ラーメン誕生秘話
らーめん屋をやろう……
そう決意したのは5年前。
理由…「誰にでも出来そうだから…」
今考えると赤面ものですが、そんな安易な考えでスタートしました。
しかもどうせやるならオリジナルで、独学でやってやろう…
…当たり前のことですが、そんな簡単に出来るものではありません。
まず「家庭でつくるラーメン」みたいな本を片手に手探りで始めました。
通販で寸胴鍋を購入し、近所の肉屋さんに鶏ガラなどをわけてもらって…
余談ですが、家の「流し」では通販で買った寸胴鍋が入らず、
寸胴鍋は風呂場に持っていってシャワーで洗っていました。
結果、風呂場の排水溝が詰まるという悲惨な事件も経験しました。
また家の中で豚骨をハンマーでカチ割るとどうしても音と振動がひどく、
近隣の方に迷惑がかかると思い、豚骨とハンマーを隠し持って近所の
公園で豚骨を割っていたら、警官にひどく注意されたこともありました。
昼下がりの公園でそんなことをやっていたら当たり前のことですが……
…そうこうしているうちに、料理に関する知識が追いつかなくなりました。
和食関係の本、食材の本、挙句の果ては何故かイタリア料理の本
まで(ブロードの作り方か何かを参考にしようと思って)
とにかく読み漁りました。豚骨を下茹ですることすら知らなかったぼくが
ただラーメン屋をやるつもりなのに、いつの間にか「知識だけ」は一端の
料理人になっていました。
そして…ラーメンの奥深さに見事に「ハマッて」しまったのです。
毎月の驚くべきガス代の請求書とともに……
例えば塩ひとつとってみても、沖縄産、赤穂産、小笠原産、
五島灘産、モンゴル産、イタリア産……。
100gの塩を使うにしても沖縄産35g+モンゴル産65gと
赤穂産80g+イタリア産20gでは味が異なります。
煮干などもそうで、瀬戸内は伊吹産、北海道は上磯郡産、
九十九里産、長崎産、八戸産と異なり、季節によっても
その年の水揚げ具合によっても味が異なってきます。
煮出す時間が10分変わっても、煮出す温度が10度
変わっても異なった風味になってしまいます。
そんななか、いろいろな素材を試し、いろいろな作り方を試し…
何回試作したのか正確には覚えておりませんが、
手元にある、何よりも大切な「試作メモ」を見る限り
360回くらいでしょうか……(大失敗したときは勢いに任せて
書いていた紙を破り捨てたこともあったので……
もう少しやってるかもしれません)
そしてようやく、試作開始から5年目にしてようやく
納得のいくスープが完成しました。
……
……いやしかしまだここで「完成」という言葉は使っては
いけません。あの素材も試したい、この組み合わせも
面白そうだ…とまだまだやりたいことが山ほどあるからです。
その上、今でもスープを作るたび、レシピ通りにやっているのに
微妙に味がブレてしまいます。
微妙な火加減や素材の良し悪しによるものでしょう。
…奥の深さをつくづく実感します。
まだまだ、まだまだ、発展途上中ということです。
今後もよりよい味を目指して精進してゆかねば、と
強く実感するとともに、お客様に心から満足して頂ける
味を日々、追求していきたいと思います。
店主 桜井暁史
あかつき屋