最近見た映画 製作年国 監督 評価 寸評
パリは燃えているか 1966 仏・英 ルネ・クレマン ★★★ 1944年のナチスドイツ軍占領下のパリ、連合軍のノルマンディー上陸に勇気を得たレジスタンス各派は結束し、パリ解放へと立ち上がる。豪華キャストにパリでのロケと記録映像を組み合わせた史実劇風娯楽映画。市街戦のシーンがやや長尺に過ぎる気もするが、フランスが国威をかけて作ったに違いない内容には大いに満足できた。一度は見ておくべき作品。
ビートルズ ファースト・ライブ・イン・アメリカ 2009 英 アルバート・メイズルス/デビッド・メイズルス ★★ 1964年2月に初渡米したビートルズを追ったドキュメンタリー。エド・サリバンショー出演映像、空港到着シーンから、驚異的な視聴率を記録したテレビ出演時の映像のほか、記者会見やワシントン・コロシアムでのコンサートなど合計16日間の滞在中、彼らが全米に巻き起こした大旋風の模様を伝える。移動中やホテルでの様子など
HELP! 四人はアイドル 1965 英 ウォルター・シェンソン ★★ リンゴ・スターはいわくつきの指輪をはめていたがゆえに東方の国の邪教徒たちと世界征服を企む科学者たちに狙われるはめになったビートルズの逃走劇をこてこてのコメディとして描く。英国っぽいナンセンス&ブラック・ギャグをちりばめてはいるが映画としての内容は凡庸未満。ただ、ビートルズの曲がかかったときだけは楽しめる。
メリンダとメリンダ 2004 米 ウッディ・アレン ★★ 医者の夫と離婚してニューヨークへやってきたメリンダは、学生時代の親友のローレルとその夫が暮らすアパートに転がり込み、もう一方のメリンダはっ越し先のアパートに住む夫婦が開いたパーティーに乱入する……。同じネタを方や悲劇的に方や喜劇的に調理して対比させるという手法が面白い一作だが、いかんせん双方とも単独でも楽しませてくれるような魅力がなかった。
クィーン 2006 英・仏・伊 スティーヴン・フリアーズ ★☆ 1997年5月エリザベス2世の承認を受けて首相に就任したトニー・ブレアは、その年の8月に起きたダイアナ元皇太子妃の死をプロパガンダに利用しようとするが、エリザベス2世は一私人の死であるとし、二人は対立を深めていく。スキャンダラスなダイアナ元英国皇太子妃の死ではなく、その背後に英国王室で起きた確執を丹念に描いている、いかんせん地味過ぎる。
丹下左膳余話 百萬両の壺 1935 日 山中貞雄 ★★★ 柳生家の次男・源三郎は婿入りの引き出物として兄から贈られた古い臭い壺をくず屋に売り払ってしまうのだが、実は壺には100万両の隠し財宝のありかが記されていたのだった。ワンカットの映像の面白さ、セリフの切れのよさ、編集の良さなど、只者ではない出来。この時代にお茶目なヒーローを描くという先進性も凄い。製作年代の古さを感じずに楽しませてもらった。
ブラックブック 2006 蘭・独・英・ベルギー ポール・ヴァーホーヴェン ★★☆ 1944年、ナチスドイツ占領下のオランダ、家族をナチスに殺されたユダヤ人のエリスは、レジスタンス活動に参加し、やがて情報将校ムンツェの愛人となってスパイ活動を行うこととなる。ナチス・ドイツ=絶対的悪、という単純な図式に終わらない人間関係を生かしつつも、娯楽路線の立ち位置を崩していない佳作。ちょっと展開に強引過ぎるところがあるけれど一見の価値はある。
社長道中記 1961 日 松林宗恵 ★★ 太陽食料社長三沢英之助の大阪出張の随行に選ばれたお堅い社員の桑原は、社長夫人の意向に沿って社長の浮気癖を封じようと奮闘する。まったりとした雰囲気ながらも目付の桑原を何とかして追っ払おうとする三沢社長の風情がおかしい喜劇で、古き経済復興期の日本の雰囲気が感じられるところも興味深かった。
ダメージ 1992 仏・英 ルイ・マル ★★☆ 政治家としても家庭人としても完璧とさえいえる幸せな生活を送っていた英国人のフレミングは、息子の恋人アンナと一目で恋に落ち、人目を忍びつつ逢瀬を楽しむようになっていく。理屈ではわからない愛なので感情移入はしにくいが、端正な映像美とともに淡々と描かれていく人生の転落には引き込まれるものがあった。ラストシーンには色々と考えさせられた。
デイズ・オブ・グローリー 2006 仏・アルジェリア・ベルギー・モロッコ ラシッド・ブシャール ★☆ 第二次世界大戦下の1943年、宗主国フランスに徴収された北アフリカの植民地兵たちは、公平を謡う軍の言葉を信じて戦いに挑むのだが……。史実をもとに植民地問題や人種差別を訴えるという姿勢は買いたいが、いかんせん映像手法等の作りがベタ過ぎるので新鮮味を感じられなかった。
バンド・ワゴン 1953 米 ヴィンセント・ミネリ ★☆ すっかり落ち目となったかつてのダンス・スター、トニー・ハンターは旧友夫妻のバックアップを得て再起をかけた舞台に挑むのだが……。往年のハリウッドミュージカルの雰囲気をプンプンと漂わせている。物語に関して特筆すべきものはなく、音楽も耳に残らないが、中年となったフレッド・アステアがおどけたように踊るシーンは印象に残った。
ヒューマン・ボム 2008 カナダ エリン・ベリー ウィルスを使った人体実験により人間爆弾と化してしまったイラク戦争からの帰還兵ジェイソンの物語。冒頭から現実なのか妄想なのかわからないシーンが入り乱れ続ける構成はまだ許せるとしても、ひとつひとつのシーンはもちろん、ちょっとしたカット・セリフなどに何も面白みがない。
舞妓Haaaan!!! 2007 日 水田伸生 ★★ 舞妓さんへの熱狂的な思い秘めているサラリーマン鬼塚は、念願の京都転職とあって祇園デビューに燃えるのだが、一見さんお断りの壁にはじき返されてしまう。やたらとテンションの高い異色の邦画。京都を舞台にミュージカルするくらいまではよかったが、終盤になるにつれてアップしていく暴走度には好き嫌いが分かれることだろう。
ヴァージン・スーサイズ 1999 米 ソフィア・コッポラ 1970年代、アメリカ郊外の静かな住宅地、厳格な両親とともに平穏に暮らしてきた美しい5人姉妹の末娘セシリアが自殺を図り、両親はセラピストの助言に従い生活改善を図るのだが、ホームパーティのさなかにセシリアが自殺を遂げてしまう。儚くも脆い感性をもった思春期の少女たちを描きたかったのはわかるが、大した理由もないのに自殺することがそんなに美しいことなのだろうか。音楽だけが良かった。
7月4日に生まれて 1989 米 オリバー・ストーン ★★☆ 高校卒業後海兵隊に入隊しベトナム最前線で重傷を負い下半身不随となってしまったロンは米国に帰還するが、戦場での忌まわしい記憶と反戦に揺れる母国の人々の姿が彼を傷つけていくのだった。ベトナム戦争の傷がいかに大きいかを辛辣なまでにえぐり取った異色作。車いすの上に不能になってしまった若き青年の姿をトム・クルーズが熱演している。
テキーラ・サンザイス 1988 米 ロバート・タウン 麻薬の仲買人としての生活から抜けたいと考えているマックと彼の身辺を旧友の警察官ニックが捜査することになる。暗く重いはずのテーマなのに緊迫感の伝わってこない内容にがっかり。物語もつまらないし、他人の人生の腐敗を食い物にする麻薬ビジネスにかかわった人間が、あっさりハッピーエンドって、自己責任が原則のアメリカ映画ならではのオチだと思った。
僕の大事なコレクション 2005 米 リーブ・シュレイバー ★★★ 家族の思い出の品を集め自分の部屋の壁一面に飾っている何でも収集家のジョナサンは、祖母が亡くなる間際にくれた写真に祖父と写っていた女性を探すためウクライナへと向かう。ヨーロッパ映画風の画に大胆な音楽を振りまいてコミカルな演出をするというエミール・クストリッツァっぽさが楽しい前半と感傷的に過ぎる後半で殆ど別の映画になってしまうのが惜しまれるところ。悲劇をも笑い飛ばすクストリッツァ路線で最後まで突っ走ってほしかった。
モナリザ・スマイル 2003 米 マイク・ニューウェル ★☆ 1953年のアメリカ東部、保守的な名門女子大学に美術講師として赴任したキャサリンは、伝統と格式を重んじ過ぎるがあまり異様な雰囲気を持つ校風に違和感を覚え、生徒たちに可能性と柔軟性を持つことを指導していく。教師が生徒を変えていくという定番の物語でありながら、キャサリンの影響力は殆ど感じられず、保守的名門校におけるある教師と生徒たちのまとまりのない群像劇になってしまっている。
誘拐犯 2000 米 クリストファー・マッカリー ★★ 自らの精液を売って今日の貧窮を逃れようとしたロングボーとパーカーは、大金持ちの代理母の情報を得て身代金目当ての誘拐を目論む。フィクションのためでしか存在しえない非現実的な設定、段々主人公が誰だかわからなくなる展開など、お世辞にも出来が良いとはいえないのだが、徐々に感情移入できる登場人物が増えていくので結末が気になってしまうことだけは確か。
イン・グッド・カンパニー 2004 米 ポール・ウェイツ ★☆ 勤めている会社が大手メディア企業に買収され、息子ほどの上司を持つこととなたダンの苦悩をよそに、当の上司はよりにもよって娘と付き合いだしてしまう。周囲の同僚や部下の首がポンポン飛びまくる中を生きる中年サラリーマンと若きエリートの苦悩をコミカルなタッチで描いているのだが、インパクトも展開の妙もない中途半端なホームドラマ感覚の内容だった。
イン・ハー・シューズ 2005 米 カーティス・ハンソン ★★ フィラデルフィアで弁護士として生真面目に暮らしているローズのもとへ、抜群のスタイルと美貌を備えてはいるものの定職にもつかずブラブラとしている妹のマギーが転がり込んでくる。中盤以降姉妹が直接絡むシーンが殆どなくなってだれてしまうのだが、何もかもが対照的で両極端な姉妹の姿で見る者の興味を引きつけながらも、人生の生きがいも描いているところが良かった。
少年と犬 1974 米 L・Q・ジョーンズ ★★☆ 第四次世界大戦後の荒廃しきった世界、僅かな食料と女を求めて男たちが争いあう地上を生きる18歳のヴィクと彼と超能力で会話する犬ブラッドは美女クィラからに地下に平和社会を築いている人々の存在を知らされるのだが……。映画としての作りは凡庸であるが、後半一気にスパークするの英国的ブラック・ユーモアな展開が良かった。
スコットランド・カップの奇跡 2000 米 マイケル・コレント ★★☆ スコットランド2部で苦しむ100年の伝統だけを誇るキルノッキーを率いるマクロードのもとへかつてセルチックで名を馳せたストライカーにして不仲の娘婿マックィランが移籍して来るのだが、抽選運にも恵まれたチームはカップ戦を勝ち上がっていく。いずこの国でも起こりうるカップ戦のジャイアント・キリングを焦点に人生の悲哀をドラマ仕立てで加えた拾い物的小品。終盤がありきたり過ぎたもののリアルな試合シーンなどまずまずの出来。
長い散歩 2006 日 奥田瑛二 ★★★ 定年後に妻を亡くした松太郎は、家を娘に譲り質素なアパートに移り住むのだが、隣の部屋で母親とその愛人に虐待されている幼い娘を救い出して、あてにない旅に連れ出してしまう。暗い内容を暗いまま描いているため、やや感傷的に過ぎる印象こそ受けるものの、日本のありふれた風景の中にある美を切り取った画など見どころは多い。
ある貴婦人の肖像 1996 英 ジェーン・カンピオン ★★ 19世紀のイギリス、財産も地位も得ている従兄弟からの救済やアメリカ人実業家からの求婚には目もくれず、自分らしく生きようとするイザベルは、イタリアで趣味の良い中年男性に籠絡され結婚してしまう。ジェーン・カンピオンらしい端正な映像美には見どころがあるのだが、自分に素直になれない女の恋愛遍歴を綴っているだけなので、内容・展開ともに心に訴えかけてくるものはなかった。
隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS 2008 日 樋口真嗣 ★★ 黒澤明監督の同名作のリメイク。戦国時代、滅亡寸前の秋月家を支える猛将・真壁六郎太は亡き当主の遺児・雪姫、金堀師、きこりらとともにお家再興の軍資金を携えて敵中突破に挑む。オリジナルが黒澤作品中では決して完成度の高いとは言えないものであったため、農民がイケメンになってしまった点など多少の改変をしたところで大した違和感はなかったのだが、オリジナル最大の見せ場”火祭り”と名セリフ”裏切り御免”の使い方を完全に間違えてしまったために、尻すぼみに終わってしまった。最後の方はもう完全に別の映画・・・・・・。
茄子 スーツケースの渡り鳥 2007 日 高坂希太郎 ★★☆ 一流とは言えないながらもチームのエースとなったペペは不振にあえぐチョッチらとともに日本で行われたレースに参戦する。主役がチョッチに変わったことを除けば悩みを抱えたレーサーが自転車レースに挑むという構成は前作と変わらず。摩訶不思議なスーパースター・ザンコーニの謎の行動など、面白い要素はあるが、全体としてみるとまとまりきっておらず、前作ほどの感傷さは感じられなかった。相変わらず気合いが頼りのペペの活躍ぶりは楽しかった。
理想の女 2004 英・伊・米・スペイン・ルクセンブルク マイク・バーカー ★★ 1930年代のイタリアはアマルフィ、ニューヨークからやって来た新妻メグは、夫が悪名高い中年女性に籠絡されているのではないかと疑心暗鬼に陥り、自らに言いよるプレイボーイの甘言に傾いていくのだが……。上流階級の人々の避暑地での生活に焦点を当てながら、ある夫婦の危機とその周囲の人々の視線や振る舞いを淡々と描く。終盤の一捻りはなかなか良かった。
怒りの葡萄 1940 米 ジョン・フォード ★★★ 不慮の殺人罪での刑務所務めを終えて出所してきたトムは、故郷オクラホマの農場に戻るが、凶作により立ち行かなくなった家族とともに新天地カリフォルニアを目指すこととなる。社会の底辺で必死に生きる家族の絆と苦しみを格調高くドラマとして描いた必見の一作。行き過ぎた資本主義の根源的な問題をこの時代に鋭くえぐり取った内容がお見事。
月蒼くして 1953 米 オットー・プレミンジャー ★★ エンパイア・ステート・ビルの展望台で出会った新進気鋭の建築家ドンと無邪気な若い娘パティが出会い恋に落ちるのだが、ドンに思いを寄せるシンシアとその父デイヴィッドの登場で収拾困難な騒動が繰り広げられることに・・・。内容的にどうということはないが、細かな会話の妙で見せようとする古風なラブコメ。
ディボース・ショウ 2003 米 ジョエル・コーエン ★★★ 離婚専門の凄腕弁護士マッシーと、離婚による財産狙いの美女マリリンの危険な恋と金と陰謀の駆け引きをユーモラスに描く。冒頭のサイド・エピソードでぐっと心を鷲掴みにして、その後はタイトル通りの”離婚劇”を堪能させてくれる。コーエン兄弟の作品の中では最もコメディ色が強いのだが、もともとの不可思議な作風の中にある笑いの要素をうまく生かしている。中盤までの展開が出色の出来。
ブロークン・フラワーズ 2005 米 ジム・ジャームッシュ ★★★ 老年前にして未だにプレイボーイのドン・ジョンストンのもとに、自分の息子を産んで育てたという差出人不明の手紙が届き、ドンはかつての恋人たちを訪ねる旅に出ることになる。端正な映像美、可笑しすぎるドンの友人ウィンストンに、それぞれの今を生きるかつての恋人たちの生活を淡々と綴る手法が気に入った。消化不良感は残るものの満足できる出来栄え。
僕のピアノコンチェルト 2006 スイス フレディ・M・ムーラー ★★☆ モーツァルトのようにピアノを弾くばかりか、計り知れないほど高度な知能を持っている神童ヴィトスは、両親の期待と自分自身の欲求の中で悩んでいくことになる。中盤までは苦労せずして何でもできるドラマ的天才少年の話が続くだけだが、凡人生活に戻ってからの終盤戦の展開は面白かった。おじいさん役のブルーノ・ガンツの渋い味わいも印象に残った。
雪之丞変化 1963 日 市川崑 ★☆ 江戸時代、上方歌舞伎の花形女形を務める雪之丞は、舞台のさなか桟敷の中に父母の敵を見つけ、謎の盗賊・闇太郎の助けを得て復讐を果たそうとする。長谷川一夫が一人二役で雪之丞と闇太郎を演じているので無理のあるシーンがあることはまだ良いとしても、おっさん過ぎてとても名女形に見えないことが最大の問題だった。物語も古くさい。
クリント・イーストウッド ジャズ・ナイト 1997 米 ブルース・リッカー ★★ ジャズ通で知られるクリント・イーストウッドお気に入りのアーティストを集めてカーネギー・ホールで行われたジャズ・ライブの模様を、本人のコメントを交えて収録したドキュメンタリー。イーストウッド作品における音楽の位置づけを把握することができるという点とわかりやす演奏でなかなか楽しめた。
ザ・フォッグ 2005 米 ルパート・ウェインライト 穏やかな港町をある日謎の霧が多い、その中からとんでもない力を秘めた亡霊たちが現れ街の人々を襲い始める。一応終盤での”転”開もあるにはあるのだが、脚本がダメダメなので等々に感じるだけ。せっかくの霧という題材についてもCGに頼りきりの三流ホラームービーに過ぎず、語るに値しない。
七年目の浮気 1955 米 ビリー・ワイルダー ★★★ 結婚7年目の妻と息子を避暑地に送り出し、つかの間の独身気分にひたるリチャードは、同じアパートに住み始めたセクシー美女に一目ぼれしてしまう。地下鉄の通風口の風で舞い上がる白いドレスシーンで高名なマリリン・モンローの代表作の一つ。病的なまでの妄想癖を持つ主人公のドタバタをコミカルに描いた内容もなかなか面白い。
聖女ジャンヌ・ダーク 1957 英・米 オットー・プレミンジャー ★★ 老いたフランス国王シャルルのもとに亡霊となったジャンヌ・ダークが現れ、やがて彼女にかかわりのあった人々の亡霊も集まり出して、その生涯が語られていく。バーナード・ショーの舞台劇が原作のジャンヌ・ダルク物語。人間ドラマとして見られる内容になっているが、普通のキリスト教義感に基づいており、無声映画の最高峰「裁かるゝジャンヌ」にあった無常的緊迫感を味わった後となっては劇的な印象は受けない。
鉄道員 1956 伊 ピエトロ・ジェルミ ★★☆ 第二次世界大戦後のイタリア、娘の流産を機に不幸に襲われ続けるようになった初老の鉄道機関士アンドレアとその一家の生き様を幼い末息子の視点から描く。ネオ・レアリズモの代表作の一つだけあって、当時の庶民の生活模様が息づいたヒューマンドラマとしての風格を兼ね備えている。
街のあかり 2006 フィンランド  アキ・カウリスマキ ★★★☆ ヘルシンキで警備員を務めるコイスティネンは現状打破する希望を持ちながら生きていたが、ある男に眼をつけられてしまったことで転落していくことになる。小津安二郎→後期ロベール・ブレッソン→本作か、とでも言いたくなるほどの、1カットの魅惑さと一人の負け犬を見つめる非常なまでに冷徹な視線が素晴らしかった。
阿修羅城の瞳 2005 日 滝田洋二郎 ★☆ 文化文政の時代の江戸の町に潜む鬼殺し(鬼キラー)としてかつて名を馳せた出門は、鬼の王・阿修羅の生まれ変わりである女盗賊・つばきと出会い恋に落ちてしまう。サイバーSFな感じの舞台で繰り広げられる演義といった感じのドラマであるが、もとが舞台のせいかやけに芝居がかり過ぎなのと、つなぎ方がぶつ切りのようで今二つだった。
激突! 1971 米 スティーブン・スピルバーグ ★★★ カリフォルニア州を車で走る平凡なサラリーマンが、進路を妨害するタンクローリーと意地の張り合いをしてしまったがゆえにとんでもない目に遭うことに・・・。TVドラマ用としてわずか11日で製作されたスピルバーグ監督の事実上の処女作。得体の知れない恐怖をスリリングに描いた新鮮さは未だに色あせておらず、低予算ということを思い起こさせないほど面白い。
大菩薩峠 1957 日 内田吐夢 ★★ ”音無しの構え”から邪剣を繰り出す机龍之助は、心の虚無にさいなまされながら悪逆の道に走り、やがて幕末の動乱に身を投じていく。作り込まれたセットには見ごたえがあるものの、虚無に苦しめられている風情のない主人公に見られるように、歌舞伎の流れを組む堅苦しい時代劇に仕上がっているので内容的には今一つ。自分的には「岡本喜八×仲代達也」版の方がはるかに好き。
大菩薩峠 第二部 1958 日 内田吐夢 ★☆ 前作の最後で失明してしまった机龍之介は、温かい人々に救われながらも、虚無僧となって江戸に出て、ひととき人間らしい心を取り戻すのだが・・・。3部作の第2作目であって、原作どおりとはいえ、比較的温厚になってしまった龍之介の毒の抜けぶりと、無軌道に増え得ていく登場人物の多さに代表されているとおりの肥大・散漫・迷走路線がつらい。
大菩薩峠 完結篇 1959 日 内田吐夢 ★★ 悪代官風の神尾主膳に拾われ甲州街道で辻切りに励む机龍之助に対する敵討ちをはたさんと狙う宇津木兵馬は、遂に彼と対峙することになるのだが・・・。第二部で拡散しきった展開はそのままであるが、主人公らしい存在感と狂気を取り戻した机龍之介の物語が一応の大円団を迎える。終盤の幽玄めいたシーンの緊迫感が秀逸。
荒馬と女 1961 米 ジョン・ヒューストン ★★ 離婚の町として有名なネバダ州リノで離婚したロズリンは世話ずきのイザベルおばさんの紹介で、自動車修理工ギドと、カウボーイのゲイという二人の男を紹介されるのだが・・・。社会に適応しきれない人々の心の空虚さに三角(四角?)関係を織り交ぜた異色作。中盤以降野生の馬を捕えて馬肉として売ってしまおうとする行為がいかにもジョン・ヒューストン監督作らしかった。マリリン・モンローとクラーク・ゲーブルの遺作として高名。
E.T.20周年アニバーサリー特別版 2002 米 スティーブン・スピルバーグ ★★★☆ オリジナル版に未公開シーンを追加したりCG処理を施したりした一作で、E.T.の表情が豊かになっているというのが最大の違いか。オリジナルは少年の頃に見たのだが、大人になって改めて観てみると、人間の心の優しさや、信じる心の大切さをテーマにしていることがよくわかった。ややエモーショナル過ぎる感もあるが、胸にジーンと訴えてくる傑作だと思った。
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン 2002 米 スティーブン・スピルバーグ ★★★ 両親の離婚がきっかけで家を飛び出した16歳のフランク・アバグネールはなりゆきから詐欺師となり、パイロットやら医師やら弁護士やらになりすまし偽造小切手を濫用するが、そんな彼をFBI捜査官カール・ハンラティが追い詰めていく。実在の天才的詐欺師の半生であるが、家族思いで寂しがり屋という設定のため感情移入しやすくしており、かつ、痛快なコメディ・タッチで描いているので娯楽作品として楽しめた。
ギルバート・グレイプ 1993 米 ラッセ・ハルストレム ★★☆ アイオワ州の田舎町に住む青年ギルバートは、過食症の母や知的障害の弟などを抱えた一家の大黒柱として生活しているが、夢や希望を抱けない日々に虚しさを感じつつあった。地味ながらもビターな味わいを持った青春譚として観るのもいいし、傍目には過酷な生活環境なのにもかかわらず自らに課せられた重い責任から逃げない一人の立派な男の物語として観るのもいいだろう。良作。
恋をしましょう 1960 米 ジョージ・キューカー ★☆ 億万長者でプレイボーイのクレマンは、自分を皮肉った芝居のリハーサルを見に行った際に主演女優アマンダに一目ぼれしまい、彼女に近づくため自分役の役者として一座にもぐりこむのだが・・・。主演のマリリン・モンローの魅力を前面に打ち出したミュージカル・コメディだが、設定こそ面白いものの、大筋は古き良きを通り越した三文芝居程度のレベルだった。
ザ・マジックアワー 2008 日 三谷幸喜 ★★★☆  港町・守加護、ギャングのボスの愛人とできてしまったことがばれた備後は、5日以内に幻の殺し屋・デラ冨樫を探し出して連れてくれば命を助けると言われるが、皆目見当もつかないので、売れない三流俳優を映画の撮影と偽って借り出す。ありえないほど程のスリリングさの中に笑いを見出す三谷幸喜らしさが十二分に発揮された快作。往年の名画への愛ある数々のオマージュ・シーンなど、随所に溢れた遊び心も楽しい一作。
ナイアガラ 1953 米 ヘンリー・ハサウェイ ★☆ 夫婦仲の冷え切った夫ジョージに対する殺意を抱いた妻ローズは、若い愛人にジョージを殺させようとするのだが、死体となって発見されたのは愛人のほうだった・・・。ヒッチコック映画のような筋書きだが、スリリングさとサスペンスさで本家には遠く及ばない出来だった。ナイアガラの滝という舞台設定を生かせていない。
ラウンド・ミッドナイト 1986 米・仏 ベルトラン・タヴェルニエ ★☆ 1959年のパリ。アメリカからやって来たテナー・サックス奏者デイル・ターナーの演奏に惚れこんだ貧しいグラフィック・デザイナーのフランシス・ボリエは師弟関係を結んでいく。実在のジャズ・ピアニスト、バド・パウエルとサックス奏者レスター・ヤングとの関係を元ネタにしているらしいのだが、だらだら続くジャズ界の物語に辟易とした。映画として面白いと言える要素も特になく、ジャズに対する造詣が深くない限り門外漢として鑑賞することになるだろう。
朝な夕なに 1957 西独 ヴォルフガング・リーベンアイナー ★★ 教師と生徒が人間的に深く結び付くようになって教育が成り立つという革新的な価値観を抱く女教師は、名門男子校で教鞭を取り生徒たちの信頼を得ていくのだが・・・。古典的なヒューマンドラマ。生徒たちが組んでいるバンドが奏でる”真夜中のブルース”が耳に残った。
オータム・イン・ニューヨーク 2000 米 ジョアン・チェン ★★ 中年過ぎてもなお独身の女たらしであったウィルは、余命一年の宣告を受けていたうら若き美女シャーロットと出会い、そうと知らずに恋に落ちる。タイトルどおり、秋のニューヨークで繰り広げられる、日本の昔の少女漫画か、韓国ドラマか、といったベタベタの悲恋もの。ハリウッド映画らしからぬビターな味わいが唯一意外だった。
おくりびと 2008 日 滝田洋二郎 ★★★ 所属する東京のオーケストラが解散して職を失った三流チェリストの大悟は、音楽家としての道を諦め、妻の美香を連れて山形へ帰郷するのだが、彼が見つけた職は遺体を棺に納める納棺師という仕事だった。納棺師という裏方の仕事に焦点を当てる真摯な姿勢にユーモラスな味をまぶした”周防正行”っぽい作風に好感が持てる。邦画初のアカデミー外国語映画賞受賞の名に恥じない傑作。
革命児サパタ 1952 米 エリア・カザン ★★☆ 20世紀初頭のメキシコ、民主主義の名のもとに君臨する大統領の圧政に苦しむ農民たちを見た青年エミリアーノ・サパタは兄や友人らとともにゲリラを組織し反政府運動に身を投じていく。実在した英雄の半生を(おそらく)脚色豊かに描き出しているためか、ドラマとしてのメリハリがしっかりしている。
恋のゆくえ ファビュラス・ベイカー・ボーイズ 1989 米 スティーブ・クローブス ★★★ シアトルのナイト・クラブを舞台に兄弟ピアノ・デュオとして生きるベイカー・ボーイズは、心機一転を図って女性ボーカリストを雇い運気に乗るのだが・・・。マイナー系良作には欠かせない名優ジェフ・ブリッジスが実の兄ボーと出演している。音楽業界の底辺を生きる三人の織りなす人間関係とシビアな生活をときにユーモラスに映画いたドラマで魅せる。スタンダード・ジャズ・ナンバーの数々も耳に楽しい。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ 劇場版 2009 日 高橋良輔 ★☆ 百年もの長い戦争を続けるアストラギウス銀河、極秘文書「ペールゼン・ファイル」に記された「異能生存体」と呼ばれる特異遺伝子(不死)の持ち主と目されたキリコたちは過酷な戦場に送り込まれることになる。冒頭のノルマンディー上陸作戦を想起させる迫力のシーンなどで目を楽しませてくれるが、TVアニメの番外編という位置づけから来る制限があるためか物語自体は極めてありきたり。
ストリングス 〜愛と絆の旅路〜 2004 デンマーク アンデルス・ルノウ・クラルン ★★ 天上とつながる糸によって生かされているマリオネット人形たちの世界、何百年にも渡る争いが続くバロン王国の王が亡くなり、その遺児ハルは過酷な運命の待ち受ける旅に出ることに・・・。操り人形劇であることを逆手にとり、人形を操る糸を命のもととしたばかりか、ときには感情表現にまで用いている点が新鮮だた。ただ、物語としては凡庸。
バヤヤ 1950 チェコスロバキア イジー・トルンカ ★★★ 身分を隠して騎士となった貧しい青年は、国を脅かすドラゴンたちを打ち倒して姫を救い出すが、自らの素姓の問題から、姫が本当の自分を見てくれないという愛のジレンマにおちいる。動く絵本のような美しくも良い意味で古びた画が秀逸。多くを語らない構成により観る者の目と耳も楽しませてくれる人形アニメの秀作。
パンドラの箱 2008 トルコ・仏・独・ベルギー イェシム・ウスタオウル ★★ 母親が認知症と診断されたころによる介護問題から、疎遠になっていた三人の姉弟は分たちの人生を見つめ直していく。観光地ではないトルコの日常をベースに描かれる老いと家族の問題だが、遊びも骨太さもなくただ辛気臭いだけなのであまり楽しめなかった。どうもこの監督とは相性が悪い。
僕たちのキックオフ 2008 イラク・日本 シャウキャット・アミン・コルキ ★★★ サダム・フセイン政権打倒後の爆破テロが続くイラクの都市キルクーク、家を失いサッカースタジアムで暮らすクルド人の人々は民族対抗の少年サッカーを催そうと企画するのだが・・・。不穏な雰囲気に怯えながらも生活している人々のリアルな描き方、ベタながらも甘く切ない恋物語、そしてサッカーへの熱狂すらままならない過酷な現実と、制作当時のイラクであったからこそ作れた良品。

トップページへ