U.C.0087 3月2日 一昨年のティターンズによるサイド1.30バンチに毒ガスを注入し住民を虐殺したことにより 反地球連邦運動(A.E.U.G/エゥーゴ)活発化していきます。 そしてついにエゥーゴがグリプス1よりガンダムMK-を強奪することになります。 そしてそれは一年戦争から7年の歳月を経て再び地球圏を二分するグリプス戦役へと発展します。 その中にエゥーゴが命運を賭けた赤いMSがありました。 次回 プロジェクトX 〜技術士官達〜           悲劇を断て〜リック・ディアスに賭けた一撃〜 9:15  エェェェェェックス・・・! 地球至上主義を掲げるジャミトフ=ハイマンの下、公国軍残党殲滅組織として発足したティターンズは次第に強大に、そして連邦軍の一部隊という枠組みを超越した軍事組織と化していった。 そして、U.C.0085 7月31日 サイド1の30バンチにおいて、市民グループによって連邦政府に対する抗議集会が行われていた。対応に苦慮したコロニー政府はティターンズに出動を要請した。 そしてティターンズは、一切の通告なしに、G3ガスをコロニー内部に注入するという極めて迅速かつ残忍な方法を用いて事態を収拾したのであった。 この事件を契機として反地球連邦運動は一つに纏まりA.E.U.Gが結成された。 そして、月のアナハイムで一年戦争を生き抜いた男達が再び立ち上がった。 これは地球圏の安定という大義名分の下に暴走するティターンズという悲劇に立ち向かった男達のドラマである。 (主題歌 地上の星) -勝者と敗者- -試金石- -ガンダムMK-- -闇取引- -アクシズとの接触- -γガンダム- -グリプス2- プロジェクトX 〜技術士官達〜           悲劇を断て〜リック・ディアスに賭けた一撃〜 U.C.0085に入り半年を経過したある日 アナハイムMS開発課のTに上司から呼び出しがかかった。 Tはかってツィマッドで『ドム』と現在の連邦軍の主力MS『ハイザック』の原型となった 『アクトザク』を造り上げた自他供に認める超一流の技術者だった。 今回の呼び出しは何かあるな───Tは予感じみたものを感じながら役員室のドアを開けた。 上司はTが役員室に入室すると一通の書類を渡してこう言った。 「最近の反地球連邦運動の高まりは君も知っているだろう。  そこで我が社としては連中にある程度の戦力を提供することにした。  ついては、そのプロジェクトを君に一任したい。」 死の商人の論理だなとTは思った。 対立する両者に武器を提供して己は肥え太る───気に入らなかった。 だが、社命は絶対だった。 それにTは気に入らない仕事だからといって自分の仕事に妥協の出来る男ではなかった。 退出後、書類の中身を見てTの体が震えた。 プロジェクトチームのメンバーのリストはTを筆頭として実績だけならアナハイムの中でも超一流の面々だった。 これは『ある程度の戦力』の戦力ではない。 これだけの面子ならこれまでの常識を覆すMSが出来る。 Tは武者震い鎮め開発室に向かった。 ほどなくしてプロジェクトチームが発足した。 しかし、プロジェクトは発足して間もなく空中分解の危機に見舞われた。 元連邦の技術者達には北米やオーストラリア出身者が多く、元ジオンの技術者であるTの下では働けないと言い出したのだ。 特に『V作戦』に関わった技術者達は公然とサボタージュを行い、時には敗戦国の人間に従えるかとTを罵る者もいた。 更に追い討ちをかけるかのようにかってライバル関係にあったジオニック出身者とツィマッド出身者が何度も衝突を繰り返し、 プロジェクトチームの内部で連邦、ジオニック、ツィマッドの三派に別れ対立した。 あの忌まわしい一年戦争から5年を経ても勝者と敗者の溝は未だ埋まってはいなかった。 7月31日 この日、崩壊寸前のプロジェクトは大きな転機を迎えることになった。 サイド1の30バンチにおいて連邦政府の圧政に対して行われていた抗議集会を鎮圧するために コロニー政府は公国軍残党殲滅組織『ティターンズ』に出動を要請。 これを受けて出動したティターンズは毒ガスでデモ隊を コロニー住民ごと殲滅するという暴挙に出たのだった。 開発室でこの報を聞いて皆、言葉を失った。 戦後、連邦政府の方針で再び宇宙移民政策が推進され、実際に宇宙に暮らす プロジェクトのメンバー達にとってそれは人事ではなかった。 メンバーの大半がサイド1には家族が、恋人が、友人がいた。 ある者は頭をたれ、ある者は泣き叫び、ある者は漆黒の天を見上げた。 そんな中Tが大声で叫んだ。 「皆、見ただろう!この暴挙を!我々の敵はこのティターンズのはずだ!  今は仲間割れをしている時じゃない!今の我々がしなければならないことは  このティターンズの撒き散らす悲劇を断つための剣を造り上げることだ!違うか!」 皆、言葉を失った。 これでもダメか───Tが諦めかけた時 一人、また一人とまるで憑き物が落ちたかの様に男達が次々と立ち上がった。 Tが気付いた時には地に伏せている者は誰もいなかった。 奇しくも倒すべきティターンズの暴挙によって皆の心は一つになった。 そして、この日から男達の戦いは始まった。 8月 T達のプロジェクトは紛糾していた。 反地球連邦運動(A.E.U.G/エゥーゴ)は発足して間もなく、MSの数も性能も圧倒的にティターンズに 比べて劣っていた。新型機の開発は急務となっていた。 また、アナハイムもMS開発で生き残る為には他社を上回る実績を必要としていた。 このプロジェクトによって今後の方針が決定する正に試金石だった。 だからこそ、一切の妥協を許さない激しい議論が行われた。 チームの意見は真っ二つに分かれた。 一年戦争で驚異的な性能を誇ったガンダムをベースに開発を進めるべきだという意見と 旧ジオン軍のMS技術の粋を集めたガルバルディをベースにするべきだという意見だった。 どちらも一長一短があり、議論は一週間以上も続いていた。 何の方向性も見出せぬままただ時間だけが過ぎていった。 だが、突如として連邦軍内部の親エゥーゴ派から伝えられた極秘情報によって終止符を打たれた。 『ティターンズが組織の象徴としてガンダムMK-の開発を進めている』 このたった一行の情報はT達に激しい衝撃を与えた。 皆、息を呑んだ。 皆が困惑する中で最年長のYが静かに呟いた。 「ガンダムか──面白い。ワシはワシらの造ったガンダムの後継機を超えねばならんわけだ。  ティターンズのバカどもに教えてやるか──ガンダムの伝説を越えるMSというものを───」 そして最も若いWが叫んだ。 「俺達が造るのは連邦でもジオンでもない──その両者が完全に融合し、それを超える新しいタイプの MS──言うなれば第二世代のMSだ!」 この一言で全てが決した。 男達の戦いは静かに、そして人知れず始まっていた。 プロジェクトは連邦軍ひいてはティターンズに知られぬように反ティターンズ勢力の 連邦軍高官の力を借りて開発コードRMS-099として開発を始めていた。 名目上は旧ジオン軍MSの改修及び改良であった。 更にティターンズの査察の目を逃れる為にカムフラージュチームを作り、実際にザクやドムを ハイザックのように改良しているかのように見せかけた。 己のプロジェクトを隠し、一時的にとはいえ敵に媚びを売る技術者として、一人の男として屈辱だった。 しかし、皆、愚痴の一つもこぼさずに耐えた。 ある日、連邦出身のSがTに言った。 「俺達は何もあんたの為にやってるんじゃない。ただティターンズのやり方が気に食わないだけだ。  あんたが気に病む事は無いさ。あの悲劇を断つ事が出来るならこの程度の屈辱、甘んじようじゃないか。なぁ!みんな!」 皆、一斉に頷いた。皆、声に出さないでいたがSと同じ気持ちだった。 最早、男達の瞳には一片の迷いも無かった。 Tは自分に全てを任せてくれた皆の心意気に目頭が熱くなった。 U.C.0086を迎え、数機の試作機が完成した。 試作機はジェネレーターから操作系まで制式MSハイザックを遥かに凌いでいた。 だが、Tはその出来に納得していなかった。 Tは思った。 「通常のMSならこれでも十分だろう、だが我々の掲げる『第二世代』のMSとしては決め手に欠ける。  なにより、ビーム兵器の使用回数が問題だ。」 そう、試作機は全てに於いて在来機を上回るスペックを叩き出していたがビーム兵器に於いてだけはハイザックに劣っていた。 ビームライフルの連射を可能にするEパックの存在である。 一年戦争で大いに威力を発揮したエネルギーCAPの応用であるEパックは最重要機密だった。 Eパックの有る無しでMSの武装は大幅に変わらざるを得ない。 それがT達の結論だった。 しかし、Eパックは如何に巨大とはいえ一企業が単独で開発できるものではなかった。 T達は苦肉の策として、ピストル形状のビーム兵器を2基バックパックにマウントさせ カムフラージュチームが偽装工作として開発を進めていたクレイバズーカをメインウェポンにすえた。 T達のプロジェクトは決め手を欠いたまま数ヶ月の時が流れた。 そんなある日、開発室に上司のQが一枚のデータディスクを持って現れた。 Eパックの設計図と完成率50%のムーバブルフレームの設計図だった。 どちらも最重要機密だった。 ─連邦軍がこのデータを渡すわけが無い。裏があるな─ Tはその事をQに問い詰めた。 「連邦と裏取引をした。わが社が完成済みの技術とのバーターだ。」 Qはあっさりと裏取引を認めた。 皆、口々にQを責めた。 「何故、敵に塩を送る様な真似をしたんだ!」 「我々の技術で仲間が死ぬのは耐えられない!」 だが、Qは 「『完成済み』の技術と言ったはずだ。君達のMSはあんなものなど軽く凌駕するのだろう?  むしろ、Eパックによって完成度は増すくらいだ。何の問題も無い。」 皆、あっけに取られた。 これはT達に全てを託すというQの言葉でもあった。 R型の設計でザクは蘇る。Hは確信していた。しかし本来MS−06が企画された当初より 遥かに高い機動性の要求に応えるには、積載量の不足が壁となって立ちふさがった。 ザクは彼の分身のような物だった。開戦まで軍の要求する台数を揃える為機体の隅から 隅まで何度も見直し無駄を省いた経験を持つ彼が、今度は一分でも長い稼働時間を得るため 燃料の積載スペースを探す。正に身を削る様な苦しみだった。 解決策は思わぬ所にあった。20世紀に宇宙作業の可能性を模索する過程で生み出された スペースウォーク、燃料の化合ではなく液化された推進剤のガス化エネルギーの利用と言う 忘れ去られた技術をHに紹介したのはSだった。 追加推進器(スラスター)の方式変換には既にR型で得られたデータの蓄積のお陰でさほどの 時間は掛からなかった。また燃料への引火(漏れ出した燃料と化合剤の機体内反応)の恐れ も無くなった為防弾処理の簡略化、機体外の増設タンクの追加等後のR−1型へ繋がる 発展型への可能性も生まれた。 久保「今日はリックディアス開発責任者を勤めたTさんにスタジオへおこし頂いています。」 国井「開発の経緯からして波乱万丈の船出ですね。」 T「ええ、特にオーストラリア出身者と元ジオニックの対立は凄かったですね。」 久保「殴り合いの喧嘩でもしたんですか?」 T「(苦笑して)正にその通りですよ。たった5年ではあの因縁は解消できなかったんですね・・・   あの時、皆が纏まるには共通の敵が必要だったんですよ・・・・悲しい事ですがね。」 国井「それがティターンズだったという訳だったんですね?」 T「ええ、私もあの事件で十年来の友人を失いました・・・」 久保「そうだったんですか。」 中略 久保「しかし、Q専務のやった事ってかなり無茶だったんじゃないですか?」 T「そうですね。あの時は何を馬鹿な事をって思いましたよ。でもね、あのあとのQさんの言葉で  ああ、この人は本気なんだ。私達に全てを賭けてくれているんだって・・・  そう考えると非常に嬉しかったですね。」 国井「たしかによほど信頼してなければ出来ない事ですよね。プロジェクトが失敗に終われば会社の    存在理由事態が無くなるようなものですし。」 T「そうですね。嬉しかった反面、プレッシャーもかなりありましたしね。」 久保「Eパックと引き換えに会社の運命を賭けて在来機を凌駕しなければならない重責を担う事になっ    たプロジェクトですが、まだ解決しなければならない問題がありました。    そして、それがプロジェクトにどう関わっていったのか・・・続きをご覧下さい。」 Eパックの導入によりビームピストルの発射回数の問題の解決され、 試験的ながら四肢に導入されたムーバブルフレームによって懸案事項であった人材不足のA.E.U.Gにとっては 死活問題ともいえる整備製も大幅に向上した。 一見、プロジェクトは順調に推移しているかに見えた。 しかし、残された二つの問題がプロジェクトを苦しめた。 装甲材と推進剤のバランス、それにコンピュータに蓄積されている実戦データの量であった。 A.E.U.Gが求めているMSは劣勢な状況下から生還し、少数で長期間戦えるという相反したものであった。 ただ生存率をあげるだけならルナチタニウムを使えばいい──だが、いかに少数とはいえ ルナチタニウムでは生産性に難があり数を揃える事は不可能に近い。かといって他の装甲材では ムーバブルフレームの性能を生かしきる強度が足りない。それに重量が増加して継戦能力が低下する。 それではA.E.U.Gに勝機は失われる。 また、実戦データの蓄積量も問題だった。 A.E.U.G寄りの連邦高官の力を借りても初期の頃の実験データを手に入れるのが精一杯だった。 特に一年戦争で勇名をはせたアムロ=レイ大尉の実戦データなどは連邦軍でもトップシークレットだった。 実戦データの蓄積量はそのままMSの性能に比例する事が多々あった。 いくらハードウェアが優秀でもソフトウェアが非力ではMSの性能を生かしきる事は難しかった。 RMS-099のテストパイロットは優秀だったが、この問題を解決するほどの腕ではなかった。 T達の葛藤は果てる事無く続いた。 T達が残された問題に頭を抱えていた時、意外な所から助け舟が出された。 ジオン公国の残党が立てこもるアクシズから一人の男が新素材のデータを携えてT達の下を訪れたのだ。 Tはツィマッド時代に一度だけ彼と会った事があった。 彼ならばRMS-099の性能を限界まで引き出せる。そして、連邦軍の実戦データに匹敵する物が出来るはずだ。 そう確信したTは彼にテストパイロットとしてプロジェクトに参加を要請した。 彼は意外なほどあっさりとその申し出を了承した。 そして、Tの考えていた以上に彼は不慣れなはずの試作機を機体に負担をかけることなく限界まで引き出した。 彼によって蓄積された実験データは連邦軍の実戦データに勝るとも劣らなかった。 また、彼によってもたらされたガンダリウムγと呼称された新素材はルナチタニウムの抱えていた 量産性や加工性の問題が改善されており、更にルナチタニウムを超える強度を誇り、 装甲厚は当初T達が考えていたものより大幅に薄する事が出来た。 このため、機体全体の質量重量比が飛躍的に改善され、プロペラントの積載量も飛躍的に増量できるようになったのである。 そして、完成したRMS-099は『第二世代』のMSとして相応しい性能を誇った。 ハードウェアとして当時としてはガンダム以来となるMSの革新となったRMS-099はA.E.U.Gの指導者である ブレックス准将によりその性能とティターンズに対する皮肉からかγガンダムという暗号名で呼ばれるようになった。 その後、クワトロ大尉の提言により喜望峰の発見者「バーソロミュー・ディアス」に因んで、リック・ディアスと名づけられた。 そして、0087年3月2日 グリプス1に潜入したクワトロ大尉率いるリックディアス隊はガンダムMK-を奪取し、 一年戦争から7年の歳月を経て再び地球圏を二分するグリプス戦役へ発展することになった。 少数ながら量産されたリックディアスは各地を転戦し、目覚しい戦果をあげた。 0088年2月22日 グリプス2で行われた艦隊戦によってティターンズは壊滅した。 リックディアスは最後まで前線で戦い、戦線を支えきった。 そして、今、リックディアスと呼ばれた悲劇を断つ剣の最後の一振りがスミソニアンで静かに眠りについている。 二度と目覚めぬ事を祈りながら。 プロジェクトX 〜技術士官達〜           悲劇を断て〜リック・ディアスに賭けた一撃〜                      終