それでも、放り込む。いつまでも、変わらないようで。その穴は、いつまでも、穴のまま。だけれども、放り込む。埋まらないことよりも、埋めようとしていることの方が、重要である。もしくは、そうやって、時間を稼ぐ。終焉に向かって。いずれにせよ、向かっているのだから。彼は、既に、変わることを期待しない。放り込んでも、放り込んでも、埋まらない穴に、いらだった。全てが、ただの徒労感に変化して、へたり込んで。過去のこと。それもどうでもいいことだと。期待しないだけだ。変わるかもしれない、そのことを否定したわけではない、変わらなくても別に構わない、変わらなければ、変わらないという必然性があったのだろうし、変われば、変わるという必然性があったに過ぎない。彼に関せぬこと、いや、彼に全て依存していることではない。別に、あきらめたわけではない。ただ、期待することをやめただけ。だから、依然として、放り込んでいる。この穴に。何処までもあるのかわからないそれに。むしろ、以前以上に、放り込んでいるかもしれない。それは、時間を稼ぐためだろうか。時間を早めるためかもしれない。いずれにせよ、終わったところから、始まり、終わりに向かっている。今は、終わりの直前かもしれない、比較的長く続く可能性を秘める、終わりの直前かもしれない。答えることには飽きた。いや、適切な言葉が見つからない。こういうべきだろうか、消費の仕方が異なるのだと。時間を。
時に休憩するのも良いものだ。彼は、時々、放り込むことを止める。いや、止めたわけではない。中断する。その穴から、少し離れてみる。違う穴があるかもしれない。見つかれば、今度は、そっちに放り込むようになるかもしれない。そういえば、ずっとさっきの、同じ穴に放り込んでいたのではないかもしれない。では、いつから何をきっかけに、その穴に、なったのだろうか。覚えていない。自然に、そうなった、抵抗することなど出来ない。出来たかもしれない、例え出来ていたとしても、ここへと繋がることに変化はないだろう。いくら理由を何かに押しつけようとしても、無理なものだ。だから、彼は藻掻くことなく、藻掻くことが出来る。穴が見つからないようなので、戻ってきた、彼は、少しばかりの、しばらくの、不在から。穴が見つかった。それが、さっきまでのものと、同じ穴、なのかどうなのか、実は、彼自身も確信は無かった。新しく、見つけたのかもしれない、実は。だけれど、それにしたところで、どうでも良いことだ。期待することをやめた彼にとっては。新しい穴だろうとそうでなかろうと、放り込むことは出来るし、どうやら、放り込まなければならないようだ。どっちなのだろうか。
再び、放り込みはじめる。終わりの無い労働だと、苦にすることはない、これで、時間を消費することが出来る。本意かどうかなど、それほどの贅沢を言える身分でもないし、苦情を申し立てるほどのことでもない。それに、誰に対して、苦情を申し立てるのだ。彼自身で見いだした穴に対して、放り込んでいるだけだ。いずれにせよ、きっと、それ以上のことも、それ以下のこともない。坂道を登っているのか、下っているのか、しかし、これは、きっと設問が不適切で。その場所しかない、前も後ろも、残像と蜃気楼以外は。そして、彼は、熱心に穴に向かって、放り込み続ける。