9:15  エェェェェェックス・・・! 「深く静かに潜入せよ!〜水陸両用MS アッガイ開発史」 (あのナレーション) 地球に降下する、無数のHLV。 ジオンの地球降下作戦。 瞬く間にジオンは東欧の鉱物資源地域を掌握し、地上にその勢力を広げていった。 しかし、ジオンが制圧しなければならなかったのは、鉱物資源地域以外にあった。 海。地球の70パーセントを占める広大な地域。 「水陸両用MS・・・MSMナンバーの開発」 開戦時から、その威力を見せつけたザクは、重力下での行動は著しく制限される事が既に地球降下作戦時に分かっていた。 制海権の確保。資源の乏しいジオンにとって、制海権の確保は、兵站、補給、輸送、そして作戦進行の為の重要な課題だった。 ジオンは、ザクを水中用に改修。MSM-01。水中用ザクのロールアウト。首脳陣の期待は、嫌が上にも高まった。 しかし、その期待は裏切られた。元々宇宙仕様のザクは、気密性には優れていたが、水中での運用などは問題外だった。形状に、無理が有り過ぎた。 ザクに代わる、制海権を確保する為のMSが必要だった。 新しいMSの開発に、手を挙げた企業があった。 ツィマッド社。 傑作機、ザクに代わる汎用MSドムを作り上げた企業である。 熱核水流エンジンのノウハウを持っていたが、MS開発に関しては、まだ新参の企業だった。 しかし、ツィマッド社は、自社の技術力を結集し、MSM-03、ゴッグを作り上げた。 水中での活動能力に優れ、ジオン、連邦で初めてビーム兵器を標準装備したMSだった。 だが、ゴッグには致命的な欠点があった。 耐圧の為の重装甲。 ゴッグは、当時のMSとしては、限界に近い重さだった。地上での機動力を著しく低下させ、水中からの奇襲という作戦行動を遂行させるには、いささか無理が生じる機体だった。 「戦いは数だよ、兄貴!」 ソロモン要塞司令官ドズル・ザビが、ギレン・ザビに宛てた言葉である。制海権の確保は、性能以上にMSの数が重要な焦点だった。 「低コストの水陸両用MSの開発」 ジオンが抱えたこの課題に立ち向かった、もう一つの企業があった。 ジオニック社。 かの傑作機、ザクを開発したMS企業の老舗中の老舗だった。 しかし、ジオニックは、水中用ザクで一度水中用MSの開発に失敗し、そのあとを受けたツィマッド社に文字通り大きく水を開けられていた。今回の低コスト水陸両用MSの開発は、ジオニックの真価が問われる事となった。 「七つの海を制覇せよ」 この合い言葉と共に、ジオニックの技術陣は立ち上がった。しかし、それには解決しなければならない問題が山積みだった。 これはジオニック技術陣の戦いの記録である。 (あの音楽) 「より深く、より強く〜深海の水圧に耐えろ!耐圧装甲の開発」 「苦慮の末の選択〜傑作機からの転用」 「思いがけぬ朗報〜出力アップとコストダウンのからくり」 「佳作機としての出発〜高いステルス性のもたらした効果」 「深く静かに潜入せよ〜ジャブロー侵攻作戦」 ツィマッド社のMSM-03、ゴッグ。 初の実戦型水陸両用MSとして活躍したMSだった。しかしゴッグ、いや、水陸両用MSには、開発初期の段階から指摘されている問題が存在していた。 水圧に耐える為の機体の大型化。 資源に乏しいジオンの現状では機体の大型化は避けねばならなかった。 そこでジオンは、機体の小型化、低コストの実現を条件に提示し、ジオニック社に開発を依頼した。不可能とも思える条件だった。 しかし、ジオニック社はこの条件を受けた。 水中用ザクの開発失敗。ドムの成功以来、陸上用MS開発、そして宇宙用MS開発でヒタヒタと忍び寄るツィマッドの足音は、ジオニック社を焦らせるには十分だった。 「このまま水中用MSの開発に手を拱いていては、我等と彼等のシェアは逆転する」 不可能を可能にしなければ、我々の勝利は無い。MS企業として…ジオンとして…。 ジオニック技術陣は立ち上がった。 水中用MSの開発責任者のSさん。Sさんは、ザクの耐核装甲を担当していた技術者だった。南極条約批准以降は、核装備の撤廃と共に、閑職に回されていた。 しかし、今回のプロジェクトで責任者に抜擢された。MSの装甲のスペシャリストである彼に、白羽の矢が立ったのだ。 先ず、ジオニック技術陣は、水中用ザクでの問題点を拾い出す事から作業を始めた。 1つ目の問題点は…MSの形状と装甲だった。水中用ザクは、無理矢理水中用への転用を図った機体の為、水圧に耐える為の理想的な形状の機体ではなかった。 連日、MSの試作がくり返された。だが、海の無い国であるジオンの技術者にとって、深海の水圧は想像を絶するものだった。何台もの試作MSが耐圧実験中に圧壊し、水中へと消えていった。 宇宙とは違う。開発は、いきなり暗礁に乗り上げてしまったかに見えた。 ある日、Sさんの許に吉報が入った。キャリフォルニアベースの占領による潜水艦技術、及び耐圧装甲技術の取得。今まで抱えていた問題が、一気に解決された。 新型MSはコスト削減の為、ザクの生産ラインを転用する事になった。当然、パーツは共用の物が多く、ジェネレーターもザクの物を使う予定だった。しかしテストの結果、水陸両用MSとしては、ザクのシェネレーターは、余りにも出力不足だった。 水陸両用MSの抱えた矛盾。 高出力のジェネレーターは、コストの増加に繋がった。しかし、コストを下げれば、出力が下がり、機動性を維持する為装甲の弱体化に繋がった。 出力と重量の生み出す矛盾。ジオニック技術陣は、この矛盾を解消する為、ある一つの賭けに出た。 それはある技術者の一言からヒントを得たものだった。 Sさんの下で働いていたエンジン開発部門のNさん。当時、ジオニック社に入ったばかりの新人だった。 ジェネレーターの出力不足に頭を抱えていた技術陣の中で、彼は何気なく言った。 「1個で駄目なら、2個積んでみたら、どうだろう」 余りにも突拍子も無いNさんの発言に、ベテラン達は笑い声を上げた。だが、その発言を真面目な顔で聞いていた人間が居た。Sさんだった。 彼は、同じザクのジェネレーターを2基搭載することでこの矛盾を解決する事に断を下した。一つの賭けだった。 試作機に、それぞれのジェネレーターの搭載スペースを確保する為、多少ザクのジェネレーターの規模を縮小し搭載した。 そして、最初の起動実験。祈るような気持ちだった。 実験の結果、新型機の出力はゴッグにやや勝り、ザクの2倍弱程度となった。機体のサイズはゴッグよりやや小さく、生産性・運用コストはゴッグとは比較にならないほど低く抑えられた。 ザクのジェネレーターを2基搭載する、というアイデアはこうした経緯から生まれた苦肉の策であった。しかし、彼等は賭けに勝利した。 試作機は、実用試験をくり返す内に、様々な特徴が分かって来た。大出力が必要なのは主に陸上活動時であり、水中では1基のジェネレーターでの活動、いわゆる「片肺」での航行が試作機では可能だった。 片肺航行時に機体から排出される熱量は水陸両用MSとしては考えられないほど小さかった。余りにも熱排出量の少ないこの機体は、センサー上は鯨と見分けがつかなかった。苦肉の策が、思い掛けない効果を生み出した。 ジオニックの技術陣は歓声を挙げた。 (久保)今日はアッガイのエンジン開発をしていたNさんにスタジオへおこしいただいております。 (国井)ジェネレーターを2基搭載するというアイデアは、何時思い付かれたんですか? (N) いえ、ザクの生産ラインを活用する時点で、ザクのジェネレーターを使うというのはほぼ決定事項の様なものだったんです。ですから、2基積んでみたらどうかと…駄目元で言ってみたんですが、これが効を奏した結果になりました。私の案を汲み上げて下さったS主任には感謝してます。 (国井)成る程。まさに「苦肉の策」だった訳ですね。 (久保)Sさんは、どんな方だったのですか? (N) 面倒見の良い、優しい方でした。開発が行き詰まりかけても、決して険しい顔は見せずに、じっくりと懸案に取り組んでおられました。みんな苦しい時でも主任の温和な所に、救われていましたね。 (久保)それではここで、開発主任のSさんに登場していただきます。 S登場。Nと久々の再開で握手を交わす。 (久保)水圧との戦いも、とても苦心されたと伺ってますが、どうでしたか? (S) そうですね…ジオンは海がありませんでしたし、試験は水産資源用のコロニーが主でしたから、とても苦労しました。地上攻撃軍がキャリフォルニアを奪ってくれなかったら、大幅に作業は遅れていたでしょうね。 (国井)運やタイミングが味方してくれたと言う点があったと言う訳ですね? (S) はい。大いにそれはありましたね。 (久保)試作機は完成し、その後も様々な試験をくり返されていきます。ジオン軍首脳部は、それにどのような評価を与えたのか?又それによって開発がどう進んで行ったのか。 …それでは続きをご覧下さい。 ジオニック社からの実験結果の報告を受けた軍首脳部は、試作機にステルス性の面で高い効果を期待するようになった。ミノフスキ−粒子散布下の有視界戦闘に於いては、この試作機の特性がフルに活かされると予想出来たからだった。 全体の装甲に電波吸着剤などが塗布され、防御力よりも機動性、機体形状が重視された。試作機はその後、隠密作戦用MSに特化したMSとして完成した。 ジオニック社謹製。MSM-04、アッガイは正式なコードナンバーを与えられ、ここにロールアウトした。 アッガイは、制海権確保の為、マッドアングラー級、ユーコン級の潜水艦を母艦とし、しばしば沿岸の連邦軍基地を強襲、また海上の輸送路を寸断した。ジオン水陸両用MS攻撃軍の中核を担い、立派にその役目を果たした。 (久保)アッガイはその高いステルス性を活かし、多くの戦果を挙げました。それでは、エンディングです。 0079年11月30日。 シャア・アズナブル大佐率いるアッガイ部隊はそれまで発見できなかったジャブローへの入り口から侵入、MS生産工場への破壊工作を行った。 外部警戒用のトーチカに探知されること無く、トーチカを破壊。連邦軍本部に易々と侵入した点に於いて、アッガイのステルス性が証明された作戦と言えた。しかし、結果として作戦は……失敗。 シャア・アズナブル大佐以外のパイロットは全員戦死した。 作戦に参加したジオン兵は大佐を除く全てが特殊工作員であり、コードネーム以外の一切が不明。「赤鼻」というコードネームの兵士がよく知られているが、彼もジャブロー内の戦闘で戦死した。 その後、Nさんは、終戦後アナハイムエレクトロニクスで数々のMSの開発を手掛けた。 「出撃前、シャア大佐にお会いした折なんです。あの大佐にアッガイを『良い機体だ』って誉めて頂けたんです。それが嬉しくてねぇ…」 Sさんは、終戦後地球に降りた。 「あれ以来、海の魅力に取り付かれてしまったんですよ」 Sさんは、今日も思いを馳せている。自らが手掛けたMSが駆けた大きな海を眺めていた。 テールラ〜イト♪ヘッドラ〜イト♪ た〜びは〜、おわら〜ない〜♪ プロジェクトX〜技術士官達〜 -深く静かに潜入せよ!〜水陸両用MS アッガイ開発史- 終