マミ・エミ・ペルシャ 艶姿魔法の三人娘
(1986年3月28日 / OVA)

〜時代の徒花となった総集編ビデオ〜
 1983年、世界に先駆けて日本で産声をあげたOVAは、早くもその翌年にはマニア層を取り込んで独自の市場を確立していきました。 そんな中、「永遠のワンスモア」の営業的成功によってビジネスが成立することを知った スタジオぴえろ社は、ここが勝負だとばかりに自社の魔女っ子シリーズ作品を再利用した怒涛のラインナップを世に送り出します。 それによって先の「永遠のワンスモア」や「蝉時雨」のように、真っ当な続編と 呼べるような、またはオリジナル作品を補完するような佳作がファンに提供されたのでした。
 しかし、このOVAラッシュは負の面を持っていたこともまた事実です。特に問題となったのは、オリジナル作品の総集編 という安易な商品が数多く登場してしまったことでした。そんな総集編ビデオの中で最も意味不明な作品として知られているのが、 「艶姿魔法の三人娘」なるビデオです。
 「艶姿〜」は「マミ」、「ペルシャ」、「エミ」の3作品からテレビ放送されたフォルムを抜き出してパッチ―ワークを施し、 それを各主人公が集まって回顧するという形式をとっています。これだけなら何の変哲も無いビデオのように感じられること でしょう。ところが、3人の魔女っ子が自らの過去を振り返るというファンを喜ばせるために追加された新規映像こそが、皮肉な ことに最大の問題点となっていたのです。





 さて、その問題となった新規映像の内容とはいかなるものか。簡単に紹介するなら…

 三人娘が(たぶん山奥の)ひなびた温泉宿に止宿して牛ナベをつついています。ところが、よく煮えた肉を 食べると大人に変身してしまうので、露天風呂に入って早口言葉を唱えることによって元の姿に戻るのでした。おしまい。


 なに、全然説明になっていない?
 といわれましても、本当にこういう話なのですから仕方が無いではないですか。この文章を書くために再度見直してみましたが、 やはり牛ナベをつついて…(以下略)でした。ストーリーに意味を求めるのも無駄と思えるほどの見事な無意味っぷりで、ある意味 ではシュールで奇妙な味わいにまで昇華されている……と言えたら、どんなに良いことか。
 もう、これの制作には一体どういう意図があったのかと。企画担当の人物は、何を考えてこんな作品を世に送り出そうと考えた のかと。いくら金儲けのためとはいえ、こんな作品は作って欲しくなかったというのが正直な感想です。

 一応、上記の紹介文に細かい点を補足しておきますと、投宿した3人が思い出の名場面を映したビデオを見ながら恋人に電話を かけるという場面が途中で登場しています。となると…。
 ”ぴえろ魔女っ子”に詳しい方なら、よもやと思われるのではないでしょうか。そう、電話の相手役である大伴俊夫、室井力、 結城将の3人は全て水島裕氏が演じていらっしゃるので、一人三役の神業演技が堪能できるわけです(室井力だけはペルシャの恋人ではありませんけど…)。
 たしかに、この部分だけは聞くに値する内容ではありますが…それだけのためにお金と時間を浪費できますか?




魔女っ子クラブ4人組 A空間からのエイリアンX
(1987年7月28日 / OVA)

〜史上最低のOVA〜
 1980年代中頃のOVA黎明期、既に人気テレビアニメの関連ビデオというものはマニア層の需要が見込める手堅い”商品”となって いました。そのため、出せば売れると勘違いした経営陣によって珍妙極まるクズ(失礼)のような作品が誕生することとなります。
 上で紹介した「艶姿魔法の三人娘」などはその好例ですが、世の中は広いもの。それ以上に問題となったトンデモナイ作品が 存在していたのです。オリジナル作品のファンたちからは一様にそっぽを向かれ、史上最低のOVAとまでののしられることになる 作品……それこそが「魔女っ子クラブ4人組 A空間からのエイリアンX」(以下、「4人組」)です。

 この「4人組」は「艶姿〜」とは違い、完全新作のオリジナル作品(まさにOVA!)です。タイトルで「4人組」と銘打って いるだけあって過去に登場した”ぴえろ魔女っ子”シリーズの主人公4人が勢ぞろいするという豪華な内容となっており、 まさにシリーズのファンに向けた出血大サービスな作品と言っても過言ではないでしょう。
 それにもかかわらず、なぜファンから非難が続出したのか。その理由は過去のオリジナル作品を踏みにじるような、どうしようも ない物語にあります。どのように酷い代物だったのか、以下から説明していきましょう。





 まず、「4人組」の内容を一言で紹介するなら、劇中劇といったところになるでしょうか。魔女っ子の4人を主役にした 生放送のドラマ(そんなもんあるか!)を撮影することになり、あの星井守や小金井たちがテレビ局側の制作人として 一種内輪ネタのような友情出演をしています。
 …と、ここまでは問題ありません。問題なのは、そのドラマが魔女っ子対エイリアンという、ロジャー・コーマン先生が 作っているB級映画のような代物となっていることなのです。

 しかも、そのエイリアンが 若い女性だけを襲う触手状の生命体!
 物語の開始直後、エイリアンが人気の無い裏通りでOLらしき女性に”うぞぞぞ…”と襲い掛かかって衣服を引っぺがして いくシーンを見ていると、これは”ぴえろ魔女っ子”シリーズを侮辱しているのか? としか感じられなくなります。
 もしかして、企画した人間は調子に乗って同人のエロビデオと勘違いしてたのでしょうか(OVAゆえに作画レベルが高いので、 なお性質が悪い)。


 このあまりの惨い企画は、ファンのみならず”ぴえろ魔女っ子”シリーズに携わったスタッフ、さらには実際に 「4人組」を制作していたメンバーすらも拒否反応を起こしていたようです。その一例として、以下に「魔女っ子倶楽部」 というムックに載せられた”ぴえろ魔女っ子”シリーズのスタッフコメントの一部を抜粋してみましょう。

片山一良(「ペルシャ」〜「ユーミ」演出・絵コンテ)
 「魔法シリーズはあくまで女の子のためのものです。だから輝いていたのです。男の子にコビた結果どんなくだらない 物ができたかは、某ビデオを見れば分かります。」

高木弘樹(「4人組」キャラデザ・作画監督)
 「だがしかし、この「4人組」である。墓の中から掘り出されて来た、魂の無い4人が、明らかに場違いな シナリオによって道化(ぴえろ、というのは皮肉なものだが)を演じる、というわけだ。
 出せば売れる、などという(何とは言わん)考えが、このようなフィルムを作り出してしまったのか ――。 (5人娘?もし冗談でもやめていただきたいものだ。)」

 この「魔女っ子倶楽部」というムックが「4人組」の販促用に出版された物だということを考えれば、このコメントがいかに 異常なものであるか分かるというものです。特に高木氏のコメントは(作品の中心メンバーであるにもかかわらず)苛烈極まる もので、よほど腹に据えかねていたのでしょう。


 たしかにOVAというものは”商品”であることは間違いありません。結局は売れてナンボの世界であり、購買層に媚びた内容と ならざるを得ないのは仕方の無いことではあります。しかし、そこに作品への愛が存在しなかった場合どうなってしまうのか。 この「4人組」は、その格好の教材と言えるのではないでしょうか。



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