[34] プロジェクトX 反地球連邦政府活動に命をかけた男たち sage 03/05/24(土) 21:32:00 ??? 21:15 ”みゆき様に歌っていただきました” プロジェクト X 反地球連邦政府活動に身を投じた、男たちのドラマである。 カイ・シデン。サイド7難民。数奇運命のめぐり合わせで、サイド7に寄航した 強襲揚陸艦“ホワイトベース”の乗組員になった。  艦内ではおもに、RX−77 を担当。連邦軍屈指のエースとなるも、戦後す ぐに除隊。年金で大学に通う傍ら、ジャーナリストになった。 ハヤト・コバヤシ。 おなじくサイド7難民。RX−75を担当。戦後は、戦争前 からの友達のフラウ・小林と結婚。北アメリカにて戦争博物館の館長をつとめる。 二人の戦争は、0080年1月1日に、終わったはずだった。おなじWBのクルー たちのほとんどは、除隊が許されなかったものの、閑職にあまんじ、つかのまの 平和を謳歌していた。  しかしなぜ、彼ら二人は、平和な生活をなげうってまで、反地球連邦政府活動に 、身を投じたのであろうか? 国井「今日は、二人をよく知る人物、もとWBクルーにて、現在は海軍戦略研究所 におつとめの、ジョブ・ジョンさんを招いております」 J「あ、どうも、ジョブです」 国井「さっそくですが、彼ら二人のことなんですが、直接的なお付き合いがあった のは、戦中だけだったんですよね」 J「えぇ、そうです。クルー同士あうことは、なぜか情報部に邪魔されてましてね。 誰かの結婚式とか葬式のときに同窓会みたいなことやってましたけど、そのうちき な臭くなってきて、いそがしくなって。クルーのほとんどがサイド7難民だったか ら、ティターンズに入ったヤツなんていなかったけど、86年くらいから合わなく なったなぁ。いまなら、情報部の監視もないからべつにどってこともないんでしょ うけど、みんな、WBおりたあとの生活のほうに生き方の比重を重くしてるから、 いまさら同窓会、てこともないですね 国井「わかりました。それで、カイさんとハヤトさん、てどんな方でした?」 J「そうですね。15,6の子供らしく、いっつも感情剥き出しでしたね。僕 にしろ、死んだリュウ・ホセイにしろ、入った時期はともかく、多少なりとも 軍の飯くってた連中からみれば子供っぽくて仕方がなかった。でもそこがかえっ てうらやましかったですね。カイのほうはひねくれ屋でなにごとも理屈で理解 しないと納得しないんです。ハヤトはいわれたことはちゃんとやるけど、気に 食わないことは言ってきますね。いまだからいいますが、僕、なんども投げら れてます、彼に(笑)」 国井「WBにはあの伝説のNT、アムロ・レイもいましたが、彼に対する二人 の態度はどうでした?」 J「そうですね。おなじパイロット仲間としてのライバル意識てのは程度の差 はあれ、もってたとおもいます。とくに、焼け出される前からの知り合いだっ たハヤトは、アムロに対してそうとうコンプレックス持ってたみたいですよ。 カイのほうはそれほどでもなかったかな。いまだから言うけど、引きこもりと ひねくれモノの仲たがいなんてのは、2Chでもおなじみですし。ただ、ね。 大西洋を出たあたりからカイは男として一皮むけた感じがしましたね。パイロ ットとしての腕はアムロにおよばなくても、男としてはカイのほうがすこし上 だったように思います」 国井「二人が反地球連邦政府活動に身を投じた動機というのは、そこらあたり がキーワードのようですね。それでは、二人をもう少し深く掘り下げてみましょう」 (えーっくす) カイは軍を除隊したあと、大学に入学した。とはいっても通信制大学で、昼間は調査 活動をおこない、夜になると大学からの課題のレポートにとりかかった。  カイはジャーナリストになりたかった。何かでかいスクープをものにして、ニュー ヨークタイムスの記者になりたい。そう思った。ペンのちからで、剣を食い止めたい。  しかし、なにも実績のない若造がジャーナリズムの世界に入ったとて、すきに取材 をさせてくれるわけもなかった。  カイには、掘り下げたいテーマがあった。 ミハル・ラトキエ。ベルファストでWBに密航した、ジオンの連絡員。幼い兄弟を食 わせるために、アースノイドでありながらジオンの工作員として働いた。  聞けば、彼女のようなアースノイドの連絡員は、戦前、戦中から無数にいたという。  彼に直接の責任はないが、カイの目前で、彼女は死んだ。  戦後カイはベルファストに向かい、残された二人を見舞った。二人は、パブで働き ながら生きていた。カイのことを、死んだ姉さんの恋人と思っていた二人に話を聞く と、以外な話が聞けた。 「ねぇちゃんは、IRAシンパだったんだ」 IRA。旧世紀にアイルランドで暴れていた、テロリスト集団である。旧世紀のI RAを先祖に持つ新生IRAも、結局のところただのテロ屋でしかない。が、目 の前の兄弟の姉が、そんなテロリストのなかまだったとは、カイには思えなかった。  なぜだ。カイはおもった。  戦中のことを知る地元の人にカイはたずねた。  「戦争中は食い物にこまってね。ミハルのところもくってくのがやっとだったよ。 でも、IRAの仕事をしなくたって、食うだけなら何とかなったはずさ。現にあた しも、IRAなんぞにかかわらないで、5人の子供を女でひとつで養ったんだ。」  カイのテーマがきまった。  アースノイドでありながら、ジオンに味方をしたミハル・ラトキエ。彼女の謎を 掘り下げること。  そのテーマをまとめるために、エール大学への入学をとりけし、フリーライター への道をとることを、男は決意した。  ベルファストでの聞き込みは、難を奏した。ジャーナリストとしては無名だが、 カイ・シデンは一年戦争屈指のパイロットである。知らないものはいなかった。し かし、そんな男が反政府勢力の調査をしたところで、芳しい結果が得られるはずも のかった。政府の犬、と罵られた。  地球上のほかの地域では英雄扱いされるWBクルーだが、ここベルファストでは、 憎しみの対象でしかなかった。現地の警察が、トラブルのもとだから、と退去を依 頼したこともあった。  理由が、あった。 昔、旧世紀のころ、アイルランドとイギリスの間の宗教対立で、アイルランド人は 弾圧され、IRAを結成した。旧世紀の終わりにイギリスとIRAの間に停戦合意 は成立したが、宇宙世紀に入り、連邦政府の宇宙棄民政策に同調するため、アイル ランド人を優先的に、宇宙棄民したのだ。  宇宙開発の熱もさめた40年代、政府が科す移民ノルマを達成するため、各政庁 は少数民族の宇宙棄民をはじめた。  それが、宇宙世紀における彼らのありようだった。 IRA。旧世紀に滅びた、アイルランド共和国軍。旧世紀はプロテスタントが支配 するアイルランドからの解放を目指したテロリストどもだった。が、宇宙世紀にお けるIRAとは、宇宙への強制移民に反対するアイルランドの解放勢力である。一 方的にアイルランドの民を宇宙に棄民する連邦政府およびブリテン政庁に反対する 勢力である。IRAはけっして、アイルランドという土地だけにこだわっているわ けではない。平等にすべての人民が宇宙に移るのならまだしも、自分達がカトリッ クだからという理由だけで宇宙に打ち上げられたくはない、というのがかれらの主 義主張である。  調査は難航を極めた。がカイの熱心な姿に、ひとり、二人とくちを開いてくれるも のが現れたのだ。  新生IRAは、ジオン地上軍と、密接な関係があったという。予想はしていたこと だ。が、それ以上に大事な情報が、カイの元に飛んできた。 「オデッサ・ファイル」と呼ばれるファイルである。 そのファイルのReed.meだけ、手に入った。 内容は、恐るべきものだった。 ジオン地上軍は地上侵攻に際し、大規模な諜報網をつくった。その大半が、地球圏内に存在する、反地 球連邦政府活動者、いわゆるテロリスト・グループを取りまとめたものだった。 海戦前のジオン軍はサイド3に本拠を置いている。地上に勢力圏をもたない。しか し、諜報活動なしで戦争が出来るはずもなかった。ましてや、ジオン軍は切り札の ミノフスキー粒子を散布し、大規模バレッジ下での戦闘を連邦軍に強いることで、 戦力差を跳ね返そうとしている。戦術偵察機や偵察衛星なども、使い物にならない。 情報収集も、人に頼らなければならない。  しかし、ジオン軍情報部は、各コロニー駐留軍を経由しての連邦軍、連邦政府へ の浸透作戦は成功していたものの、地上軍だけは、手が出ていなかったのだ。  その詳細が、オデッサ・ファイル本編に記載されていると、容易に予測された。  カイは現金での買取を、持ち込んだ男にしたが、男は一笑にふした。 「金の問題じゃねぇんだ。ジオン製の熱核ジェットエンジン一機と交換だ」 そのIRAの男が、そのエンジンで何をするか、考えなくもなかった。 えーっくす そのころ、ハヤト・コバヤシは悶々としていた。北米で戦争博物館の館長をしてい た、とはいってもそのような仕事はもう少し老成したもののやることであり、しか しながらその仕事に就任したのはまだ10代のうちだった。  熱い血潮を発散するかのように、何度か柔道の大会なんかにも出てみたりもした が、それでも、ハヤトの魂は癒されることはなかった 「あなたはあの戦争でがんばったんだから、今はおやすみなさい」と妻のフラウ・ コバヤシはよく言ったものだった。「そのうちいいことがあるわ」と  夫婦生活は、表面上はうまくいっていたが、一皮めくれば、あまりぱっとしたも のではなかった。  フラウは、ハヤトがアムロに対して、抜き差しがたいコンプレックスを持ってい ることをしっていた。だから、アムロの話題を出すことはなかった。戦争中の怖い 思いを思い出させることはないから、と彼女が話す話題は、いつもこれからのこと だった。  しかし、彼らが養子にした戦争孤児、カツ・レツ・キッカにとって、アムロは英 雄だった。  自分達の養父、ハヤト・コバヤシも、最終的な撃墜数こそ天と地ほどの差がある ものの、同列に考えていた。だから、何の気なしにアムロの話題を口にする。それ が、ハヤトには気に入らなかった。 「それでも、あたしや子供達に暴力をふるわなかっただけ、あの人は立派だったと 思います。そんなとき、あの人は部屋に篭ってしまいましたね。私達が結婚して暫 く子供が授からなかったことも、それが原因だったのかもしれません」  とフラウは語る。 クボジュン「緊急ニュースにより、番組が中断したことをお詫び申し上げます」 「えーっくす」 ある日、ハヤト・コバヤシの元に、一人の客が訪れた。 カイ・シデンだった。 突然の訪問。いっしょに死戦を潜り抜けてきた仲ではあるが、かといって、ともに 酒を酌み交わすような中でもなかったはずだった。 ハヤトは、緊張した。 「これを見てくれ」 とカイはハヤトに、1枚の光学ディスクを渡した。 内容は、後の世に言う「30バンチ事件」のものだった。 地球連邦軍のなかでもエリートとされている、アースノイド特殊部隊「ティターンズ」 が、コロニーにG3ガスを注入している、あのシーンである。 メディア各局には映像の差し押さえ命令が出たものの、アングラにでまわったものま では、ティターンズは回収し切れなかったのだ。カイは、おなじジャーナリスト志望 の若者から、コピーさせてもらったのだ。 「こんなものを、なぜ?」怒りに震えながらも、ハヤトは疑問を口に出さずにはいら れなかった。 カイはそれには答えず、つぎに、オデッサ・ファイルのREAD.MEを見せた。 「何が言いたい?」ハヤトは問うた。 「熱核ジェットエンジンを一つ。ジオン製。06が背負ってた奴だ。戦争博物館なら、 実物くらいあるだろ?」 カイは、ハヤトに「オデッサ・ファイル」の説明を、もう一度した。  そのファイルがオデッサの名を冠しているのは、単純にジオン地上軍情報部が、 マ・クベ大佐のオデッサ鉱山基地にあったからに過ぎない。しかし、地球上の、主 義主張のまったく違うテロリスト・グループを反連邦の名のもとにネットワーク化 し、諜報網として機能させていたことから鑑みると、その結成そのものに、辣腕で 知られるキシリア・ザビ少将や、その懐刀のマ・クベ大佐の積極的な関与があった と考えるのが自然だ、とカイはいった。奴らが作ったんだ。このネットワークはま だ生きている。 ハヤトは、言葉に詰まった。自分はニュータイプになれなかったと自覚していたが、 このときばかりはカイの考えていることが手にとるようにわかった。 「奴らに接触する」カイは断言した。 「地球上には、ジオンが宇宙に逃げるとき残していったMSがかなりある。小 破程度のものも多い。奴ら、そんなMSをニコイチ・サンコイチして相当数を 秘匿してる。おれがパーツを横流ししなくても、奴らは06を完成させるだろ う。それならば、とカイは言った。 「おれが奴らを掌握する。オデッサ・ファイルを足がかりにして」 実際のところ、戦争博物館館長の立場を利用すれば、実物のパーツなど、ノ ーチェックで手に入る。デモンストレーションに使うのだといえば、ジオン 機なら実機が手に入った。 「考える時間が欲しい」ハヤトは、言った。おれには家族がいる。 それよりも、カイの動機のほうが、ハヤトにはわからなかった。 その日、二人だけで、酒を酌み交わした。 その女性に心当たりはなかったが、そういえば大西洋上でそんな騒ぎがあったな、と ハヤトは思い出した。その密航者が工作員だったことを聞かされても、ハヤトは気に しなかった。自分達だって、生き残るためならジオンに魂を売っていたかもしれない のだ。好きで連邦軍に所属したわけでもない。 「その弟、てのが戦後、連邦軍のニタ研に拉致され、強化人間、とやらの研究に携わ ってるらしいんだ」 と、カイは居酒屋のカウンターで漏らした。 「よくそんな情報・・・・」ハヤトは感心した 「ブンヤのヒヨコとはいえ、情報網はちょっとしたもんさ。戦後のどさくさで行方不 明になった子供達てのが結構いるらしくてな、それを記事にしたいって言う知り合い のジャーナリストの取材を手伝ったことがある。多くは連邦軍がいろんなところに作っ た“スクール”っていう、幼年学校まがいのところでスパルタ訓練させられてる。そ のなかでニュータイプの素質あり、て思われたのが何人か、ニタ研に送り込まれてる らしい」 そのジャーナリストは連邦軍に殺された、とカイは付け加えた。 「何のためにそんなことするんだ?戦争は終ったんだぞ」 「今は戦後じゃない、戦前なんだ」 と、カイは古ぼけた天井ごしに、宇宙を睨んだ。 「宇宙でも、似たような動きが始まってる。だからオレは、地上の星を探し出すんだ」 ハヤトは、カイのそのあまりにも詩人めいた台詞に、心を動かされた。 「おまえがそうであってくれればいいんだが」 翌日、06のエンジンがパーツごとヨーロッパに送られ、戦争博物館のザクのエンジン が、ダミーに換装されていた。