プロジェクトX〜技術者たち〜 ネオデンマーク代表のモビルファイター、マーメイドガンダム。おそらく、全ガンダム の中で最も試作品が多い機体である。これは海産物に命を掛けた男たちの物語である。 ネオスエーデンで最新鋭モビルファイターの開発がはじまった。 プロジェクト名は『SEA GUNDAM』。 この時点でスタッフたちはプロジェクトの難航を予感した。 プロジェクト名の由来を尋ねると、リーダーは答えた。 「神のお告げで、『濁点を加えると番組タイトル名になるぞ』と言われたのだ」 メンバーの殆どが、辞表の提出を真剣に考えた。 しかし、国家の命運のかかったプロジェクトだ。 後戻りは出来なかった。 早速試作1号機が完成した。 通称:クラーケンガンダム 10本の腕で敵を海に引きずり込む恐怖の機体である。 全身には新開発の《イカリウム合金装甲》が施された。 実践テストが行われた。 クラーケンガンダムは、陸の上では這うことしか出来なかった・・・・ 前回の失敗を踏まえて、試作2号機が完成した。 通称:オクトパスガンダム 《イカリウム合金》より更に柔軟性を増した《ガンダコリウム合金》を装甲 に採用した。どんな隙間にも隠れ、擬態により背景に機体を溶け込ませる、 隠密性に優れた機体である。 しかも、ハイパーモードになると機体色が真紅に染まり、『シャイニング うねうね』でどんな敵をも締め上げる筈だった。 実践テストが行われた。 クラーケンガンダムよりも柔らかい分、更に始末が悪かった・・・・・ 今度は装甲を重視した機体を試作した。 通称:ムール貝ガンダム 地中海の幸、ムール貝からヒントを得た、絶対無敵の防御を誇る機体である。 ガレージから牽引されて出てきたムール貝ガンダムを見て誰もが絶句した。 「手も足も出ない・・・・・」 完全な失敗作だった。 装甲と運動性のバランスを考慮して、次なる試作機が開発された。 通称:海亀ガンダム カッター状の前足(ヒレ)で敵を切り裂き、亀甲装甲がどんな攻撃も機体を 守る。地上での運動能力も、海中での機動性も申し分なかった。 誰もが、これで正式採用だと思った。 しかし、海亀ガンダムが首を伸ばしたとき、その願いは砕かれた。 「かなり気持ち悪い・・・・」 とても夕方5時頃に放映できるものではなかった。 その後、サメガンダム、オットセイガンダム、カニガンダム、ウミヘビガンダム と幾つもの試作機が作られたが、何かしらの欠点を必ず備えており、実用化には程遠かった。 国井「本日は開発メンバーの一人のAさんにスタジオにおこし頂きました」 膳場「Aさんの印象に残った試作機とはどれでしょうか?」 A 「ムール貝ですかねぇ。なにせ自分で動けないんですから」 国井「しかし、あれは本当にガンダムだったんですか?」 A 「ええ。ちゃんとガンダムの顔を持っていましたよ」 膳場「しかし、貝殻で中身は見えませんが・・・・」 A 「失敬な!あれはれっきとしたガンダムなんです!」 国井「・・・・え〜ではプロジェクトの続きをどうぞ」 そんな時、子持ちのメンバーが子供の絵本からヒントを得た。 通称:人魚ガンダム 魅惑的な上半身と魚類の下半身を持つ機体である。地上では下半身は2本の足に 変形し、完全な人型として活動できた。必殺技の『セイレーンボイス』は敵の 戦闘意欲をそぎ、一気に無力化する究極の武器だった。 これでもう大丈夫と、誰もが安堵したその時、衝撃的な知らせが飛び込んできた。 「これに乗るガンダムファイターは男性です」 『男にお色気攻撃などできるはずがない』 計画はまたも白紙に戻った。 絶望に打ちひしがれるメンバーは、街に出てヤケ酒をあおっていた。 その時である。 メンバーの一人が指差す先には、被り物を着たアルバイトがプラカードを 振っている姿があった。 「これだ!」 リーダーは絶叫した。 翌日、二日酔いのメンバーを前に、リーダーは最新試作案を提出した。 それは、魚の被り物を着たガンダムだった。 「海中ではどうするのか?」 その疑問にリーダーは答えた。 「手足を引っ込めればいい」 誰もが泣いた。 それは感動からではなく、悔し涙だった。 『そんなこと、誰か気付けよ!』 誰もが言いたくて、誰も言い出せない一言だった。 そして、マーメイドガンダムは完成した。 出来上がったものはどう見ても半魚人だったが、 『それ人魚やなくて、半魚人やんけ!』 とツッコミを入れる気力のある者は、もはや居なかった。 国井「どうしてマーメイドガンダムという名前に決まったんですか」 A 「リーダーが人魚ガンダムのときに、先走って名称だけを登録しちゃった    という事情もあったんです。再申請も出来ましたが、もうそのやる気も失せて・・・・」 膳場「それにしても、最初から最後まで苦難の連続だったんですね」 A 「そうですよ。その所為で今でも魚介類を見る度に神経性の痙攣が起こるぐらい・・・」 国井「ほう?(鯛の人形を出す)」 A 「はうぁああ!!さかなが!さかながぁあああ!」 国井「それでは、エンディングです」 彼等の開発したマーメイドガンダムは、幾多の戦いを潜(くぐり)り抜け、決勝 トーナメントにまで勝ち進んだ。また、国家予算の無駄使いとバカにされた試作 機達もデビルガンダムとの死闘に随分役立ったという。 〜完〜