魔法の天使クリィミーマミ 永遠のワンスモア
(1984年10月28日 / OVA)

〜優は元気だよーっ!!〜
 今でこそ確固たる市場が出来上がっているOVAですが、世に出始めた頃(1983〜1984年頃)というのは製作者側もスポンサー側も 試行錯誤の連続という時代だったようです。世界初のOVAとして知られる「ダロス」が商業的に失敗に終わってしまい、リスクを 減らすために人気の出たTVアニメの関連商品としてOVAを製作する、という方向へ傾いていったのは自然な流れなのかも しれません。
 そのような中で登場したのが「クリィミーマミ 永遠のワンスモア」でした。これは要するに「マミ」本編の総集編にわずかの 新作をくっつけたという情けない代物ではありましたが、「マミ」終了の直後に発売されたということもあって飢えたファン たちが飛びつき、予想外のヒットを飛ばすこととなります。
 これによって現在にまで至るTVアニメ〜OVAというラインが生まれることになるわけで、これを悪しき流れと見るかどうかは人 それぞれだと思いますが、ともかく「永遠のワンスモア」はOVA史に名を刻んだ作品となったわけです。

 さて、この「永遠のワンスモア」の物語は「マミ」の後日談、最終話の数ヵ月後という設定になっています。
 1周年コンサートを最後に姿を消してしまったマミ。ところが、どこからかマミが復活コンサートを開催するという話が流れて くるのです。マミの正体を知る優と俊夫は絶対にありえない話だ




と断定しますが、実際にパルテノンプロの社長である慎悟が秘密裏に動いていることが判明し、そして本当に復活コンサートが 公表されるのでした。慎悟が連れてきたマミとは、はたして誰なのか…?

 簡単に導入部を書くと、以上のようなところになるでしょうか。謎を残したまま展開していくシナリオは伊藤氏ならではの 上手さが光っていて、本編となんら遜色のない、素直に「マミ」第53話として見られる内容となっています。
 また作画面に関しても、さすがにOVAといったところで非常に力の入ったものとなっています。特に、めぐみが車を運転する カーチェイスシーンはなかなかに見ごたえあるものとなっていて、本作最大の見せ場と言ってもいいくらいの出来となっています。

 ところで、この後の展開はどうなるのか? ひとつだけネタバレをしておきますと、優や俊夫、それに大勢のファンの目の前に マミは姿を現し、実際に歌を披露することになります。それが可能になった理由については、これからご覧になる人のために 秘密ということにしておきましょう。




魔法の天使クリィミーマミ ロング・グッドバイ
(1985年6月15日 / OVA)

〜マミ伝説・最終章〜
 先述したように、「永遠のワンスモア」の商業的成功を収めました。「マミ」の人気を利用すればOVAでも商売が成り立つと 分かれば、当然のように製作会社の方針は一つの方向に定まります。そうして生まれた次なる「マミ」の新作OVA、それこそが 「魔法の天使クリィミーマミ ロング・グッドバイ」です。
 「ロング・グッドバイ」というタイトルからも分かると思いますが、本作は「マミ」の実質的なラストストーリーという位置付けの 内容となっています。作中の時代は「永遠のワンスモア」からさらに下って、マミのファイナルコンサートから3年後の話という 設定。TV版52話のスタッフロール後日談に合わせるように、みどりは「永遠〜」に登場した愛と付き合い始め、守は北海道に帰って しまっています。

 さて、そんな本作の物語はセントレミー学園の卒業式から始まります。ついに小学校の卒業を迎え、春からは中学生となる優。 まだまだ子供と思っていたのに、いつの間にか大人びた少女へと変わっていた、そんな優の姿に俊夫は目を奪われてしまいます。
 この後、話はTV版最終話のスタッフロールでも描かれていた慎悟とめぐみの婚約発表に移っていきます。ところが、いまだに慎悟は マミの幻影を追い続けており、それを知るめぐみはマネージャーの木所を相手に深酒をして気を紛らわせているのでした。めぐみの 悲しむ姿を見た木所は、今の今まで胸の奥にしまっていた気持ち、本当はめぐみに恋焦がれていたことを改めて意識し始めるのです。
 こうして、木所は会社を休み続け、めぐみを主演に据えた映画の脚本”二つの世界の物語”を書き上げるのでした。しかし、この 作品を制作するには一つの大きな問題が残っていました。脚本では女優が二人必要になるのですが、めぐみの相手役がまだ見つかって いなかったのでした。






 一方その頃、優の体に異変が起こっていました。すでに魔法は失ったはずなのに、突如として優はマミに変身してしまったのです。 運悪くその姿を慎悟に見られてしまったマミは、そのままめぐみの相手役として映画に参加させられてしまいます。
 このままマミとしての生活が始まる…と思ったその夜、なぜか今度はマミから優の姿へと戻ってしまったのです。何が何やら 分からぬまま、昼はマミ、夜は優という謎だらけの二重生活が始まるのでした…。


 簡単なあらすじは、以上のようなところになるでしょうか。
 ファイナルステージから3年、優も中学校に入学したということで、「non-no」らしき雑誌を読んでいることや早川愛と 交わされるブラジャーの会話など、全体的に優が成長したことを思わせる場面が多く登場します。中でも作品冒頭における、 卒業式〜タイトルとともに新曲”ハートのSEAZON”がインサートされるという展開は、直前の制服姿の優、そして歌詞の内容も 相まって強烈に優の成長を印象付けるものとなっており、実に上手いと感心させられます。
 また、物語後半における優とポジ&ネガとの会話にも注目しておきたいところ。フェザースターの魔法を再び 手にするか、それとも永遠に手放すかの選択を迫られた優は、きっぱりと魔法との決別を口にするのです。

 ”あたしね、自分の魔法を見つけたような気がするんだ。フェザースターの魔法は確かに素敵だよ。でもね、でも、本当に素敵なこと なら誰にも内緒にすることないと思う。(その魔法は)たぶん…俊夫がくれたんだ”

 以上は台詞からの引用です。優が語るところの”俊夫にもらった魔法”が何なのか、それは視聴者それぞれの判断に委ねられる でしょうが、ともかくTVシリーズで1年間かけて描いたテーマを本作でも再確認するかたちで提示しており、そういった面においても、 まさに「マミ」シリーズの実質的な最後を飾るにふさわしい作品に仕上がっているといってよいでしょう。

 それともう一つ、ネタバレになるので上のあらすじ紹介では伏せておいた”優がマミに変身してしまった原因”が後半になって判明 するのですが、この最後のオチを目にしたとき、それまでただのイメージデザインだと思っていたタイトルに描かれている”ほうき星”が、 実は全ての伏線になっていたのだと知って思わず腰を抜かしてしまいました。それくらい、この演出も見事なものです。


 …なのですが。
 この作品、全体を通して見てみると妙にチグハグな印象を受けてしまうのも、また事実なのです(物語の構成としては、「永遠の ワンスモア」の方がまとまっているでしょう)。その理由を考えてみると、劇中劇である”二つの世界の物語”の部分が趣味に 走りすぎてしまっていて、作品全体をブチ壊しているように見えてしまうところにあるのではないかと思われます。
 本作は他人の婚約者に横恋慕する木所と優の成長という二点を最初に提示し、それを描くことで物語を進めていたのに、途中で 和製ファンタジー+SF+メカという当時のOVAで大流行していた作風の”二つの世界の物語”が挟まれて、せっかくの日常っぽさが 無くなっているのです。
 むろん、二つの世界、というものが優とマミのメタファーになっているのでしょうが、やたら劇中劇におけるメカ描写に力を 入れすぎていて作品から浮いているように感じてしまうわけです。その点だけが、どうにも残念。




〜ちょっとした余談・その1〜
 この「ロング・グッドバイ」には、お遊びとしてメインスタッフ(または関係者)を模したキャラクターが登場しており、TV版 でも登場していたディレクターことマモちゃんの本名が星井守となっているのは某有名アニメ監督がモデルなわけです。他にも 劇中劇”二つの世界の物語”助監督の伊藤はもちろん脚本の伊藤和典氏でしょうし、序盤に登場するブランコをこいでいたマサコ ちゃんは作監の後藤真砂子氏のことでしょう。
 他にも演出の望月氏が、バス移動のシーンで伊藤助監督とやりあっていたりします(情報を提供してくださった、つっこみの虎さんに感謝です)。


〜ちょっとした余談・その2 (ネタバレ含)〜
 ちょっとネタバレになってしまいますが、「ロング・グッドバイ」のラストには優と俊夫のキスシーンが挿入されています。 すでにTV版47話「マミのファーストキス」でマミとしては体験済みではあるものの、優として、しかもそれと意識してものではこれが 初めてのキスではないかとされているシーンです。
 ところが、脚本を担当した伊藤氏は、優ならば直前に顔をそむけてキスをしないだろうと語っているのです。本作の優に関しては 演出担当の望月氏と伊藤氏の間で解釈の違いがあったらしく、上で書いたブラの話にしても、望月氏は中学生にもなれば優もブラを欲し がる年頃ではなかろうかとしているのに対し、逆に伊藤氏は優はブラを欲しがる性格ではないと解釈しているようなのです。
 それで何が言いたいのかというと、もしかすると問題のキスシーンは未遂に終わっているかもしれないということ。このシーン、 最後にフェードアウトして本当に完遂したかどうかまでは確認できないのですが、その直前に優は目をそらしているのが分かります。 望月氏が伊藤氏の意見を取り入れてどのようにでも解釈できるようにしたのだとは思いますが、これから自分の恋人とキスする というのに目をそらすというのは不自然極まりなわけで、となると、やはり未遂だったということなのでしょうか…。



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