Mercedes Benz S class のレポートを紹介します。


Mercedes Benz S500 (W140)
                                                     

全高が高いが故にとても大きいという印象がありますが、これでもキャデラックセビルなどよりはスリムです。ついにフルモデルチェンジを迎え、今度のW220は大幅なダウンサイジングによってこの W140 の様な威圧感は無くなっているようです。全車エアサスというのも魅力的、興味のあるところです。さて、大きいと不評だったW140ですが、運転してみると意外に小回りが効くことがわかります。メルセデスの利点としてこの小回りの良さがあります。おかげでこれだけ大きくても気持ちの上ではどんな狭い場所もためらいはありませんが、絶対的な大きさはどうしようもなく、せまい駐車場では頭やお尻が出てしまいます。
                                                                          

[走りの性能]
この車のエンジンは 5000cc ですから下から太いトルクを発生するのはもちろん、上まできれいに吹けてゆきます。町中ではギア比の関係からほとんどエンジン回転を上げることなく図太いトルクだけでゆるゆると走っていきます。同じS class でもS320 では回転を上げて走らせますので運転していて「走っている」という実感、面白味があります。しかも、回していくときの音はなかなかスポーティーで気持ちの良いものです。峠やワインディングでも鼻先の軽いS320の方が明らかに楽しめます。もちろん S500 でも正しい運転をしている限り、世間が思っているよりも車が応えてくれます。競争しなければ楽しく走れます。 高速道路は S500 の良さが分かり易い場所です。怒濤のトルクでどこから踏んでもガンガン加速していきます。その際のスタビリティーはいわゆるスポーツカーのような不動の安定感ではなく、スピードなりの緊張感を感じさせるものですが、決してエンジンに負けていません。安定感の出し方、表現の仕方の違いといえるかもしれません。その安定感が一定の速度を越えた所で不安感に変わるということなく一定しています。S500の高速域の安定感はなかなかです。まるであの巨体が掌に収まっているかのような感覚にすらなります。ただし、軟らかい (が奥の深い) 足周り設定のため超高速域からのフルブレーキなど極端な行為ははばかられます。(実際の所は問題なく出来るのでしょうけどね)
                                                                               

[使い勝手・質感]
室内の使い勝手ですが、運転席周りでは右ハンドルでもウインカーレバーは左です。前の型 (W126) では右にあったと思うのですが、この辺は仕方ないかもしれません。しかしウインカーレバーは左の掌を開けば自然に指に触れる位置にあって使い良さを感じます。右ハンドル仕様でもハンドル位置やペダル位置等はごく自然です。シートは肉厚があり快適ですがさほどソフトではありません。W126では表面に近いところに一枚板が入っているような感じがありましたがこのW140ではそのような感触はありません。この他装備に特殊なものはありませんがルームミラーまで電動にしなくてもいいだろう、とは思います。ドアミラーは外側の一部が強い曲面になっていて死角を少なくするのに貢献しているのでしょうが、慣れないと使いにくく感じます。ベンツといえば、強固なドアの開閉感ですが、W126 と比較するとソフトな開閉感となっています。W126では バチンッ と閉まりましたが、W140では バフッ と閉まります。ところで、W126に比べてフロアから微振動が伝わるような気がします。W126では見事なまでに駆動系の振動は遮断され、ボディーも一つの塊の様な感じをうけましたが、この W140 はボディーが大きいからか、それとも現在進められているベンツの設計合理化の始まりだったのか、若干ボディーが柔いように感じます。助手席に座っているときに、本当に微かですがフロアから W126 では感じなかった微振動を感じることがあります。これが駆動系のものか、何なのかは判断できませんが、雑誌などでW140は合理化が始まる前の開発という事になっているようですし、いわゆる昔の良きベンツに属するという事になっていますから車の個体差や個人的感覚の問題かもしれません。燃費は高速道路では8〜10km/lと良い数字を出します。

[トラブル]
さて、この車は4年ほど使ってきましたが、いわゆる「はずれ」だったようでいくつかのトラブルに見舞われました。エンジンをかけるとアフターファイアーの様な爆発音を連発し安定しなくなり、さらに、運転席のパワーウインドウが故障し、続いて運転席ドアが閉じた状態で固定できなくなる、つまり走っていて勝手にドアが開いてしまう(嘘みたいなホントの話し)。また、一番不愉快だったのはエンジン回転の上昇時にガソリンがカットされたかのように回転がストンと落ちる。エンストには至らないもののこれのくり返しで車はガクガクと微速前進するのみでまともに走れない。最初は1回,2回で終わっていたものがしばらくすると1時間もそのような状態が続いたりする。当然ヤナセに問い合わせるわけですが、ヤナセの回答は「ガソリンタンクに半分以上入っていないと燃料がとぎれることがある」といった解答をするのみで調べようともしませんでした。車の症状も不愉快でしたが、この対応にはがっかりしました。折しも「ヤナセは人」という宣伝が行われていた時期だけに残念でした。以上のトラブルは最終的に全てヤナセによって改善し、その後細かい話しも聞いていませんからこの場で原因を解説することは出来ません。この他、W140 は二重ガラスゆえ、パワーウインドゥの故障はおきまりの様です。こういった問題がなければ特に長距離を走るにはとても良い車であることは間違いありません。 

[最後に]
“ベンツ”に触れて関心するのは、突出した性能や豪華さなどではなく、バランスが良く、いくつかあるであろう「実用車の理想」の一つの形であるように感じさせることです。値段は高いですが、いわゆる「高級車」ではなく良くできた「実用車」という感じです。ところで、雑誌などによればこのW140の総生産台数の 1/4 は日本で購入されたそうですね、どうりでそこらじゅうでその姿を見かけるわけです。中古では12気筒 (S600) に意外に安い値段がつく場合がありますが、信頼性を考えると少し慎重になった方が良いかも知れません。実用車はトラブルフリーが一番です。

以上 1998 年 3 月現在
1998 年 12月 一部改定


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