(えーっくす) 宇宙戦闘機。 一年戦争以前、戦争の主役になることを期待され、様々な機体が開発された。 ガトル。 圧倒的に艦船の数で劣るジオン軍が、逆転の願いを込めて開発した、汎用攻撃機。 これは、揺れ動く上層部の思惑に翻弄されながら、最高の機体を作ろうとした男たちの、 苦闘のドラマである。 ♪〜 公国軍創立 連邦軍:数の脅威 十倍の敵に勝てる戦闘機 派閥抗争 揺れる開発目的 越えられぬ壁:搭載容量 艦船攻撃機への転換 衝撃のトライアル ルウム戦役 時代は すでに変っていた プロジェクトX〜技術士官達〜 特別編 第一部 飛べない翼 ガトル開発物語 ミノフスキー粒子。その存在が実証されたことで、当時の軍事常識は一変した。 もはや、遠距離での艦隊戦は不可能。高速で敵に接近する兵器が、必要だった。 連邦軍宇宙戦闘機トリアーエズ。武装は貧弱ながら、コストの低さと生産性の高さが、 「質より量」という連邦軍の基本方針に合致していた。 ジオン軍にとって、数こそが連邦軍の最大の脅威だった。十倍の数の敵を圧倒する兵器が、求められた。 ジオン公国軍兵器廠のM少尉、白羽の矢が立った。 武装の大幅な強化が予想される、トリアーエズの後継機を、絶対的少数で撃破しうる戦闘機の開発。 ドズル中将直々の命令が下った。プロジェクトは、始まった。 高速で敵に接近し、一撃離脱。Mの基本方針は、定まっていた。 レーダー無き戦場で、それ以外の戦い方はありえない。Mには、自信があった。 左右に並ぶ多数の無人銃座。高速で移動すれば照準のつけようがない。めくら撃ちは当然だった。 新型高速度戦闘機「ガトル」の開発は、当初順調すぎるくらいに順調だった。 横槍が入ったのは、キシリア少将の派閥からだった。 真の脅威は、敵戦闘機ではなく、敵艦船ではないのか? ミノフスキー粒子に対する連邦の対応が、損害を恐れぬ近距離艦隊戦への移行にあるとの 諜報結果も、もたらされた。 艦船同士の潰し合いになれば、数で劣るジオンは、圧倒的に不利だった。 結局、開発目的は対艦攻撃機に変更された。次期主力兵器を自派の影響下に置こうとする、 キシリア派の策略だった。 メガ粒子砲の小型化は、技術的に現実性が乏しかった。ガトルの兵装は、ミサイルに変更された。 5連装ミサイルの左右同時発射によって、めくら撃ちでも、それなりの効果は期待できそうだった。 気を取り直したMのもと、対艦攻撃機「ガトル」の開発は進んだ。 艦船以外を無視するのは、いかがなものか。 ドズル派からの意趣返しが、始まった。 バルカン砲の装備が、命令された。 Mは、無駄の嫌いな男だった。意味のある装備の仕方を、必死で考えた。 艦船並に貴重なパイロットを守る、脱出装置付きコックピット。そのアイディアに、誰もが驚いた。 そのコックピットの、単独航行時の自衛用に、バルカン砲を装備した。 Mは、自分の知恵に、満足した。 敵戦艦を一撃で葬るには、ミサイルの威力が不足しているのではないか? キシリア派の政治的影響力を少しでも弱めようとするドズル派からの感情的仕返しは、なおも続いていた。 対艦攻撃用大型ミサイルの装備が、命令された。 M、困り果てた。 大型ミサイルを多数装備して速度を落とすのは、自殺行為だった。 ぎりぎりの計算と設計変更を繰り返して、大型ミサイル2発の装備が、可能になった。 3年間の紆余曲折を経て、宇宙戦闘爆撃機「ガトル」の開発は、ようやく軌道に乗った。 「ガトル」の完成をスタッフに任せ、後継機「ジッコ」の構想に取り掛かっていたMを、衝撃が襲った。 新型兵器、モビルスーツの制式採用決定。 知恵と努力のすべてが無駄になったという思いが、Mの中で荒れ狂った。 開戦。宣伝臭の強い、モビルスーツによる華々しい戦果を、Mは信用しなかった。 ガトルはMが期待していたほどの戦果をあげていなかった。なぜだ。Mは八方手を尽くして、情報を手に入れた。 ルウム戦役の映像をようやく手に入れたMは、我が目を疑った。 ミサイルで敵を撃破しながら高速で進むガトル。そこまではMの構想通りだった。 敵艦船を目前にして、ガトルは速度を落とし、敵銃座の餌食になった。 たった2発の大型ミサイルを当てようとすれば、敵のすぐそばで、速度を落として狙うしかない。 パイロットの立場になれば、当然のことだった。 Mは、おのれの愚かさを、呪った。 ♪〜 ガトル。大型ミサイルを外して運用されたが、すでに宇宙戦闘機の時代は終わっていた。 後継機のジッコ。Mが最初にガトルで構想した通り、一撃離脱だけを狙う、突撃艇として活躍した。 M。グラナダ基地で新兵器の開発中、消息を絶った。公式発表では、事故死。 脱出装置付きコックピットのアイディアは、ジオンの様々な兵器に採用され、 多くの将兵の命を救った。 ジオン公国軍内部での派閥争いは、一年戦争の終戦後も続き、様々な無念の思いを生み続けた。 〜♪ プロジェクトX〜技術士官達〜 特別編 第一部 飛べない翼 ガトル開発物語    終 (クニイ) 上層部の思惑に翻弄され続けた技術者の無念の思いは、 意外な形で報われます。引き続き、第二部をご覧下さい。