(1)                 ( ̄ ̄<     / ̄>                   \  ヽ   / /ソ         プ ロ ジ ェ ク ト\  ヽ P r o j e c t MS    ─────────────────────          技術者たち /|_/ /\engineers                  |   /   \   丶                  \/       \__ノ     「グリプス戦争の英雄を救え」〜ニュータイプの精神治療に命を賭けた人々〜   伝説のエースパイロット  精神の崩壊     戻らない自我  ガールフレンドの甲斐甲斐しい看護       最新鋭の治療マシン  ニュータイプの精神感応         刻が見える  教授の死 プロジェクト エーックス・・・ 【国井】  こんばんは。国井雅比古です。(シュコー) 【膳場】  こんばんは。膳場貴子です。(シュコー) 【国井】  今夜のプロジェクトXは、(シュコー)グリプス戦争時にコロニーレーザーへと改装された(シュ コー)旧グリプス2、グリーンノア戦争資料館よりお送りします。(シュコー)ノーマルスーツ姿で 失礼いたします。(シュコー以下略)  こちらにはその当時の代表的モビルスーツ「ハイザック」の実機を用意していますが、お分かりい ただけるでしょうか。モビルスーツと較べてもこの広さ!こんな大きな物を、戦時はたったの数ヶ月 で作ったと言われています。 【膳場】  本当に大きいですね。普通のコロニーを改造してコロニーレーザーにするのには、大変な苦労が あったことでしょう。  ですがコロニーレーザーは一度発射されただけで、その後は廃棄されてしまいました。現在はグリ プス戦争の資料館として、保存されています。  戦時中このコロニー近くでも、激しい戦いが繰り広げられました。当時エウーゴとティターンズと 呼ばれた組織のトップエース同士もここで死闘を繰り広げたのですが、生き残ったエウーゴのパイ ロットは精神に重大なダメージを負ってしまいました。 【国井】  しかし彼は、グリプス戦争の直後始まった第一次ネオジオン抗争の終結した後には、すでにおおか た治癒し、元気に走り回っていたと言います。どのようにしてこんなに早い治癒が可能だったので しょうか。  今日は彼を治療しようと奮闘した方々のお話です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (2)  UC0087年。後にグリプス戦争と呼ばれたエウーゴ対ティターンズの戦いは、かつて「ア・バオ ア・クー」と呼ばれた「ゼダンの門」で幕を引いた。この後ほとんど間を置くことなく第一次ネオジ オン抗争へと推移するのだが、その過程で一人のパイロットが戦線から離脱した。  カミーユ・ビダン。まだ17歳の少年だった。  グリプス戦争中に軍人であった両親を亡くしたビダンは、エウーゴのトップエースだった。毎日前 線で戦い続け、疲労は限界に来ていた。そんな中グリプス戦争の天王山、ゼダンの門攻略に出撃し、 戦った。ビダンはその後、ガールフレンドでもあり同僚でもあった花園麗(ファ・ユイリィ)に曳航 されて帰還した。そのときすでにビダンの精神は、壊れていた。  ビダンとファは、第一次ネオジオン抗争の最中、船を降りた。ダブリンという、かつてアイルラン ドの首都だった都市だった。  そこはオーストラリア、北アメリカ大陸に続く、三たびコロニーの落とされた地だった。  コロニー落としの現場付近で、被災者を救援して回っている医師がいた。  土佐今朝造。かつて地球連邦軍の戦艦に軍医として乗り込んでいた、救急医療のスペシャリスト だった。  土佐はビダンとファを見かけたとき、訝しんだ。まわりはひどいけが人ばかりだったが、その2人 は無傷だった。しかし土佐は、ビダンの目の色、そしてうつろな表情を、見逃さなかった。  その夜土佐は自慢の医療用ロボットをビダンの診断に使った。  「Anaheim Neurologic Laboratory's Scientic Robot (ANLSR)」。軍事技術であるモビルスー ツの歩行・作業技術と、ミノフスキー粒子下で使用されるミサイルにも使われた人工知能、そして各 種測定機器をコンパクトに収めた、軍事技術の平和利用の典型ともされた、アナハイム・エレクトロ ニクス社の傑作医療用ロボットだった。  土佐は目星をつけていた。このような状態の患者は、十中八九脳に障害を負っている。土佐は ANLSRでビダンを検査した。磁石と電磁波を使い、体の任意の場所を輪切りの映像として診察する 技術・・・MRIだった。  しかし、障害は見つからなかった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (3)  幸いもう一人のほう、ファは健康体で、被災地での救護活動を手伝ってくれた。明るい笑顔のファ は被災者の間でも噂になり、暇さえあればビダンの介護をする姿ともども、人々の語りぐさとなっ た。  一方土佐は、何度診断をしても健康体としか見えないビダンの体に、歯痒さを感じていた。しかし 患者の状態は明らかに病的だ。「この患者は自分の手に余る」土佐は自分の関われる範疇を超えてい ることを自覚した。  土佐は知っている限りのつてをたどって、ビダンを治せる医者を捜した。世界中、そして宇宙にも いる知人に当たってみたが、ニュータイプの研究は当時はまだ極秘だった。けんもほろろの応対が、 相次いだ。  土佐はショックを受けた。宇宙戦艦の軍医として多くの人間と関わり、修羅場をくぐり抜けてきた 力はこんなものかと、情けなくなった。  それまでやめていた大酒を、再び浴びるように飲み始めたのは、そのころだった。  しかしここで一つめの奇跡が起きた。人気者となっていたファの噂が、かつてエウーゴとして活動 していた当時の知人、ステファニー・羅(ルオ)の耳に入ったのだ。ルオは香港でルオ商会という総 合商社を営む女性実業家で、取引の都合でロンドンに来ていた。  200〜300年もの昔から、チャイナの人々は世界中に出稼ぎに散り、華僑といわれた。華僑たちは 各地で同族結社を作り、困っている同族には手厚い庇護をあたえるしきたりがあった。ファとはエ ウーゴを通じてではあるが会ったことがあり、調べてみると遠い過去にルオ家とファ家の付き合いも あった。庇護には充分な理由だった。  予定の隙間を縫ってダブリン近郊に来たルオは、眼を見開いた。ファとともに、そこにはエウーゴ のトップ・エース、カミーユ・ビダン曹長がいた。彼女にとってビダンは、ホンコンシティー攻防戦 でのアムロ・レイと並ぶ恩人だった。援助を決定した。 (エーックス) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (4) (エーックス) 【国井】 本日はスタジオにステファニー・羅(ルオ)さんをおまねきしています。 (往年よりも老けて鋭い雰囲気を身につけたステファニー・ルオがステージにあがる) ・・・ルオさん、エウーゴに出資をなさっていたという話ですが、その当時からビダンさんと面識が あったのですか。 【ルオ】 それ以前からエウーゴとは取引を行っていたのですが、グリプス戦争が勃発してしばらくした後、私 の住んでいたホンコン・シティーをティターンズに荒らされていたのを、彼らに撃退していただいた のです。その時が初対面です。 【国井】 ヨーロッパでこのような形で再び会われたのには、かなりびっくりなされたんじゃないですか。 【ルオ】 ええ、こんなところで、という気持ちが少なからずありました。しかし何よりも、あの元気だったビ ダンさんが心を患ってらしたのにさらにびっくりしました。 【国井】 そのときの様子は、どのような感じでしたか。 【ルオ】 私が2人に面会した時、ファさんは明るく振る舞ってはいても憔悴していました。ビダンさんはとい うと、どこか虚空を見つめて、心ここにあらずといった感じでした。 同じ中国人として、微力ながら助力できないものかと思いましたが、その当時私が連絡を付けられる 方の中で、ビダンさんのような心の病気を治すことができる方をご紹介して差し上げるくらいしかで きなかったのが心残りです。 【国井】 その心の病気を治すことが出来る人・・・それは意外な人物でした。ご覧下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (5)  ビダンとファを土佐にあずけたまま、ルオは日本に飛んだ。行く先はムラサメ研究所。地球連邦軍 内でオーガスタ研究所と一、二を争うニュータイプ研究の一大拠点である。そこにはさまざまな技術 者がいた。一見ニュータイプとは関係のなさそうな技術者も多数いた。その中には、少なからず旧ジ オン公国から亡命した者もいた。  ルオはティターンズと商社として取引したことはなかった。まして個人的に付き合うことは考えら れなかった。むしろルオはティターンズを、嫌悪していた。  しかしその当時一大派閥となっていたティターンズと繋がろうと、各地の研究機関はティターンズ に協力した。ムラサメ研究所もその例に漏れなかっただけで、ティターンズの下部組織だった訳では ない。  ルオはムラサメ研究所に何人かの知人を持っていた。知人のつてをたどって、やっとたどり着いた 人物がいた。その人物はナミカー・コーネル。精神神経学分野の博士号を持つ、教授だった。  コーネル博士はちょうど長年取り組んでいた研究に一段落付き、休暇を取っていたところだった。 ルオはコーネル博士の自宅にアポイント無しで押し掛け、こう言った。 「一人の患者が苦しんでいます。あなたの力を貸して下さい」  コーネル博士は、迷った。ステファニー・ルオの名前も顔も知っていた。香港のルオ商会を取り仕 切る、辣腕の女経営者。そして、エウーゴに出資をする大富豪。ルオは経済雑誌にも登場する有名人 だった。ティターンズと関わりのあった研究員と、本来関わっていい人物ではない。身の危険を感じ た。  ルオは迷うコーネル博士に、言った。 「その患者はまれにみるニュータイプです」  コーネル博士は、その言葉に惹かれた。彼女の専攻は先端ニュータイプ実践論。しかも研究素体を 失ったばかりで、一段落といえば聞こえはいいが、研究が行き詰まったところだった。研究の被験者 を得られるかもしれない、またとないチャンスだった。詳しい話を聞いているうちに、コーネル博士 は、自分が身の危険と好奇心の板挟みにあっていることに気がついた。  長い沈黙を破ってコーネル博士の口から返事が出た。 「やらせていただきます」 コーネル博士は、うなずいた。 それを見たルオ。安堵の溜息を漏らした。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (6)  そのころ土佐は相変わらず被災者相手の応急処置、そして各地の病院への手配という、激務をこな していた。毎晩の深酒がたたり、若くない土佐の体を蝕んでいた。顔は黒くむくみ、手が震えた。  土佐はアルコール依存症になっていた。  そんな中、ルオからの一本の電話が入った。話を聞いた土佐は、安堵した。 「カミーユ君を治せるかもしれない」  ファは、泣いた。  ビダンの入院は、すぐに決まった。ロンドン大学医学部だった。入院にタイミングを合わせ、極東 からルオとコーネル博士、そしてコーネル博士が連れてきたロボットが来ていた。  そのロボットは形こそ違うものの、土佐の持っていた医療用ロボット「ANLSR」と同じくらいの 大きさのロボットだった。微弱な脳波の遠隔測定機能、そして複数人数の脳波シンクロ測定機能な ど、ニュータイプにまつわるさまざまな機能のついた最新型だった。本来専門分野の違う、ある博士 に借りたものだった。名前をRoPET (Robot for Psychical Extraction Treatments)といった。  ビダンを一目見たコーネル博士は、うろたえた。そこには自分の研究を台無しにした張本人、敵軍 のパイロットがいたからである。  コーネル博士は、悩んだ。感情ではビダンを許せない面があった。しかし研究の被験者を得る欲求 に、勝てなかった。  ビダンには外傷は全くなかった。そのため手術室やICUではなく、病棟の個室で検査が行われ た。もやにかすれたコロニーの残骸が遠くに見渡せる部屋だった。  コーネル博士とRoPETの、約1週間の検査が始まった。脳内部の損傷や血栓の有無。精神崩壊前後 の状況のリサーチ。全身のホルモンバランス。薬物使用の有無。検査は多岐に渡った。  コーネル博士が下した診断は、心身喪失症、幻覚症、重度の躁鬱症の合併症だった。ちょうど LSDなどの薬物を濫用した、重症患者に症状が酷似していた。自己破壊衝動がないことだけが、救 いだった。  次に実際の治療が行われた。精神病患者に行うような催眠療法も試みたが、効果はなかった。次に 薬物中毒患者にするような投薬治療をしてみた。効果は薄かった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (7)  しかしコーネル博士は、そのような治療が効果がないであろうことは覚悟の上だった。勝算があっ た。  連れてきたRoPETはただのロボットではなかった。ムラサメ研究所は、ニュータイプの研究だけ をしている場所ではなかったのだ。いずれ来る無人機の時代のパイロット・システムのたたき台とし て、RoPETには、対象のニュータイプの思考、感性、人格などをほぼ忠実にエミュレーションでき るシステムが入っていた。そのときエミュレーションされていた人格は、素体番号4番と呼ばれる匿 名のニュータイプだった。  エミュレーションされたニュータイプの人格と患者であるビダンを脳波レベルでシンクロさせると いう、治療計画だった。これが駄目なら、他は開頭手術による脳細胞操作しかない。そうなれば社会 復帰が可能なレベルでの治療は難しい。RoPETに、全てを賭けていた。  治療は病棟の地下室に移って1週間行われた。外界の刺激を与えないように、そして外部から見ら れないようにとの配慮だった。  土佐、コーネル教授、ANLSR、そしてRoPETらの奇妙な治療が始まったのだ。ビダンの頭や胸に は電極が付けられ、手足はベッドに縛られた。酸素吸入が始められた。  ショック療法のための電流が流れるたびに、ビダンの悲鳴が部屋に響いた。高圧電流のためたびた びビダンの体は傷ついた。土佐はそんなビダンを持ち前の救急医療の技術で的確に応急処置した。し かし土佐は、これ以上自分が関われることはないことを悟っていた。付き添いのファは涙を流しなが ら、土佐を手伝った。  治療が続けられるにつれ、奇妙な現象が起きた。ANLSRには全く影響がない一方、RoPETの動作 が不安定になった。治療はたびたび中断されて、ANLSRがRoPETを診断するという姿が見られるよ うになった。しかしその頻度が高くなるにつれて、ビダンは外部からの刺激に対して反応するように なっていった。  そして前触れもなく2つめの奇跡が起きた。 (エーックス) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (8) (エーックス) 【膳場】 本日はもうひとかた、花園麗(ファ・ユイリィ)さんにもお越しいただいています。 (所帯染みたわりにやけに足の奇麗な中年の東洋人がステージに上がる。ルオに深々と頭を下げ る。) 【国井】 ・・・ご結婚されてユイリィ・ビダンさんとおっしゃられるようですが、ここではファさんと呼ばせ ていただきます。ファさん、治療の様子はどうでしたか。 【ファ】 ・・・とても見ていられませんでした。正直カミーユにこんな苦痛を与えるコーネル博士に恨みを 持ったものです。ですが治療が進むにつれてカミーユの眼が光を取り戻していくように感じました し、今では博士に感謝しています。博士はこのあとすぐに亡くなられて、キチンとした感謝を伝えら れなかったのが心残りです。 【国井】 現在は看護士として、ご主人のカミーユ・ビダンさんと病院を経営なさっていると聞きましたが、こ のときの経験に影響を受けてのことですか。 【ファ】 はい、ダブリンでの救護ボランティアの頃から、エウーゴでパイロットとして戦っていたとき以上の 充実感を感じましたし、私たちの経験をより多くの方を救うのに役立てたい、とカミーユと相談し て、始めました。 【膳場】 ビダンさんとファさんの意識を変えたことはなんだったのか、そしてコーネル博士の亡くなった原因 はなんだったのか、引き続きご覧下さい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (9)  そして前触れもなく2つめの奇跡が起きた。  コーネル博士はまず、動かなくなったRoPETに気がついた。今まではちょうど、システムエラー を起こして勝手に再起動を繰り返すコンピューターのような挙動をしていたのが、フリーズしたかの ように全く動かなくなった。ANLSRまでもが動かなくなった。  ビダンを治療している部屋には、ANLSRとRoPETだけがいた。土佐とコーネル博士、そしてファ は強化ガラスに隔てられた別室でその様子を見ていた。  コーネル博士は、RoPETの様子を見るため部屋に入った。  そのとき全員の目の前に宇宙が広がった。 ---------------------------------------------------------------------  そこにはハマーン・カーン駆るキュベレイがいた。  ジュドー・アーシタ駆るZZガンダムもいた。  何故か全ての人名、モビルスーツの名前、置かれた状況が瞬時に理解できた。  ジュドーはキュベレイの攻撃をかわすためにΖΖを分離させた。  しかしジュドーの乗るコアファイターはキュベレイに殴り飛ばされた。  コアファイターは操縦不能で合体はおろか動くことも出来なかった。  ハマーン・カーンが襲ってきた。  そこに立ちはだかる意思があった。  フォウ・ムラサメ、ララァ・スン、エルピー・プル、カツ・コバヤシ、  サラ・ザビアロフ・・・  そしてカミーユ・ビダン。 「な、なんだ・・・あれは、カミーユ・ビダン!」  ZZガンダムに合体・変形をさせたジュードはそして・・・ ---------------------------------------------------------------------  コーネル博士が、倒れていた。  これらは後に推測されたことであるが、ファも土佐も、宇宙で暮らしたことがあった。しかし自身 はニュータイプを研究していても、コーネル博士は宇宙に出たことはなかった。恐らくその経験と耐 性が命運を分けたのであろう。急激なニュータイプとの感応によって、精神が耐えきれなかったの だ。  コーネル博士はロンドン大学スタッフの献身的な治療の甲斐なく、20日後、そのまま永久の眠り についた。 (エーックス) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (10) (エーックス) (ぼろぼろと涙をこぼすファと対照的に、毅然とした態度のルオをカメラがパンする) 【国井】 コーネル博士の連れてきたロボット、「RoPET」ですか。RoPETに入っていたニュータイプとの感 応で、ビダンさんは自分を取り戻したのですね。 【ルオ】 はい。のちの検査でそういった説明をいただきました。治療の過程で彼女という犠牲があったのは非 常に残念でなりません。ですが、ビダンさんが自分を取り戻したことが不幸中の幸いだと思います し、彼女にとっても本望だと思います。 【膳場】 ルオさんには資金面・精神面の両面でバックアップをいただいたわけですが、治療の場にはおられま せんでした。ファさん。爆発的なビダンさんのビジョンが頭に飛び込んできたということですが、ど うでしたか。 【ファ】 ・・・はい。あれは確かに、当時のネオジオン摂政ハマーン・カーンと、エウーゴのエースパイロッ ト、ジュドー・アーシタとの決戦のビジョンでした。 【膳場】 ファさん始め、ビダンさん以外のその場にいた方々には、失礼ながらニュータイプの素養はなかった と伺ってますが・・・ 【ファ】 わたしのようなオールドタイプでもビジョンを観れるほど、カミーユとフォウ・・・RoPETに入っ ていたニュータイプの人格の名前ですけど、それが強かったんだと思います。今でも信じられないよ うな奇跡でした。 【国井】 まさに奇跡の治療でした。・・・この治療を境に、ビダンさんはめきめきと快方に向かったのです。 今日はお二人ともありがとうございました。それではエンディングです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (11) (ヘッドライト・テールライト)  自我を取り戻したカミーユ・ビダンは、自我をなくしていた間の出来事を全て覚えていた。ただ以 前までの、食って掛かるような性格だけが変わっていた。  その後療養期間を過ぎて退院したビダンは、土佐、ファらと暮らしながら中途になっていたハイス クールにもう一度通い始め、苦労して大学の医学部を卒業。5年間の研修医・勤務医生活を経て大学 院に進学。コーネル博士と同じ精神神経学分野を専攻し、修士の学位を取得した。  現在は月面都市グラナダに開業医として居を構え、ファ・ユイリィとその間に出来た子供ととも に、忙しくも幸せな生活を送っている。  カミーユ・ビダンはこう語る。 (白衣を身に着けたカミーユ。中年になり体型が父親に似てきている) 「僕はとても運が良かったんだと思います。確かにエウーゴでエースパイロットとして働いていた当 時の僕は、我ながら自惚れていました。パプテマス・シロッコとの戦いで勝った一方、自分の意識だ けが宇宙をさまようようになってアーガマをリタイヤして、それでやっとコンプレックスの裏返しの 自惚れた意識と、義務から来る強迫観念、そして多くのパイロットの命を奪った罪の意識から逃れら れたんです。  モビルスーツのパイロットだったからこそ、そして曲がりなりにもニュータイプと言われていたか らこそ、できる仕事があるんだと思っています。今は自分の仕事にやりがいを見いだしています。  あの日亡くなってしまったナミカー・コーネル博士とその後肝臓を患って亡くなった土佐今朝蔵先 生、3度目の木星航行に行っている友人ジュドー・アーシタ、ひとかたならぬ援助をいただいたミ ズ・ルオ、そして僕の家内と神様にはしつくせない感謝の念を抱いています。ありがとうございまし た。」  ロンドンでの治療で使われたムラサメ研究所のRoPETは、その後ビダンとルオの働きかけによっ て、復元された内部データのコピーを譲り受けた。データは当時町にあふれていたハロ型レプリカロ ボットの中身を改造して移植した。今では「フォウ」という名前で、家族とともに大切にされてい る。 取材協力/ 地球連邦軍航空宇宙軍広報部・ジオン共和国観光協会・グラナダ市 グリーンノア戦争資料館・ロンドン大学医学部 ルオ・トレーディング・コーポレーション・ジャパン広報課 ムラサメ研究所OB会・カミーユ症候群・2ちゃんねるシャア専用@旧作板