「Re-GZ 執念の可変MS」〜Zガンダムに魅せられた男達 2〜                               リ・ガズィ開発秘話 U.C.0091 U.C.0088にネオ・ジオンが再びアクシズに退くことで戦争は終結し、表面上、地球圏には大規模な戦争の無い状態、いわゆる『平和』が訪れた。アクシズ撤退後も目立った動きも無いため、連邦軍上層部は当分戦争は無いと早くも判断を下していた。 これにより、地球連邦軍が各地に配備するMS部隊には一大転換期が訪れていた。 戦争の終結とともに、連邦軍内での整理統合と経費削減が進んでいたのだ。 経費削減の目玉は、連邦軍がこの戦争中に大量に抱え込んだMSの削減と置き換えだった。 しかし、整理統合の対象となったのは老朽化したGMタイプのみではなかった。 戦争が無ければ、高コストの機体は経費削減の目の敵にされる。 この時期各方面に配備されていたZタイプを筆頭とする可変MSは、高性能だったが、製造コストだけでなく、維持に要するコストも莫大だった。 その高性能故、可変MSは、皮肉にも退役を余儀なくされ、維持コストの面でも安価なGMタイプの新型MSジェガンへと置き換わっていった。 しかし、それを良しとしない男がいた。 アナハイムエレクトロニクス、開発主任Y。 かつて一技術者として、Zプラスの開発に携わった男だった。 (国井)スタジオにはこの時期連邦軍が配備していた主なMSと当時最新だったジェガンの1/100の模型を 用意してあります。 (久保)だいぶ種類があったんですね。 (国井)GMからの発展型だったGM、GM。、エゥーゴ開発のネモ、ティターンズ系のバーザム、 そのほかにも可変MSもいくつか量産されたものがありました。 (久保)整備などのメンテナンスを考えると大変ですね。これを連邦軍は整理統合しようとしていたのですね。 (国井)そうです。しかし、この大きな流れの中で、技術者として自分たちの存在意義を見出そうとする 男たちがいました。それではご覧ください。 整備性もよく、安価な新型機ジェガンは量産機としては合格の部類に入った。 だが、低コストにこだわったその機体からは、第3世代MSでアナハイムエレクトロニクスが培った技術力を ほとんど感じることが出来なかった。 しかも、連邦軍からの発注はほとんどすべてといっていいほどこのジェガンタイプのみ。 徹底的なコスト削減方針だった。 『ガンダム』を名乗るような高性能機はこの時代必要ない、そういった連邦軍上層部の見解を見事に表していた。 延々と動きつづけるジェガンの生産ラインを眺めながら、 Yは技術者として、これほど屈辱的な状況は無いと感じた。 そして、人知れず決心した。 いつか必ず、ZPlusに匹敵するような、Z系可変MSをつくってみせると。 それ以来、Yはことあるごとに、新型の高性能機の開発プロジェクトの計画を 上申したが、いい返事を得られることは無かった。 しかし、Yはあきらめなかった。 部署内の技術者にも声をかけて、可能な限りの連絡をとり、新型機の開発を あらゆる方面に打診しつづけた。 メンバーは自然と増えていった。同じ思いを胸に秘めた技術者はたくさんいたのだ。 しかし、期待するような動きは、どこにも感じられなかった。 半年もすると、期待はずれの状況に離れていくメンバーも出てきた。 ただ、時間だけが過ぎていった。 上申を始めてから1年程がたったある日のことだった。 開発部長のLがYを呼んでこういった。 連邦軍のある部門がおまえと会ってみたいそうだ、と。 Yは自分が何を言われたのか、一瞬分からなかった。 Lはニヤリと笑った。 造れるぞ、おまえのMSが。 Yは狂喜した。 (久保) スタジオにはYさんにお越し頂きました。 (Y) よろしくお願いします。 (国井) L部長にこの話を伝えられたときはどんな気分でしたか? (Y) 月並みですが、うれしいとか、そういう言葉では表現できないような、 そんな気分でした。 (国井) ずっと待ち望んでいたわけですからね・・・ (Y) そうですね。気付いたら手が震えていて、その震えを止めようとこぶしを 強く強く握りしめていました。 (久保) このときすでにご自身の中ではどのようなMSを開発するかという案は あったんですか? (Y) はい。もう一度、可変MSを造ろうと考えていました。 (久保) しかし、本当に大変だったのはこれからでした。 続きをご覧ください。 連邦軍上層部の経費削減方針とは裏腹に、現場のパイロット、特に可変MSで実戦を くぐりぬけたこともある一握りのパイロットたちからは、ジェガンでは実戦に なった場合に可変MSには太刀打ちできないという不満の声があがっていた。 そんな現場の声を受けて、連邦軍のある実戦部隊を抱える部門から正式に アナハイムにMS開発の依頼があった。 ミーティングに出席したYに伝えられた新型機の条件は、予想以上に厳しいもの だった。 まず先年の戦争で遭遇したネオジオンの主だったいくつかのMSに匹敵する性能。 高性能とコストパフォーマンスを両立させること。 量産化を前提とした宇宙用の機体であること。 Zガンダム、Zplusを参考にして変形機構を一部簡略化し、コストパフォーマンスを さらに高くした機体を開発するつもりであることを、Yは連邦側担当者に告げた。 担当者はそのプランに非常に興味を示してくれたが、更なる条件が待っていた。 Zガンダムはもちろん、Zplusも高性能だったが、運用コストも高く、機体も非常に 高価だった。今の連邦の体制ではあのMSは許されない。 Zplusの約半分の製造コストを目指してほしい。 Yはこの厳しい条件をある程度予想していた。 だが、ここで立ち止まることは許されなかった。 Yはこの開発プロジェクトの実現に尽力した技術者を中心にして、すぐに開発チーム を結成した。 この厳しすぎる条件に、メンバー内からも不満が続出するだろうと思っていたY だったが、以外にもメンバーからそういった声はほとんど出なかった。 みんな、この厳しい条件を予想していたのだ。 開発チームのミーティングでは、まず本体を構成する素材のランクを下げることが 提案された。 Zplusの半分の製造コストを目指すためには絶対に避けられない選択肢だった。 彼らが選択した素材は名称こそ同じガンダリウムだが、実際にはZplusで使用した ガンダリウムγから2ランクほど下がる素材だった。対外的にはアナハイムMSは ガンダリウム合金製、というデータになっているが、実際には精錬方法の違いなど により、アナハイム内部ではガンダリウムγでさえ何ランクにも分かれている。 コスト的にぎりぎり使用可能なのはこのレベルまでだった。 しかし、予想外の壁が彼らの前に立ちはだかった。 この素材でZplusのデータを使ってシュミレーションしたところ、 胸部ブロックとウイングバインダーの変形に必要な強度を確保することが出来ない ことがわかったのだ。 Yはこのデータから、WR形態に必要な機能を別モジュール化する方法を思いついた。 別モジュールは、MS本体の背面にドッキングさせることにした。 変形を考慮しないため、WR形態時の各種センサー類とコスト的に固定翼とされた ウイング部を効率的に配置することが出来た。 合せて、Zplusでは腰部に装備されていたWR形態時の主武装であるビームカノンも 別モジュールに装備、またウイング部にはミサイルランチャーユニットを設置する ためのウェポンラックを設置した。 別モジュールは便宜上、「バックウェポンシステム」と呼ぶことにした。 これにより、新MSは胴体部の変形がまったく不要になり、構造的な強度を十分に 確保し、なおかつメンテナンス性を大幅に向上させることが出来た。 脚部のみZと同様の変形機構を残した。 これは推力ベクトルを可能な限り本体中心部に集めるためである。変形方式はZと 同様で足りたため、デザインにかかる時間を減らすことが出来た。構造もほぼ同じ で、左右それぞれにジェネレータを配置した。 Zは両足の外にスラスターを配していたが、新MSはふくらはぎの後ろに張り出した 形状で移動させた。 この配置の結果、スラスター部の整備性が向上し、プロペラント容積も増大した。 スラスターを外に出したことで、ジェネレータを大型化、Zガンダムと比較して 25%UPさせることが出来た。 だが、変形なくして可変MSはありえない。 Yはこの問題を解決することが出来なかった。 Yは参考になるケースを求めて、連日資料室の端末で過去アナハイムが開発したMS のデータを調べていた。 数日ほぼ徹夜で資料室に張り付いていた彼は、ある晩、偶然ある古いデータを 発見した。先日アクセスしたときにはアクセス権が足りず開かなかったデータの 一部のはずだったが、今日誤って再びアクセスしたところ、データを参照できた。 それはほとんどラフに近いデータだったが、非常に独創的で、MSの既成概念を 打ち壊すような大胆さがあった。 MSを核とし、MAクラスの巨大な補助ユニットを別モジュールとして追加する。 補助ユニットにはMS本体には到底収容できないほどの多数の火器、そのサイズを 補うに十分なスラスターユニットを装備。 補助ユニットはブロック化され、装備の交換もたやすい。 スペック等の記述はなく、開発コードも無い。実際に製作されたかどうかも不明だ。 しかも、そのコアとなっているMSはガンダムの顔をしていた。 こういった詳細が不明なMSの存在はうわさで聞いたことがあった。 誰かが一時的にデータを参照できるようにしてくれたに違いなかった。 Yは名も知らぬ誰かに心から感謝した。 Yはこのデータから、WR形態に必要な機能を別モジュール化する方法を思いついた。 別モジュールは、MS本体の背面にドッキングさせることにした。 変形を考慮しないためWR形態時の各種センサー類とコスト的に固定翼とされた ウイング部を効率的に配置することが出来た。 合せて、Zplusでは腰部に装備されていたWR形態時の主武装であるビームカノンも 別モジュールに装備、またウイング部にはミサイルランチャーユニットを設置する ためのウェポンラックを設置した。 別モジュールは便宜上、「バックウェポンシステム」と呼ぶことにした。 これにより、新MSは胴体部の変形がまったく不要になり、構造的な強度を十分に 確保し、なおかつメンテナンス性を大幅に向上させることが出来た。 脚部のみZと同様の変形機構を残した。 これは推力ベクトルを可能な限り本体中心部に集めるためである。変形方式はZと 同様で足りたため、デザインにかかる時間を減らすことが出来た。構造もほぼ同じ で、左右それぞれにジェネレータを配置した。 Zは両足の外にスラスターを配していたが、新MSはふくらはぎの後ろに張り出した 形状で移動させた。 この配置の結果、スラスター部の整備性が向上し、プロペラント容積も増大した。 スラスターを外に出したことで、ジェネレータを大型化、Zガンダムと比較して 25%UPさせることが出来た。 バックウェポンシステムにはスラスターは設置しないこととした。 デザイン的には余裕があったのだが、コスト削減のため、MS本体背面に設置する メインスラスターをWR形態時にも使用することとしたのだ。 スラスターは最大出力的にはZplusに劣るものとなったが、担当メンバーの努力に よって、高効率でフラットな出力特性を持つものを用意することが出来た。 最大出力がすべてではありません、スラスター担当者はきっぱりとそう言い切って 出力の不足を心配するYを安心させた。 また、新MSにはシールドを装備することにした。 Zガンダム、Zplusではシールドが各種センサー類を収めるサブシステム的な デザインになっていたが、MS形態ではこのサブシステムがシールドとして使用 できないことによる使い勝手の悪さが実際に使用したパイロットから指摘されて いた。 どうしてもシールドが必要になる場合があるというのだ。 シールドは、WR形態時にMS本体を覆うフェアリングとして、大型のタイプのものを デザインした。 宇宙用という前提があるため、シビアなフィッティングは必要ない。工法的にも 安価で済むシンプルなものとした。 胴体部を含め、本体のデザインは、Zガンダムを髣髴とさせるスタイルが自然と 選択された。 特に本体部は変形しないため、同じである必要は無いのだが、この機体はあくまで Zタイプであるという彼ら開発プロジェクトチームの思い入れがそうさせたのだ。 顔の形状も、Zガンダムを踏襲して、2つのメインカメラを配置した。 やや控えめな意匠へと変更することで、コスト的には僅かだが削減することが 出来た。 (国井) やはりこのZガンダム風の頭部形状にはこだわりがあったのですか? (Y) そうですね。ある人の影響がありまして。 (久保) とおっしゃいますと? (Y) 以前、私自身は頭部形状にはあまりこだわりがなかったんです。Zplusの 開発チームにいたときにコスト削減のためにネモの頭部を流用することを提案 したんです。そうしたら主任だったSさんに「俺達が作るのはZタイプだ!!」と 叱られまして。その時、Sさんの熱意に打たれたんです。ああ、我々はそんなすごい MSを造っていたのか、と実感した瞬間でした。 (国井) そんなことがあったんですね。 (Y) はい、ですからZ系可変MSとして製作したこのMSの頭部形状はZガンダムを 踏襲したものにすると最初から決めていました。 残すはバックウェポンシステムだった。 最終的にこのパーツは、MS形態への移行後に切り離す形を選択した。 これには賛否両論あり、開発チーム内では最後のギリギリまで切り離す、切り離 さないの議論が戦わされた。 しかし、実際Zplusの運用データではWR→MS→WRという運用をすることはほとんど 無く、WR→MSという運用がほとんどだったことを考慮して、この形態を選択した。 これにより、バックウェポンシステムはMS形態への変形後にデッドウェイトと化す ことを避けることができた。 また、これによりドッキングシステムの簡略化が出来、最後のコストを削り取る ことが出来た。 こうして、新MSは、どうにか予算の範囲内で完成することが出来た。 ロールアウトの前日、Yはようやくこの新MSの名前を決定した。 その名は『Re-GZ』。 通称、リ・ガズィ。 『Re-GZ』とは「リフェイン・ガンダム・ゼータ」の略である。 堂々とZの名を与えたかったが、この機体がZ系可変MSとしては異端児であることは開発チームの誰も が分かっていた。 だから、敢えてZを名乗ることを避け、『GZ』という略語でその由来を表したのだ。 (久保) こうしてリ・ガズィは完成しました。 (国井) では、完成したリ・ガズィとYさんのその後をご覧ください。 完成したリ・ガズィは、ロールアウトした1号機がロンドベル隊に配備され、Zplus 同様、アムロ・レイ大尉の手でトライアルを行った。 「Zplusほどの切れは無いが、Zplusの切れはある意味ナーバスさでもあった。固定 された本体は剛性感が出て、素材のランクを下げたようには感じない。スタビリティ も良くなっている。Zplusはパイロットを選ぶ機体だったが、この機体はパイロット を選ばないだろう。リ・ガズィはZplusに匹敵するいい機体だよ。」 リ・ガズィを委ねられたアムロ大尉は、こういって評価したという。 リ・ガズィ1号機はこのままロンドベルでアムロ大尉の乗機として、活躍した。 また、このあと数機のリ・ガズィがロールアウトしたという情報があるが、公式な データとしては残っていない。 Yはその後、A大尉の意見を取り入れたリ・ガズィの強化プランを作成したが、いくつ かの理由により、残念ながら実際にその機体がアムロ大尉に渡ることは無かった。 (Y) 私は満足しています。この時代に可変MSを造るなんて、最初は誰も信じていな かったのですから。時代の波は不可変MS、ニュータイプ専用MSへと移っていきました が、リ・ガズィはアムロ大尉の手によって、十分歴史に残る機体となったといえる と思います。 実戦を経ることなく、アナハイム内のミュージアムに封印された "リ・ガズィ・カスタム"の前で、Yはそう言って晴れやかに笑った。 プロジェクトX 〜技術士官達〜        「Re-GZ 執念の可変MS」〜Zガンダムに魅せられた男達 2〜                          リ・ガズィ開発秘話  終