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一言、怖い。かなーりダークに幕が開けて、2楽章から複数人によるお経の読経のようなものがけっこう続く。この世界、マグマ(の『MDK』スタジオ版)やユニヴェル・ゼロ(の『1313』)の世界に通じるものがある。もちろん、同じ暗黒世界でも当然毛色が違っていて、こちらはもっと日本的な世界のそれである。イメージとしては「密教」とか「恐山」みたいな感じか。音楽的にも意外と激しい起伏があって、2楽章や5楽章など盛りががる所は盛り上がってくれるし、漸く暗黒世界から開放されて夜明けを迎えるフィナーレには感動しさえする。クリスチャン・ヴァンデにこの曲を聴かせたら、どんな感想を持つだろうか?? やー、しかしまー、マグマ的でもっと強烈な楽想でお経唱えられた日にゃーあなた、怖いってもんじゃないですよ。初めて聴いたときには、なんだか呪いをかけられたような気分になってきて、マジでムネのあたりが痛みはじめたのを覚えている。何か出そうな真夜中の山中を、月の光だけを頼りに独りで歩いているような、そんな体験にも似た恐ろしさがあった。ほんとにコワかったっすよ、これは。同じ日本人なのに、かなり強烈なカルチャーショックを受けてしまった。 しかし前述2バンドに通じる部分があるからか、今ではかなりのお気に入りになっている。怖かったお経も、慣れた今では一緒に歌っているくらいだ(^_^ゞ 今にして思えば、かなりプログレ度が高いし、最初こそ怖い思いをしたけど、これはいい音楽体験になったし、出会えてよかったと思えた作品。さすがは日本の代表的交響曲と言われるだけあるなあ。一度ナマで聴いてみたい。 余白の『奈良法相宗薬師寺 聲明「薬師悔過」(やくしけか)』はずばりお経そのものです。だから正直これは聴いていて辛いものがある。修験道っていうの、こんな感じなのかな。でも坊さんの気合の入った読経に感情を揺り動かされることがたまにあったりもする。ともあれこれも最初はこわかったです。
クセナキスの第2ピアノ協奏曲「エリフソン」を目玉にした管弦楽作品全集パート4 。今回も冒頭の「エリフソン」からして、人前で聴いていたら人間性を疑われかねないくらいグロくて相当に狂ってます。しかし、「シナファイ」ですっかり免疫の出来たぼくはもう驚いたり引いたりしない。ていうか、グロくてラリってればラリってるほどうれしいくらいだ(^_^ゞ で、まず冒頭の「エリフソン」だが、最初のピアノ協奏曲である「シナファイ」のような爆裂は見られないが、幾重にも枝分かれし、際限なく伸びたり縮んだりしながら成長を続ける巨大アメーバーの如きストリングスの波動クラスターが印象的。その周辺を それにしてもクセナキスを聴いていてよく思うのは、「もし感情や理性を取っ払って、物事をありのまま見つめると何が見えるのか?」ということである。思いっきりカオスのクセナキスの世界は、自分の音楽的常識をいったん置いて、あるがまま受け入れないと面白さが見えてこない。あるがままの姿を見つめたときに、こんなにぐちゃぐちゃでこんがらがってランダムでグロテスクな世界も、一方ではまた真実なんだろうなあ、なんて思うんある。人間的で理性的な視点を捨てて世界を見つめると、おそらくこんなふうに見えるんだろうなあ、と。無性にクセナキスを聴きたくなるときがたまにあるのも、人間の最も根源的な資質、つまり本能や感性に直接作用してくる音楽だからなんだろうな。 *HMVでは詳しい解説が読めます。
年末なので、今年最後の更新は第九のピアノ版です。 ベートーヴェンの9つある交響曲は、すべてリストによってピアノに編曲されており、それらは全てシプリアン・カツァリスによって録音・リリースされている。前々からそこはなとなく興味があったので(1枚1000円だし)、とりあえず一番メジャーで時期的にもぴったりな9番から攻めてみようと思った次第です。 それにしても、交響曲をピアノだけで演るなんて、ただでさえ無茶というものなのに、合唱が入る第4楽章はいったいどのようなオトシマエをつけてくれてるんだろうかと思いつつ聴いてみたが、やっぱね、ちょっと無理あるよね。ピアノは打楽器なので、基本的に持続音が出せない。だからボーカルパートになると、さすがにちょっと物理的に苦しくなる。それでも、有名な大合唱の部分はすごい迫力で、よーこんだけできるなあと半ば呆れつつもやはり驚いてしまう。それもそのはず、交響曲をピアノ一台で再現しようしてる時点で、必然的に技巧的には相当ハードに仕上がってるんだが、カツァリスはそれでも「ぬるい!」といって、リストの編曲の上にさらに手を加えてより難しく編曲したらしい。まったく、鬼のような人ですな。まー、音が込み入った部分になると何をやってるのかちょっとわからなくなる部分があるが、それでもすげー!!と思える部分は随所にある。 ただ、すごくおもしろいとは思ったけれど、この演奏で感動できるかというと、ぼくは感動できなかった。もうちょっと歌心があるとよかったんですがね。でもま、1000円でこれだけ楽しめたので、コストパフォーマンスは抜群だ。 ちなみに、この音盤がリリースされた当時、あまりの内容に多重録音の疑いをかけられたそうだが、カツァリス先生はそんな疑惑を否定するため演奏会で弾いたらしい。こんなん生で演られた日にゃー、黙るしかないわな。
ブレンデルというとアシュケナージと並んで高名なピアニストで、本盤はそのデビュー盤なんだそうな。収録曲もいいし安いしで、音質は年代相応に悪いだろうけど、若いバリバリの頃の演奏ということもあって、資料的に興味深いので買ってみた。 「展覧会の絵」は原曲を通して聴いたことがなかったんだけど、こんなにも面白い曲だったとは思わなかった。EL&P が演ったのもよくわかる(彼らの演奏はそんな好きでもないが)。他にもラヴェルをはじめ、コルサコフとかいろんな作曲家に編曲されてるし、あらためて思い返してみると、昔から非常に人気のある曲だったんだよね。本盤で初めて聴いたので、この演奏が良いかどうか、比較のしようもないが、まーまずまずの演奏ではないかと思う。少なくとも、曲のよさが十分伝わってきたという点では良演だろう。 次、メインの「ペトルーシュカ」。細部でアラがあるものの、ポリーニを若干遅くしたようなスタイルに好感が持てる。ただやはり年代相応に音の輪郭がぼやけていたり、全体的にくぐもったりしているのが惜しい。それでもめちゃくちゃ気になるというほどでもなく十分聴けるレベルなんだけど・・。しかし、これが凡演なら文句言わないんだが、かなり秀演なのでもっとよい音で聴きたいのが人情だろう。 ラストの「イスラメイ」もよくやってます。グッドです。 55年ということで、音質がちょっと気がかりだったけど、録音年代のわりにはかなり優秀な録音である。値段も安いしこれはオススメ。
カプースチンは、ロシアの現役のジャズピアニスト兼作曲家。ジャズを基調としたピアノ曲を多数書いてるんだが、それがえらいオシャレでカッコよく、さらには恐るべき技巧が要求されるということで、最近人気・知名度ともに上がってきた。一方アムランは、現代最高のテクニックを持つピアニストとして誰もが認める人である。よってミーハーな僕としては、アムランがカプースチンを弾くという時点で、これはもう買うしかないのである。とは言うものの、実はアムランもカプースチンもこれが聴くの初めてだったりする。 さてさてどんなもんじゃろうと思って聴いてみると、たしかに音楽的にはかなりオシャレでスリリングで相当かっこいい。しかし、アムランの演奏はなんだか薄味で素っ気無いという印象がする。どうもジャズというよりもクラシック的に弾きすぎていて、ジャズ的な歌わせ方というものが希薄であるからそう感じてしまうのかもしれない。確かに演奏精度は「完璧」なんだが、それが必ずしも音楽的魅力に結びついてない印象がある。正確無比でメカニカルなピアニズムを求める向きには好盤かもしれないが、カプースチンのピアノ曲本来の姿というのはもっと別のところにあるのではないかという気がする。うーん、ほんとうまく言えないけど、この演奏には何かが決定的に欠けているんじゃないかなと思う。でもまー、そんなこと思ってるのは僕だけみたいですけどね。世間的には大絶賛の嵐です。はい。 それにしてもアムランは実にさらっと弾いてくれるなあ。たとえば、「異なる音程による5つの練習曲」の1番のように、狂ったリズムで跳躍しまくるキチガイのような技巧曲においてさえ難なく弾きこなしている(ように聴こえる)。こういう演奏を実際に映像で見てみると、視覚的インパクトはものすごいんでしょうけどね、ただ聴いてる分にはあまり技巧的難度を感じさせない。 まー、テクがあっても必ずしも良い演奏とは言い切れないなというのが本盤を聴いての率直な感想(そういう意味で、アムランに魅力を感じない人も少なからずいるらしい)。しかしま、音楽自体はかっこいいと思う。なんだかんだ言ってけっこう好きだったりする。 ところで、1曲目の変奏曲のみこちらで聴ける。6分あたりから高速運指が見られます。聴いて損なし。 |
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