(えーっくす) 茨の園。修理設備しか持たない暗礁空域内の基地が、デラーズフリートの本拠地になった。 アナハイム・エレクトロニクス。連邦の軍備拡張で、潤っていた。連邦の軍拡を継続させるため、 ジオンの有力な残党を、必要としていた。 ジオング開発者の一人、K。アナハイムに就職していたが、社からの特命を受けた。 これは、身勝手な上層部に対し、技術者としての信念を貫いた男たちの、 反逆の、ドラマである。 ♪〜 特秘命令 助手は社外から探せ 私は、人殺しです 再会 正気ですか! 膝を屈して生き続ける方が、つらい 小規模支援要請 形だけのことだ そうです プロジェクトX〜技術士官達〜 特別編 第二部 破れた羽 ドラッツェ開発物語 0082。 ジオング開発者の一人としてより、「赤い彗星に暴言を吐いた男」として有名になったK。 アナハイムでの上司から、呼び出しを受けた。 ジオンの残党への、形ばかりの支援として、技術者を派遣することになった。 上司の言葉に、耳を疑った。 我が社の関与は、なるべく薄くしたい。助手は社外から探せ。特別経費は、君の口座に振り込んでおく。 上司は、憮然とするKの反応を無視し、言いたいことを言うと去った。 ジオンの残党。その言葉だけが、Kに命令を引き受けさせた。 フォン・ブラウン市。グラナダにいた技術者やパイロットの多くが、連邦の追及を逃れてジャンク屋をやっていた。 Kは秘密を守るために、その中で一番人付き合いの悪い男を探し当てた。 俺はパイロットあがりで技術屋じゃない。男は首を振って言った。だが、本物の技術屋なら知っている。 紹介してもいいが、俺より偏屈だぜ。 望むところだった。 Kは、会見の場に、アナクロだが人気のあるクラブを選んだ。 誰も知らないような古い歌を、歌手が歌う。そんな店は地球にもなかった。 やってきたのは、苦悩の影を引きずり続けたような影を持つ、陰気な男だった。Mと名乗った。 だが、Kはその影に、信頼を感じた。 ジオンの残党を支援する。Mはその話に、首を振った。 私は、人殺しです。命じられるままに欠陥機を作り、多くの仲間を殺したんです。だから 黙り込むMの耳に、歌が聞こえてきた。両手の羽はすでに破れて。 M自身、思いもよらぬ言葉が、口をついて出た。 だから、つぐないたい。少しでも、つぐないたい。 Kは、黙って右手を差し出した。 Mは、自分を紹介したジャンク屋も連れて行ってくれとKに頼んだ。 いい仲の女がいるようだし、なにより片腕では・・・ Kは、断わった。 KとMは、久しぶりのムサイに乗り、茨の園に着いた。 修理工場はあったが、生産設備がなかった。 Kは、アナハイムから支給されたという兵器を見て、激怒した。Mは、うつむいた。 数十機の06F。そして、数十機のガトルだった。 残党軍の指揮官は、誇りを保ったまま言った。我々は連邦に対し、攻勢に出る。 正気ですか! Kは叫んだ。こんな古臭い戦力で、何ができるんです。 計画は、練り上げてある。死を恐れはしない。膝を屈して生き続ける方が、つらい。 Kは席を立った。このあほうに、まともな戦争をさせてやる。あてのないままに、決意だけがあった。 Mには、何か考えがあるようだった。ここで私の作った機体と再会したのは、運命なのかもしれません。 そういうMの顔に、もう影はなくなっていた。次々に無理難題をこなしていた昔のMに、戻っていた。 アナハイムからの命令では、形式として、大勢に影響のない小規模な支援を行なうから、要求するように、 となっていた。最新鋭の武器などは、要求しても送ってよこさないだろう。 Kが相談すると、MはリストをKに渡した。 スラスターポッド、小型ジェネレーター、シールド等、アナハイムの倉庫に眠っていそうなものばかりだった。 Mは、整備兵たちを指揮して、修理工場をフル稼働させていた。 ザクとガトルを組み合わせた宇宙一安上がりなMA。だが、ガトルのバルカン砲だけの武装では心もとなかった。 Kは、Mが推力の補助にまわそうと考えていた小型ジェネレーターを左腕のシールドと組み合わせ、 簡易型のビームサーベルを作った。これで、接近戦ならまともに戦える。高速を活かして接近すれば、艦船をも落とせるかもしれなかった。 ほとんど寝る間もなく働き詰めだったが、兵士たちの感謝の言葉が、KとMを支えていた。 俺たちにとっても、戦争は終わっていなかったんだ。KとMは、はじめて意見が一致した。 アナハイムから、帰還命令が届いた。茨の園にMを残し、Kは月に戻った。上司が、迎えに出ていた。 ご苦労だった。我々はジオン残党軍の蜂起など、望んではいない。連邦の敵が存在する事実だけがあればいい。 すべては形だけのことだ。 Kは、精一杯の笑顔を作って言った。 そうです。形だけのことです。 ♪〜 0083。デラーズフリートは、星の屑作戦を決行。連邦軍に大損害を与えた。 ドラッツェ。対艦攻撃の切り札として、連邦の艦船を落とした。 M。消息不明。どこかで自分の戦争を続けているだろう。 K。アナハイムで、自分の戦争を続けている。 決して敗れざる戦いを。 〜♪ プロジェクトX〜技術士官達〜 特別編 第二部 破れた羽 ドラッツェ開発物語    終