(エーーックス……) 連邦宇宙軍正式採用戦艦マゼラン 二連装メガ粒子砲7門という大火力を持った当時最強の戦艦、だった。 「この艦に勝てるものは存在しない」 従来の艦艇の倍近い火力を持った戦艦を前に誰もがそう思っていた。 だが、最初の戦闘で期待は絶望に変わった。 ジオン独立戦争、後に一年戦争と呼ばれる戦いである。 MS、鋼の巨人達の前に既存の艦艇は為す術を持たなかった。 宇宙で、地上で、連邦軍は敗走を続けた。 戦局の転換にはMSの力が必要だった。 戦艦は、もはやMSの運搬船と化していた だが諦めていない、いや、諦めきれない男達がいた。 (オープニングテーマ:「地上の星」 詩/曲 中島みゆき) 風の中の昴 砂の中の銀河  [ルウムでの大敗] みんなどこへ行った 見守られることもなく  [MSの台頭] 草原のヴィーナス 街角のペガサス  [大艦巨砲主義の黄昏][過去の栄光] みんなどこへ行った 振り向かれることもなく  [予算削減] 地上にある星を誰も覚えていない 人は空ばかり見てる  [再設計][技術者の意地] 燕よ 高い空から  [最高の舞台] 教えてよ 地上の星を  [強襲揚陸艦との比較][必要能力の差] 燕よ 地上の星は  [最新技術の導入] 今どこにいるのだろう  [消えた記録][次世代への移行] プロジェクトX 〜技術士官たち〜   ―― 「あの夢をもう一度」〜最後の戦艦〜 ―― 連邦軍第4開発局主任N、マゼラン開発の総責任者。 完全に技術畑の人間であり、自分の作ったものには絶対の自信を持っていた。 しかし、ルウムでの大敗がNのプライドを打ち砕いていた。 その後の状況も悲惨だった。 若いスタッフは全員MS開発部へと転属していった。 N達に回ってきた仕事は、マゼラン級及びサラミス級の搭載能力強化改造の企画書製作のみだった。 いくつもの企画書を提出したが全てこの一言の元に切り捨てられた。 「MSの開発を最優先とするため判断保留」 さらにN達に追い討ちをかける事態が発生した。 MS運用母艦となると噂されるペガサス級強襲揚陸艦の開発が第5局に決定したというのだ。 それから数ヵ月後連邦軍にもMSが誕生した。 戦艦に搭載されていた物よりもはるかに小型化されたメガ粒子砲を持っていた。 しかも出力はあまり変わらなかった。 見るもの全てがが驚愕した。 だが、Nたちの焦燥感は増すばかりだった。 このままでは第4局自体が解体されるかもしれない。 事実、第4局に残っているのはマゼランを開発したときのスタッフだけだった。 全員が若いとはいえなかった。予算も大幅に削減された。 だが、腕は鈍ってはいなかった。いや、むしろ時間があった分だけ新技術を理解することが出来た。 Nは言った。 「まだ可能性はある。それまでに、出来ることをやり尽くしておこうじゃないか」 だが、N自身この言葉を信じきれなかった。 久保「今回はバーミンガム級主力戦艦の設画担当だったOさんにお越しいただいてます。    この当時の境遇はどんなものでしたか?」 O 「酷いものでしたね。窓際族、いやリストラ寸前といったほうが良いかも知れません    いつ全員に整備班に転向の届が来てもおかしくない状況でした」 松平「それでも皆さんは研鑚を続けられたと聞きますがその熱意はどこから出ていたのですか?」 O 「今やめたら終わる、というのが全員の心境でした。    このままで終わらさられるのだけは避けたかったですから    まあ、それだけではなく次々と新技術が出てきていた時期ですから    技術者として見ているだけというのは耐えられなかったんですよ」 松平「成る程。この技術を使ったものを作りたい、と」 O 「ええ、MSに対抗できるだけの物を作れるんじゃないかと思いましたね」 久保「その後第4局はどう言った経緯を辿りバーミンガム級の開発に携わることになったのでしょうか?続きをご覧下さい」 戦争は終わった。 終戦から一年が過ぎていた。 彼らに回ってきた仕事は、マゼラン級戦艦の改装のみだった。 新技術の導入など出来なかった。 予算最低の上に時間最優先。機動力を少し上げるのが精一杯だった。 これではだめだ。皆がそう思っていた。 そんな時、一つの報告が入った。 「1週間後グリーン・ワイアット中将による視察を実施する」 誰もが思った。 解散命令だ。 もはや、第4局に存在意義は残されてはいなかった。 大艦巨砲主義はMSの機動運用により粉砕され、第4局はMSの開発に一切かかわってはいなかった。 しかし、現実は彼らの予想を大きく越えていた。 グリーン・ワイアットはいくつかの計画書を持ってきた。 「観艦式」 「時期主力戦艦構想」 「ガンダム開発計画」 全てがAAAの機密だった。 息を呑むNたちを見渡し、 ワイアットは叫んだ。 諸君 私は艦艇が好きだ  諸君 私は艦艇が好きだ  諸君 私は艦艇が大好きだ  殲滅戦が好きだ 電撃戦が好きだ 打撃戦が好きだ 防衛戦が好きだ  包囲戦が好きだ 突破戦が好きだ 退却戦が好きだ 掃討戦が好きだ 撤退戦が好きだ  平原でコロニーで宇宙でジャングルで凍土で砂漠で海上で空中で海中で湿原で  宇宙世紀で行われたありとあらゆる艦隊戦が大好きだ  砲口を並べたメガ粒子砲の一斉攻撃が轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ  自軍深くに迷い込んだジッコが効力射でばらばらになった時など心がおどる  連邦兵の操るペガサスのミサイルが敵のグフを撃破するのが好きだ  悲鳴を上げて燃えさかるギャロップから飛び出してきたドムをビックトレーで引き倒した時など胸がすくような気持ちだった  砲塔をそろえたサラミスの艦隊がムサイの戦列を蹂躙するのが好きだ  恐慌状態の新兵が既に機能停止したチベを何度も何度も射撃している様など 感動すら覚える  敗北主義のザクを小惑星帯に吊るし上げていく様などはもうたまらない  泣き叫ぶゲルググ達が 私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げるレーザー砲にばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ  哀れな抵抗者達が旧式化したザク氓ナ健気にも立ち上がってきたのをマゼランのメガ粒子砲が戦域ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える  ジオンのMS部隊に滅茶苦茶にされるのが好きだ  必死に守るはずだったコロニーが蹂躙されG3を注入され落とされていく様は とてもとても悲しいものだ  ジオンのMSに翻弄されて殲滅されるのが好きだ  ルウムで大敗を喫し、MSに予算を取られたのは屈辱の極みだ  諸君 私は艦艇を 地獄の悪魔の様な艦艇を望んでいる  諸君 私に付き従う連邦技術仕官諸君 君達は一体何を望んでいる?  更なる艦艇を望むか? 情け容赦のない鬼の様な艦艇を望むか?  鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な艦艇を望むか? 艦艇!!艦艇!!艦艇!!  よろしい ならば艦艇だ  我々は満身の力をこめて今まさに振り下ろさんとする握り拳だ  だが、この暗い闇の底で2年もの間堪え続けて来た我々にただの艦艇ではもはや足りない!!  新型を!! 一心不乱に作られた戦艦を!!  我らはわずかに一開発部、MSに負けた敗残兵に過ぎない  だが諸君は一騎当千のベテランスタッフだと私は確信している  ならば我らは諸君と私で総人員100万と1人の技術者となる  我々を忘却の彼方へと追いやり、胡座をかいている連中を叩き起こそう  髪の毛をつかんで引きずり下ろし、眼を開けさせ思い出させよう  連中に恐怖の味を思い出させてやる  連中に我々のエンジンの音を思い出させてやる  天と地とのはざまには奴らの哲学では思いもよらぬ事がある事を思い出させてやる  最新式の戦艦で世界を燃やし尽くしてやる  全プロジェクト発動開始 旗艦バーミンガム作製計画  始動!!全資金 全制約解除  「本プロジェクトクト総責任者より 前艦艇開発スタッフへ」  目標最新式戦艦バーミンガム!!  第弐次ビンソン計画 状況を開始せよ  やるぞ 諸君 その日から第4局の明かりが消えることはなかった。 条件は唯一つ、観艦式に間に合うように最強の戦艦を作成すること。 期限は二年。十分とはいえないが、出来ない時間ではなかった。 さらに、Nにはもとから目をつけていた設計図があった。 「MA−05 ビグロ」 大火力と高機動力を持って連邦軍を苦しめたジオン宇宙用MA。 基本は決まった。大火力に高機動性。 だが、それでも問題が続発するのは避けられなかった。 メガ粒子砲設計担当であったPは悩んでいた。 エネルギーCAP技術を戦艦搭載のメガ粒子砲に利用する。 小型化を目指した技術を大型化する。 それ自体は支障なく済んだ。 テスト射撃では従来のメガ粒子砲の10倍以上の出力を叩き出した。 しかし、出力が足りなかった。 搭載予定のジェネレーターでは二門程度の運用が精一杯だった。 いかに強力とはいえこれでは数が足りない。 Pは苦悩していた。 同じころ、メインフレーム設計担当のQも悩んでいた。 防御能力強化のため各ブロックの独立化を進めることは決まっていたがジェネレーターからの配線がそれを不可能にするまでに複雑化していた。 更には、装甲材質担当のRも壁に直面していた。 予定の防御力に達しない。 Iフィールド搭載が可能ならば装甲は対実弾兵装のみでよかったのだが、長時間戦闘空域にとどまることが要求される戦闘旗艦にエネルギーをバカ食いするIフィールド搭載は不可能だった。 ルナチタニウム合金製の装甲案も浮上したがあまりの量に生産性の低さかがついてこなかった。 結果、チタンセラミック複合材の装甲にビームコートを施したものを何重にも重ね、さらにチョバムアーマーを装着させることで防御力の強化を図った。 しかし、重すぎた。 最後に必要なのは強襲揚陸艦との差別化だった。 ホワイトベースが驚異的な戦果を上げたことで強襲揚陸艦自体の評価も高まっていた。 同じ設計思想では実績に負ける。 そう判断したNは思い切った決断を下した。 「搭載能力は必要ない」 艦隊旗艦として運用することが決まっているバーミンガムには必ずMS搭載可能な戦闘艦が随伴する。必要なのはむしろ高速で状況が変化するMS戦へ適応した情報処理能力を持った大型コンピューターとそれを守りきれるだけの装甲である。 そう判断したNは搭載能力の削減を実行した。 MS搭載スペースが空いたことにより全ての問題は解決した。 メガ粒子砲一門に付き一つの直結ジェネレータが配備された。 メガ粒子砲が中央ジェネレーターから切り離されたことによりブロックの独立化も可能になった。 余ったスペースに推進剤を搭載し、バーニアを追加することにより機動性の低下も補えた。 最強の戦闘艦の完成だった。 久保「このMS搭載能力の廃止について当時はどのようにお考えでしたか?」 O 「びっくりしましたね。僕達は全員戦闘母艦にするものだと思っていましたから。    反論する人も多かったですね」 松平「いきなりの情報戦艦への変更は戸惑いも在ったのでは?」 O 「ええ、『時代に逆行している』というグループと    『これからはこういう船が必要だ』というグループの2つに分かれて    いましたね。」 松平「結局はMS搭載能力の廃止は決定したわけですが決め手になったのはなんだったんですか?」 O 「結局はNさんの存在と、それぞれの分野での技術的問題ですね。    あの時は後少し自由に出来る部分があれば・・・、    というようなことが多かったんです」 久保「その後完成したバーミンガムと第4局はどういう運命をたどったのでしょうか    それでは、エンディングです」 Nには自信があった。 これならば「ガンダム開発計画」のMSにも負けることはない。 主兵装は通常の10倍以上の出力を持つメガ粒子砲11門 平均装甲圧90cm 対空レーザー機銃30門 最大加速7G もはや大型のMAと言っても過言ではなかった。 シミュレーションでは大気圏降下コースに入ったコロニーを迎撃することに成功した。 製作にはコンペイトウのグワジン級ドックが使われた。 大型過ぎて連邦の設備では作れなかった。 進宙式の日Nは泣いた。 もはや用無しになりかかっていた自分達がここまでの物を作れたという事実。 いつか役に立つ日が来る。 絶望の中、自分にそう言い聞かせて培ってきた技術の集大成だった。 だが、 観艦式、その晴れ舞台がバーミンガムの墓場となった。 アナベル・ガトーにより奪われた試作2号機の強襲。 戦略級核弾頭Mk82の前には自慢の装甲も物の役には立たなかった。 その後、コロニーが落ちた。 バーミンガムがあれば阻止できたかもしれなかった。 もはや、Nには気力は残されていなかった。 だが、運命はNに留まることをゆるさなかった。 命令が届いた。 「第4局はグリプスに移転、人員変更はなし」 Nはティターンズに参加した。 バーミンガムを沈められたことがNの心に暗い影を落としていた。 3年後 ティターンズ旗艦ドゴスギアが進宙。 黒い軍服に身を包んだNの姿がそこにはあった。 ―― 「あの夢をもう一度」〜最後の戦艦〜 ――  〜〜 終 〜〜