h】 水平線を越えよ 〔horizon〕 / 此の境は何処に在るのか、若しくは何処に在ったのか
BGMは清春様でした。
首筋に歯を立てて、生まれ変わったら僕に成りたいと彼は言う。
「生まれ変わったら何に成りたい、」
「信じてない。」
「詰らない返事は止してよ、」
「僕でいいよ。」
にっこりと白い歯を零す。
「イイよね。」
「格別にいいとは思わないけど。」
「それでも君は君に生まれ変わりたいの、」
「だから。信じてない、如何だっていい。」
僕の首に両腕を回して、彼は僕に口付ける。
「好きだよ、そんな所も。」
「意味わかんねぇーよ。」
窓の向こうには雨が、白い曇り空から雨が。途切れる事無く降り続く。
強くもなく弱くもなく。絡み付く湿気が吸い慣れた煙草の香りを変えて、
頭が痛い。あぁ、如何だっていい。如何だって。
「好きって云うのは、訳が分からなくなる事だからさ、ダーリン。」
ああ、そう。
投げ遣りな相槌を打って、灰皿へ手を伸ばした。
筋張った甲にぎょっとした。
いつの間に、こんなにも僕は、年をとったのか。
「如何したの、」
彼は丸い目を更に丸くして僕を見詰めている。
肌は柔らかく、頬は薔薇色。
「生まれ変わっても君になるといいよ。」
「如何して、」
「僕は、僕に生まれ変わった君を、愛せないから。」
彼の少年の時も移ろうのだろうか。
「現在は、」
「愛してる。」

そう、現在(いま)は。現在の僕は彼を愛している。
明日についてはわからない。

お題少年の26文字より【h
2008年06月01日公開。

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