布の文化誌 News&Information。
糸をとり、染めて、織る文化の再生に向けて。
『素朴に"つくる"とは大変なことだ。!!』
・・・自分で"糸"をとり、染めて織る文化の再生に役立つ情報・・・
《●「蚕糸館」が閉館。》
"座繰り職人育成講習会"など、・・・
とても意義のあるカリキュラムを運営してきた「蚕糸館」が、
5月末日に、薬王園での活動を停止し閉館した。
・・・とても残念な事である。
しかし、完全な閉館ではなく群馬県前橋市に移転し、
「蚕糸館」は、スタッフであった東さんを中心にして、
運営は継続されるという。
今日、天然素材としてのシルクが見直され、
農業としての養蚕や、手づくりのものがやっと評価されて来た時代に、
なぜ、「蚕糸館」のような地味だが前向きの活動を行っていたところが、
このような移転騒ぎに追い込まれるのだろうか。?
この背景にはいろんな事が絡んでくるのだろうが、
まず、このような活動が評価されづらい現状がある。
また、「中国繭(生糸・真綿)」の輸入自由化にからんで、
「国内の養蚕」が廃業の方向で進みつつあると言う事もある。
事実、ある有名な紬の産地でも、
「中国繭(真綿)使用の圧力」で困惑を深めているらしいと聞く。
でも、考えてみて欲しい、要は「きもの」をどう捉えるのかである。
「きもの」が「タダの商品」であれば、
「自由競争下の原理」が適応される事が望ましい。
「ある有名な紬」についても、「中国繭」を使用しようが、どうしようが、
「社会的なコンセンサスを得る事ができる品質」を保っていてくれさえすれば、
ユーザー側としては文句は無い事ではある。
しかし、「きもの」が、我々の文化であるのならば、話は別である。
だが、現状として、"きもの"が"文化"であるのか、"商品"であるのか、
それについてのクリアーな判定は難しい。
また、販売・生産業者団体や、
それ等に携わる業者自身が主宰する文化団体などが言う、
「きものの文化を守れ。」という主張も、何やら怪しげだ。
丹念に手間ひまをかけ、生産している現場が感じている事と、
単なる商品流通の場にいるひと達が言う、「きものの文化」とでは、
天と地、リアルとバーチャル、ネガとポジと、・・・これほど落差が大きい。
率直に言おう。!!
手間ひまを惜しまずまじめにつくっている機屋さんに支払われる値段と、
中間流通層を経て、我々が購入する値段との開きには、唖然とするものがある。
その部分が見えてしまうと、"きもの"は単なる商品でしかないと判断するしかない。
しかし、これでは、伝統的な工程を守り続けている機屋さんや、
あるいは、そのような文化や技術を守ろうとして、個人で続けている作家さんや、
また、これから新たにそのような事に携わろうとする人々は、決して恵まれない。
志を抱き続けても、やがて疲弊して止めてしまうか、
報われぬまま終わる覚悟で、淡々と進むか、
その何れかである。
だから、「きもの」を我が国の服飾文化であるから守れ。!!と主張する、
流通業者が主体となってつくられた文化団体などは、
「怪しげな存在以外の何者でもない。」としか思えない。
何故なら、このような存在が主張する"和"などの文化論の裏には、
"きもの"は安定した需要のある商品で、着物離れは確かにあるが、
しかし、需要は無くならないとして悠然と構えて対応を怠った業者達が、
若年層の"和"ブームに乗っかって、煽っているだけのものだから、
触れられている内容も、"うんちく風"で、
論調も、まるで歳末大売り出しの客寄せの叫び声のようである。
もし、その主張の通りに「伝統的なきもの」を守りたいのなら簡単な事だ。
その製作作業に携わるものが、
「バカらしいというような値段で買い叩かなければいいし、・・・」
「また、買う側が、バカらしいと思うような値段をつけなければいい。」
このような事に意を留めないような時代錯誤した中間流通層の仕打ちが、
いっそうの、きもの離れを促進してきたのだし、・・・。
だから、そのように考えると、
この様な、わざとらしい主張には、「開いた口が塞がらない。」
そして、そのような団体に対して文化団体として認知を与えるような、
曖昧な国の文化施策や、国民の文化に対する認識が、
異様な姿として、嫌でも目立つ。
そして、そのような認識による価値観が、
さらに、「おかしな状態」に拍車をかける。
だから、問題だし、救われない。
永遠に原因と結果が、お互いに、片方の後ろ姿を追いかけて、
ぐるぐる同じところを廻るだけだ。
もし、「きもの」が「民族の文化であるのなら・・・」、
ちゃんと、一般家庭の中にも「織る・縫う・着る」という、
「きものの文化が存在するはずだ。」
今日の我が国では、生活文化・生活技術としての、
"素材の自給"や、"糸とり"や、"織り"や"仕立て(裁縫)"などの、
一連の手の技が一般の生活者から失われて久しい。
今日の我々一般がいう、所謂「"きもの"の文化」とは、
主に、「買って身にまとう事にまつわる部分」についてである。
コレを辛辣な立場から言うなら、
「商う側が、もっと着物を買ってくれるような"きもの文化"」を指して、
「伝統的な我が国の"きもの文化"」と言っているように想う。
このような商う側や、消費者側の立場から云う部分のみが、
<「"きもの"の文化」の全体ではない。と、いう事はいうまでもない事だが、/br>
消費者側の立場から見ても、
昔は存在した生活技術の"織られた布を買って、"裁断して縫うという事や、
また、自宅での洗い張りなども、行われなくなった今日では、
「"きもの"の文化」が我々の文化といえるのかどうかさえ疑わしくなってきている。
本稿では、「何も、買って着飾る事が悪いと言っているのではない。」
つまり、「着飾る」という事が・・・、
「裁断して縫うという事」や、自宅での洗い張り」などの、
自分が着飾る為には必要な、生活技術から分離して存在しているのが、
異様な状態だと述べているのである。
すこし昔なら、このような事が出来得るのは、
「御大尽」と呼ばれた富豪達だけであった。
現在では、ローンで人生を売り払いながら、
みんなが平等に富豪の物まねをしているのである。
だから、異様だと述べているのである。
このような、「表面的には富豪」で「実質は奴隷」という生き方について、
個人の選択の自由で、他が立ち入るべきではない事と、
言ってしまえばそれまでであるが、
このような幻想的な手法を採る事ができるのも、
「円レートの強み」があってこその事だし、
もし、明日、「1ドル=300円」になれば、
大富豪の夢は消えて、奴隷の現実だけが残る。
その可能性を我々は忘れてはいないだろうか。?
それに加えて"文化"を国家の戦略として考えて来なかった風土からか、
国策や国家の利益という言葉をタブー視した戦後のメンタリティー故か、
文化的な伝統より見た、"伝統工芸品"としての"きもの"という位置づけも、
単なる工芸製品(伝統的製法による商品)という位置でのみ扱っているに留まる。
・・・と、いうのは、
"伝統工芸品"の認定を司っている、経済産業省の定義も曖昧であるからで、
その素材から、工程全体に対してふれていない点も災いしている。
このような場合、「伝統的工芸品」の指定だけでなく、
「無形文化財」の指定をうけて、・・・
はじめて、伝統文化という位置づけが整い、全体的にカヴァーされる様になるが、
それでも、実際の問題として「それでも曖昧な点があるのは否めない。」
どういう点が曖昧かと云えば、
「その施策によって永続的にそれが維持でき得るかどうかについてである。」
また、
「素材から用具までを、・・・」
「全て日本製の素材で日本人の手で行われたものによる。」というような、
定義を定めていない点である。
しかし、このように施策や法律的な整備で定義する以前に、
我々の文化であるならば、自己に関わるリアルな問題として、
その違いについて、切実に捉えるだろうし、
その違いについての感度は即ち、我々のスピリットの問題にも影響する。
例えばこれが、"フランス ワイン"であればどうであろう。
たとえば、・・・。
「他国で生産したブドウを原料としたボルドー ワイン」というようなものが、
彼の国の国民から支持されるであろうか。?
"きもの"の素材に関する問題も、
"商品"としての"きもの"しか存在しなくなってしまった問題も、
そのような"国民のスピリットの質の問題"をも含んで、重要なところである。
そして、今日、聞くところによると、・・・
"安価"であった中国の繭や糸も、だんだんと値段が上がって来ているらしい。
国内の養蚕を実質上の廃業に追い込み、
コストパフォーマンスの視点から、中国や海外の絹素材に軸を移し、
その依存度を高めて行ったのは、"市場原理"というかたちで顕われた、
短絡的な我々の欲望そのものである。
その欲望に沿って依存度を高めたトタンに、
絹の値段が上昇するのでは、意味がない事ではないか。
正しくこれは、「魂を、銭金で売り渡す。」といって分別ある者からは、
蔑まれても仕方ない愚行ではないのか。
・・・と、するならば、
国内の養蚕の実質上の廃業に近い状態に追い込まれている衰退や、
それによって失われた、養蚕・製糸・織りなどに関わる一連の技術と技能・・・。
それ等が占めた位置の空洞は、どのようにしたら補えるのであろうか。?
"きもの"を取り巻く問題は、「安物買いの銭失い。」を地でゆくような、
馬鹿騒ぎが、その問題の正体である。
こういう事を顧みない、"消費者の要求"や"市場原理"とは、
いったいどのような本質のものなのかを考えずにはいられない。
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