冬1
[2002/11/05号]
あの日
あなたと私
すれ違う列車の中に
互いを見つけた
目と目が合った瞬間
はっとして ふたり
時が止まったように
見つめあった
ホームにベルが鳴りひびく
ああ
列車が出てゆくんだね・・
もう二度と逢えないね
誓い合う言葉も
手のぬくもりも
いつか 遠く過ぎ去る
けれど
ふたつの彗星のように
魂と魂が触れ合って
確かめ合ったあのまなざしを
わたし 決して忘れない・・
☆ロマン・ロラン「ジャン・クリストフ」の
“アントアネット”の章を読んで
学生の頃、夢中で読んだ本の中にフランスの作家ロマン・ロランがいます。
自らピアノを弾き、歴史を学び、ベートーベンの研究にも優れた業績を残したロラン。
彼がベートーベンをイメージして書いた大河小説がこの「ジャン・クリストフ」です。
その中の“アントアネット”という少女の章は、忘れられないくらい、悲しくて美しい章です。
主人公クリストフとアントアネットの一瞬の出会いと別れの場面を、現代に移して詩にしてみました。
[2002/11/06号]
「おはよう」 の言葉が
白い息になって見える朝
わたしの心も きりっと目をさます
あれと これと・・
今日しなければならないこと
たくさんあるね
でも
忘れたくないよ
なりたい
なりたいって 願い
夢見ること
[2002/11/07号]
だいじょうぶ
あなたの心が
どんなに深くて強いか
わたし 知ってるよ
あなたはひとりじゃない
隆起する山も
山を削り 谷を走る川の流れも
何億年も なぎさに打ち寄せながら
はるかな歌をうたう海も
みんな みんな あなたの 兄弟たちなのだから・・
幾千もの星々のきらめく宇宙
この燃えるような命に溢れた
地球こそが
あなたを創り
あなたの命を織り上げたのだから・・
[2002/11/08号]
ありがとう!
あなたがとても優しい微笑みを
送ってくれたから
心をさわやかな風が
吹き抜けていったよ・・・
[2002/11/09号]
月明かりがお堂にさしこんでいる
美しい日本の海と山々
東山魁夷さんが描いた襖絵から
波の打ち寄せる音や
山の冷たい空気が 音楽のように静かに降りてくる
何度も何度も中国から日本に渡ろうとして船が難破し
やっと日本に着いたときには
眼が見えなくなってしまった鑑真和上さま
どんなにか
この美しい日本の風景を
見たいと願っておられた事でしょう
この襖絵にかこまれて
いま 和上さまの眼には はっきりと
美しい日本の景色が見えていらっしゃるのでしょうね・・
[2002/11/10号]
とん・とん と まりのように地面をはねて
北風にも負けず 賑やかにさえずっている
かわいい すずめたち
いつも 地味なお洋服を着て
でも ちっとも そんなこと気にせず
明るく まりのように
地面をはずんで 生きている
霜が羽をさす日もあるでしょう
食べ物が見つからず
ひもじいこともあるでしょう
それでも 淡々と
明るく 元気に生きている
かわいく 愛くるしい すずめたち
あなたの 心を
わたし
自分の心にしたいな
[2002/11/11号]
ラッシュアワーの電車
ぶつかっても押されても
表情さえ変えず
じっと耐えて
大きな大きな
うねる流れのように
駅の階段に吸い込まれてゆく
日常の日々
[2002/11/12号]
ああ 知ってる
この駅のホームは
むかし 広い野原だったんだ
小学校からの帰り
友達とうたを歌って帰った道だ
タンポポがたくさん咲いてて
わた毛をとばしながら歩いた
そうそう
紅い野ばらの茂みもあったよ
運動靴の下の やわらかい土の感じ
まだおぼえてる・・
あのあと
友達は 遠くへ引っ越していった
悲しくて
何度も 何度も手紙を書いたっけ・・
おぼえているかな
あの子も
今はもうない
あの野原の道を
[2002/11/13号]
金と銀の花ふぶきのように
肩や髪に舞いおちる枯れ葉たち
かさこそと かすかな音をたてて
不思議な雨が降るみたい・・
やがて
すべての飾りを捨てた向こうに
黒々と冬空に耐える
樹そのものの姿が見えてくる
わたしも いつか
本当の自分に逢うために
この時の向こうへ
はるかに 歩きつづける
〔2002/11/14号〕
「この景色を君に見せたかったんだ」
そう言って
山の中の秘密の場所へ
あなたは案内してくれた
あぶなっかしく 岩の上に立つと
はるかに視界が開け
深い緑の森のむこうに
空港やたくさんの人々が住む
大きな都市(まち)が 輝いて見えた
(これから私たち この景色の中へ 飛び立つの?)
どきどきして
こわいような まぶしいような
不思議な気持ちだった あの日・・
[2002/11/15号]
風が枯葉を舞い上げる
あなたの指が「ここにいるよ」と
戯れに葉っぱを散らして行ったように
絹糸のような時雨が過ぎてゆく
あなたの瞳が「さみしいね」と
黙って涙しているように
確かに あなたがそこにいると思えるのに
この世を離れて
あなたの姿はどこへいったのでしょう?
[2002/11/16号]
京都の 三十三間堂
壮麗な長い長いお堂に 千人の観音様が
圧倒されるように
たくさん たくさん並んでいらっしゃる
一人一人お顔は違っていて
誰でもそこに行けば
恋人の面影や 亡き人に似たお顔に逢えるとか
ああ・・優しい面差しの仏様
ずっとずっと私が逢いたいと願っていたあなたは
ここに いらしたのですね・・
[2002/11/17号]
あぶないことや
いけないことをしたとき
「この宝物!」
と言って
伊勢英子さん(絵本作家)のお爺様は
孫達を叱ったそうです。
なんだか楽しいエピソードですね。
時々見かける 命知らずで
スリルを楽しむように信号無視をする
自転車やオートバイ・・
「この宝物!」って声を掛けたくなります(笑)
子供たちや命は
本当に宝物ですね
[2002/11/18号]
千年もの間 この谷あいの村に生き続けてきた
大きな 大きな ケヤキの木
その長い長い 時の流れの中で
どれほど
たくさんの戦争があったか
どれほど たくさんの人々が
愛し 憎み
生きては 死んでいったか
あなたは
その枝の内に聴き
その根や幹に
深く刻み込んで来たのでしょうね
でも なんと静かな
優しい葉ずれの音でしょう
ねえ
淋しいとき
あなたのところに 来てもいい?
そして憶えていてくれると
うれしいな
いつかこの地上から姿を消してしまう
この小さな私のことも・・
[2002/11/19号]
ペルセウス流星群の夜
真夜中の空には
真綿のような雲が広がっていて
流れ星は見えなかった
けれど 床について目を閉じたら
真っ暗な宇宙から
地球にきらきらと降り注ぐ
星たちの姿が見える気がした
宇宙の果てから旅してきた
幾千もの星々の最期の輝きが・・
目を閉じて願う
大好きな人たちのことを
その命の炎がどの星よりも明るく
いつまでも 幸せに輝き続けますようにと・・・
〔2002/11/20号]
「無事終わりました!悪い物じゃなかったですよ」
と手術衣姿のお医者様の顔がのぞきました
初めて手術を受けた日
目がさめたのは
手術台の上でした
無事に終わったという安堵感より
(ずっと後で麻酔がきれるんじゃなかったの?!)
(なんでこんな所で目がさめるの?痛くなっちゃうでしょ)
とあわてていた自分が おかしかった。
その夜は確かに痛くて 痛くて
でも4〜5日もすれば
ぐんぐん快復していく驚き・・
治そうとする
わたしの中の自然の力はすごい!
と感動したのでした
[2002/11/21号]
わたしのたましいが
どうか
わたししか
咲かせられない花を
咲かせられますように・・・
草の花のように
だれにも知られない 花でいいから
かなしみも よろこびも
くるしみも たのしさも
いっぱい いっぱいつまった
いのち溢れる
たったひとつしかない
わたしの たましいの花を
[2002/11/22号]
恋人への手紙を書き続ける
ピエロ姿のオルゴール人形
日々の仕事の
余りの辛さに
うとうとと眠くなり
ペンを握る手も
ふっと 止まってしまう
(ランプも消えかかって・・)
はっと気づいては
灯をつけ直し
また 恋人への手紙を書き続ける
いつまでも
いつまでも・・
☆オルゴール館にあった、有名なピエロの人形。どんな職人さんが作ったのでしょう?
ヨーロッパに彼の恋人である愛らしいオルゴール人形があり、
やはりピエロの名前を手紙に書き続けているそうです。
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