「ガンタンク〜もう一人の機械の兵士〜」 (あのナレーション) 宇宙世紀0079。 後に1年戦争と呼ばれるこの戦いは、それまでの戦争の常識を覆した。 モビルスーツ。 機械の兵士の登場である。 従来の兵器の常識を覆すその汎用性は、 ミノフスキー粒子の特殊電磁波効果も手伝い、その有効性が実証され、 後の戦争の主役となっていった。 人類初の人型ロボット兵器、MS-05ザク。 連邦軍はその効果を、敗北寸前にまで追い詰められ、初めて認識した。 しかしその存在は、諜報部によって既に察知されていたのである。 宇宙世紀0074。 当時の陸戦兵器の主役・戦闘車両開発部。 その男、Sの席は窓際に追いやられ、完全な厄介者扱いであった… 0074年。戦闘車両開発部は、もはや「開発部」とは呼べない状況だった。 サイド3がジオン公国を名乗り独立。 それに対し連邦政府は、70年代軍備増強計画を発表、 緊張が高まっていく。 そんな緊張をよそに、戦闘車両開発部は慌ただしかった。賑わっていた…といった方が正しかった。 正式採用されていた61式戦車の増産命令が下り、開発部の人間達までもがかり出されていたのだ。 屍肉に群がるハイエナ。 Sはそんな会社の方針に嫌気が差し、ついには上層部と対立。 賑わう会社の中で、孤立していた。 そんな中、Sに仕事が回ってきた。 「巨大人型兵器の設計・開発」 軍の機密条項上は、最高機密とされていたが、この計画がいかに軽視されているかは、 彼にお鉢が回ってきたことを見ても明らかだった。 戦闘車両を開発・生産するこの会社で、戦闘車両に相反する思想の兵器の設計・開発を担当すると言うこと。 それは今のSの会社での立場そのものであった。 「人型兵器」。この言葉にSは奇妙な感覚を覚えていた。 「戦争」の主役はあくまでも人間である。 戦場で人は醜く勝利を喜び、醜く敗北を悔やむ。 その姿があればこその戦争であるはずだ。 そして人間の英知が詰まった兵器。 それは戦闘の為だけに存在するオブジェ。 破壊と殺人の権化の異形は、だからこそ美しい。 それなのに、何故「人型」なのか? 画面に向かって互いにボタンを押し合うだけの戦争。 そんな歴史を乗り越え、やっと一つになったかに見えた人類。 人の形をした兵器が、戦場から人間を駆逐し、 やがて人間の宿業すら希薄なものにしていく。 そんな光景は見たくはなかった。 Sには信念があった。 いや、正確には「自分には信念が有るはずだと」思っていた。 その信念が、Sの技術者としての尊厳を押しつぶそうとしていたのである。