RGM-79開発記 9:15  エェェェェェックス・・・! 宇宙世紀0079 1月3日 地球から最も離れたコロニー・サイド3がジオン公国を名乗り 地球連邦政府に独立戦争を仕掛けてきた。俗に言う1年戦争である。 国力比は実に30対1、皆ジオンは1ヶ月も持たずに降伏すると信じていた。 だが、人々の予想とは裏腹にジオンは新型機動兵器MS「ザク」より、 瞬く間に連邦軍宇宙艦隊を駆逐し、僅か半年の間に地球の3分の2を占領するにいたった。 そんな中、連邦軍総司令官レビル大将により発令されたMS開発計画「V作戦」 そのメンバーに彼らはいた。 これは絶望的な状況下から連邦軍を勝利に導いた男達の戦いの物語である。 (主題歌 地上の星) 「ザク」の脅威 「RX-78ガンダム」 「量産化への壁」 「ギリギリの簡略化」 「想像を越えたデータ」 「ジャブローの攻防」 「そして、ソロモンへ」 〜大逆転〜ガンダムを量産せよ〜GMを造った男達 宇宙世紀0079 三月 Dr.レイの元「V作戦」は一見順調に推移していた。 RX-75ガンタンクおよびRX-77ガンキャノンはすでに実戦テストが可能な段階まで 仕上がっているともいえた。 そして、後に伝説的な活躍を見せるRX-78ガンダムもその全容を現そうとしていた。 こいつらが完成したら「ザク」に勝てる。 MSの無い連邦軍は陸で、海で、そして宇宙で「ザク」の前に無残な敗北を重ねてきた。 その雪辱戦が出来る。 開発部はまだ見ぬ量産され「ザク」を駆逐する「ガンダム」に思いをはせていた。 実際にまだフレームが完全ではない「ガンダム」は「ザク」の3倍以上の エネルギーゲインをたたき出していた。 完成された「ガンダム」のエネルギーゲインは「ザク」の5倍と予想された。 その「ガンダム」に現在考えうる最高の装甲「ルナ・チタニウム」を纏わせる また、ビーム兵器をMSが携帯可能なサイズまで小型化するエネルギーCAPも 五月までに完成の目途が立っていた。 「ザク」を上回るパワーと「ザク」の攻撃を受け付けない装甲を持ったMS 「ガンダム」は必ずジオンを地上から駆逐する。 皆、そう信じていた。 四月 地球連邦軍総司令部ジュブローで「V作戦」に携わっていた一人の技術仕官に 新たな指令書が手渡された。 「ガンダム」量産化の為に至急プロジェクトチームを立ち上げよ。 人選は君に一任する。 ただし、9月までに初期ロットとして300機がロールアウトできる事。 たったこれだけの指令書を手渡された時、彼は怒りに身を震わせた。 「馬鹿にするな!この俺にそんなチンケな仕事を回しやがって!」 彼の名はJ、人一倍プライドの高い男だった。 だが、指令書を手渡した上司はこう言い放った。 「馬鹿にしているのは貴様だ!「ガンダム」を量産する事こそが連邦軍が 勝利する唯一の方法だ!最終調整しか残っていない「ガンダム」の開発よりも 連邦にとっては重要な事だ!それが理解できんというなら荷物を纏めて 何処へとなりとも消えうせろ!」 激昂したこの上司の名はE この量産MS計画の総責任者だった。 「この戦争に勝利する事が死んでいった者達へのせめてもの慰みとなれば」 Eの口癖だった。 Eの妻子はかってのシドニーにいた。 だからこそ、彼は勝利する為に冷静でいられたともいえる。 エネルギーCAPでビームライフルというジオンには無い強力な兵器を得た事で MS開発において大きく遅れをとっている連邦が優位立てる時間は僅かしかない。 ジオンも必ず近いうちにビームライフルを装備したMSを完成させるだろう。 急がねばならない。 勝負は年内だ、それを過ぎればMS開発力に劣る連邦の勝機は失われる。 EはJに熱く語った。 Jは一言だけ発した。「あんたにはかなわねぇよ」と。 この日から、彼らの「ガンダム」量産という戦いが静かに始まった。 計画の当初、量産はスムーズにいくかと思われた。 なにせ既につくるべき機体は決まっているのだ。Dr.レイの元から挙がってくる設計をもとに、欠陥をつぶしながら企業に発注、ラインを構築してやればよい。 その機体は既に形を見せている。ジオンのザクを遥かに上回る性能で。 さらに他の何ものよりも優先する、最優先命令が出ているのだ。 ビンソン計画とぶつからない限り、文字通り連邦の総力を廻すことができる。 簡単なことだ。 誰もが、そう思っていた。 しかし、いざプロジェクトを立ち上げてみると予想外のことが分かった ガンダムは量産には致命的ともいえる欠陥を無い方していたのだ。 「ガンダム」はただひたすらに最強のMSを目指したが為に 生産性を完全に無視した設計になっていたのだった。 特に装甲材の問題は深刻だった。 「ガンダム」の装甲に使われる「ルナ・チタニウム」合金はルナツーでしか 生産する事が出来ず、しかも、加工性が従来の材質に比べて劣悪であった。 制宙権をジオンに握られており、宇宙に孤立したルナツーから加工性の劣悪な 材料を命がけでジャブローまで運んで装甲材にする。 平時ならともかく、戦時下の、しかも、劣勢な状況下では正気の沙汰とは思えない。 装甲材担当のFはこれまでに61式戦車の装甲材の改良などで活躍していた この分野においては第一人者であった。 しかし、彼ですら「ルナ・チタニウム」合金を採用した量産期については匙を投げた。 フレームの問題も深刻だった。 反応性と機動性、そしてパワーの全てを最高のレベルで要求する「ガンダム」のフレームは、完成の目処が一向に立たなかった。 五月の段階に措いても、 現状はザクのフレームを改造したものに求める機材を取り付け、テストしている状況だった。 実戦に投入すれば、フレーム強度の問題などから、機体自身がもたない。 上がってきたエネルギーCAPは強力なものだった。18M級の兵器に搭載可能なサイズの核融合炉で戦艦並みの火力を与えることが可能なものだった。 しかし、時間が要求される現状からすれば生産性は劣悪で、予想以上に時間が必要であることもわかった。 先行して準備を進める必要があった。 このままでは9月までに300機がロールアウトさせられないかもしれない。 プロジェクトのメンバーは 焦った。 本日は元連邦軍「V計画」開発技術士官Dさん、 (現、アナハイムエレクトロニクス役員)と 量産化計画の責任者Eさんに再びお越しいただきました。 いかがでしたか、ガンダム開発計画と量産化計画は上手くいっていなかったのですか? D「ガンダムの開発において要求されたのは一にも二にも、「ジオンの人型兵器を圧倒すること」でした 「我々は許される限り、最高の性能をこの新型兵器に与えようと腐心しました。兵器開発とは常に先を見越して行われるものです」 「貴重なルナ・チタニウムなどのレアメタルもふんだんに注ぎ込みました。それが当時、最高の性能を与えるものだったからです」 E「しかし、その御蔭でこっちは踏んだりけったりですね。要求される量、それは命令された300機分ではなく、その後の生産も見越さなければならなかったわけです。 地上の資材を掻き集めても、このままでは量産はおぼつかない、そう判断せざるを得ませんでした」 Eを中心としたプロジェクトメンバーは早急に新型MSの設計をあげるように、V作戦、ガンダム担当部署に何度も要求した。 しかしDr.レイは頑なにそれを拒んだ。 「求めうる限り最高の機体をつくれ」 それが彼らに下された命令であり、そして彼らは技術屋だった。 彼らは自分達が夢見る先端技術を見境なく投入した。その結果、最強の機体ができあがる目処は立っている。 しかし、今の連邦に真に必要なのは「強力で高価な玩具」ではなく「ジオンに対抗する」ための戦力だった このままでは計画を達成できない。 Eは決断した。 「ガンダムでは計画を達成できない。計画を達成するための『ガンダム』を我々でつくる」 E達の『ガンダム』は悪戦苦闘を余儀なくされた。 頭部カメラアイは完成したばかりのガンキャノンの物を限りなく簡略化し、 ビームサーベルを計画の2本から1本へ殺ぎ落とし、シールドの重ね合わせも 計画の1/2にするなどの涙ぐましい努力を行った。 だが、それでもザクのフレームを改造したものでは『ガンダム』の性能の 40%を叩きだすのがせいぜいだった。 プロジェクトは危機に陥った。 重苦しい雰囲気の中でJがメンバー全員に一つの提案をした。 「『V作戦』のフレームを使おう」 これには、皆、反対した。 Dr.レイのフレームは未完成でまだ70%しか完成していなかった。 そのフレームでは予定される『ガンダム』の出力に耐えられない。 そして、なにより未完成のフレームは未知数だった。 MSの無い連邦にとって、未完成のフレームを使うということは賭けでしかなかった。 だが、JはEに向かってこう言い放った。 「確かにこのフレームではDr.レイの『ガンダム』のパワーには耐えられないでしょう。  しかし、我々の『ガンダム』はDr.レイの『ガンダム』とは違います。  それに、我々には元からMSの技術は無いのです。  ザクのフレームのコピーでは、ザクには勝てません。  我々は我々の『ガンダム』を造り上げるのでしょう。」 静かに、しかし、力強く語りかけたJに皆、心を揺さぶられた。 そして、Eは決断した。 「よし、未完成のフレームを我々の手で完成させる」 それから『ガンダム』量産化へのギリギリの戦いが始まった。 9月までに数を揃えるには最低でも7月の始めには試作機を仕上げなくてはならない。 時間との戦いだった。 まず、Fは「ルナ・チタニウム」の使用をあっさりと切り捨てた。 不眠不休で軍研究所に詰めた。 Fは倒れるまで代わりになる装甲材を探し続けた。 そして、Fが倒れて3日目の朝、ふとしたことからFは研究所の資料室の片隅で ある学生の装甲材に関する論文を見つけた。 チタン・セラミックス複合材だった。 ルナ・チタニウムに比べれば強度的に若干劣るものの生産性ではルナ・チタニウムと比べ物にならないほど勝っていた。 幸いにも装甲材のハニカム構造だけは『V作戦』で完成していた為にMSの装甲材として使うには十分だった。 一番の問題と思われていたフレームの開発も難航した。 最終的にプロジェクトチームが完成させたフレームは『ガンダム』が予定していた出力の80%しか出す事が出来ない代物だった。 しかも、唯一オリジナルと遜色ないものが使えるジェネレーターとの相性が良くなかった。 一応、『ザク』を上回る性能と9月までに300機を生産するというプロジェクトの目的は果たしていたがEが最もこだわっていたビーム兵器の携帯が不可能であった。 「ビームライフル無しではMS技術に勝るジオンはすぐに『ガンダム』を上回るMSを投入してくるだろう。単純にMS技術だけでの戦いではジオンに勝つことは出来ない。」 落ち込むEに一人の若い士官が言った。 「最高機密だけを除いて設計図を広く民間企業に公開してはどうでしょう?  各部のパーツを軍需と関係がなかった企業にも作らせてみるんです。  もしかしたら我々の造ったパーツより相性のいいものが出来るかもしれません。  一か八かですが、うまく行けば全てが解決するかもしれませんしね。」 そして、Eは決断した。 「よし。プロトタイプの設計図を最高機密を除いてパーツが造れると思われる企業全てに  送れ!コンペティションは8月1日に行う!」 コンペティションの結果は予想以上のものだった。 連邦初のMSに各社とも社運を賭けて取り組んできた。 中にはルナ・チタニウムに迫る性能の装甲材すらあった。 だが、時間とコストという最大の敵により、各社から集めたパーツの中から選りすぐりの物を使うわけにはいかなかった。 E達は妥協できるギリギリの線までこだわった。 83回にも渡るパーツの組み合わせ試験を終えて、ついにE達の『ガンダム』は完成していった。 ビーム兵器の携帯も可能になった。 全体的にはDr.レイの『ガンダム』の9割程度の性能になった。 しかし、その僅かな差が戦場で明暗を分けるかもしれないと思うと皆、やりきれなかった。 だが、Eは言った。 「切るべきところは切るしかない。落ちた分の性能は最終調整で取り戻すしかない。」 皆、最後の気力を振り絞った。 そして、Eは自分達が開発したこの完成寸前のMSをGundam-Mass-pro-type『ジム』と名づけた。 久保「さて、実はスタジオにはもう一方。装甲材の開発責任者のFさんにお越しいただいています。」 Fが入場してきてE、Dと抱き合う。 国井「いやぁ、ついに『ジム』が完成したわけですが、当時のお気持ちはどうでしたか?」 E「ついに、ここまでこぎつけたかというか…何というか。   そうですね、やっと妻と娘の仇が取れると技術者としてあるまじき事を考えてしまっ   ていましたね。」 久保「Fさんは『ジム』の装甲材を研究所の論文からヒントを得たと仰っていすが    どういった経緯で見つけられたのでしょうか?」 F「偶然、としか言いようが無いですね。倒れるまで研究所に詰めて寝こんで…その繰り   返しでした。本格的に倒れてこんな所で寝てられるかって実験室に向かう途中で   なんとなしに資料室を見たら普段は空いてない扉が開いてたんです。」 国井「空いてないはずの扉がですか?」 F「ええ、今でもあの時のことは昨日のことの様に思い出されますよ。   神かはたまた悪魔かが私にたった一度のチャンスをくれた…   今はそう思っています。」 国井「なるほど。天からの贈り物だったと?」 F「そうとしか考えられないんですよ。   あの論文は20年も前に書かれた物だったんですからね。」 久保「20年も前に!?」 F「ええ、当時としてはあまりにも革新的すぎて学会に黙殺されてしまった論文が軍の資   料室にたった一冊だけ残っていたんですよ。   しかも、論文を書いた学生はシドニーにいたんです。運命じみたものを感じましたね」 国井「ありがとうございます。    ついに完成した『ジム』はどうなったのでしょう。続きをご覧下さい。」 E達の『ジム』は制式番号RGM-79として最終調整に入っていた。 皆の奮闘により、『ジム』はハードウェアでは『ザク』はおろか『グフ』ですら圧倒する性能をたたき出していた。 この時点で残された最後の問題はソフトウェアであった。 元来、連邦にはMS運用ノウハウが欠如していた。 『V作戦』のデータや『ジム』同士の模擬戦、果ては鹵獲した『ザク』の戦闘データまで かき集めたが、それでも『ジム』の能力をフルに引き出せるデータとまではいかなかった。 そんな中で上層部より一通の指令書がE達に届けられた。 内容は実戦で戦闘データを採取するから先行生産を開始していた『ジム』を引き渡せとのことだった。 これには、皆、反対した。 特にJは司令部に怒鳴り込んで上官の胸倉を掴み上げて言った。 「俺の目が黒いうちは、未完成の状態でパイロットを死なせん!」 皆、必死だった。 未完成の機体を引き渡すなど技術者として、人として出来なかった。 しかし、彼らの必死の抵抗も上層部にあっさりと却下されてしまった。 9月を目前に控えた暑い日のことだった。 9月18日 E達は『ジム』の初期生産を完了し、微調整に入っていた。 そして、生産工場でE達はサイド7で『ガンダム』が『ザク』と人類史上初のMS格闘戦を行った事を耳にした。 「いよいよだな」 皆、口に出さずとも顔に表れていた。 そして、しばらくしてからのことだった。 Eが皆を緊急招集したのだった。 皆、何事かと思った。 Eは興奮してキーボードを叩きながら皆に言った。 「凄いぞ!これなら『ジム』は完璧になる!」 それは補給部隊がWBと接触した時に持ち帰った『ガンダム』の戦闘データだった。 そして、そのデータはE達の想像を遥かに越えていた。 『赤い彗星』と戦い、危険な大気圏戦闘を行い、『蒼い巨星』に勝利していた。 皆、すぐさま『ジム』のアップデートに取り掛かった。 そして、『ジム』はこれまでとは比べ物にならない性能を発揮した。 このパイロットの完全な戦闘データが入ってくれば多くの兵士の命を救える。 「WBがジャブローに入港すれば完全なデータが取れる。その時に『ジム』は本当に完成  する。兵士達を死地から生還させることも出来る。  もうすぐこの戦争も終わる。犬死をすることは無い。」 そう誰かが呟いた。 皆、思いは一つだった。 その後、WBのジャブロー入港と供に『ジム』は完成した。 ジオンのジャブロー奇襲攻撃の直前にアップデートの完了した『ジム』は見事にジャブローを守り抜いた。 そして、『星一号作戦』が発動された。 ソロモンの宙には見渡す限りの『ジム』で埋め尽くされていた。 戦後、『ジム』は何度も改修が加えられたが、あくまでも『ジム』のコンセプトを崩す事は無かっが、ネオ・ジオン紛争終結後RGM-89『ジェガン』の配備が本格化し、0095年に『ジム』はかっての開発者達に見送られながら最後の機体が退役した。 ソロモンの宇宙には戦争に翻弄された男達の夢が今も『ジム』と供に漂っている。