[185] プロジェクトX ハイザックを作った男たち sage 03/09/30(火) 23:04:00 ??? 前略 その依頼は、意外なところから来た. 教導隊。 彼らは、敵対勢力の用いる機体で、敵対勢力がと りそうな戦術を模倣することで他の部隊と模擬戦 を行い、教え、導く。 別名 アグレッサー部隊。 戦後、彼らは捕獲したジオン製MSを使用していた。 当初のうちは潤沢にあった補修パーツではあるが、 連邦系の技術とはあまりにもかけ離れた技術体系 のもとに構成されているため、一つ一つの部品を 作り直すには、技術的には不可能ではないものの あまりにもコストがかかりすぎ、戦後3年もたつと MS-06系の予備パーツはそこをつく、というのが 教導隊の見込みだった。 Y中尉は、技術開発局に直訴した。 「敵はスペースノイドだ。当然、ザクが主力だ。俺たちは ヨチヨチ歩きもままならないヒヨコどもに、ザクとの戦い 方を教えなければならん。それなのに、補修パーツの補給の 目処は立たないんだ。」 だから、なんとか、既存の連邦系パーツでザクの補修が出来 るような手を考えて欲しい、とY中尉は頭を下げた。 Y中尉は、生粋のアースノイドである。当然、最初に頭を下げ たのはジャブロー本部である。 しかしながら、ジャブローのモグラは、そんな一士官の陳情な ど無視した。 「性能的にはRGM-79だって06系に引けを取らんのだ。きみは スペースノイドがとりそうな戦術を、既存の機体でトレース すればよい」 現場を知らない将官たちの、たわごとだった。 エンジン出力やスラスター出力、センサー半径、携行火器などで比べると たしかに、RGM-79のほうが一枚上手である。 しかしながら、RGM系と06系の機体で、数値に現れない、しかしながら重要な 差異があった。 骨格構造である ジオン系MSは基本的にモノコック構造である。 装甲外板が、骨格の代わりをする。外骨格と いってもいい。 装甲が骨格を兼ねるので、被弾に弱いものの そのぶん構造体を節約できるから、同じ出力 の間接のパワーでも、運動性が格段にことなる。 RGM系はセミ・モノコックという構造をとっている 内骨格と害骨格の中間のような構造で、装甲外板で 機体強度を全部あがなわなくてもいいのでモノコッ ク方式よりも被弾に強い反面、別に骨格パーツが必 要になり、重量は増加した。 戦場で使う機体としてなら、骨格の方式に大きく優 劣はない。運動性をとるか、耐久力をとるかの選択 に過ぎない。 しかし、教導隊の士官としては、モノコック方式の ザクの運動性と、それがもたらす戦術を、生徒達に 教えたい。そのためにザクのパーツが必要になる。 それもまた、一つの真実だった ジャブローのモグラに愛想が尽きたY中尉は、連邦軍のさまざまな 開発拠点を回った。 しかしながら、どこの拠点でも、ザクの補修パーツを作ってくれる という答えを引き出せなかった。 一番期待していたペズンからして、門前払いにされた。ペズンとは、 ジオン突撃機動軍の開発プラント小惑星で、大戦末期、戦局を覆す ような新型MSを開発している、となんどもうわさに上った拠点であ る。 ジオン軍が戦意高揚のためにながしたデマだと思われていたが、接 収されたペズンから押収された開発プラン”17”はもし、実現して いたら、あのRX-78をはるかに上回るスペックを維持しながらも既 存の施設を利用してすぐにでも大量量産、配備が可能とされていた。 それほどの施設だから、戦後すぐにプロジェクトチームが結成され、 元ペズン所属のジオン軍開発チームと技術的すり合わせが行われた。 「当方は研究施設でして、生産設備は所持しておりません。したが って、貴官の要請にはこたえられません」 生粋のアースノイドのY中尉にとって、ジオン系技術者に頭を下げる 事でさえ屈辱的なのに、その上、要請をにべもなく跳ね除けられ、Y 中尉は荒れた。鬱屈した感情が訓練にも跳ね返り、もっとも手ごわい アグレッサー部隊と恐れられ、 「最恐」の異名をとった。 スタジオ 国井「今日は、当時同じアグレッサー部隊に所属していた、フィリップ・フューズ元 中尉に来ていただきました。」 久保「フィリップさんは軍を退役され、いまは念願だったパン屋を経営なさっていま す」 F「よろしくお願いします」 国井「フィリップさん自身も、一年戦争時代、消耗率53パーセント以上といわれていた 実験部隊に所属されていた優秀なパイロットと伺っております」 F(ちょっと照れる) 国井「その頃のお話も非常に興味深いのですが、今日のテーマとはずれますので、そ れはまたの機会にしたいと思います」 久保「フィリップさんはその戦歴を買われ、戦後すぐには除隊を許されず、0084年ま での4年間、軍にとどまりました」 国井「それで、一年戦争後は教導隊に転属になり、後進の指導にあたられたわけですね」 F「そうです。ぼくらモルモット部隊は連邦軍でたぶん、一番早くMSに触れた連中でし たからね。GMの量産 が軌道に乗るまでは、捕獲したザクをもつかって、MSそのものに慣れるような訓練をし ていました。正直な話ザクに乗って実戦に参加したこともあります。言い方を代えれ ば、連邦軍でもっともザクに慣れたパイロットの一部ともいえます」 国井「それで、当時同僚だったY中尉の事を話していただけませんでしょうか?」 F「なにから話せば・・・・・・」 久保「そうですね。人柄とか、当時をしのばせるエピソードとか」 F「とっつきにくい奴でしたね。近寄りがたい奴でした。俺はアースノイドなんだって いう自負がそうさせるのですかねぇ。腕はピカイチです。いままであった誰よりも。 私だってそりゃ、部隊の中でも上から数えたほうがはやい腕だと自負していましたが、 あいつだけは別格です。でも、あいつは腕もたつが、なにより、仕事熱心でした」 国井「ありがとうございます。それでは、ここでもう一人の人物にスポットを当てた いと思います」 久保「Y中尉は開発拠点を転々としながら、最後にグラナダにたどり着きます。グラナ ダで出会ったのは、Eという技術士官でした」 グラナダ。戦争中はジオン突撃機動軍の本拠地で、キシリア・ザビが納めていた。ジ オニック、ツゥィマッド、MIPなどのジオン系の軍需産業も研究施設や生産拠点の一部 を移していた。また、戦後最大の軍需産業となったアナハイム・エレクトロニクスの生 産拠点もあった。 戦前から、ルナリアンのなかでも、エアーズ市やフォン・ブラウンなどと違ってそちら かというとスペースノイド贔屓の気質もあり、キシリアの占領中も軍と市民の間に問 題は起こらなかったし、戦後、連邦軍が占領したときでも、グラナダがサイド。本国より も手を焼いていた。 そんなところだから、連邦軍が期待していた、“十年先の技術”の接収は困難を極め ていた。 グラナダの造兵工廠を訪れたYは、現地のスタッフに簡単なレクチャーを受けた。 「ジオニックの社員はほとんど、サイド。に帰っちまいましてねえ。熟練工がいなけ りゃ、ラインが残っててもパーツを製造できるかどうか・・・・ジオン側の協力がな いから、技術の接収も進んでいません。中尉がおっしゃるような部品の共用化まで進ん でいないのが、現実です」 Y中尉は、肩を落とした。 そのスタッフはY中尉を哀れんだのか、いまはアナハイムに株式を全部取得され、子会 社となったAE・ジオニックグラナダ工場の工場見学の申請を取ってくれた そこで、工場内を案内したのが、Eという技術士官だった。 Eは戦争中、ジオン軍に所属し、ザクの開発に携わった。数々の試作機を手がけ、戦中 は専用機を与えられるほどの腕前であった。 後の調査で二人はなんどか、戦時中交戦しているが、そのとき二人はそれを知らなか った。 Eは戦後、アナハイムに出向という形をとっていたが、連邦軍に協力を渋ったため、工 場見学コースの案内という閑職に甘んじていた。 小惑星行きの最終便に乗り遅れ、かといって戦場を放棄してア・バオア・ク-陥落を決 定的にしたデラーズとやらの残党軍に身を投じる気にもなれず。Eは腐っていた。 あまり気の進まない見学者を案内しながら、それでも、Eはこの男の発想に興味があっ た。見学コースを終了させ、EはYを自らのオフィスに招いた。 そこで、Eは、手慰みだが、と一つの設計図を見せた・ R-4というラベルのついたハードコピーを、Yは食い入るように見つめた。 「いま、アナハイムではRGM系列の補修部品の製造も請け負っていましてね。言ってみ れば下請けのようなこともやってます」 とEは説明した。 「うちで作ってるパーツを、そのまま、あてはめてみたらこうなる、というのがそれ です。といってもまだ本格的な検証はしてません。」 しかしそれは、想像を絶するものだった。 旧ジオニックの生産ラインにある、流体パルス駆動システムをそのまま利用し、スラス ターやアポジモーターなどの消耗部品を連邦軍の規格品にあわせている。 しかし、ボディ周りは完全な新規設計で、向上が予想される運動性に、ザクの装甲材質 である。超高張力鋼、いわゆるハイパー・スチールではついていけず、フレームと装甲 を共用するザクではそこまでの運動性の向上は事実上むりで、装甲材質はチタン・セラ ミック複合装甲が望ましい、とメモが添えられていた。 「あなたが考えているものとは多少違うかもしれませんが、概ね同じようなものです」 「しかし、これでは新規設計機だ。私の欲しいのは、今の機体を生かせる補修パーツ です」 「それでは、採算が取れない。どのみち、ジオニック社のラインを動かすにしても、RG M系のパーツを加工するにしても、手間・ヒマ・カネがかかるわりに、納品先はあなたの部隊とせいぜい戦争博物館ぐらいです。スケール・メリットが合わない」 Eは慣れた手つきで電卓をはじき、数字をYに提示した。 「モノコック構造の機体で演習がしたいなら、09や14もありますが」 YはEのあからさまな徴発には乗らなかった。09や14はただでさえザクよりも生産台数 が少なく、激戦区に投入されたため残存数も極めて少なく、のこったものはほとんど 開発拠点で研究にまわされていて、とてもではないが部隊として運用できるほどの数 を調達することは出来なかったのは、周知の事実だった。 Yは言葉に詰まった。 しかし、目の前にあるR-4の開発プランニングそれそのものは、惹かれていた。 教導隊でつかうから、ということではなく、一つのMSとしての可能性を、そこ に見た。 だから、Eの不遜な態度にも、我慢した。 一方、Eも内心ではあせっていた。 Yが教導隊の予算を回してくれれば、すぐにでもR-4を試作できる。 少なくとも一機試作できれば、部品の適合性を試験できる。すべて の部品のシンメトリーさえ取れれば、既存のどんな機体にも負けな い屈指の汎用機を作ることが出来る。 その、自信はあった。 目の前にいるY,迎合を好まない男だとEは見抜いて いた。だから、賭けに出た。 本当ならひざまずいてでもYにすがり、試作機を作りたい Eだったが、あえて、この言葉を口にした。 「どのみち、連邦軍の軍人さんにモノコック構造の機体を 扱うのは無理ですよ。モノコック構造の機は繊細すぎる。 ましてや、このR-4の運動性についてくるパイロットは、 いないんじゃないんですか」 Yはそのこぶしを、Eに叩き付けた。 Eの奥歯が、折れた 「面白い。予算は回す。作ってみればいい。教導隊でテストしてやる。 俺のライトアーマーに、ドッグファイトで勝つような機体を作れるんなら 上に働きかけて、あんたの会社のその新型を買うように折衝しようじゃな いか。その代わり、てんでたいしたものが作れなかったら、あんたのとこ ろのラインを動かして、ザクの補修パーツを原価で納品しろ!」 Eがスタッフを引き連れ、教導隊の基地に赴任してきたのは、1ヵ月後だった。 EはYの前に立つと、すばやいが軽いジャブをYのあごに叩き込んだ。 そして、にっこり笑うと 「あれを作りに来た」 Eは一言だけ言った 「手伝って欲しい」 Yは、快諾した。 まるで昔の少年漫画のように、二人は殴り合って、お互いを認めた。 その日から、彼らの戦いが始まった。 予算を回す、とはいっても、一部隊が自由に裁量できる額など、たかが 知れていた。 だから、その研究予算を作ることからはじめなければならなかった。 教導隊に配属されるようなパイロットは、百戦錬磨のつわものである。 教官の質を維持するために、部隊の垣根を問わず、優秀な人材をあつめ ていた。 だから、連邦軍中に、人と人のネットワークを持っていた。 教導隊といっても、Y中尉の部隊だけではないし、教導隊以外でもザクを 使っている部隊もある。 そんな部隊同士で余っている部品を融通しあって、今まではなんとかしのいでいた。 また、戦後退役したやつなんかとも連絡を取り合って、民間のジャンク屋 からパーツを仕入れたりしていた。 なにも、今始まったようなことではなかったが、Eのチームが支援についた おかげで、今までは捨ててしまっていたようなパーツでも、リサイクルで きるようになった。 しかし、そんな血のにじむような努力も、それそのものでは、焼け石に水だ った。 それにより、浮いた予算を、研究開発費として計上し、Eのチームに融通して いた。 Eとそのチームは、連邦軍中のザクの運用データと、送られてくるリサイクル部品 を研究した。それが、後々の蓄積となった。 つめに火を灯すような努力で、パーツのリサイクルに励んだ。あるスタッフなどは 戦時中カリフォルニアで整備兵をしていたが、戦時中よりも忙しかった、と言った。 共有できるようなパーツは積極的に、RGM系のパーツを試してみた。試行錯誤を重ね Yのチームで試し、Eのチームで検証する。 そして、半年が経った。 Yのチームをはじめ、各部隊のザクの運用実績を洗い出し、消耗するパーツをRGM系の ものに置き換える目処がたった。 そして出来た、R-4試作1号機。 Yは、まず自分で乗り、その性能に満足し、その上でEをコクピットに乗せ、自分はライト アーマーに乗った。 模擬戦。 相手に79Lを選んだのは、Yが慣れた機体である、ということ意外に、その時での連邦軍 の機体で、RX系を除いて最高の運動性能を誇る機体だったからだった。 Yは、はじめてR-4のプランを見たときから、これの売りは屈指の運動性ということを見 抜いていた。 グラナダの荒野で、模擬戦が始まった。 Yにとって、R-4は、これまで戦ったどんな敵よりも手ごわい相手だった。 Yとて、一年戦争を生き延びた猛者である。戦争前から連邦宇宙軍に所属し 地獄のようなルウム戦役を、その当時、 最強の航宙戦闘爆撃機と呼ばれたセイバーフィッシュで切り抜けた。射程圏 内に入れば、巡洋艦でも直撃一つで轟沈させられる、と豪語された360ミリ ロケット砲を12門も備えていながら、ルウム戦役ではそのほとんどが、ムサイ を射程圏内に納めることなく、星になっていった。  その後は、まるで棺桶を急造で作ったようようなボールで、終わりのないゲ リラ戦。仲間達は、敵の攻撃を受けるよりあまりに苛酷な環境がもたらすスト レスが原因で、戦場を去っていった。 やっとGMをもらった頃、Yの部隊は敵のエース部隊を追撃する任務についた。 そのとき、ノーマルのGMで、ジオンのエースの証である、MS-06R-2を撃墜し ている。  Yはその後、79Lの開発プランを上層部に提出した後に撃墜され、終戦を病床で迎 えた。最終的な撃墜機数では他のエース達の大きく離されてはいても、その腕は、 確かなものだった。  そのYが、連邦軍屈指の運動性を誇る79Lに乗って、いまだEののるR-4をロック オンできないでいた。 Eとて、戦争中は5体しか製造されなかった、06R-2のパイロットである。腕そのも のは、Yに劣るものでもない。 パイロットとして、二人の力量に、それほど大きな差はないはずだった。 06系の運用実績ならば、開発に携わったEのほうが上だが、そのEが想像もしなかっ たような地獄を、Yは潜り抜けてきている。 二人の腕は、互角といっても良かった。 そのYの腕をもってして、EのR-4に追いつけないでいた。 二人はお互いの機体を交換し、再度模擬戦を行った。 Eもまた、Yをロックオン・サイトに捕らえることは出来なかった。 教導体は、コロニー、宇宙、砂漠、極地、ジャングル、考えれれるあらゆる環境に R-4を持ち込み、テストを繰り返した。 GMのノウハウを吸収した、元ジオニックのメカマンたちは、いずれの環境でも確実 に性能を発揮する、信頼性の高いモビルスーツを作り上げた。彼らは、連邦軍のRGM 系列を鼻でわらって小ばかにしていたが、設計思想が違うだけで、RGM系列のパーツ もそれほど悪くはないと理解するようになると。積極的にその技術を吸収していった。  その結果。地球上の環境に適応するため数々の局地専用カスタマイズを必要とした 06系列の最後発機であるR-4は、とくに局地専用のチューニングを必要としなくなるくらいに 地球という環境に適応できた。 テストは、成功だった。 教導隊と、Eの開発チームは、R-4を完成させた。 RGM系列の部品を多用する、モノコック構造の機体を完成させた。 縮小された元ジオニックのプラントを利用し、Eが求めるチタン・セラミック複合材 装甲を利用しても、コスト的にはRGM79Cと大差ないがしかし、スペックでは大幅に 上回るものを、開発することが出来た。 しかし、そのテストの最中、北米はオーガスタのプラントが新型機を開発した、と いうニュースが駆け巡った。教導体は、R-4をもって、その新型機との模擬戦を申請 した。そこで、彼らは初めて、大きな挫折を味わうことになった。 エーックス 久保 「ここに、79年暮れから80年代中期に開発されたMSの模型を準備いたしました」 国井 『中にはプランだけで、結局実機を作られなかったものもあります。この時代、 さまざまな開発プランが生まれては消え、そしていくつかは現実化していきまし た。そこで、彼らが作り上げたR-4、ハイザックの原型に当たる機体ですが、そ れらと同じ時代に存在したMSというのも、いくつかありました』 久保 「そこで、R-4の開発に携わった、A氏に起こしいただきました」 国井 「Aさん、はじめまして。早速ですが、これらのMSの簡単な説明をお願いします」 A 「わかりました。79C、これは戦争中のRGM系の生産プラントをまとめた、戦後の 標準機となるべく作られた機体でしたが、デラーズ紛争の時に、明らかに旧型の ジオン機に遅れをとり、生産は早期に打ち切られています。ちょうど、このR-4が 世に出るかどうかのころだと思います」 国井 「この、薄緑色の機体は、GMカスタムという奴ですよね」 A 「えぇそうです。戦争中に作られたNT-1という試作機からモニタリング機構と腕の ガトリングをオミットしたものをそのまま生産ラインに乗せたものです。NT-1に標 準搭載されていたマグネット.コーティングもそのままのっていました。その上で、 OSもバージョンアップさせてますので、機体としてはかなりピーキーな仕上がりで したがあのRX-78-3とほぼ、互角の性能を誇っていました。」 久保 「特徴がないのが特徴、と揶揄されていたようでしたが」 A 「それは誉め言葉ですよ。原器となったRX-78だって、分類は白兵戦用MS、てことに なってますが、その実、連邦軍がMSというものを検証するために作ったようなもので すから、汎用というより万能さを求められていたんです。したがって、完全な後継機 であるなら、特徴がない、といわれるのは、ごく自然なことなんです。実際、そのRX -78-3に匹敵する運動性を持たせながら更なる火力を持たせた機体を作るのを目標とし ていた、RX-81プロジェクトというのが当時あったのですが、そちらのほうがまとまら ないうちに、運動性だけでも互角なこのGMカスタムの量産体制が整ったため、そのプロ ジェクトは打ち切りになりました。」 国井 「要するに、そのGMカスタムが完成した時点で、GM本来の目標である、ガンダムの量 産に成功したわけですね」 A 「そうですね。RGM-79は戦争を勝利に導いたいい機体でしたが、純粋に機体のスペッ クで考えると、ガンダムjの簡易性産型の域を越えていませんでしたから」 国井 「そこでAさんに質問があるのですが、戦後連邦軍はジオン軍の技術を積極的に吸収 しようとしていきますが、それよりも、なぜ、これを量産しなかったのでしょう」 といって、MS-14Aを指差す・ 国井 「ゲルググも、あのRX-78に匹敵する性能を誇る、と並び賞されていますし、サイド 3の生産設備は無傷で接収できたのですから、たしかに、戦後3年近くかけてGMカスタ ムを量産するよりも、そのままゲルググを量産してしまえば話は早かったのではない でしょうか?」 久保 「ゲルググが使えるのであれば、Y中尉も無理をしてR-4試作機を作り上げることも しなくてすんだかも知れませんね」 A 「ゲルググの量産計画は、形を代えて存在していたんです」 といってガルバルディβの模型をさす。 A 「これは、ゲルググの後継機のプラン17と呼ばれるものを戦後、連邦軍が接収して 量産したものです。ゲルググの生産プラントをつかって生産できましたから、実質、 ゲルググそのものの上位機種と言っても過言ではありません。このプラン17を含めて 小惑星ペズンで作られた機体を総称して、MS-Xとかペズン計画機とかいったりもしま す」 国井 「基本スペックだけを見てみますと、R-4は概ね、後のハイザックと大きくは変わり ませんね。」 A 「そうですね。細かい補修、改装などで、0からR-4を作り上げるときよりもR-4を量 産にこぎつけるほうが苦労は多かったと思いますが、この時点でR-4はある意味で、 完成されていた、ということも出来ます。」 久保 「ここで、視聴者の皆さんに簡単におわかりいただけるように、簡単な表を作りま した。機体構造と装甲材、駆動方式の一覧です」 ハイザック            モノコック構造 チタン・セラミック複合材 流体パルスシステム ゲルググ             モノコック構造 チタン・セラミック複合材 フィールド・モーター ジムカスタム         セミモノコック構造 ルナ・チタニウム     MCフィールド.モーター ガルバルディβ          モノコック構造 チタン・セラミック複合材 MCフィールドモーター  ジム改            セミモノコック構造 超高張力鋼        フィールド.モーター   国井 「しかし、こうしてみますと、Y中尉がハイザックを苦労して作り上げている頃、あ るいはそれを凌駕する性能を誇るMSがいくつも存在していたわけですが、それでも、 戦後初の新規設計量産機として連邦軍に採用されたのはハイザックでした。それに は、一人の人物の思惑が関係してきます。ジャミトフ・ハイマン。悪名高いティター ンズの総帥でした。」 GMカスタム。0083年のデラーズの反乱が、初陣だった。79Cに比べてはるかに高性能 ではあったが、コストもそれなりだったため、デラーズの反乱の頃は、いわゆるエー スパイロットと呼ばれるものにのみ、その機体は支給され、高い戦果をたたき出した。 後のティターンズ総帥、ジャミトフ・ハイマンをもってして、この新型機の性能をみ て、“次世代特殊部隊”の設立に踏み切ったといわれ、エリートパイロットによる高 性能機の集中運用というドクトリンをうちだし、それは議会に認められ、ティターン ズとなった。ジャミトフは、GMカスタムの腕部を次世代型フレームに換装した、GM・ クゥエルを採用し、ティターンズの主力機として採用した。 ティターンズというのは、地球至上主義者だけを集めた特殊部隊で、主な任務はジオ ン残党の掃討とコロニーにおける暴徒鎮圧任務である。わかりやすく言えば、公安部 直属SWATとでも言うべき、きわめて政治色の強い部隊だった。 最初の規模は、歩兵1個連隊、MS機動部隊を1個連隊、支援部隊を含めて1個師団規模 だったが、後に拡充することになる。 ジャミトフは、そのMS機動部隊にふさわしいMSを探していた。 そして、既存のMS、プロトタイプが完成し、量産の目処が立ったものまで含めてすべ て集められ、トライアルにかけられた。教導隊のR-4も、その中に入っていた。  結局のところ採用されたのは、GMクゥエルだった。それには、Eは驚かなかった。あ のガンダムのスペックを極力落とさずに量産にこぎつけたのだ。今の連邦政府に、大規 模な量産が可能な資力があるかはともかく、少数精鋭の特殊部隊が採用する機体として は、まことに的を得ている。政治的にも、純正連邦系の機体だからなおさらだった。   それより、Eが愕然としたのは、ペズンで作られた、ガルバルディβという機体だった。 コスト的にはGMクゥエルよりも安く設定されていたが、量産体制が整っていない上に 「“公安系“特殊部隊に今はまだふさわしくない」とジャミトフのつるの一声で採用は 無しとなったが、それでも、技術的にまだ煮詰める余地があり、ということになった。 R-4.に関しては、何もコメントはなかった。 このガルバルディは、戦時中、ペズンで“プラン17”と呼ばれていたもので、その当 時から、RX-78を凌駕する機体とされていた。今回出展されたそれは、スペック的には それほどかわるものでもなかったが、中身がかなり変わっていた。 ガルバルディαには、連邦軍系の技術であるフィールド・モーターの採用が設計段階 から決まっていたが、テクノロジーの解析が十分でなく、結局のところ出来の悪いデ ッド・コピーしか作れず、スペックは互角でも内部構造がかなり複雑化し、耐久性や 信頼性が今ひとつだった。しかし、改めてペズンのツゥイマッド社系技術者が連邦軍 の技術を損欲に取り入れ、今回、ガルバルディβを完成させた。フィールド・モータ ーをすべて連邦軍の純正品に換装し、スラスターやアポジモーターなどの消耗部品も 連邦の純正パーツを使えるようにしてあった。当然のことながらFCSも連邦統一規格に 準じてあり、整備、補給まで含めた使い勝手は、従来のRGM系に遜色ないところまでに なっていた。  ハードウェアとしては、あるいはGMクゥエルよりも勝っていたかもしれない。  Yが、そのガルバルディβをみて目を輝かせるのとは反対に、Eは内心煮え繰り上がっ ていた。  またしても、ジオニック社がツゥイマッド社に出し抜かれたのである。戦時中、時期 主力空間戦闘用MSの採用コンペでEの手塩にかけた06R-2がツゥイマッドのR-09に出し 抜かれていらい、2度目の敗北だった。 ツゥイマッドの営業マンにこういわれた。06R-2のときとまるきり同じコメントだった。 「御社の技術にはかないません。うちは、実用品しか作れません」 技術偏重主義で、マーケティング度外視、ユーザーの意見がトップまで反映されない ジオニック社の体質を揶揄されていた。   Eとて、おなじフィールドモーター採用機種の、MS-14の内部構造を連邦系プロダクツ で構成すれば、と夢想したことはあった。しかしそれでは、サイド3の同胞達のために ならない、と彼は考え、そのプランを早々と捨てていた。  かれは、流体パルス駆動システムを利用したMSを、連邦軍に売りつけるつもりだった。 流体パルス駆動システムこそ、いまだ連邦軍に解析できない未知のテクノロジーでそ れを生産できるのは、サイド3にあるジオニック、ツゥイマッド、MIPなどの本社工場 だけだった。 Eの戦争は、まだ終っていなかった。 経済的に復興するためには、まず、地球連邦に対して輸出するものがなくてはならな い。そのため、なかば時代遅れといった感じも否めない、流体パルス駆動システムを 始めとするMSの部品をなんとかして連邦政府に買い上げて欲しかった。 しかし、その自分の本音を、EはYに打ち明けてはいなかった。Yは、筋金入りの軍人で、その上出身が 地球の、いわばエリートである。自分のような、サイド3の技術屋とは、本質が違う。連邦系プロダクツを 多用しての、モノコック構造機を作り上げるという目的の下に、手を組んでいるだけに過ぎなかった。    Yは物事にこだわらない性格で、以前邪険にされたペズンの技師達をひとしきり殴ると、何事もなかった かのようにツゥイマッドの営業マンと交渉を開始した。教導隊でテストをしたいからサンプルだけでもよこせ、 と営業マンをせっついていた。テストの結果が良好だったら、自分の教導大隊で採用する、とYは営業マン に明言した。 営業マンは殴られた技師達を尻目に、早速サンプルを送ることを確約した。 そのほか、コンペに見学に来ていた各部隊のものが、次々とツゥイマッド社との商談をまとめようと画策して いた。この時代、部隊ごとにMSの調達がある程度まで認められていた。一年戦争で定数を欠いた部隊はい くつもあり、かといって各地の造兵工廠でつくるRGM系だけではとても需要においつかず、各造兵工廠も独 自にもっと生産性の高いMSを生産する方法を模索していた時期でもあった。捕獲したジオン系MSをそのま ま編成に加えることも黙認されていた。 それでも、AEジオニック社には、商談の話はほとんどこなかった。 テスト会場の片隅で、冷めたコーヒーカップを抱え、呆然とYと営業マンのやり取りを眺めながら、やめたは ずのタバコに手を伸ばした。 口にくわえたとたん、そのタバコを引き抜く者がいた。ジャミトフ・ハイマンだった。 「話がある。顔を貸してもらいたい」 有無を言わせない、強い口調だった。 「MS-14の発展系のMSを作ることが出来たのに、なぜ、いまさらMS-06Rの後継機の設計を試みたのか?」 単刀直入に、ジャミトフはそういった。もと財務官僚ということは新聞で読んで知っていた。 「設計図を見ると、消耗品などは連邦系でそつなくまとめているが、肝心な駆動系がジオン系の流体パルス 駆動システムのままだな。このままではたとえ量産しても大してコストは下がらない。高いカネをはらってい まさらザクに頼らざるを得ないほど、連邦の技術力は低いものでもない。"10年先の技術"とは戦時中の話だ 単刀直入に聞く。ゲルググ携わった男がなぜいまさら、ザクの復活を図る? ザクが単なるMSではなく、ジオンの象徴であることは貴下が一番知っているはず。戦争は一応終結をみたが、 戦時体制は今も解かれていない。したがって、貴下を利敵行為を働いたとして、憲兵隊に突き出したとしても かまわないのだよ。私の部隊は、そのためにある」 「14の発展系がほしいのなら、ツゥイマッドの営業に声をかければいいでしょう。連中な ら、納品の際、トリコロールに塗装したうえでガンダムの顔をガルバルディにつけてくれ るでしょ、サービスで」 「連中の機体では、だめだ」 ジャミトフは言い切った。 「彼らの機体では、私の目的は達成できないのだ。私は貴下のあの、R-4が欲しい。し かし」 そこでジャミトフは言葉を切った。 「条件が二つある。一つは、大幅な性能アップかコストダウンを要求する。とてもではな いがあの程度のシロモノを連邦正規軍にあてがうことなど出来ない」 といって、一枚の設計図をジャミトフはEに渡した。 「まだラフスケッチ段階だが、このプランが実現すれば、現有のRGM-79がすべて、貴 下らが恐れたガンダム並の性能に改修される。地上の軍産複合体も、RGM系の生産 設備はもっている。今は79Qという高価な機体でしのがねばならないが、87年ごろには 生産設備の復旧も完了する。その時点で、RX-78の真の意味での量産と配備が開始 されるわけだ。貴下には、それを覆してもらいたかったのだが、正直言って失望した。教 えてもらいたい。なぜ、いまさら流体パルス駆動システムの機体を作り上げたのか。そ れが二つ目の条件だ」 「聞いて、どうするんです」Eは言った 「その上で、決める。ただ純粋に興味があるだけだ」 Eは観念した。そして、Yにも明かさなかった思いのたけを、すべてジャミトフに話した。 ろくに輸出産品のないサイド3の経済を安定させるために、流体パルス駆動システムを 始めとした、ジオン系パ ーツの輸出をEは目論んでいた。それを、Eはジャミトフにはなした。アースノイド至上 主義者の親玉であることはわかっていたのに、ジャミトフの迫力に押され、Eは口を開いた。 「なるほど。貴下の狙いはわかった。協力する」 ジャミトフは言った。 「貴下を憲兵隊に突き出すといったのは脅しだ。もっと言えば私の部隊は憲兵隊の権限など とうに凌駕している。 そのまま研究を続けるがいい。予算の援助もする。次の試作機が完成したら、グリーン・ノア に持ってくるがいい。私を満足させることが出来れば、採用してやる」 「いやだ、といったら?」 「卑しくも栄えあるジオン公国軍のもと技術大佐殿が、この程度のことで音を上げるとも思え ないのだが」 そして、そのままジャミトフは去っていった。Eには終生、そのときジャミトフが協力を申し出た か理解することは出来なかった。 コンペは終った。  また、一から出直しだった。 R-4の見直しが始まった。 Yの教導隊も、今までは半ばパートタイムでR−4の研究を行っていたのだが、上層部か らの命令が新たに出た。ジオン系の技術である、流体パルス駆動システムの調査、研究 を行え、というものだった。  小額だが、予算も出た。 それだけでも、ジャミトフの政治力を伺うことが出来た。  Yは、ツゥイマッドのガルバルディβに惹かれていたが、技術的見直しのための量産化の 延期に伴い、手持ちのR-4をなんとかしようというほうに動き始めたが、内心はあまり面白く ない様子だった。 それでも、EとYは、自分達のR-4に何が足りなかったかを、模索し始めた。  「セールス・ポイントに欠ける」 とYは言い切った。 「前は、ジオン製のモノコック構造にあこがれてさ、あんたと一緒にR-4作り始めたが、実際、 俺たちが考えてたのより、ペズンの奴らが作ったガルバルディのほうが上だったわけだろ? 部品もこっちよりだいぶ共用できるみたいだしね。ティターンズみたいに予算がある部隊なら まだしも、そうじゃない部隊はガルバルディを欲しがるだろう。そもそも、流体パルス駆動シス テムみたいな未知のシステムより、慣れ親しんだフィールド・モーターシステムの方が整備す るのも、補給も楽だろうしな」 Eは言葉に詰まった。 「でも」と、一人のスタッフが言った。 「あの時のコンベで見たけど、ガルバルディって、ずいぶん閉鎖したシステムですよね。拡張性 がないと思うんです。マニュピレータこそ普通のもの使ってますがね、搭載してるビームライフル とシールドのミサイル、それに近接用のビームサーベルだけでなんとかするようなシステムにな ってません?ま、それだけでなんとかなっちゃうくらい本体の性能もいいのでしょうけど。俺なら、 全部腕部固定兵装にするけどな。どうせあのライフル、本体からの電力供給で駆動するんでしょうし」 「しかし、我々が作れるものは、このR-4の時点であらかた、作っちまったんじゃないですか?」 教導隊基地で、終わりのない議論が、何度も持ち上がった。ガルバルディをみて絶望したジオ ニックのスタッフ。そんな彼らを見て、教導隊のパイロットがさらにため息をつく。チームが、ばら ばらになりかけていた。  ジャミトフに激を飛ばされ、ニンジンを目の前にぶらさげられても、それでもEは立ち直れないま ま、なかばマゾヒスティックに自分達の機体のあらを探しつづけた。  そんなEをみて、Yは無性に腹が立った。ガルバルディが欲しいのは本音だが、せっかく苦労し て作ったR-4のあら捜しをするYに腹が立つのは、押えられなかった。技術者なら、技術で負けれ ば、また技術でやり返せばいいのだ。事実このEは、06R-2で奪われた主力兵器の座を、14で取 り返している。そういうことが出来る男なのだ。  「初めてザクと戦ったときは、ずいぶん怖い思いをしたな」 Yは、ぽつりと言った。  「俺が乗ってたセイバーフィッシュだって、今考えれば火力とパワーウェイト・レシオだけならザク と互角だったんだけどよ、当時はザクなんてのが良くわからない時代だったから。あんな巨大なの が宇宙戦闘機並みのスピードとそれをはるかに上回る運動性で、次々に味方を落としてくんだ。そ らぁもう怖かった。いまでこそ、こっちにもGMはあるし、セイバーでだって一撃離脱に拘泥するなら、 ザクくらいなんとかなるけどな。  戦闘神経症、ってあるだろ?戦場の極端なストレスで精神がまいっちまうって奴さ。うちの部隊で も、他所の部隊でもあった話なんだがな、ルウム戦役あたりで、戦闘機や戦闘ポッドに乗ってた奴に 多いんだが、ザクを見たとたんにパニックになる奴が多くて困ったことがあったんだ。要するに、ザク がトラウマになってるみたいなんだ。不思議なことに、ドムやゲルググのほうが性能はいいのに、あの へんにトラウマ持ってる、って奴はホンとにいないんだよ。不思議なもんだ」 おまえは、そんなにすげェもの作ったんだから自信を持て、とYは話を締めくくるつもりだったがしかし、 Eは級に目を輝かせ、話の腰をおった 「そうか!おれは数値目標にばかりこだわっていた!本当にこだわるべきところは、あのスタイルなんだ!」 そして、振り向きざまにYの胸倉をつかみ、口角泡を吹き出しながら言った。 「連邦軍で兵隊の心理を研究する機関に連れて行け!」   YとEは、R-4をもって、北米方面軍心理戦研究所、オーガスタ研に向かった。オーガ スタ研の研究員、Qが相談にのってくれた。 「確かに、Y中尉のおっしゃる通り、ザクというものに対して、PTSD、いわゆる、心的外 傷後ストレス障害を感じる兵士は多いです。そして、統計データででも、ほかのジオン 軍のMSに比べて、ザクに対してそれを感じている兵士が多いことも裏付けられます。 それともう一つ・・・・・・おもしろいデータがあるんですよ」 といって、あるアンケートの集計結果を、Qは二人に見せた。 「これはですね、ある造兵工廠が行った、次期主力MSになにを期待するか調査するア ンケートなんですが・・…非常に興味深い結果が出ました。ビームライフルの標準装備、 装甲、推力の強化など、いわば誰でも思いつきそうな希望のなかにまじって、これを見 てください」 といって、一箇所をレーザーポインタで示すQ. 「面白いでしょ?ただ、単純に、ザクに乗りたい、ってのがなんと、65パーセントもいるん ですよ。ま、もっとも、複数回答可のアンケートだからでしょうが・・・・それでも、このアン ケートを行ったパイロットの65パーセントは、一番の願望ではないかもしれないけど、ザ クに乗りたいっていう願望が心のどこかにあるんです。どういう理屈か、わかりますか?」 Yは首をひねる 「うーん、わからんな。カタログスペックでGMはザクを上回ることは、戦時中プロバガン ダでさんざ流したじゃないか。実際そのとおりだったし・・・」 「そら、ま、カタログデータ見せられればそうでしょうけど、そんなもの知らずに、あんな 作業ポッドに大砲くくりつけたようなシロモノで命のやり取りさせられたほうは、そうは思 いませんよ」 「それが、さっきのPTSD、だっけ、そいつらのことだろ」 「そこまで行かない人たち、ってのも、じつは結構いるんです。あなたみたいに全然平 気な、タフな方も中にはいらっしゃいますが、大概は、ザクが怖い。怖いなら、如何す ればいいか?」 旧世紀の歌手、ジョン・レノンに良く似た丸めがねをかけたQが、子供のような笑みを 浮かべた。二人には、まだわからない。 「怖い相手と同化しちゃえば、怖くなくなるんです。ほら、よく、ジュニアハイスクールで 苛められてたような、あんまりぱっとしないやつがハイスクールに行ったとたん、自分を 苛めたようなチンピラに成り果ててる、なんて話、聞いたことありません?お二人?」 「あぁ、それならあるな」 「あれは、自分を、怖い相手と同化させて恐怖心を克服させようとした結果の表れなん ですよ」 「おれはジュニアも、ハイスクールも、誰にも逆らわせたことはないがな」 自慢げに笑みを浮かべるY。Eは顔をしかめ、Qはやれやれといった表情を見せた。 「要するに、ザクに乗ればザクは怖くない、と連邦軍のパイロットの中には思っている奴 がいるのだな?」 「そういうことです。それも、かなりの数ね」 EとYは顔を見合わせた。 「あなた方の試作機を拝見いたしました。見た感じは確かにあのザクを彷彿とさせます ね。良ければ、そのアンケートを実施した部隊に頼んで、もう一回アンケートしてみま しょうか?」 ふたりは同時にうなづいた。 「もう一つ、頼みがあるんだ。今思いついたことなんだが・・・・・・・まだ、ジオン軍の捕虜 というか戦犯は、連邦軍に拘束されているのだろ?」Eは言った。 「彼らにも、これを見せてやってくれないか?」 「・…………いいですよ。お安い御用です」 Yも付け足した。 「あと、そうだな、どこでもいい、スペースノイドの民間人何人かにも、見せてやってくれな いか?そうだな。できれば、ただの一般市民と、反地球連邦政府活動の手伝いなんかをパートでやってるようなアマチュアと、もとジオンの国民で強制移民させられたようなやつと・・・・・・サンプルが多ければ多いほどいい」 わかりました、とQは言った。 「一ヵ月後においでください」 「なぜ、あのような質問をした?」帰り道、EはYにたずねた。 「簡単さ。ザクが怖いのは、俺たちパイロットだけじゃない。コロニーに攻撃をかけられ たスペースノイドのほうがもっと怖がってるはずさ。床板一枚向こうは宇宙、って生活 してるんだから。ザクにびびってくれれば仕事はやりやすい。治安維持にしろ戦争や るにしろ、相手になめられちゃぁ、だめだ。こっちがやられる。こっちにびびってくれれ ば、余計な喧嘩しなくてすむからな」 「しかし、ザクはスペースノイド解放の象徴だぞ?」 「そう思ってるのが、はたしてどのくらいいるのか知りたくて、あのQとかいう男にいろい ろサンプル取ってくれ、ってたのんだのさ。ザクを解放の象徴、なんて考えてるのはサ イド3の連中だけかもよ?やられたほうはいつまでも覚えてるもんだから」 Eは言葉に詰まった。 ザクの形状を模倣したことで、思わぬ副産物も生まれた。 その副産物も、モトはと言えば、ただのバグだった。 RX-78を、数奇な運命のめぐり合わせで運用する羽目になったアムロ・レイ。素人同然 の彼の戦闘データがジャブローで回収され、GMにアップデートされた。 そのデータは、およそ考えられるほとんどの戦況を、素人同然のパイロットが運用したせ いで、大いにムダを残しながらも驚異的な経験値をつみ、開発者の予想を越えるOSに進 化していた。 同じく素人同然のGMのパイロットが運用するにあたり、開発当事者が意図した以上の最 適化率を達成していた。平たく言ってしまえば、おなじ素人が経験してきた状況を、すでに OSが学習してきていることにより、FCSの似たような状況への対応速度が、なにも学習し てきていない状態よりも3割近く向上していた。 そのため、学徒動員兵に毛が生えた程度の連邦軍のMSパイロットが、ジオンの熟練パイ ロットと互角に戦えたのだ。 戦後も、その戦闘データに裏打ちされたOSはアップデートを繰り返し、今日にいたっている。 0083年までは、そのOSに特に欠陥は認められなかった。  ルナ・チタニウムは、ザクを始めとするジオン系MSが運用する、120ミリマシンガンの 弾丸を無傷で跳ね返す。    だから、アムロ・レイはFCSでザクを捕らえても、それを脅威と感じず、攻撃目標選定 の優先順位ではいつもザクは後回しだった。   しかし、通常のGMの装甲では、120ミリ弾の直撃を食らえば、ひとたまりもない。 それなのに、アムロの戦闘データを写したGMでもやはり、ザクへのロックオンは後回 しだった。戦時中、GMがロールアウトしたころはすでに、ジオン軍もザクではなくほか の機種で戦線を構成するようになっていたため、このバグはさほど気にもとめられて いなかった。    しかし、0083年のジオン残党軍の蜂起で、ジオン側が主力としたザクに対し、戦時 中よりも強化されていたはずのC型GMは、ザクを相手になすすべもなく、次々と撃破 されていった。    そのため、量産体制の整っていたRGM-79Cの正式採用は見送られ、存在自体を すべての記録から抹消された。   同時期にロールアウトされたRGM-79NもOSは同じ物を使用していたが、装甲材そ のものもルナ・チタニウム製なので120ミリ砲なので直撃をもらっても無傷だったし、 何より反応速度はMコーティングしたガンダムと同等で、その上運用するのは連邦軍 屈指の猛者だったので、彼らはFCSのオートロックオンを解除し、マニュアルでザクに 対処できたため、さほど問題とはされなかった。  しかし、錬度の低い一般パイロットが運用したGM改では、ベテランパイロットが運用 するザクをマニュアルでロックオンすることは適わず、その多くが宇宙の華となり、消え た。  スペックの上でドムやゲルググに比べ、何一つ劣るところがないRGM-79系列の評価 が不当に低いのは、このバグのせいであり、ザクに対しての対戦成績の悪さだった。  ウィリアム・ゲイツ3世というプログラマがいた。C型GMの、OS担当だった。C型GM の欠陥は、アムロ・レイの戦闘データをそのまま流用したOSを使用していることである ということを上層部に訴え、OSを新規開発することでC型GMの採用取消を撤回させよ うとした。  悪いのはハードウェア・チームではないんです。悪いのは、俺たちOS開発部門です。 予算をください。あのバグを取り除いて見せます。だから、C型GMの生産中止を保留に してください。  しかし、上層部はウィリアムの訴えを退けた。  まずいことに、上層部はC型GMの初陣、あのトリントン基地での無様な様子しか、知ら なかった。  だから、ウィリアムの上申書も、仕事ほしさのパフォーマンスだとしか思えなかった。 実際のところ、ザクはともかくとして他のMSに対する反応速度はすこぶる優秀で、錬度 の低いパイロットをたちどころにベテラン並みの腕にしてしまうOSを捨てたくはない、とい うのが上層部の本音だった。OSを優秀なことにしておかないと、無茶な予算を組んでRX -78プロジェクトを強行した理由の半分ほどが失われる、というのが上層部の本音でもあっ た。  しかし、ウィリアムの才能そのものは認めていたため、哀れに思っていた上層部のなか に、ジャミトフがいた。ジャミトフは原稿OSのバグそのものには懐疑的ではあったが、Y とEが悪戦苦闘している教導隊を、紹介した。 彼らはまったく新しい機体を作っている。君の力が、必要だ。 ウィリアムは、家に帰ることもなく、グラナダ行きの便に飛び乗った。  R-4試作機そのものは、ジオン製OSをそのまま使っていた。連邦系パーツを新規導 入するたびに、スタッフが手探りでドライバをつくってインストールしていた。素人が作る ものだから小さなバグが蓄積し、システムがフリーズする。仕方がないからそのたびに パッチをあてて補修する。 R-4本体と同様に、OSも継ぎはぎだらけだった。 その様子をみたウイリアムは、ため息をついた。 「僕に、一からOSを作らせてください」 YとEに、否やはなかった。 「ただ一つ条件がある」 Yはいった。 「インターフェイスを連邦OSの標準仕様と同じ奴にしろ。こいつらのOSはジオン訛が 激しくてな。いまにベルリンでナチの亡霊と文通が出来るようになるかもしれん」 みんな、久しぶりに笑った。ジオン系技術者たちも、自分達はスペースノイドの独立の ために戦うレジスタンスだと自負しており、ザビ家が主導したと言われる極度な民族主 義運動、ゲルマン復古運動を毛嫌いしていた。敗色が濃くなるにつれ戦場に現れ始め た、ドイツ語系の名前を疎ましく思っていた。 Yのジョークで、自分達が何のために今の仕事にかかりきりになっているか、皆、改め て自覚した。 新規参入スタッフのおかげで、鬱積した雰囲気が、がらりと変わった。 そして、R-4試作機を仮想敵とした、もう何度やったか分からない模擬戦を行った。 しかし、今度はいつもと違った。 いままでは一対一の対戦だったが、今回は複数対複数の乱戦を想定していた。 一対一の時、すなわちセンサー範囲内に目標が一つしかない場合、さすがに連邦軍 のOSでもザクを脅威とみなし、パイロットの反応が鈍い場合、自動でザクをロックオ ンした。 しかしながら、乱戦の場合、目の前のザクが120ミリを構えていたとしても、そのGM のモニターの範囲内に他の敵機がいた場合、たとえば芥子粒のような大きさの距離 にいるGMを認識すると、先にそちらをロックオンしていた。ひどいときには、図面を 担いだ設計技師が演習上の隅を歩いていただけで、対MSミサイルを構えたゲリラと して認識し、目の前のザクを無視してそのゲリラがとると予想される戦術を列挙して パイロットに警告し、勝手に頭部60ミリの照準をつけようとしていた。 R-4も、当然のことながら、連邦軍のOSはザクと認識した。 「てことは何かい、俺たちのR-4ってのは、たとえば連邦軍から狙われたとしても向こう さんは敵とは認識しない、ってわけだ」 Yは言った。 「そういうわけではありませんが、敵としても狙われにくい、ってことになります。ま、連邦 軍の機体が連邦軍と戦う、てこと事態考えにくいことですけど、でも納品するのが、憲兵 隊とか、それに類する部隊なら相手が今のOSを使ってる限り、大いに有利になります」 「ふん、なるほどな。その一方でジオン残党が繰り出すザクに対して、いままでのOSを 使用している連邦軍じゃ、手も足も出ない可能性もあるわけだ」 「ええ。そのことを上層部に分かってもらおうとしたんですが、だめでした。いまは、新型 MSよりも新しいOSのほうが必要なんです。あのバグさえ取れれば、GMがザクに遅れ をとることなどありえません!」 言ってくれるじゃねぇか、とYはウィリアムを小突いた。 Eは渋い顔をして、ウィリアムに言った。 「しかし、アムロ・レイの戦闘データを有しているOSのほうが、対ザク戦を除けば圧倒的に 出来はいいわけだな」 「えぇ。そのためのV作戦でもありましたから。戦闘データを意地でも持ち帰るためにコア ブロック・システムなんぞという機体を複雑にするシステムまで組み込んでるくらいですし」 「しかし、我々のR-4は、まだそういった戦闘支援システムをOSに付与するところまで行っ ていない」  だから、先日のコンペで、ペズンのガルバルディに大きく差をつけられたのだということ に、Eは今ごろになって気が付いた。あの時は1対1という設定で模擬戦が行われたし、 連邦のOSも相手がザクであるという事を認識しても相手が単独である以上、本気で相 手をしてきたのだろう。  実際に機体を操ったパイロットから、ガルバルディや他のGM系列にかんして、扱いや すいという声は聞かれなかったが、R-4だけはひどく扱いにくかった、という声が多数あ がっていた。だからR-4を欲しいと言い出す部隊はいなかったのかもしれなかった。 「そのバグを・・・なくせるか?」 「バグそのものをなくす事は出来ますが、時間と予算と優秀なスタッフが必要です。それ よりも……」 ウィリアムはいたずらそうに笑った。 「ジオンOSをベースにアムロ・レイのデータを移植したものなら作れます。そのほうが、流 体パルス駆動システムとの愛称はいいでしょうし、一時凌ぎですが、バグをなんとかする 目星はついてます。いま入れてる連邦系パーツのドライバーは・・・・そうですね。それぞれ のパーツメーカーに作らせる、ってのはどうでしょう.僕が一つ一つ手作りしてもいいんです が、皆さんが作ったものよりいいモノを作る自信はありませんし、時間も足りません。ここま でのハードウェア情報を各メーカーに開示して、その上でドライバを作ってもらいましょう」 Eはウィリアムを突如として殴りつけた 「ふざけるな!ココまで恥を忍んで作り上げたこのR-4のデータを、いまさら他人にご開 帳するだと?それが技術屋にとってどれだけ恥ずかしいか手前ェなんざにわかるか! まして、連邦の奴らに頭を下げるなぞできるか!」 「わからんな。俺たちはいいモノを作るだけだ。そのためには、なんでもする。違うか?」 Yが、冷徹に言った。 「おまえが偏屈だから、このプロジェクトはなかなか進まないんだ。お前が、俺たちパイ ロットや、うちのほうの技術者の話を聞いてれば、もう少しマシなものが出来てたはずだ。 ウィリアムの話を聞くまでもなく、俺たちの話をもっと聞いていれば、GMが不思議とザク にたいして弱いことも話してやれた。」 「何が言いたい」 「お前、俺たちアースノイドを見下しすぎてるんだよ。お前のような奴がいるから、俺たち はこうしてまた、戦争の準備をしなきゃならん。もっとわかりあう事が出来れば、こんな戦 争準備もしなくていい・・・矛盾してるが、それが現実だ。 おまえがなんでこの試作機を作り上げたいか分からん。が、作る以上はもっと真剣に作 りやがれ!」 Yが吼えた。 Eは無言で立ち上がり、その場を離れた。 「帰ってたんですか、先輩」サイド3のEの実家に、 戦時中の部下が尋ねてきた。エリス・リーである。 戦時中はMS-06Eとフリッパーの、開発担当だった。 「聞きましたよ♪連邦の連中と、ルナリアンの研究所 のっとってなんか新型作ってるんですって♪」 べつに、R−4の開発は、軍機でもなんでもない。ま して、そこら中でテストを繰り返し、連邦の新型と見 るとけんかを売るようにトライアルにかけている。リ ーのような技術屋なら知っていても当然だった。 「どうっすか、あっちの技術屋さん。みんな使えねぇ 使えねぇって言ってるけど、本当のところどうなんです?」 「使えねぇってこたないよ。俺たちと研究分野とか仕事の 進め方が違うだけで、研究者や職人として、それほど駄目 だとは思わないな。とはいっても、いっしょに酒を飲んで 技術論を戦わせるような相手じゃないのも事実だ」 「ま、戦争した相手ですからねぇ。つってもこっちは、MS をはじめて作ったんだ、っていう自負もあるし、向こうには、 チェックメイト寸前の戦争をひっくり返したっていう自負も ある。まして、立場としてわたしら、使われる側ですもんねぇ そら、喧嘩も起こりますよ」 「おまえ、さばけてるな」 きけば、最近、連邦軍に出向した技術屋の多くが挫折し、 サイド3に逃げ帰ってくることが多いのだという。どうせE もその口だろうと、エリスは様子を見に来たのだ。エリスは、 開発局女性陣の中で取り立てて異才を放つわけでもなく、際 立った容貌をしているわけでもなかったが、面倒見のいい姉 御肌なところがあった。サイド3に帰ってきた同僚たちの話 を聞くと飛んでいって、酒のいっぱいも付き合ってやって愚 痴を聞いてやっているのだという。 「帰ってきたところで、就職先なんてほとんどないですよ。 めぼしいところは軍隊に接収されてますもん。ウチもはっきり 言って、やばいです」 エリスは、06E系列のバックパックの燃調の担当をしていた。 終戦後、その縁もあって民間のエンジン関係の下請けに入り 込むことが出来たが、その会社は戦前から軍に金を貸しており、 現物で返してもらうというかたちで、E3のバックパックを大 量に頂いてきていた。しかし、そのE3用バックパックが換金 できないと、いずれ倒産のうきめにあうという 「ほら、連邦軍って、戦術偵察はおざなりでしょう?やつらの MSに偵察仕様機なんてカテゴリないし、航宙戦闘機にもそん なカテゴリはないはずです。ミノフスキー粒子環境下で目視偵 察がどれだけ大切か、やつらまだわかってないみたいなんです よね。」 だから、E-3のバックパックのコネクタを、むりやり連邦規格 に合わせて持ち込んだのだが、結果は芳しくなかったのだ。決 して、E-3のバックパックはできの悪いものではない。EのR シリーズのバックパックも、結局のところE-3のバックパック から電子兵装を抜いてプロペラントを搭載し、継戦能力を上げた ようなものなのだ。見てくれこそパクッてはいないものの、使 用部品はほぼ同一だった。 「出力を食いすぎるんですって。そりゃ、高度な電子戦装備を フル稼働させながら最大戦闘速度で強行偵察するのがフリッパ ーの仕事ですけどね。それぐらいの出力本体から融通してもら わなけりゃ、かえって危険ってもんですよ。やつらのGMって、 ゲルググ並みの炉の出力があるっていうから期待してたのに・・・・」 「つってもよおまえ、ゲルググだってフィールドモーター使っ てんだから出力そっちに喰われて、E-3パック採用されなかっ たろ。GMだって似たようなもんさ。フィールドモーターじゃあ っちは本家なんだから」 フィールドモーターは、ザクなどが使用している流体パルス駆動 システムなどと違い、高出力で駆動できるが、その分出力も喰う。 エネルギー消費効率から言えば流体パルス駆動のほうが有効だった。 「ペズンにも声かけたんですけどね、やつらのガルバルディもほ ら、フィールドモーター駆動でしょ・・・・どこかで流体パルス の新型つくってないですかね、先輩」  Eは、頭をハンマーで殴られたような衝撃を覚えた。 皆、がんばっているのだ。自分だけが、辛いわけではない。  エリスの会社のE-3パックが売れなければ、こいつの会社は破産する。エリスとてどうなることか? そもそも、なんのためにR-4を作り上げているのか?ジオン国民のためではないか?同胞の経済的 苦境を少しでも和らげるために、連邦政府にザクベースの新型を売りつけなくてはいけないのではな かったか? エリオット・レムがやらねば、誰がやる! だれが、連邦の新型相手に、旧式のシステムを完成度を上げ、売り込めるというのだ! 連邦の技官に頭を下げることなど、同胞の苦境に比べたらいかほどのことか! 翌日、プレゼン資料を持ったエリスを伴い、Eはグラナダに戻った。 Yの、気持ちよくなってすっきりしたか、などという下卑たジョークをものともせず、即座にR-4の 図面をエリスに見せるように求めた。 「どういう風の吹き回しだ?彼女、まだ外部の人間だろ」 「だからなんだ?サイド3でいいバックパックを作ってる会社があったから、これから整合性を確 かめる。うまくマッチするようなら採用だ。おれの見込みなら、推力は今のままでセンサーレンジ が偵察機並に跳ね上がるぞ!」 「そうじゃない、おまえが大事な機体の図面を部外者に見せるなんて、どういうつもりなんだよ。 同じチームのウィリアムにも見せるの嫌がってたのに」 「R-4を、オープンソースにする」 Eは、言ってのけた。 「時間がない。どの道機密扱いの技術はそんなに使っちゃいないんだ.一応技術開発局に根回し はしなくちゃとは思うが、そんなに反対されることもないだろ」 ナニを言い出すんだ、という驚愕の表情でEを見つめるスタッフ達。開いた口が、ふさがらなかっ た。 「足りないところは、外注に補ってもらうんだ。もちろん、ドライバ込みで。四の五の言ってられな いんだ、ってことに気が付いた」 Eは言ってのけた。 「受け皿としての機体はR-4で完成した、とおれは思っている。どの道、俺たちだけじゃこれ以上 の発展は望めない。あとは、サードパーティを"利用"するんだ」 とEはいった 「薬が効きすぎたようだ」とYは天を仰いだ。 「でもま、開発主任がやる気取り戻して暮れたのはありがたいことだ。おい、ウィリアム。Eの気 がかわらねぇうちにR-4の設計図ネットでバラ撒けや」 其の日から、Eがいなくなって無人と化した開発室に、再び灯がともった。 後日、YはEを個人的に呼び出し、問い詰めた。 「あのエリスって娘のためだろ、おまえがオープンソースなんていいだしたのは」 「それだけじゃないよ。サイド3で苦しんでいる、同胞のためでもある。大体、いまの連邦系軍 需産業に、流体パルスシステムに対応したオプションを作れるところなんてないだろうから」 「ったく!やっと本音吐きやがったな、このやろう」 Yは軽くEの顎を殴った。 「端っからそう言えばよかったんだ。ジオンの連中食わせるためにおれはこれ作ってる、ってな」 「君はアースノイドだろ。言えば協力してくれるとは思わなかった」 「あぁそうだ。おまえらスペースノイドに負けねぇ、ってぇ自負はある。だけどな」 Yは言った。 「俺ぁ喧嘩は大好きだ。タイマンなら言うことはねぇ。だけどな」 そこで言葉を切った 「誰かに利用される"戦争"は大きらいだ。殴る相手くらい、自分 で選びてぇ。サイド。をはじめ、お前らがちゃんと食ってける世 の中になれば、俺は喧嘩だけしてりゃぁいい。だから、手を貸してる」 Yはもう一度、Eの顎をかるく殴った。 戦闘用機動兵器のオープンソース化という前代未聞の試みに、市井の零細軍需メーカーが いきり立ち、こぞって自社製品を売り込みにくるようになるのに、さほど時間はかからなかった。 連邦軍技術開発局は、グラナダ造兵工廠のこの暴走にいい顔はしなかったが、結局、認可を だしたのは、ジャミトフ・ハイマンが背後で動いたから、とも言われている。 結局、エリスの会社のE-3パックそのものの採用は見送られたものの、ほかの連邦系企業の ものよりコンセプトは良かったため、再設計の後、採用、という運びになった。  戦時中120ミリザク・マシンガンをジオン軍に納めていたH&K社。新型120ミリライフル弾 とセンサーを改良した、新型ザクマシンガンを持ち込んできた。  一年戦争の頃の120ミリザクマシンガンは用途が、対宙圏戦闘機から巡洋艦まで幅広かっ たためまとまりに欠き、火器としては劣悪な部類にはいった。  大体、弾体の初速不足を補うのに機体の加速度を必要とするマシンガンなど、欠陥でしか ない。一年戦争のころのザクマシンガンは初速が200m/Secしかなかったのは、ザクが最大 戦速で移動したときに発射することを前提としていたためで、ザクの速度を弾に加えることで なんとかまともなスピードになることが前提とされていた。  そんなマシンガンを地上に持ち込んだため、ジオン地上軍は初速をなんとか現用まであげ た新型90ミリマシンガンを実用化するまで地上で苦戦し、ようやくそれが実用化したのはオ デッサ戦の後のことで、撤退戦では大いに活躍したものの、焼け石に水だった。   今度の新作は違った。口径は再び120ミリにもどっていたが、内部機構とセンサー、弾体が一 新されていた。  旧ザクマシンガンは、対機動兵器用として準備されていたものだが、ジオン軍開発部は、AM BAC機構をもたないので運動性や継戦能力に劣る航宙戦闘機など、あまり重要視していなかっ た。あくまで、メインは対艦戦闘で、雑魚を追い払うのに必要な連射能力があればいい、と彼らは 判断した。  そのため、120ミリマシンガンの弾頭は極端に重量化し、炸薬量はたいしたことがなかった。ザ クマシンガンがガンダムに通用しない、という認識が広まった、あのサイド7空域での戦闘では、 ジオン側では対空散弾を使っていたためで、初速のたいしたことのない散弾なぞ、ルナ・チタニウ ムに通用するはすもなかった。 しかし、今度の新作は弾頭重量を減らした代わりに炸薬量を増加させ、理論上は十分な初速をも ち、ルナ・チタニウムを貫通することも可能とされていた。 また、かつてのザクマシンガンでは命中精度を向上させるため、ローラーロッキング・ディレイドブロ ーバックなる、必要以上に高精度で精密な機構を採用していたが、新型では、単純なガス圧利用ブ ローバックに変更されていた。精度では多少劣るものの、機構が単純でコストもやすく、何より信頼 性が高かった。 センサーも連邦軍規格の新型に換装したため、作動機構による命中精度の低下を補うこともでき、 結果として新型マシンガンは対艦能力はオミットされた代わりに、対空戦闘性能は「戦前のものよ り数倍の性能をもつ」とされた。 そういったジオン系企業の持込ばかりではない、連邦系の会社や研究機関からも、さまざまなも ち込みが続出した。 一番有名なのは、NT-1アレックス開発チームが持ち込んだ、リニアシート並びに 全天視界モニタであろう。不思議なことに、採算度外視で造られたNT-1の量産機、 ジムカスタムやジムクゥエルで採用されなかった。試作機ならまだしも、第一線で つかう特殊部隊用MSのモニタリング機構としてはあまりにも斬新すぎ、動作も不安 定でコストも従来のものよりはるかに割高で、採用は見送られたのだ。開発チーム は、もともと純正連邦系の機体とはちがうR―4にそのシステムを対応させるのに、 一方ならぬ苦労をしていた。何度再設計してもシステムそのもののコストは下げら れなかったものの、しかしその一方で徐々にモノそのものの安定性は増していった。 彼らは、コストダウンの方法を「量産効果」に頼ることを判断した。 「このR-4は、連邦系の技術とジオン系の技術が融合した、次世代型MSのリファレン スとなる機体だ。この機体に採用された機構は今後標準装備となるだろう。この機体 に全天視界モニタを採用すれば、それ以後の機体にも採用される機会が増える」今思 えば、蛮勇だったかもしれないが、NT-1開発チームは、R-4の試作機並びに初回量産 ロット(量産が決定した上でのことだが)に、実費のみで全天視界モニタを取り付けるこ とにした。 E達は狂喜した。連邦系の技術者がR-4を認めた、何よりの証だったからだ。 オープンソース化宣言により、さまざまな技術が持ち込まれ、検証 された。このことは連邦軍の技術屋全体の底上げを図ることになっ た。開発各局でさまざまな融合実験が繰り返されたが、そのデータ 量はグラナダ造兵工廠が常に頭一つ分、リードしていた。最終的に は、ほかの開発局の依頼で融合実験を行い、データを共有する、と いう試みもはじまった。コレにより、R-4そのものは日々その姿を変え、 複雑になっていったが、データそのものの蓄積もかなり進んだ。 もちろん、オープンソースにした弊害が、なかったわけでもない。 軍事機密が「不必要に流出する」との理由で、新型ビームライフ ルの供給が打ち切られた。 連邦軍の次世代MSの基準として、「ビーム兵器を運用できること」 が求められた。そのため、ジム・クゥエルやガルバルディ、などといっ た、先行して量産体制に入った機体や、同時期に開発が進められ ていた機体では従来型のビームライフル、ビームサーベルの装備が 前提とされていた。 それらの、フィールドモーター駆動の機体に比べR-4は、AMBAC能 力において劣るものの消費電力は比較的少なく、同じジェネレータを 使えばビーム兵器駆動にまわせる電力は多かった。  しかし、「本体のジェネレータ出力に依存しないビームライフル」の開 発のうわさが、徐々に形を伴って開発当局を駆け巡る中、それにあわ せた設計変更が行われた。  それが、命取りだった  ビーム兵器に供給する電力量を、最低限に抑えたのだ。余剰出力は すべてEパックにまわされ、情報収集デバイスの運用に当てられ、残り はすべて大出力コンデンサに蓄え、非常時には常軌を逸した大出力で 機体を駆動させることも出来た。 Yは言った 「せっかく大出力をビームにまわせるんだ。新型ライフルを使わなくても 従来型でもいいだろう。」 しかしEは、新型ライフル搭載にこだわった。新機軸満載の量産MSとい うイメージが先行しすぎていた。  しかし、上記の理由で、新型ビームライフルの供給が打ち切られたときには、連邦系とジオン系 の技術のキメラともいうべき、複雑怪奇な構造はあらたな設計変更を受け付けず、ビーム兵器は 、ライフル系かサーベル系、どちらかの運用しか出来ないという、致命的な欠陥を抱えることとな ってしまった。  結局その欠陥は解消せず、かつてのガンダムを上回る出力を誇りながら、ビームライフルとビ ームサーベルの並立運用は出来ないままであったが、ジャミトフは意に介しなかった。 「この機はかつてのガンダムのように、一騎当千の勇者による万能の働きを期待されているので はない。ごく普通の兵士が、任務を果たすのに必要なツールに過ぎない。オプション兵装を変更 するだけでどのような戦局にも対応できる汎用機がローコストで手にはいるのならば、それでよ いのだ」  確かに、一機ですべての戦局を対応するのは難しい。しかし、前衛が新型120ミリで弾幕を張 って敵の足を止め、後衛がビームライフルで狙撃し、その撃ちもらしを再び前衛がビームサー ベルでとどめをさす、という集団戦法を堅持するのであれば、ハイザックは、その後世に出たMS に比べて、格段に劣っているというわけでもなかった。  そのときの「新型ライフル」は結局ガンダムMk―が採用したが、機構的に斬新な上に威力は 従来のものとさほど変わらず、ただ装弾がマガジン形式になっただけでどのみち本体出力に依存 する事には変わりになく、採用した機体はほとんどなかった。   また、大出力コンデンサ搭載がかえってチューニングメニューを豊富なものとした。  コンデンサ直結の大出力ビームキャノンを搭載し、センサー系の精度を向上させた ハイザック・カスタムという、一種のスナイパーカスタムもグリプス戦役後期に流行しだしたのも、大出力 コンデンサと、混沌とした技術体系がもたらした奇跡だった。  事実、グリプス戦役中、ザク系列の機体にあこがれるジオン系のエゥーゴの兵士が、 ティターンズとバーター取引でGMとハイザックの交換に応じたというのはよくある 話で、しかも交換レートはハイザック2に対してGM3であった。数に劣るエゥーゴに とってこの交換レートは致命的であったが、それでも、水面下でこの取引は続けられ ていた。  結論から言えば、最初のコンペの時から、さほどコストが下がったわけでもなかった。 しかしながら、ザクの形態を模倣したことによる、見るものに対する精神的影響力や、 従来型の連邦系OSの反応速度など、カタログスペックだけではわからないセールスポ イントが、ジャミトフを動かした。また、産みの苦しみというべき、初期不良が続出したた め、かえって整備ノウハウが蓄積されたことも、EやYはそれに気づかなかったものの、 ジャミトフをうならせた。 結果として、R-4はRMS-106の制式ナンバーを与えられ、量産認可が下りた。ティターン ズで採用され、指導教官として、Yもティターンズ入りを果たした。また、唯一のハイザッ ク装備部隊として、他の連邦系部隊との演習の際、アグレッサー部隊としても活躍した。 結果、全連邦軍にその性能が知れ渡ることになり、ティターンズでの正式採用後半年足 らずで、連邦正規軍制式採用機となった。 「お前のおかげだ」Eはエリスに言った。 「お前にあえなかったら、R-4のオープンソース化なんてアイデア、思いつかなか った。だから・……………………」 完成したR-4、正式名称が、まだ決まっていなかった。 「お前に敬意を表して、こいつの機体名を"HI-ZACK"にしたい。お前がフリッパーの ザックパーツを守ってくれていなかったら、この機体は、この世に生まれていなかっ たかもしれないんだ。それともう一つ・…………頼みがあるんだ」 エリス、泣き崩れて、マトモにEの話を聞いていなかった。 「エリオット・レム婦人になってくれないか」 泣くじゃくったまま、エリスはEの胸倉を立て続けに殴った。 「このメカフェチ!そんな大事なことは、後から言いなさい。仕事のついでじゃなく。 あんたみたいなメカフェチ、一人にしとくとなにやらかすか心配だから、お嫁にいっ てやる。感謝しろ」 結果として、ハイザックそのものは0084年当時としては屈指の性能とパフォーマンス を誇る名機となったが、逆に、連邦系技術とジオン系技術の融合そのものを促すきっ かけになってしまい、より高性能な機体を生み出す呼び水となった。そのことが、結果 としてハイザックそのものの相対的性能劣化につながり、寿命が短かったのはなんと も皮肉でもあるが、ジオンの優れた技術を導入した機体が増えたために、旧公国系技 術者や生産プラントに仕事が行き渡った、という点に関しては、EとY、二人の目論みは、 達成されたといえた。  平和のために作り上げたハイザック。しかし、男たちの願いもむなしく、次の戦争がは じまってしまった。 エーックス エーックス 久保 「スタジオにゲストとして、ハイザックのOSを開発したシステムエンジニア、 ウィリアム・ゲイツ博士においでいただきました」 ウイリアム(以下W) 「始めまして…こんなところ初めてなんで緊張しています」 国井 「早速ですが、当時のことをお伺いしたいのですが…・・肝心の貴方のO S、どうやってザクを"敵"と認識できるようになったのですか?」 W 「タネを明かせば簡単なことです。ジオン系のOSを元にしてるって番組の 中でも解説があったと思うのですが。ハイザックのAIは、自分のことを、ザ クと認識していたわけなんですよ」 国井 「ザクと認識?AIが?ハイザックには教育型COMPが搭載されていたの ですか?」 W 「あれほど高度なものではありませんが、それなりのAI、というか母艦に搭 載されたマザーCOMPのエージェントが搭載されていた、と言ったほうがい いでしょうね。自己判断機能は最低限ですが、学習しようとしてデータは貪欲 に溜め込む性質を持っています。それを母艦なり、基地なりに帰還して、教 育型COMPのバケモノとでもいうべきマザーCOMPを介して、各機体でデー タを並列化するわけです。その際、各機体から抽出されたデータをもとにマザ ーCOMPのAIが学習し、その結果を各機体に送るわけです。かつてのガンダ ムが機体に直接教育型COMPを搭載して、実戦の現場でAIを鍛えていったシ ステムだったのを、部隊単位で大掛かりに実施したわけです。多数の機体から 集められたデータをもとにAIを鍛えるわけですから、AIの成長速度も速かった ですよ。」 久保 「ちょっと話題がずれてきたようですが・・・・・そういうデータは中央に送られて、 再処理され、また全部の機体を並列化するわけですか?」 W 「いえ・・・部隊単位での機体の運用は異なるわけですから、基本的には一個中隊単 位での並列化が限界だったと思います。ただ、中央を介して、似たような運用をして いる部隊のデータとリンクする、位のことはやっていました。このシステム、最初に載 せたのがハイザックだったんですが、今では連邦軍のすべての機体に搭載されてい ます。連邦軍が無駄だ無駄だと言われつづけながらも、MSをすべてRGM系で統一 しているのも、同一の機体でデータの共有をしやすいからなんです。いまだから言わ せてもらえば、グリプス戦役当時のMS開発スピードがあまりにも速かったのは、デー タのフィードバックシステムが効率よく整備されていたからなんです。現場が不満に 思った内容がすぐに開発のほうに反映されるわけです」 国井 「わかりました。で・・・・肝心のハイザックのAIは・・・・・」 W 「ハイザックのOSは自分のことを、ザクと認識していました。流体パルスシステム採 用、モノコック構造という点でね。連邦系パーツが多用されているのは補修用に鹵獲 部品を使ったのだ、とね。そこまで教え込むのに時間がかかって、本当に困りました」 国井、久保 「?(狐につままれたような顔をする)」 W 「自分の部隊は、鹵獲パーツを埋め込んだ機体を装備している。一方で、こちらに攻撃 体勢をとっているのは、逆に、敵に鹵獲されたザクなんだ、って教え込んだのですよ。 ややこしいですが。120ミリが通用するかしまいかはともかく、敵に渡しちゃならないから 撃墜する、ってね。ややこしいですが、AIを介してアムロ・レイの戦闘データを活用する ためにはハイザックのAIを手間隙かけて"騙す"必要があったわけです」 久保 「………………開発の際には相当のご苦労があったようですが、貴方から見て、E氏と Y氏、どのような方たちでした・…?」 W 「そうですねぇ。Eさんとはある意味でウマが合いましたね」 国井 「でも、お互いジオンと連邦、出身母体が違うわけです。当然対立があったと思いますが」 W 「あぁ、んなのしょっちゅうですよ。殴り合いこそしてないけど、殺意を抱いたのはお互い両 手の数じゃきかないんじゃないのかな(笑)」 久保 「(笑)って・・・・・………」 W 「技術屋なんざそんなもんですよ。自説にこだわるあまり相手を攻撃せずにいられない。 自説にこだわりを持たない技術屋は工作機械に置き換えられる、そんな世界なんです。 そういった意味ではハードウェアとソフトウェア、専門分野こそちがえど、技術屋としての あり方は似たもの同士だったと思います。ウマが合う、ってのはそういう意味です。近親 憎悪、って言ったほうが分かりやすいかもしれない。一緒に肩抱いて白木屋で一杯やる のは謹んで御免こうむりますが、もう一度なにかプロジェクトをやるなら、ハードウェアは あの人に担当してもらいたいですね。そもそも、オープンソース化なんてアイディア、フリ ーウェアなんかではあたりまえだけど軍用機動兵器のハードウェアでやるのはあの人く らいしかいませんよ」 国井(引きつりながら・…) 「そ・・・それで・・・・・Yさんはどんな人でした・…」 W 「そうですね。Eさんと正反対だったなぁ。体育会系つぅか竹を割りすぎて地割れ まで作っちゃうような、そんな人でしたね。日系とはきいてないけど、古代人の" 江戸っ子"っていうんですか?ずいぶん気風のいいひと立ったような・・…自分 のなかにちゃんと筋を持っている人でした」 国井 「そうですね。軍法会議の資料によりますと、ティターンズ在籍時当時、コロニー に毒ガスを注入するという作戦がありましたが、Y氏の参加は確認されていませ ん。基本的にティターンズはエリートによる志願制の部隊ですので、命令拒否は 即座に原隊復帰が原則となっておりますが、ジュピトリス艦長、パプテマス・シロッコ 大尉の嘆願もあり、ティターンズにそのまま席を残す形になっています」 W 「あの人は基本的にガチンコで戦いたかっただけなんですよ。スペースノイドをガスで 嬲り殺すのはあの人の美学じゃなかったんでしょうね。その一方で、気に食わないや つは多少きたない手を使ってでも排除しちゃうんです。自分に正直すぎるんですよ、あ の人」 久保 「確かに正直すぎますね。ハイザックにこだわる部下に「その機体は辞めろ」みたいなこ と言ってましたけど、あれだけこだわったハイザックにあっさり見切りつけられるのも、 ハイザックの性能を誰より熟知していたことと、その部下の命、というか部隊単位での戦力 のアベレージを個人の趣味で落とされたくなかったゆえでの一言なんでしょうしね」 W 「そうですね。あの人、口は悪いし態度悪いし鮭臭いけど、女性に対しては態度とは 裏腹に紳士なんですよ。不思議な人だったなぁ。その反動かどうか知りませんが、 男にセクハラするんですよ、あの人。ぼくなんか始めてタンデムでR-4に載せられ て戦闘機動時のGUIの使い勝手をチェックさせられたとき、息も絶え絶えになって るとことに僕のとこに近づいてきて、ノーモーションで僕のナニつかんで「お前の先 祖と違って、マイクロソフトじゃねぇんだな」なんてわけわかんねぇジョーク飛ばす んですよ。ったくナニ考えてるんだか・…」 国井 「は・・・はぁ・・・そうですか・・・・」 久保(気を取り直して) 「EさんとYさんの仲はどうでした?」 W 「生まれも育ちも育った環境も全然違うのに、いや、違うからこそあのコンビはよく機能 してましたね。究極の凸凹コンビつうぅかな。お互いないモノを補い合ってる、っていうか ・・・・・・・」 国井 「プライベートは?」 W 「よかったと思いますよ。あの二人見てると、スペースノイドもアースノイドの和解って のも夢物語じゃねぇなとおもいましたねぇ。ヤザ・・いえ、ユーリ中尉は「オレは給料の 8割を魚民グラナダ支店にささげてる。飲み友達がいることはいいことだ」、っていって ましたっけ。仕事が終ったら二人して呑みに行くんですよ。Eさんはあっちでエリートだっ たからいいお酒しか飲めないんですけど、そんなEさんを酔い潰したくて、アソコの魚民 の店長に袖の下握らせて、地球のドンペリ取り寄せるようにしたみたいですよ」 国井 「なんてむちゃくちゃな・・・・・、いえ、心あらたまる友情物語ですね・・・・・・」 久保 「Y中尉はいまだティターンズに参加した罪状で戦犯あつかいなので…お名 前は出せません、残念ですが」 国井 二人の男には、再び敵味方に分かれて戦う運命が待ち受けていました。二 人は再び戦場で出会います。しかしながら、その再会のきっかけは、二人が 作った、ハイザックでした・…それでは、エンディングです・………… (ここらへんでみゆき様にもう一度うたっていただきます。) 0093年、シャアの反乱がおこった。 スゥイートウォーターに本拠を置いたシャアは連邦政府に戦線を布告、地球に アクシズを落とすことを企てた。。 その最後の瞬間だった。 アムロ大尉のνガンダムがアクシズに取り付く、ほんの少し前、テレビ画面に移 らない片隅に、一機のMSが取り付いた。 RMS-106ハイザック。 一人の男が、乗り組んでいた ユーリ・ゴルトベルガ元中尉。ロンドベル隊に軍属として配属されていた。 グリプス戦役で酸素欠乏症になりながらも彼は、自らがティターンズに参 加した戦犯であることを隠すため、ユーリ・ゴルドベルガを名乗って、軍属 になっていた。 アクシズが地球に落ちる。 脳裏に、15年まえのコロニー落しがよみがえる。 目の前には、お蔵入りになったハイザック。ネオジオンがザク系MSを使うことが予測 されたので、作業用MSとしてもお役御免になっていた。  男は酸素欠乏症にかかりながらも、いつでも使えるように整備していた。 男は、飛んだ。 ブリッジの静止を振り切り、手順をすべて無視して、いきなりスラスター全 開。急激なGが男の体を締め上げる。その衝撃が、男の魂に、再び火を灯した。 敵味方の濃密な弾幕を掻い潜り、ハイザックはアクシズに取り付いた。 癖のあるスラスターの吹かし方。それを忘れるはずも無い。 Eこと、エリオット・レムも、戦場でそのハイザックを視認していた。 エリオット・レム アクシズの地球圏復帰にともない、原隊に帰参。そのまま、シャアに請われるまま にアナハイムに身分を隠して出向、ギラ・ドーガを組み上げた。 この日も自ら、ギラ・ドーガを駆って戦場に赴いていた。 ジオンの大儀に殉ずる覚悟、出来てはいたがしかし、一人のアースノイドと酒を酌み 交わした思い出が、胸を去来した。 悪いのは連邦政府の体制である。だがしかし、地球に住むすべての人間を粛清する というその手段そのものには、違和感を感じていたのも、一つの事実であった。  かつてのアクシズ駐留部隊とくらべてもまだ少ない戦力、それで連邦政府と互角に 戦うにはこんなテロじみた戦い方しかない、それも理屈では理解していた。 しかしながら、こんなことのためにオレは、ジオンの旗の下に帰参したわけではない。 心の中で叫んでいたとき、全天視界モニタの片隅を横切る一筋の流れ星が、見えた。  RMS-106 ハイザック。あのスラスターの吹かし方、それを忘れるはずも無かった。 E達のギラドーガなど意にも介せず、濃密な弾幕をニュータイプもかくや、という巧みな 機動でかいくぐり、アクシズに取り付いたそのハイザック、EはそのパイロットがYだと確信した。 「あの馬鹿ヤロウ・………………」 言うより早く、Eもスロットルを全開にして、そのハイザックの脇にならんだ。 「こんなことをしても……………!」Eは言った 「うるせぇ!四の五の言わずにスラスター吹かしやがれ!少しでも軌道をずらすんだ!」 相手にも、自分が誰だかわかったようで、ほっとした。決して自分はニュータイプなはずは ないのだが、人の革新、とかつてジオンダイクンが提唱したのはこのことだったのか、とEは 妙に納得した。 二人に呼応するように、νガンダムを始め、戦闘空域にいたすべてのMSが、アクシズを押し 戻しにかかっていた。 多くのものの犠牲があったものの、結果として、アクシズは地球に落下せずに済 んだ。 二人は再会を祝し、何事も無かったように、つぼ八へと消えていった。 そして・…戦後…………… シャアの反乱の際、大量のデブリが発生した。連邦軍だけでは掃海作業がおいつかず 、作業そのものを民間に委託するケースが増えていった。 しかしながら、民間に払い下げられるMSは、戦闘機動が出来ないように核融合炉を外 され、外部電源と内臓バッテリの併用が必須となった。  母艦からケーブルを直結できるようなところならまだしも、ひもつきでは作業できない ような場所では、電力を大量に必要とするフィールド・モーター駆動のMSでは活動時間 に制限が厳しかった。 連邦政府は、死蔵されていた、ティターンズのかつての主力機、RMS-106ハイザックを核 融合炉を除去した状態で民間に払い下げ始めた。RGM系のMSよりも、流体パルス駆動 システムのハイザックのほうが、バッテリ駆動時間が圧倒的に長いため、デブリ回収業 者の請願を受け入れ、販売に踏み切った。 二人の姿は、宇宙にあった。 流体パルス駆動システムは、使用電力量が驚くほど少ないが、取り扱いとメンテナンスに技術が要った。 二人は、それを売り物にインストラクター会社を設立、後進の指導にあたった。 複雑怪奇なこのシステムは、かつてのジオン軍の造兵工廠でないと、パーツも十分に供給できない。 二人が望んだとおり、ジオン系スペースノイドに、仕事が行くようになった。 そうすることこそが、宇宙と地球をつなげることになる、二人は固く信じて、今日もまた宇宙を翔け、デブ リを回収し、和民にしけこむのだった。 [698] NHK 10時のニュース 05/05/07(土) 16:56:41 FKWRrh8d こんばんわ。ニュースをお伝えします。 5月7日 本日の連邦政府通常国会において、かつてティターンズに携わった戦争犯罪人 の一部、シャアの反乱の際の貢献があったものにかぎり、恩赦が実施されるこ とになりました。 以下、恩赦のあった方々の名前です。連邦軍のHPでも確認できるようになっています。 マスクド・タケノウチ少尉 ジョン・デイカー少佐 フランシス・パックマイヤー少佐 ヤザン・ゲーブル中尉 なお、ヤザン中尉には、ユーリ・ゴルドベルガ中尉名義での公文書偽造の罪状もありましたが、 合わせて不問、という扱いになります 以上です。今後も恩赦の対象になる士官が紅葉されますので、連邦軍もしくは連邦政府 のHPを注意してご覧になってください。 なお、T3チームに関しては、裁判継続中につき、今回は恩赦は出ませんでした。 以上です