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特許申請が一段落したので、そのプロセスについて書いてみます。研究施設によって異なる点があるでしょうが、一事例としてご参考になればと思います。
特許申請に値するのでは?思われる結果が出たら、過去の文献とパテントをキーワードで検索してください。過去に申請されたパテント及び申請中のものについてはUnited States Patent and Trademark Office のホームページ左上の search から入ってキーワード検索ができます。検索の結果、当該の発明が今までになされていないことが確認されたら発明の概要をまとめた草稿を書き上げます。この草稿は研究機関のprogram managerに提出するためのものですので、一般的に分かりやすい単語、文章で書くよう心がけてください。特許はアイディアに与えられるものなので、この段階に進むために論文が執筆できるような完璧なデータは必要ありません。特許申請に値する新奇なアイディアが実現可能であることを示せれば充分です。
この草稿中に盛り込むべき内容は、
1) 発明にかかわる背景と重要性
2) 発明をサポートする具体的データ
3) 用いた手法の概要 (特に手法自身が新規な場合)
4) 過去の発明と比べて当該発明が優位な点
5) 発明が社会にもたらすであろう利益とまとめ
などかと思います。
この草稿は研究機関と研究者がかわす契約書に添付するInvention Disclosureという書類のもとになります。この書類(発明の内容)を研究機関側(私の場合はResearch Foundationという部局のprogram manager)に公開する前に、内容を非公開にする旨の確約をとってください。Invention Disclosureには当該発明が過去に発表されていないこと、どのような資金源によってサポートされた研究で発明がなされたか、利益が生じた場合大学側、発見者各人にその権利を何%ずつ分配するか(allocation of rights in the invention)、学部長からのコメント、学科長からのコメント、などを記載します。
これを提出すると、program managerが弁理士に渡すための発明内容のサマリーを書きます。その後、弁理士と連絡を取り特許申請の手続きについて話し合います。特許申請にはInvention Disclosure(研究内容1ページ)とほぼ同じ内容ですが、より詳細を記入します (私の場合は最終的にダブルスペース21ページになりました)。弁理士が最初の草稿を見て更にどんな情報が必要かを伝えてきます。弁理士は更に申請する特許でできるだけ広い発明をカバーできるように文章を組み立てます。発明の内容を狭く絞り込まないような単語や言い回しを意識して書くことが要求されますが、そこは弁理士の得意とするところですので、うまいことアドバイスしてくれます。
何度か弁理士と草稿のやり取り話し合いを済ませると、草稿の最後の部分に Claims として特許申請の具体的な内容が列挙されます。それを研究者側が読んで問題なければいよいよUnited States Patent and Trademark Officeに特許申請がなされます。この時点から申請内容は公開されるので基本的には論文や学会での発表はできますが、特許の申請内容を会社に持っていって売り込む場合には慎重な判断が必要です。Patent and Trademark Officeから回答がもっどて来るまで18ヶ月ほどかかるそうです。その時点で、patent officer が申請内容中削除、変更すべき点を列挙してくるのでそれを元に改定してから再提出します。そこから特許が認められるまで更に半年から1年かかるそうです。
会社に売り込む場合には、申請内容の本質がわからないようにしたアピール文を用意しdevelopment partnerになる意思があるか問い合わせます。ポジティブな返事が返ってきたら、情報非公開の契約を結んで共同開発の話を進めることになります。
情報非公開の契約は大学の program manager を介して企業からのサインをもらいました。
日記にも書きましたが、この特許の件について某企業でプレゼンをしてきました。さすがは企業。旅行・宿泊・食費を全てもってくれ、空港からのリモも手配してくれました。
まずは共同研究者がオープニングリマークとして今回売り込む発明に関する背景と重要性を簡単に説明し、その後自分のプレゼンに移りました。プレゼンは学会発表と異なり「売り込み」
なので無理のない範囲でなるべく断定的な表現を選びました。企業側の参加者は研究者の他にも企画・開発の人もいたので、背景や重要性は詳細に説明し、実験手法は
パワーポイントのアニメーションを使ってわかりやすいようにしました。発表途中でどんどん質問が飛んできたので、話の流れを作り直すのに若干苦労しました。質問は科学的なことに留まらず、
そもそも実際に商業ベースにのるような発明なのか、そのためには今後どんなデータが必要か、最終的な商品はどんな形を考えているのか等いろいろ聞かれるのでそのための事前準備も必要です。
プレゼン後引き続き round table dicussion を行いました。そこでは共同研究を進めることになった場合、どんなデータを揃える必要があるか、大学側・企業側の役割分担をどうするか、
どれくらいの資金が必要になりそうか、などを3枚のパワーポイント書類で説明しました。その後、それらの問題について2時間に及ぶ話し合いを行いました。とても興味を示してくれましたが、
共同研究を始めるか否かについては他の部門を交えた幾つかの話し合いが必要とのことでした。
また事が進んだら書き足そうと思います。
By SE, May 10, 2004
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