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個人の置かれている状況により計画の立て方は様々だと思いますが、以下、私の場合を思い出しながら書いてみました。参考としていただければ幸いです。
<留学の準備に入る前に>
1)夢/目標についてよく考える。(最重要!!)
(例:帰国後、日本でgeneral internal medicineを教えたい。家庭医として活躍したい。世界に
通用する臨床医になりたい。)
2)米国臨床留学の目的について考える。
(例:系統立ったものの考え方を身に付けたい。家庭医学/感染症/老年医学/腫瘍内科学/
EBMを学びたい。)
3)一般的に、留学準備のためには3〜5年間を費やす覚悟が必要です。
4)およその将来設計を考える。
(例:3年間内科レジデントを行い、チャンスがあればさらに2年間の感染症fellow-shipに
進みたい。帰国後は、教育病院で若い先生方にgeneral internal medicineを教えたい。
自分の研修したい科の難易度、必要な研修年限についても情報を集めましょう。)
5)周囲の支え、理解を得る。(家族、上司、友人、両親)
6)留学準備のための環境設定をする。(どこで生活し、どこで働き、どこで勉強するか)
(生活費や留学準備のための費用を賄い、勉強時間を確保し、臨床能力を維持し、最新の
情報が得られやすいように環境を整える)
7)留学しても将来の日本におけるポジションが保証されているわけではないことを覚悟する。
(帰国後に所属をしたい場所が具体的にあれば、留学前・中によくコンタクトをとっておくと
少しはよいようです。)
米国臨床留学を終えて帰国した時、折角学んだことを日本で生かす場があるかどうかが気になるところです。このことを機会があるごとに様々な先輩の先生方に伺ってきましたが、残念ながら現時点では活躍の場は極めて限られているようです。恐らく、日本の医局講座制の中では、一般的に研究業績は評価されるものの、臨床では評価してもらえないからでしょう。また、感染症や腫瘍内科学などの分野では、日本では米国のように独立した科として存在していないという事情があります。しかし、将来的には活躍の場は僅かずつでも増えていく可能性があるとも聞きますので、私自身はそれ程悲観はしていません。
米国臨床留学を終えて帰国した先生が、「アメリカではこうやっている」ということを全面的に押し出して主張した場合、日本の医局の先生方とうまくやっていけなくなるというお話も時々耳にします。将来アメリカに永住するのではなく、日本で臨床を行いたい場合は、医療システムの違う米国で学んだことをすぐにそのまま日本に導入しようとせずに、基盤を整備してから徐々に導入したり、日本流にmodifyして導入したりする必要があるのかもしれません。
将来の日本での出世を強く希望する方にとっては米国臨床留学は期待はずれになるだろう、という話もよく聞きます。自分が望む医師像が米国臨床留学によってかなう可能性があれば、それに賭けて見るのだと思いますし、そうでなければその進路は選択しないということになるのだと思います。
米国臨床留学はある意味で自分にとっての投資だと思うのですが、何らかの犠牲を伴うということも事実であると思います。犠牲(?)を伴っても留学したいのかどうか、よくよく考えてみる必要があると思います。それらの犠牲(?)がありながらも私がなぜ臨床留学にこだわり続けてきたかを今考えてみますと、「そうしないと自分が後悔しそう」でしたし、結局は「自分の満足のため」にやっているからなのだと思います。
<いつ渡米するか?>
私個人の意見としましては、日本で少なくとも2〜3年間臨床を経験してから渡米した方がよいのではないかと考えています。その理由として、1)近年USMLE
STEP 1、STEP 2 では臨床的に重要な概念を問う出題が増えていること、2)CSAでは、clinical
decision makingの力も要求されるということ、3)米国レジデント1年目の臨床の実力は、一般的に日本の研修医3年目の実力に相当すると言われていること、4)日本の医療のよい点、悪い点を知った上で渡米すれば、バランスの取れた眼で米国の医療を見ることができるかもしれないということ、などが考えられます。これについては様々な意見があると思いますし、各々力量の差、境遇の差もありますので、最終的には自分の判断ということになると思います。
<アメリカ臨床留学に必要な資格試験>
・USMLE STEP 1(基礎医学、基礎医学過程修了時受験可能)
・USMLE STEP 2(臨床医学、医学部6年生以上から受験可能)→ 2004年6月より、Step 2 Clinical Skillsに変更
・TOEFL (CBT 213点以上、2年有効) → 2004年6月より、受験不要となります。
・CSA (Clinical Skill Assessment、3年有効) → 2004年6月より、Step 2
Clinical Skillsに統合されます。
→ ECFMG certificate 取得 = 米国レジデントプログラムへの応募資格獲得
(ECFMGがJ-1ビザのスポンサーになってくれる。最長7年間米国滞在可。
通常のレジデント研修(+フェローシップ)ではこれで十分。)
※CSAを受験するためには、Medical School Graduatesで、STEP 1, TOEFL合格が必要
※STEP 1またはSTEP 2合格後、7年以内にSTEP 3の合格が必須
※STEP 3は通常レジデント2、3年目に受験します。
※2004年6月より、STEP2とCSAを統合した、Step 2 Clinical Skillsという試験が始まり、TOEFLは不要となります。
※J-1ビザ:大学や研究所などでトレーニング(研究または臨床研修)を受けるためのビザです。その家族にはJ-2ビザが発行されます。
※H-1ビザ:何らかの業績を持っている労働者のためのビザです。就職先の病院がスポンサーになります。その家族にはH-4ビザが発行されます。レジデントプログラムによっては、レジデント開始前にSTEP
3 に合格していればH-1ビザのスポンサーになってくれるところがあるようですが、J-1ビザ保有者しか採用しないというプログラムの方が多いような印象があります。
※O-1ビザ:各分野での優れた業績や能力を持つと認められた人に対して発行されるビザです。優れた医学研究者であることを認めてもらう必要があります。就職先の病院がスポンサーになります。
※F-1ビザ:学生のためのビザです。英会話学校、USMLEのためのKaplanに通う場合は、学校に申請して発行してもらいます。その家族には、F-2ビザが発行されます。
※臨床のJ-1ビザでは、最大7年間の臨床研修を受けることが可能です。例えば、内科レジデントを3年間行った後、感染症のフェローを2年間行って日本に帰国するという予定であれば、J-1ビザで十分です。一方、全ての臨床研修を終えた後も、米国で臨床の仕事をしたい場合は、J-1ビザ特有の2
year ruleに従って、一旦2年間日本に帰らなければなりません。これは、鉄の規則と呼ばれており、たとえ、グリーンカード保持者の米国人と結婚したとしても、免れることはできないそうです。2年間日本に滞在した後に初めて、他のビザやグリーンカード保持に移行することができます。その時点でH-1ビザやグリーンカード(極めて難しいそうです)などを獲得できれば、米国で臨床の仕事に就くことが可能となります。特殊な場合として、J-1ビザに引き続いて、就職先の病院が、O-1ビザ(毎年更新が必要)を発行してくれた場合は、臨床研修に引き続いて米国で臨床の仕事をすることができるそうです。しかし、この場合も2
year ruleが先送りになるだけで、O-1ビザをスポンサーしてもらえなくなった時点で、(次のビザやグリーンカードに移行する前には)、必ず2年間日本に戻らなければならないそうです。研修後に引き続き米国に留まる場合は、ビザの関係で大変な苦労があると言われています。米国の弁護士さんに相談するのが得策であるともいわれています。私は、ビザに関する情報はこれ以上詳しくありませんので、もしその他の情報をお知りになりたい方は、以下のホームページを参考としてみてください。
http://www.twmlaw.com/resources/medical/medicalcont.htm
<英語のコミュニケーション能力を磨く>
米国で実際に診療を始めたとき、日本人の多くが英語のコミュニケーションで苦労をすると言われています。私自身も今ごろになって自分の準備不足を痛感しているところです。
どのように英語のコミュニケーション能力を磨くかについては、留学の準備の中で重要な位置を占めますが、これについては「TOEFL、英語について」のページで述べることに致します。
<どこで生活し、どこで働き、どこで勉強するか>
自分にとって何が可能で、どの順番がよく、何が最善であるかをよく考えましょう。私自身もかなり悩んだのですが、なかなか全てを満足させるということは難しいと思います。私の場合、母校の大学の総合診療部に研究生として所属しながら(授業料のようなものを払う必要があります)、週3日間アルバイトをして(毎週一回の当直あり)、その他の時間を勉強に当てました。週1日は、気分転換のために家族と遊びに出かけるようにしました。
その他にも、様々な道筋で留学される方がいらっしゃいます。私の知っている範囲でご紹介したいと思います。
・研修医、勤務医としてfullに勤務しながら準備 (尊敬に値します。)
・2〜3年間 アルバイトをしながら準備 (私の場合もそうでした。)
・予備校 Kaplanを利用する(東京、名古屋の2箇所にあります。お勧めです。)
・途中1年間、横須賀/沖縄米国海軍病院で研修する
(私は実現できませんでしたが、英語のコミュニケーション能力を鍛えるためにすごく
お勧めです!毎年秋頃面接試験があります。先輩、同僚、後輩の間で情報交換の
ネットワークもできるようです。)
・アメリカに移り住んで準備(アメリカのKaplanに通う)
・まず、研究者としてリサーチを行うために渡米し、米国でUSMLE,TOEFL,CSAの試験を受け
ながら臨床留学を目指す。(英語に馴れることができると共に、米国の教授に推薦状を書
いてもらい、優れたプログラムにapplyできる可能性があります。一般的に、米国人医師の
推薦状は、日本人医師の推薦状と比較して格段に信用があると言われています。)
・日本で研究業績をあげてから、fellow-shipで渡米
・米国の医学部に入学し、引き続きレジデント研修を受ける。
・野口医学研究所のexternshipプログラムに応募する。
(様々な点で日本人の臨床留学をバックアップしてくれる機関です。毎年春に選考会あり。)
・東京海上メディカルサービスのプログラムに応募する。(選考会の末、毎年数名以上、ニューヨー
クの内科系プログラムに日本人を送り出しています。とても素晴らしいプログラムです。)
・年2回程東京で開催される野口医学研究所/日米医学医療交流財団のセミナーへ積極的に参
加する。
・日米医学医療交流財団の選考会に応募し、留学の際の助成金を受ける。
・単独、正攻法でレジデントプログラムにapplyする。
・米国メルク社の奨学金制度を利用する。
※2〜3年間、日本で臨床研修を行う場合、臨床教育がしっかりしている病院、米国臨床留学に理解のある病院を選択されるとよいと思います。
※レジデントプログラムによっては、応募条件の中に外国人医師に対して様々な条件を課しているものがあります。一般的には、競争の激しいプログラムほど条件が厳しいと思われます。例えば、Dartmouth-Hitchcock
Medical Center Internal Medicine Residency Programでは、2ヶ月以上の米国での臨床経験が必要(observorshipsやexternshipsは不可)、卒後3年以内、J-1ビザしかsponsorしないというのが条件となっています。また、Massachusetts
General HospitalのInternal Medicine Residency Programでは、Outstanding
letters of recommendation from clinical and/or research supervisors in
the U.S. are essential. で、しかも、1年間以上の米国またはカナダでの臨床
or 研究経験があり、USMLEがSTEP 1、STEP 2ともに90以上、J-1ビザしかsponsorしないというのが条件になっています。また、University
of Michigan Internal Medicine Residency Programでは、For graduates of International
Medical Schools, we require a recommendation letter from an Internal Medicine
faculty physician attesting to your clinical performance here in the United
States. と、米国での臨床経験に基づいた米国人内科医師(教授陣の一人)による推薦状が必要であると条件付けています。University
of California San Diego Internal Medicine Programでは、Although we do not
have a posted minimum score on the USMLE exams, we find that scores in
the 70's and low 80's are not competitive. Applicants with failures
in USMLE are not considered for our program. It is desirable for
candidates to have U.S. experience, but not mandatory for application to
our program. という条件が付いています。Stanford's Medicine Residency
Training Programでは、Because we receive more than 1200 applications from
US applicants each year, and because so many of those are extremely strong,
we are unable to offer many interviews to IMGs. We select IMG candidates
from among those who are currently involved in a fellowship or research
in medicine in the US. IMGs will also need a letter from the Medical Licensing
Board in California granting permission to train in this state. (Licensing
Board address: 1426 Howe Avenue, Sacramento CA 95825.) との条件が付いています。条件が厳しいプログラムほど日本人医師はなかなか入りにくいということになります。International
Medical Graduates(IMG)に対して、どのような条件が付けられているかを早いうちから(なるべく最後の1年になる前に)ちょくちょく見ておくと長期的な計画を立てる際に役立つと思います。American Medical AssociationというWeb Siteにアクセスし、FREIDA onlineをクリック、さらにResidency/ Fellowship
Training Program Searchをクリックすると、州別、科別にプログラムの内容を検索することができます。FREIDA
online searchで、それぞれのレジデントプログラムの概要のページが表示されたら、そのプログラムのオリジナルのWeb
site のURLをクリックして、IMGに対する採用条件についての記述を探しましょう。MGHなどは書いてありましたが、書いてないプログラムもありました。書いていない場合は、手紙やE-mailで採用条件について尋ねるしかないのかもしれません。その際は、一般的な資料請求の方法を参考にしましょう。First
Aid for the Match ISBN 0-8385-2607-1という本の4章、Getting Residency Information
and Applications参照。)
米国海軍病院で1年間インターンを経験すれば1年間の米国内臨床経験という条件をクリアできる場合があると聞きますので、その意味でも米国海軍病院での研修はお勧めであると思います。また、先に研究で渡米して1年間以上米国内で研究活動をすれば、それによって条件をクリアできる場合もあると聞きます。自らの進路の可能性を増すために自分に何ができるかをよく考えて計画を立てていきましょう。
※California州でレジデント/フェローをしたい場合、レジデント/フェローのプログラムにapplicationを提出する際に、「California Physican's & Surgeon's Licensure」なるものを添えなければなりません。これは、Medical Board of California という委員会が、「あなたは米国臨床留学に必要な試験に全て合格し、ECFMG certificateおよび必要なビザを獲得しています。従ってCaliforniaのレジデントプログラムに応募する資格があります。」と認定してくれるものだそうです。これには、$505の手数料がかかり、手続きにはかなり時間がかかるようです。私は、資料請求後の9月頃にこの必要性を始めて知り、その時まだCSAの結果を待っている段階だったので、絶対に手続き上間に合わないと思ってCaliforniaのプログラムはあきらめました。どうしてもCaliforniaで研修をしたい場合は、早め早めに準備をされるとよいと思います。application
formは、downloadできるようになっています。(発行されるのに半年くらいはかかるようです)。
※その他、様々なケースが考えられると思います。米国臨床留学にたどり着く道はひとつではありません。どこにどんなよいチャンスがあるかわかりませんので、よいチャンスを逃さないように人と人とのつながりを大切にしたいものです。
<留学前1年間の計画の立て方>
3月のMatchに参加するために、文書作成、Matchに参加するための登録、CSA受験、面接試験と忙しい1年間になると思います。なかなか予定通り事は進まず、何度も計画の見直しが必要だと思いますが、できるだけ余裕を持たせた計画を立てたいものです。
※インターネット上、Credit Cardを用いてMatchのための登録料を支払わなければならないので、NRMPが受け付けてくれる Visa、MasterCardなどをあらかじめ作っておきましょう。
まず、ECFMG ERAS、NRMP、ERAS、 のサイトで年間スケジュールを調べてから計画を立てるとよいでしょう。
以下、私の場合を例として示します。
(私の場合、ERAS application作成、資料請求、MyERASでのプログラム応募がかなり遅くなってしまったので、あくまでも参考程度にとどめてください。)
2001年
3月 STEP1受験(19日)
CV、personal statement作成開始
4月 野口医学研究所の面接、選考会(28日、29日)
5月 ERAS token取得、Dean's letter作成、英文大学成績表作成依頼、
Letter of Recommendation作成依頼
6月 TOEFL acceptance request form、CSA願書提出(19日)
7月 CSA Kaplan 5-day training program電話予約(初旬)
CSA受験日設定(インターネット上、24日)
8月 CSA Kaplan 5-day training program (18日〜24日)
CSA本試験(29日)
9月 ERAS application作成開始、資料請求開始
NRMP登録(中旬)
10月 東京海上メディカルサービス 第一次面接(13日)
MyERAS上でのプログラム応募(中旬)
11月
12月 ハワイ大学内科externship (野口医学研究所経由、4日〜28日)
ハワイ大学面接(19日、extra-matchで採用決定)
2002年
1月 Visa発行の準備開始、NRMPからwithdraw
※2001年度のMatch参加に関する理想的な流れを考えてみると、4月にERAS tokenを取得し、6〜8月にプログラムへの資料請求を行い、7月15日〜ERAS application作成を行い、8月15日以降のできるだけ早い時期にMyERAS上でプログラムへの応募を行い、さらに同じ頃NRMPの登録を行い、10月〜12月にプログラムからInvitationが来てInterviewのスケジュールを決め(e-mail or TEL)、11月〜2月にInterviewに行き、2月21日までにRank Order Listを作成してNRMP Web siteで登録し、3月19日にMatch Dayを迎えるということになるでしょうか。年々、手続き方法が変化したりしますので、上記はあくまでも参考程度にとどめて下さい。