バグダッド燃ゆ イラク女性リバーベンドの日記
…いつかあなたと会いましょう、チグリス川の流れる街で。そこは心を癒し、魂が甦る場所…
2003年12月24日水曜日
タンクに水をはる…
タンクに水をはる…
今日、タンクの水をいっぱいにした。たいていのイラクの家には屋根の上に貯水用のタンク「タンキー」がある。以前なら水圧が高く、'水道の水'をタンクに送ることなどわけがなかった。水はそこから「ギゼール」といわれる湯沸かし器(電気、灯油、石炭などで加熱される)に行くか、あるいは、直接蛇口から冷たい水として出てくる。ところが、最近このあたりの水圧が低くなり、水はかろうじて1階の2ヶ所の蛇口にくるだけになってしまった。
朝10時頃、台所で蛇口をひねったら、水がジャーと流れ出るかわりに、蛇口は苦しそうにブツブツ・ゴボゴボと哀れな音をたてた。蛇口と私は同時にうめいた。
Eの名前を大声で叫ぶと、彼はセーターを2枚着て、パジャマズボン、左右違うソックスで、階段を転がるように降りてきた(最近とても*寒い*)。
「E、水が出ない! どの蛇口からも一滴も出ない…タンクに水を入れなきゃ」
Eはうぅ〜とうめくと、小さな声で何かをつぶやいて、階段の手摺りに自分の頭を軽くうちつけた。彼をとがめるつもりはない。タンクに水を入れるなんてちっとも楽しくないから。3人の人間と数個のバケツを用意して、そこらじゅうにはねかえった水と泥で出来たたくさんのぬかるみ、あげくに何回もすべって転ぶことを覚悟しなければならないから。
Eはもちろんいつも屋根の上。どういうことかというと、貯水タンクの隣に立って、バケツの水を受け、タンクの中にざっーと入れる。私はホースの担当。さむ〜い戸外に立って、ガーデンホースから冷たい水をバケツに入れる(家の中の石油ストーブのことなど考えないようにして)。
そして、バケツを受け取る人があと2人は必要(私たちは、運び屋と呼んでいる)。ホースを使う私からバケツを受け取って、走ってE.に渡し、空っぽになったバケツを再び戻す。それをおよそ12〜15回繰り返すか、あるいはE、運び屋、私が疲れ果て誰かが「や〜めた」と言うまで続く。
冬の間のこの作業の大変さは、かかわった人が皆当然のごとく濡れて冷たくなるということだ。しかし、この雑役は必要だ。他の方法ではタンクをいっぱいにするのに数日かかるかもしれないから。私たちは電動ポンプを持っているけれど、タンクをいっぱいにするほど電気はこない。
結局、私は最後のバケツを自分で屋根まで運んだ。私たちの運び屋(3軒先の12歳)が、サッカーの試合があるといったから。
タンクに近づくと、E.が鳩に話しかけながらタンクにもたれていた。鳩はEのことなどまったく気にしているふうもなかった。バグダッドには何百万羽もの鳩がいる。そして、鳩を嫌がる人もなかにはいる-E.はそういう人とは違うが…私はついに彼がおかしくなったのかと思った。
「何を話しているの?」と私は恐るおそる尋ねた。
「この翼が羨ましいなぁ…」と、彼は遠くをながめながらつぶやいた。
「あぁ…、あなたも飛びたいのね」 私はまじめぶって相槌を打った。
「ううん… 8時間のガソリンの行列にならぶ必要がないなんてすごいなぁと思って…」
リバー@午前3時49分