取引先の倒産(企業間の信用リスク)
概要
倒産件数、負債総額とも依然として高水準で推移している。取引先の突然の倒産に慌てないよう、
普段から信用リスク管理は重要だ。企業が倒産にいたるまでには多くの兆候がある。売り上げに
情熱を注いだ営業マンも納品後の安堵感に注意が必要だ。取引先に何か異常がみられたらどう対処すべきか、
万が一に備えて、日頃から会社として売掛債権回収リスクに備えなければならない。
キーワード
会社の資産、清算貸借対照表、弁済、平素からのリスク管理、危険の兆候、信用調査、経営の赤信号、
資金繰り、詐害行為
1.始めに
企業は多様なリスクを背負いながらその発展を図っていく。リスク中でも代表的なものは、
企業間の信用リスクであろう。企業間信用とは、代金の現金決済を一定期間猶予することである。
販売競争が厳しい今日、売上を伸ばしても代金回収ができなければ何にもならない。
バブルの後始末が尾を引き、体力を消耗し尽くした企業の倒産騒ぎが相次いでいる。
2002年の倒産件数は、歴代1位(日米貿易摩擦問題、輸出抑制、
円高の急進が要因となり多く倒産が発生した1984年)の2万件には及ばないものの、
3年連続して18000件を突破した。伝統ある上場企業、潰れることはないと言われていた
大手金融機関も倒産する時代である。企業業績は低迷し、倒産は高い水準にある。
不良兆候の早期発見・早期処理のための企業体制の確立が急務となっている。
取引先の信用不安に備えた企業のリスク管理が大いに要求される。
2.取引先倒産は代償が大きい。
会社の財産状態は貸借対照表として公表される。貸借対照表の資産の部には受取手形、売掛金という売掛債権の項目が載っている。売掛債権はまだ代金の回収ができていない売上げである。相手先企業が期日までに代金を支払うという約束を信用した売り上げである。現金、棚卸資産、固定資産等と同じく会社の資産である。信用力のある売掛債権は現金で回収(あるいは売却)が可能であるとみなせるから会社資産に計上されている。当然のことであるが、売掛債権は現金化して初めて価値が実現する。(利益を生みだす)。
現金化できなければ、利益どころかそれまでにかかった費用は丸々損失になる。たとえば月商1000万円の企業の現金回収期間が5ケ月だったとする(手形の期日到来による現金回収も含む)。手形が不渡りになり、売掛金を含めた回収不能債権は5000万円となる。当該企業の営業利益率を10%とすると、この損害を取り戻すために、追加の売上金額としては5億円必要だ。
回収不能額÷営業利益率10%=5億円
小売業の場合は、営業利益率が3.5%くらいであるから、追加の売上は14億円必要となる。
しかし、昨今の経済情勢下では売上を上げるのは容易ではない。更に、仕入に要した資金を補填できない。その営業に要した費用や人件費の補填ができない。他に支払う予定の決まっている資金を振り向ける必要が出てくる。売上に情熱を注いだ営業マンも納品後の安堵感に注意しなければならない。
取引先が倒産した場合の被害状況について、実例で説明する。
実例:株式投資など財テク利用の倒産
負債110億円。自動省力器機の中堅商社。
資本金9800万円、従業員160人。
同社は財テクを積極的に進めていた。本業は比較的順調に推移していたが、株価の暴落によって資金が固定化、最終的に約20億円もの損失をしいられ資金繰りが悪化し、手形不渡りを出して倒産した。倒産直近の推定貸借対照表と清算貸借対照表が帝国データバンクのニュースに載っている。それによると、推定貸借対照表の資産合計は48億3千7百万円、負債合計は78億9千8百万円である。この表から想定される債権者の回収率は61%になる。次に清算貸借対照表を見ると、資産合計は11億3千7百万円、負債合計は75億4百万円である。資産が大幅に減少した。清算貸借対照表は資産項目を換金処分額によって置き換え、さらに負債項目と相殺して正味の財産価値を示したものである。倒産会社の在庫品は大半が不良品であったりすることが多く、商品価値のある良品在庫のみしか評価できない。在庫品は9割減額している。売掛債権の大半は、現金回収不能の不良債権であったり、減額させられたり、あげくには支払ってもらえなかったりするので、ここでは4割減額している。土地の評価はゼロである。土地は借入金の担保になっており、担保設定額と土地の時価評価額とが相殺された後の余剰分はないと判断されたものだと思われる。清算貸借対照表で再度計算すると、回収率は15%に低下する。
倒産会社の資産処分は、抵当権者に対する弁済と優先債権者に対する弁済(国税・地方税、社会保険料、労働債権)を支払った残りを一般営業債権者に配分する。したがって、一般債権者にとって倒産企業からの配当は僅かなものしか期待できない。
自社が納入した品物が、倒産先に在庫として残っていた場合に、それを取り戻すことはできるだろうか。債権者にとって不合理に思えるが、いまだ支払がなされていない自社製品であっても、倒産先の承諾なく勝手に運び出すと窃盗罪に問われる。一度、得意先の管理下にはいったものは自社の所有権を主張できない。
倒産したとわかってからでは非常に代償が大きすぎる。平素からのリスク管理(予防回避策と危機管理)が大切である。売り上げに情熱を注いだ営業マンも納品後の安堵感に注意しておかなければならない。