑞々しさや、雪の女王の「なん百万という星のような雪ひらでできているような」白い薄絹の着物に思わずうっとり。 作中、雪の女王自身にはセリフがほとんどないのに、その姿の描写だけで圧倒的な存在感があります。「雪の女王」が度々、映像化されているのも納得です。 その他では、「あの女はろくでなし」の苦い後味が印象的。周囲から酒飲みのろくでなしと思われながらも、息子のために必死に働く母。なんだか「ヨイトマケの唄」を連想しました。 この話以外にも、アンデルセン童話は「マッチ売りの少女」「パンを踏んだ娘」など、やるせないエピソードも多いような。それがハッピーエンドが基本の昔話との違いでしょうか。 知っているつもりでいた話も、わりにうろ覚えだったようです。「赤いくつ」は踊り好きの少女の話だとばかり思っていたのに、そうではなかったり。 この本はデンマーク語の原典からの翻訳らしいので、これまで私が知っていた話は翻訳時にアレンジされたり、映像化などで脚色されたものだったのかも。そういえば先日までNHKで放送されていたアニメ「雪の女王」の「赤い靴」の話も、舞踏会に憧れる少女のエピソードでした(アニメは「雪の女王」以外のアンデルセン童話も物語に組み込んでいたのです)。 ただ翻訳がドイツ語などからの孫訳でないのはうれしいのですが、言い回しに違和感があったり、ピンと来ない箇所もちらほら。デンマーク語ができる人は貴重なのでしょうが、もうひと頑張りしてほしかった。想像がふくらむ話だけに、もどかしいです。(2006/03/13) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
安野モヨコ 「美人画報ワンダー」 | |
| エッセー 美容 | 講談社 2003年11月4日発行 | |
| マンガ家・安野モヨコが「美人とは!?」を追求するイラストエッセー。ファッション、美容、ダイエット、インテリア…。雑誌「VOCE」連載に描き下ろしも加えたシリーズ完結の第3弾。 | ||
| 以前、「美人は素材より、装う技術や心意気の問題。素材の良し悪しという立ち位置の計測じゃなく、キレイになろうとするベクトル込みで測られるというか。要は“やればできる”なんて無意味。“やせれば美人”に何の価値もないのです」といったことを書きました。 それで言えば、安野モヨコは最高の美人! 生活のあらゆる面で綺麗でありたいと願い、挑戦を続けています。 私はむしろ彼女の夫“カントクくん”(下の「監督不行届」参照)に近い、外見に無頓着な人間で、初めて聞くブランドや化粧品に目が眩む気分。“女ヂカラ”もへったくれもないよ。 それでもこの本を読んでいると、“女に生まれたからには!”というパワーが湧いてきます。文章からあふれ出るモヨコパワーが伝染するのです。それに、カワイイ服やステキアイテムがギッシリの華やかなイラストを見ていると、“綺麗になってみたい”と思うから。 実用的なアドバイスも満載。女なら必読の本かも。 それにステキな物を知っていることは、心を豊かにしてくれると思うのです。 自分にあった化粧品や好みのファッションブランドを見つけることは、花の名前や咲く季節を覚えるようなものじゃないかと。ブランド信奉という意味じゃなく、自分にとっていい物、素敵なものに囲まれて日々を過ごすことは、心の栄養だと思うので。 まずは、ため込んだ雑誌と段ボール箱まみれの部屋をどうにかせねば…。(2005/02/24) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
安野モヨコ 「監督不行届」 | |
| マンガ エッセー 結婚 | 祥伝社 2005年2月15日発行 | |
| マンガ家・安野モヨコがオタクの教祖・庵野秀明にヨメ入り! 立派な“オタ嫁”(=おたくの嫁)へ邁進するディープな日常を赤裸々に綴る。描き下ろし「結婚秘話」や庵野秀明インタビュー、本編をさらに楽しむためのオタク用語解説も収録。 | ||
| オシャレマンガ家・安野モヨコとアニメ・映画監督で“日本のおたく四天王”庵野秀明。 住む世界が違うかに見えた2人ですが…ああもう、すべてがラブだ。出会うべくして出会った2人だ。庵野秀明が「愛」の字の落款(=ハンコ)をモヨコにプレゼントするのも納得だ(モヨコさんがテレビ出演時、“大切なもの”として持って来たのが、その落款でした)。 でも“バカップル”とは違うのです。自らにツッコミを入れる客観性が備わっているから。 モヨコさんに実はオタク素養があったということに、まずビックリ。それが、“カントクくん”こと庵野さんの教育と、日々交わされるオタクな会話で、“オタ嫁”へと開花していきます。 結婚式では同人誌を配布し、買い物に行けば、夫は試着室からウルトラマンポーズで登場。ドライブでは夫自ら編集したヒーローソングCDをバックに2人で大合唱…濃すぎるよ。 夫のカントクくんはと言えば、食事も風呂も洗濯もうっちゃった、笑えるほどロクでもない生活が大改造。巻末の結婚前・後の比較図を見ると、変貌ぶりに感動すら覚えます。 オタクの特殊な生態が笑える…と同時に、結婚も悪くないかも?と思えるマンガです。 2人の生活がとにかく楽しそうなのです。 オタク全開な会話が楽しそうなだけでなく、カントクくんを見ているモヨコさんの視線が楽しそう。「こんな楽しい(orダメな)ところが!」と日々発見し、それに呆れたり世話を焼いたり。そして、ふと気がつけば、ものの見事に似たもの夫婦になっているという。 2人のなれ初めは、たしかアンノつながりの対談だったはず。モヨコさんのペンネームの由来になったという安野光雅さんはいわば、縁結びの神様?(2005/02/26) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
安野モヨコ 「シュガシュガルーン 1 ・2」 | |
| マンガ 恋愛 ファンタジー |
講談社KCデラックス 2004年3月26日・10月22日発行 | |
| 魔界の女王試験で、魔女のショコラとバニラは人間界へ。人間の恋するハートを集めるが、魔女は人間にハートを奪われれば死んでしまう!? 恋愛初心者の2人の試験の行方は? | ||
| 安野モヨコが「なかよし」に連載中の作品。アニメ化を機に読んでみました。 最初は目がチカチカしました。画面がにぎやかだし、全ページ、断ち切りで描いてあって余白がないし。でも慣れると、その高密度ゆえにウキウキ、テンションが上がります。 何せ描かれているものがどれもこれもカワイイ。魔女服カワイイ(ローウエストのミニスカ)、学校の制服カワイイ(大きめセーターにミニスカ、ニーソックス)、パジャマもカワイイ(フリル! レース!!)。服装ごとに髪型も違うし。家具や小道具も、いちいちデザインが凝っています。「美人画報」などで窺われる作者自身のこだわりがギュッと詰め込まれている感じ。 恋するハートを集めるという設定にもトキめくと同時に、その危うさにドキドキ。 “ハートは奪うもので 奪われちゃダメ”なんですって。魔性の女? いや魔女か。 ハートを奪われた人間は、恋していたことを忘れてしまうという設定の切なさも、恋の素敵さを印象づけるスパイスになっています。 少女マンガだなぁ。というか、とことん“女のコのため”のマンガ。 華やかなファッションブックであり、恋のレッスンであり。“女ヂカラ”(「美人画報ワンダー」の感想文参照)がバッチリ鍛えられそう。子どもの集中力で読めば影響直撃かも。 「子ども向けでしょ?」なんて侮るなかれ。そもそも子ども向け云々以前に、安野モヨコに本気じゃない仕事なんてないんじゃなかろうか。ホント、スゴイ人です。(2005/07/18) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
安野モヨコ 「シュガシュガルーン 3」 | |
| マンガ 恋愛 ファンタジー |
講談社KCデラックス 2005年5月20日発行 | |
| 学園の人気者・ピエールは実は闇の魔法使い・オグルだった! 彼の策略でバニラはショコラに不信を抱き、家から追い出してしまう。そんなショコラを守るため現れた魔界の騎士団とは…!? | ||
| 物語は急展開! これまで親友であり良きライバルだったショコラとバニラが、完全に対立する立場になってしまいました。 泣き虫で心優しいバニラが、ライバル心むきだしで、笑顔をなくしたトゲトゲしい態度に。そんな彼女をショコラは怒るよりも悲しみ、心から心配しているのが切ないです。 そして2人が競い合う女王試験の行方ですが、優等生のバニラが一歩リードしていたのが、ここへきてショコラ急成長! 快活な魅力が認められてきたのか、彼女の勝気さに反発していたクラスの男子にも味方ができています。ハート集めも好調のよう。 一方バニラは強引な策略が目立つように。持ち前の愛らしさは失われてしまいました。 バニラは周りとなじめない孤独さから、自分の居場所として、女王の座に執着します。でも味方してくれるピエールすら、実はショコラが気になっているのだと気づいています。孤独は癒やされるどころか、よりツライ立場に自分を追い込んでいるような。 題名どおり砂糖菓子のようだった作品の雰囲気に、スパイシーさ、ほろ苦さも加わって読み応えアップ! 楽しいですよ。(2005/11/27) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
![]() |
安野モヨコ 「シュガシュガルーン 4」 | |
| マンガ 恋愛 ファンタジー |
講談社KCデラックス 2005年10月13日発行 | |
| 魔法使いが集まるヴァルプルギスの夜に、バニラやピエール、オグルたちも現れて激しい衝突が! そこへ争いを収めに入った謎の美女は、ショコラにはどこか懐かしいにおいがして…!? | ||
| 懐かしいにおいの美女は、もしかして? ショコラのピエールへの想いもふくらむいっぽうだし、そしてラストではショコラの大ピンチにピエールが…!? 続きが待ち遠しいです。 オグルは単なる“悪い魔法使い”ではなく、魔界の王国によって辺境に追放され、やむなく黒の力に手を出したという悲しい歴史を背負っています。 だからといって、オグルが人間界を支配して、王国をつぶすというピエールの考えは強引すぎますが、それを責めることができない面もあるのです。(2005/11/27) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
伊藤遊・作 太田大八・画 「えんの松原」 | |
| 児童書 歴史 伝奇 | 福音館書店 2001年5月1日発行 | |
| 平安中期。訳あって女童の姿で宮中で働く少年・音羽は、同じ年頃の東宮・憲平と出会い、彼を苦しめる怨霊に立ち向かう。都の中心にありながら怨霊が集う“えんの松原”を巡る冒険。 | ||
| 菅浩江「鬼女の都」に出てきた“えんの松原”から、この本を思い出して再読。「女装の男の子が出てきた話」くらいの印象しか残っていなかったので。 再読した今回も、どこかハマりきれませんでした。話は面白いし、闇や怨霊を切り捨てるのではなく、心を寄せていく姿勢も好みなのに…どうしてなんだか。 移動中に細切れに読んだせいかもしれないし、現代ぽい台詞回しが引っかかったせいかもしれません。「真実」「自由」などの漢語や、「ぼく」という一人称は平安時代にそぐわない気がして。現代風の言葉遣いは読みやすくはありますが、趣きにかけるような。 女性キャラがチャーミングです。 身寄りをなくした音羽の保護者になった伴内侍。厳しい老女ですが、音羽に情が移ったのか、だんだん人間味のある愛すべき人物になっていきます。「赤毛のアン」のマリラっぽい。 憲平の遊び相手の少女・夏君も好きです。気の強い美少女で、どんな時もうつむいたりしない毅然とした態度がカッコいい。現代なら学級委員長タイプかも。 男キャラは…いかがわしい想像がモヤモヤと。 女装はしていても、向こう気の強い音羽。東宮としての期待に応えられない自分に苦しみ、心弱くなっている憲平。2人の友情を素直に受け取れない自分がダメダメです。ダメついでに、憲平を怨霊から守る役にある阿闍梨(僧侶ですね)も、なんだかアヤシく思えました。 性別意識も作品テーマに含まれているようなので、そのへんとの相乗効果(?)で、私の“いかがわしさセンサー”に反応したのだと思われます。 魅力はいろいろあるので、なぜハマれなかったのか、返す返すも謎。好みの問題…としか言いようがないかも。それでも、読んで損はない作品だと思います。(2004/05/21) 注意 ここからはネタバレ話です。 憲平は後の冷泉帝のようです。この作品で、事件の発端とも言うべき呪法「変成男子の法」の話も、何やらの書物に書き残されているようで。 この呪法、女にしてみれば、気ぃ悪いです。「女の何がいけないのよ!?」って感じ。 この物語も、同じような思いを出発点に考えたのかも、と思いました。もちろん、性別意識以外にも、いろんなテーマを含んだ作品ではあるのですが。(2004/05/21) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
|
入江アリ 「コダマの谷」 | |
| マンガ 学園 | 同人誌 2005年2月1日発行 ※ビームコミックス版も発行 | |
| 学院にトップ入学したライダーだが、ある事情でワザと留年する。そんな彼の周囲で、王子が逃げ込んで来たり、その結婚相手である名門の娘が男装で入学したりと、にわかに騒動が…。 | ||
| 同人誌で発表されたオリジナル作品。'06年1月現在、同人誌即売会「COMITIA」の通販ページで購入できます。ちなみに作者は「入江亜季」名義で商業誌でも活躍中。 何でしょう? この懐かしさ。まず素朴な絵柄が今風じゃないです。で、ヨーロッパを思わせる谷間の王国の名門男子校が舞台…って萩尾望都とかお好きですか? そういえば男装したウーナ(アーサー王子の政略結婚相手)のおかっぱ頭を見ていると、「トーマの心臓」を思い出しました。小柄で長髪巻き毛のアーサーは「11人いる!」のフロルのよう。 でも、この懐かしさがツボにハマりました。「やっぱり好きだなぁ、こういうの」と。 まず、クラシカルなヨーロッパスタイルのビジュアルにトキめきます。ウーナのドレス姿はクールビューティぶりが際立って素敵。背景や小物も生活感があっていいです。 ストーリーは、ライダーが抱える事情や、アーサーとウーナの政略結婚の行方などが描かれますが、さっぱりした絵柄のせいもあって、淡々と展開していく印象。 というかストーリーが重要ではないのですよ。あらすじだけなら、まるで新味がありませんもの。でも生き生きした会話や表情に引き込まれてしまいます。まっとうに面白いです。 巻末のラクガキ集も楽しかったです。ともすれば本編以上に。 登場人物の日常のひとコマが、ちゃんと小物や背景付きで描かれています。1ページにいくつもシーンが詰め込まれていて、それぞれにストーリーが感じられます。 遠く離れた家族や友人が何をしているか思いを馳せるように、作者の中で、いろんな場面がつい思い浮ぶのではないかと。登場人物が単なる物語の素材じゃなく、ちゃんと生きて存在している感じがします。こういう作家の方って、好みです。(2006/01/21) | ||
| >index △page top ▲back ▼next | ||
| home>読書感想文>ア〜イの作家 | ||