突然、彼は、腸を捕まれる。胃の近く。いくら呼吸しても、たりない。汗が一斉に流れ出す。喉が詰まる。全身が、支配される。
突然ではないのかもしれない。徐々に、水面下から、そして。
犯人を捜そうと努力する。どこかに過ちを見いだそうとする。過ちだらけであることだけが判明する。いや、違う、過ちである可能性が含まれることばかりであることが。
依然として、彼は、捕まれたまま、ふりほどくことが出来ない。もう限界かもしれない。それとも、もっと以前から。あれほど求めていた呼吸さえも、最早、必要ないとさえ感じ始める。
しかし、全てが消えて無くなってもくれる。最早、この痛みだけ。
いつ終わったのだろうか。未来が消えてしまう。ずっと前から。そして、小さな円の中だけでうろうろとしている。もしくは、時間に追われて、自分の周りを必死に掘り続けている。
漸く解放されて、彼は。地面にはいつくばったまま。それとも、死んでしまったのだろうか。また立ち上がる。躊躇したのちに立ち上がる。
終わろうと思えば、終わりかもしれない。何故、終わろうとしないのか、もしくは、終わることが出来ないのか。
少し、横になればいい。まだまだ時間がある。ゆっくりと治療すればいい。それほどのこともないかもしれない。時間が許してくれるだろうか。しかし、その時間を信用することが出来ない。遠くの遠くにある時間など、どうやって信じればいいのか。痛みも現在でなければ、それほどのことでもない。
彼は、また、元に戻る。捕まれた腸も、今は不都合のない活動をしている。時に、眩暈を感じるが、それが、これのためのなのかどうかは定かではない。
また、終わりに近づく。水面下で、もしくは、頭を出して堂々と。
少し、遠くまで、痛みから解放されたおかげで、腸以外のものにも、神経が回るようになって。あちこちが、ぎすぎすといっているようで、違う痛みが押し寄せてくる。気にしている場合ではない。限界が、まだまだ遠くにありすぎるような気もする。
大平原。混み合った街。机を囲む人々。未来。過去。彼は、おなかを押さえている。そして、見渡す。ここは、何処なのだろうか。もしくは、今求めているものに対する適切な回答はどれなのだろうかと。あのときの腸がまた、痛み始めたのか。それとも、もっと別な理由なのか。うろうろと彷徨っている。何処を。最初の選択肢のどれかを。彼には、どれなのかさえもわからなくなっている。字面のちがい以外にそれらの差異は何かあるのだろうか。おなかを押さえたまま、彼は、歩いている。とりあえず、歩いている。止まってしまっても良いのかもしれないけれども、とても止まっていられる心境ではない。だから、歩いている。前へ、ではないかもしれないが、どうやら、後ろに向かってということになることはないようだ。だから、安心して、いや、追い立てられるように、そこにないものに、進む、不案内のまま、向かって、まっしぐらに、振ったさいころが示した数字に従うかのように、いや、高速に処理された情報のうち、選別されたものだけ、それに従って、だけれども、結局それは、過去、そして、未来。何処なのか。それは、もう、関係は無くなっていて。