移動機構:3点支持vs4点支持

ロボコンにかぎらず研究などでも対向2輪移動機構は多く使われます。これには3点支持と4点支持の2タイプがあります。ここではその二つのタイプを比較します。

はじめに

機体形状 3点支持と4点支持

知能ロボコンロボットの機体のほとんどは、受動輪(キャスター)と動力輪(モータつき)で構成され、動力輪が向かい合っている「対向2輪型」です。これは大別して2種類あります。一つは4点支持、もう一つは3点支持です。

ここでは4点支持を使いたいと思います。形状に大きく影響されるのは旋回性能、直進性能、曲進、設計自由度です。これらを定量的に比較してこの中で旋回性能を重視し4点支持を選びました。

また、補足として車体の理想的なバランスを計算してみました


旋回性能

3点支持よりも4点支持の方が旋回性能が高くなります。回転加速度は以下の 通りになります。

ω = T / I
ωは角加速度、Tは回転トルク、Iは慣性モーメントです。Iが機体形状に大きく 依存します。Iが小さいほど回転しやすい機体となります。

この慣性モーメントIは以下の式で計算できます。

I = IG + m * x2
IGは重心での慣性モーメントです。mはロボットの重量です。xが回転中心と重心の間の距離です。重心と回転中心が一致する4点支持は最もこの値は小さくなります。そのために回転加速度は高くなります。

質量が5kgで等分布、車体サイズを横A=200mm、縦B=300mmと仮定すると、4点支持では

I = IG + m * x2
=(m/AB)((AB3)/12 +(BA3)/12) + m * x2
=(m/12)(A2 +B2)+ m * x2
=(5/12)(0.22+0.32)+ 5 * 02
=0.054166667 kg・m2
です。3点支持の場合は
I = IG + m * x2
=(m/12)(A2 +B2)+ m * x2
=(5/12)(0.22+0.32)+ 5 * 0.152
=(0.054166667 + 0.1125)kg・m2
=0.16666667
です。この条件では慣性モーメントが3倍になります。式を見てのとおり、車軸 と重心の距離には非常に慣性モーメントはセンシティブです。

直進性能

直進性能

直進性能は3点支持の方が高くなります。理由は動力輪の荷重分担率です。動力輪に大きな力がかかっているほど大きな加速度で走れます。動力輪が浮いてしまっている(動力輪の荷重分担率がゼロになる)と当然スリップします。

3点支持の場合にはトルクによって受動輪が浮き、動力輪の荷重分担率があがります(ウィリーしてしまえば、荷重分担率は1です)。それに対して、4点支持の場合には、車輪の発生したトルクで受動輪が押しつけられ、動力輪の荷重分担率が低下します。よって、3点支持の方がより高い加速度を持ちます。

具体的には、重力加速度g、荷重分担率α、摩擦力μとすると、3点支持の場合は最大伝達加速度は(前輪が浮いた瞬間にα=1)になるので

a = αμmg/m = μg
です。これに対して、4点支持の場合は車輪(直径φ、車体中心からの距離l)がトルクTを発生しているとすると加速度と荷重分担率の式から
a = αμg = 2T/φm、α=(mg-2T/l)/mg
a=μ(mg-2T/l)/m = 2T/φm
T=μmg/2・lφ/(l+μφ)
a=2T/φm
=μg・l/(l+μφ)
α=l/(l+μφ)
となります。車体長さlに対して車輪径φが大きいと荷重分担率が低下します。μ=0.3、l=150mm、φ=80mmと仮定すると、荷重分担率は0.86になり、3点支持に比べて加速度は15%ほど低下します。


設計自由度

車軸の部分にはモータ以外にもバッテリーなどの重量物もおくべきです。慣性モーメントを小さくするためです。このために、車軸の周囲には走行系以外の部品(ハンドなど)を配置にしにくくなります。

3点支持の場合には車体の後ろに車軸があり、前半分は自由に使えます。それに対して4点支持の場合には前1/4と後ろ1/4が自由に使えます。分断されているために使いにくくなってしまっています。このために、3点支持のほうが使いやすいといえます。

車体の長さを300mm、モータとバッテリの幅を60mmと仮定すると、3点支持では240mmに対して、4点支持では120mm x 2が使えます。

曲進

曲進性能

曲進は必ずしも必要ではありませんが、方向を変えながら移動できるということは移動時間の節約となります。この曲進は3点支持では難しいです。車輪にかかる力が大きくスリップしやすいためです(極端にスリップしていない状態では、力とスリップ量はほぼ比例します)。これを定量的に出します。

曲進中に車体に外から働く力は右図上のFs(直進に必要な力)、Tr(旋回に必要なトルク)、Fa(遠心力に耐える力)があげられます。等速運動していると仮定すると、以下の式になります。

Fs = 0
Tr = I v/r
Fa = m v2/r

3点支持では、車輪で発生すべき力(FR、FL)は車幅をw、車軸から重心までの距離をlとすると以下の式になります。

FR = Fs/2 + Tr/w - Fa・l/w
FL = Fs/2 - Tr/w + Fa・l/w

4点支持では、車輪で発生すべき力(FR、FL)は車幅をwとすると以下の式になります。

FL = Fs/2 + Tr/w
FR = Fs/2 - Tr/w

ここで、車体の長さを300mm、車幅を200mm、車重を2kgで車体の等分布、旋回半径を450mm(知能ロボコンのフィールドのサイズから)、速度を500mm/sと仮定します。

Fs = 0
Tr = I v/r = 2(0.22+0.32)/12 × 0.5/0.45 = 0.024[Nm]
Fa = m v2/r = 2 × 0.52 / 0.45 = 1.111[N]
(3点支持)
FL = Fs/2 + Tr/w - Fa・l/w = 0 + 0.024/0.2 - 1.111×0.15/0.2 =-0.713[N]
FR = Fs/2 - Tr/w + Fa・l/w = 0 - 0.024/0.2 + 1.111×0.15/0.2 = 0.713[N]
(4点支持)
FL = Fs/2 + Tr/w = 0.024/0.2 = 0.12[N]
FR = Fs/2 - Tr/w = -0.024/0.2 =-0.12[N]
非常におおざっぱな見積りですが、3点支持だと遠心力で数倍のトルクがかかることが分かります。

私の経験上、3点支持で曲進を行なうと精度は全くでません。計測輪を付ければ話は別ですが…特に直進速度が大きい場合には効果が適面にでます。

結論

機械的に見ると3点支持よりも4点支持の方がメリットがおおきいと思われます。ただし、4点支持には設計自由度が低い、というデメリットがあります。加えて、4点支持の場合にはサスペンションは必須です(動力輪が浮いたらアウトです)。デメリットを踏まえれば4点支持が好ましいと思います

補足:車体バランス

理想の車体バランスを目指します。私の考える理想の車体バランスとは、直進と旋回に必要なモータ出力が同じということです。これにより、直進でも旋回でもモータ出力を無駄なく利用することが可能です。

直進時に必要な力Fsは以下の式となります。

Fs = am
ここで、aは加速度[m/s2]、mは質量[kg]です。

旋回に必要な力Frは以下の式となります。

Fr = ωI/L
ここで、Lは回転中心から車輪までの距離[m]、ωは角加速度[rad/s2]、Iは慣生モーメント[kg m2]です。

ここでロボットを密度一定の直方体と仮定します。進行方向に長さA, それに直角に長さBとします。するとIは

I=A2B2/4 *(m/AB) = ABm/4
となります。また、LはB/2となります。

以上の指揮をまとめて以下の式となります

Fs = Fr am = ωI/L = ω(ABm/4)/(B/2) a = ωA/2 A = 2a/ω

つまり、「車体の横幅は車体バランスに影響しない」「車体の長さは2a/ωでバランスがとれる」ということになります。また、車体を短めにすると旋回に必要な力が小さくなるが直進に必要なトルクが変化しないことより、「前後につまった車体ほど旋回性能が良い」ということになります。

以上をまとめると、

となります。なるべく車軸上に重量物を集めた方がいい性能になる、ということ です。

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$Date: 2006/11/07 03:20:40 $
$Revision: 1.1.1.1 $