9:15 エーーックス U.C.0087 アナハイム・エレクトロニクスとエゥーゴの次世代超高性能可変MS開発計画 『Zプロジェクト』 MSZ−006TZガンダムU、MSA−0011TS(スペリオル)ガンダムU等の成功し、 大きな戦果を残した機体もあれば日の目を見なかった機体もあった。 だが、その中には失敗したにも係わらすロールアウトされた機体もあった。 その機体には開発者達の熱い想いが込められていた。 主題歌 〜地上の星〜 中島みゆき 風の中の昴 砂の中の銀河          “次世代超高性能可変MS開発計画” みんなどこへ行った 見守られることもなく  “Zプロジェクト” 草原のヴィーナス 街角のペガサス      “熱い思い”“最新技術” みんなどこへ行った 振り向かれることもなく “プラスティックコーティング” 地上にある星を 誰も覚えていない      “フレームの露出” 人は空ばかり見てる             “最悪の失敗”“変形不可能” 燕よ 高い空から              “開発中止”“それでも” 教えてよ 地上の星を            “諦めきれない” 燕よ 地上の星は              “なんとしてでも”“エースパイロットに” 今どこにいるのだろう            “漆黒の宇宙でも輝け!” プロジェクトX 〜技術士官達〜           「最高の失敗作」〜スペースノイドの希望を目指したMS〜 エゥーゴは無重力空間から重力下まで投入可能な汎用性の高いMSの開発を進めていた。 従来のMSは重力下で効率良く運用するには向いていない兵器だった。 自重のみでも50t、武装を合わせると実に70tにもなった。 単体飛行はおろか、高い機動性の確保すら難しかった。 月の6倍にもなる地球の重力はMSにとって大きな壁となって立ちはだかった。 無重力下においてAMBACシステムとして高い効果を得た四肢。 しかし、重力下においての手足は足枷でしかなかった。 ベースジャバー等のSFS(サブ・フライト・システム)という方法もあったが 大きく格納スペースを取られ大部隊の編成に難点を残した。 そこで注目されたのは変形機構だった。 MSの高い汎用性、そして欠点だった重力下での運搬効率の悪さを補う為により良い形状をとる。 そしてその複雑な基本構造を可能にしたのがムーバブルフレーム。 MSの基本構造と関節機能とを兼ねた新しい発想たっだ。 アナハイム・エレクトロニクス 主任開発者 N 『Zプロジェクト』による試作機Tδ(デルタ)ガンダムUの開発に携わっていた。 Nはこの機体に願いを込めていた。 (N)当時、ティターンズの暴挙は酷くなる一方で戦争になるのは時間の問題でした。   ならば戦争を早く終わらせる為に俺たちが良いMSを作らなければ…。そう、スペース   ノイドの輝かしい未来の象徴の様なMSを…、と思っていました。自分が初めて主任で   開発を始めた機体でしたが…、ね。 初の試作可変型MSとして開発されたこの機体にはムーバブルフレームなど様々な最新技術が導入された。 その為、開発は難航していた。 だが、チームの士気は高かった。 Nの同僚で元ジオニック社の技術者 F MSA−099TリックディアスUの開発にも参加し、今回Nに乞われてこの機体の ムーバブルフレーム開発に参加していた。 (F)Nがね、もの凄い勢いで僕のところに来て言ったんです。   「この機体の開発に参加してくれ。お前の手でこのMSに最高の機動性を授けてくれ」と。   こんな最新技術の塊のような機体の話を聞いて断る技術者なんていませんよ。私も色々と   試してみたい技術や工法もありましたから。 重力下におけるMS形態時にも高機動性を獲得する為、機体の軽量化と高い姿勢制御。 この2点に重点が置かれた。 Fが提唱してきた新姿勢制御システム。 それは変形後の主翼となる部分をMS時に姿勢制御翼として機能させるものだった。 姿勢制御能力は従来機とは比較にならないほど高性能だった。 さらに基本フレームを軽量の新素材ガンダリウム/チタン合金を用いて真空鋳造・低温溶接に よって作製、機動軸の鉛直面に当たる胸部アーマーを重重量のガンダリウム合金で三重構造とし 高い基本バランスの獲得とコクピットブロックの強化を行った。 新素材の使用により本体重量を約35%落とす事に成功した。 Nの発案で装甲は耐ビーム効果を狙った特殊プラスティックコーティング技術を採用。 予算の関係上、脚部装甲は内部フレームを隠蔽しきれなかった。 しかし、Nの強い要望により装甲面積を削ってもこのコーティングを使用した。 軽量化にもなったので試作機としては問題なかった。 それぞれの技術相互のバランスは難しかったが開発は着実に進んでいた。 シミュレーションでの結果は良好。試作機は検討から製作の段階へと進んでいった。 そんな折、とんでもない事実が判明した。 Fのフレーム強度計算に入力ミスが発見された。 ムーバブルフレームの強度不足。変形に耐えられなかった。 TδガンダムUの開発中止が、決定した。 (久保)本日はスタジオにムーバブルフレーム開発担当のFさんにお越し頂きました。 (F)どうも、よろしくお願いします。 (国井)主任のNさんはどのような人でした? (F)真面目で、常に前向きで、熱い魂の持ち主でした。どんな時でも自分を見失わないとても   強い人でした。 (国井)随分こだわりをもって開発を進めていたようですね (F)はい、このプロジェクトの最初の試作機でしたからね。このデータが今後の基本になる様な   MSにしなければ、と思っていたんです。それにNの『スペースノイドの希望となるMS』   という設計思想にチームスタッフ皆が共感していたんです。皆、当時の地球連邦の…いや、   ティターンズの行いが許せなかったから… (久保)あのフレームでは変形できないと判明したときはどうでした? (F)目の前が真っ暗になりました。自分の単純ミスでNの希望を潰してしまった、と。   あんなに頑張っていたチームの皆に合わせる顔がありませんでした。 (久保)変形が出来ないとわかった試作機と開発チームはどうなるのでしょうか。ご覧ください。 チームスタッフが一人、また一人と次の試作機の開発チームに抜擢されていった。 しかし、放心状態のN、決定的なミスをしたF、この二人を誘うものはいなかった。 スタッフへの誘い文句“いつまでもこんなチームにいないで…”という台詞が、Fの耳から離れなかった。 N、部屋の片隅に一人で開発中止となった自分の試作機の図面を見ながら呆然と、何かをつぶやいていた。 そんなNにFが近づいて言った。 「お前の夢を潰したのは間違いなく俺だ。覚悟は出来てる。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」 申し訳なかった。輝く目をして自分を誘ったNの気が晴れるのならば、何をされてもいいと思った。 しかし、振り返ったNの目は、輝いていた。 (F)ビックリしました。てっきり殴られるものだと思っていましたから。   プロジェクトに誘いに来たときよりNが活き活きとしていたのを覚えています。Nが「すごいぞ、   流石だ!このフレームのバランスは絶妙だ!この機体は凄腕のパイロットの手に渡ったときには   とんでもない性能を発揮する!絶対にこのまま終わらせない!」と、まるで子供のように喜んで   いました。あのポテンシャルを得る為に普段の倍以上の時間をかけて最高の物を設計したつもり   だったのに可変型としては不適格。自分が許せませんでしたので早くも汚名返上の機会が来たと   胸が熱くなりました。 (N)最初に「変形ができない」と聞いたときは流石にショックでした。でも諦めきれなかったんです…   未練がましく図面を眺めていたんですが、見れば見るほどいい機体なんですよ。ひょっとして、   と思って計算してみたんです。元が可変型MSですから基本フレームの自由度が高かったんです。   これならば不可変型にすればいけると確信しました。 Nはすぐに上層部にTδガンダムUを不可変型MSとしての再開発許可申請をだした。 上層部にはエゥーゴからも地球降下作戦への戦力の補充要請が来ていた。 可変型MSの開発に一歩後退した今、量産機を数機納品する予定であったがNの説得により、この試作機を 不可変型として完成させ、エゥーゴに渡されることとなった。 もともと可変型だったフレームを不可変型に再設計することは簡単だった。 懸念された重力下での運用はリックディアスやガンダムMk−にも採用されていたホバー機能を 用いることにより短時間ながらも高い機動性の確保ができた。 だが、作戦開始までの残された時間は多くはなかった。装甲を再設計する事が出来なかった。 脚部装甲は一部フレームを露出したままとなってしまう。 さらに装甲には特殊プラスティックコーティングが成されたままだった。 機能的には問題はなかったのだが、まだ実験段階のこのコーティングは強い光沢を持っていた。 その光沢は広大な宇宙空間において、宝石のように光り輝いていた。 有視界戦闘を前提とするMSにとっては致命的なハンデとも言えたが、Nが最もこだわった箇所でもあった。 そこでN達はエゥーゴに連絡を取った。この機体のパイロットが決まっているのであれば話をしたかった。 この試作機の特異性、さらにこの設計思想『スペースノイドの希望になりえる機体』を、自分達の熱い思いを 知って欲しかった。そして、なんとしてでも機体のポテンシャルを120%引き出せるパイロットに自分の 試作機を託したかった。エゥーゴから連絡が来た。 モニター越しの金髪の男は“エゥーゴのエースパイロット”と噂されている大尉だった。 (N)私とFは自己紹介もそこそこに彼に機体の説明をしたんです。神妙に聞いていた彼が言ってくれたんです。   「いい機体だ。色も悪くはない」とね。彼はさらに脚部のフレームが露出していることに対して   「これだけ目立つ機体ならば軽くて機動性が高い方が良い。当たらなければ問題は無い」と。   嬉しかったですね。本来ならば怒鳴られてもおかしくない機体なのに、これほどまでに設計思想に対して   理解を示してくれましたから。彼以外にはこの機体を任せられない、そう思いました。 次世代超高性能可変MS開発計画『Zプロジェクト』の最初の試作機Tδ(デルタ)ガンダムU 不可変型ながら全ての問題が解決し無事、ロールアウト。 すぐにエゥーゴ宇宙軍 強襲揚陸艦アーガマに配備された。 (国井)完成しましたね〜 (F)はい、一時はどうなる事かと思いましたがNの熱意が全てを呼び込んだような感じでした。   皆…私も含めてですが、上から開発中止と言われて、もうだめだと思ったんです。しかしNが   「本当の開発中止は俺達が諦めて安易な結果を求めてしまう事だ!上の決定ではない!」と。   あの一言で皆の目が再び輝きだしたのを覚えています。 (久保)Nさんがこだわったコーティングが採用されたときはどうでした? (F)あのコーティング、と言うより配色は例え試作機でも敬遠される事が多かったんです。   Nと一緒に機体の説明をする時に彼を見て、彼ならばこの機体を気に入ってくれるという   想いと、いかに彼でも拒絶するかもしれないという想いを抱きました。しかし、快諾して   くれて正直、ホッとしました。 (久保)?…大尉と面識があったのですか? (F)ええ、以前彼にTリックディアスUを託したのですが、彼はその機体をパーソナルカラーに   塗り変えていましたから…その機体が大破したので代わりのMSが必要だったそうです。   彼は私に「壊してしまって申し訳ない」と謝ってくれたんですが彼が生きていてくれた事の   方が嬉しかったですね。MSの代わりはいくらでも造れますから… (国井)可変型MS開発プロジェクトの最初の機体が不可変型だったんですね。 (F)それを言われると辛いんですがこのMSの基本構造データが次のMSに、背部姿勢制御翼の   ウイングバインダーはその派生機に反映されましたからまったくの無駄ではなかった…と   思いたいですね。 (久保)その後、このTδガンダムUはどうなったのでしょうか。エンディングです。 完成したMSの制式番号はNの名前を取ってMSNとされ、Nのプロジェクト1号機であった為 MSN−001となる予定であったがNの『百年もつMSであるように』との願いが込められ、 MSN−00100と表記され機体名称もT百式Uとされた。 他に例を見ない金色という配色は、低視認性を重視しダークブルー系色を使用したティターンズとの 戦闘において抜群の視認性を獲得し、ティターンズにT金色のMSUと恐れられた。 さらにその光沢は近接宙間戦闘において幻惑・距離感の低下等の効果をもたらした。 Nの言った通りT百式Uはクワトロ・バジーナ大尉の操縦技術により、計算上では同スペックのMSに対し 圧倒的な限界性能の差を見せつけた。 敵中で視認性が高いのは的になりやすい為、再塗装も検討されたが搭乗者の意見もあり、そのままとされた。 逆に目立つ事を利用し、指揮官機として実験機ながらも高い戦果を残した。 しかし、被弾時にはセクション全体の再シーリングが必要等の問題があった為、量産には至らなかった。 そしてT百式Uは自身が獲得できなかった変形機構を持つ第3世代MSに押され U.C.0090、最終号機が退役した。 (N)この配色はパイロットを死地に近づけるかもしれないと思うと実戦配備機としては失格かも   しれないが、スペースノイドの希望の星としてはこれ以上の色はない。 実戦配備を解かれ、MS博物館に収められたT百式Uを前に館長のNは誇らしげに語った。 テールラ〜イト♪ヘッドラ〜イト♪ た〜びは〜、おわら〜ない〜♪ プロジェクトX 〜技術士官達〜           「最高の失敗作」〜スペースノイドの希望を目指したMS〜                                 百式 開発秘話   終