( ̄ ̄<     / ̄>                   \  ヽ   / /ソ         プ ロ ジ ェ ク ト\  ヽ P r o j e c t MS    ─────────────────────          技術者たち /|_/ /\engineers                  |   /   \   丶                  \/       \__ノ 「新型ボール開発計画」 (エーックス・・・) ブッホ・コンツェルン。作業機械を中核とした巨大企業。 クロスポーン・バンガードを名乗り、決起。地球連邦に戦いを挑んだ。 たかが一企業の反乱。だれもが早期鎮圧を予想した。 しかし連邦軍は、思わぬ苦戦を強いられた。 クロスボーン・バンガードのMSに標準装備された新兵器ビームシールド。 通常のビームライフルでは、有効打を与えられなかった。 その中で確実に戦果を挙げた機体、サナリィが開発したF91。 装備されたVSBRは、やすやすとビームシールドを打ち抜いた。 連邦軍はこの機体の量産を決定した。 しかし量産するには、あまりにも高コストな機体だった。 そして軍事費の増大を、世論は許さなかった。 大量配備は難しい。 そして少数のF91に十分な戦果を上げさせるには、支援機が必要だった。 そしてその支援機には、可能な限りコストを下げることが要求された。 クボジュン 「今夜プロジェクトXは『新型ボール開発計画』。  一年戦争当時、動くカンオケと呼ばれた機体を 最新鋭機として甦らせた開発者の物語を追います」 設計を依頼されたY。最初のミーティングで叫んだ。 「今さらボールだなんて、軍は兵士の命を何だと思っている!」 容易に撃墜される機体を作るわけにはいかなかった。 Yは一年戦争当時の記録を、漁った。 作業用ポッドに砲をつけたにすぎないボール。 一旦敵機に捕捉されると、逃げるのは不可能に近かった。 あまりにも足が遅く、 そして二本のマニュピュレータによる不十分なUNBACでは 運動性も拙悪だった。 基本がこのボールでは、運動性の向上は不可能。 敵から逃げられるだけの、速力の向上しか選択肢はなかった。 そしてそれには、高出力のジェネレータが必要だった。 高出力のジェネレータは、MSへの搭載を前提に開発されていた。 それはボールに搭載するには、大きすぎた。 ボールに搭載できるサイズのジェネレータ、Yは探し求めた。 アナハイム社を訪れたY。一つの兵器に目を奪われた。 G−BARD、F91にお株を奪われたアナハイムが作り上げた 試作機ネオガンダムに搭載された ジェネレータを内蔵した大型ビームライフル。 「これだ!」 Yの目が輝いた。このサイズならボールに搭載できる。 そしてその出力は、F91に劣らぬ高速力を可能とした。 次に問題となったのは、武装だった。 ボールは大量投入による弾幕射撃によって戦果を挙げた。 しかし、それほどの大量配備は、平時にはとても無理だった。 ただでさえ一年戦争当時に比べMSは小型化し、 運動性は飛躍的に向上している。 命中はおろか、牽制にすらならない。 Yは一つの記録に注目した。 ボールの初期型は砲を二門装備していた。 そしてその初期型ボールで、 ジオンのザクと一対一で戦い、相打ちに持ち込んだ戦闘の記録。 Yはさらに一門増やし、三連装とした。 これならば、少ない数でも弾幕が展開できる。 あるいは三門を交互に打ち出せば、命中率にかなりの向上が期待できる。 さらに接近された際に備え、自衛用にバルカン砲が二門装備された。 これの有効性は、連邦MSの標準装備となっていることで実証ずみ。 生還率を上げられる。 Yは手ごたえを感じていた。 不可能と思われた新時代のボール、手の届くところにあった。 (エーックス・・・) クボジュン「本日は開発責任者をつとめられたYさんに       スタジオにお越しいただきました」 クニイ「一年戦争時に動くカンオケの異名をとったボールの再設計ですが、     最初それを聞かされた時、どう思いましたか?」 Y「そりゃあビックリしましたけど、それ以上に・・・なんというか   事態が飲み込めませんでしたね。軍の方には悪いですが・・・   狂人と話してるのかと思いました」 クニイ「事実上、外見はボールでも中身は別物にされたわけですが     どういった苦労があったんでしょう?」 Y「中身は別物といいますが、やはり量産性を維持するためには   ほとんど中身も替えられないんですよ。   まったく別物にしてしまえれば楽だったんですけど、   駆動系とかはそのままですからね。機体のバランスをとるのに   非常に苦労しましたよ」 クボジュン「それで何とか形になりかけた新型ボールですが       意外な壁にぶつかります。では続きをご覧下さい」 公試の日がやってきた。 砲撃試験。結果は順調だった。 3連装砲から放たれた砲弾。確実に目標をとらえた。 ビームシールドを貫くことはできなくとも、支援・牽制には十分とされた。 続く離脱試験。 撃墜判定が相次いだ。 銃撃に対する回避運動。運動性が劣悪なボールでは、足を遅らせた。 結局は距離を詰められ、撃墜へと追いやられた。 Yは打ちひしがれた。 運動性の向上は構造上出来ない。 これ以上速力を上げるには、出力が足りない。 八方塞がりだった。 その時テストパイロットは言った。 「せめて逃げる際にも攻撃できれば、牽制して向こうの足も遅らせられる」 構造上、ボールは後ろには武器を向けられなかった。 Yは、悩んだ。 後ろに攻撃できないなら、たとえ逃げる時でも敵に後ろをみせなければいい。 ならば、バーニアの位置を替えれば… かくしてバーニアは下部に設けられた。 結果は良好だった。 砲は真下には無理でも、下になら向けられる。 離脱する際、なんとか牽制攻撃が出来た。 これにはうれしい副産物もつけられた。 これまで重力下では、ボールの運用は困難だった。 しかしバーニアを下部に設けることで、 重力下でも砲撃姿勢が維持できたのである。 やや低下した量産性を補ってあまりあるメリットだった。 そして第二回公試。 新型ボールは、見事採用を勝ち取った。 クニイ「バーニアを下に向けるという発想ですが、     これはどこで思いついたのでしょうか?」 Y「いや、コロンブスの玉子という奴でして、   よく考えればMSは全部そうなっているんですよ。   考えついた時は、なんでそれを今まで思いつかなかったか   悔しかったですね」 クニイ「制式採用が決まった時の気分はいかがでしたか?」 Y「それまではカンオケ職人とか陰口を叩かれて悔しい思いもしましたから   もう、ザマーミロ!って感じでしょうかね(笑)」 クボジュン「ではこの新型のボールは軍でどうなったのでしょうか       エンディングです」 木星帝国戦役。ボールは実戦投入された。 戦闘を記録した映像には、ボールはほとんど登場しない。 それは常に戦闘空域から、一定の距離をとることに成功した証であった。 ――糸冬――