どこかに、そう言って。何もかもが、周りにはないように。何一つとして、引き込もうとはしない。漂っているかのように。それとも、求めているにもかかわらず。
窓の外に見える景色。椅子に座って。ここはどこなのだろうか。
だけれども、むしろ、景色など見ない方がいいのではと。特に近くにあるそれは。遠く遠くにあるものばかりの方が。閉じこめられていない気がする。
彼の座る椅子は、一体何の上に据えられているのだろうか。
彼の見る景色は、変化する。どのようなスピードで。
窓の外を見ながら、沈み込んでいく、内側へ。その中に堆積した多くのものを見つけて。だけれども、それをかき混ぜてはいけない。また、視界が曇ってしまうかもしれないから。
だから彼は、きっと水の中よりも、空中の方を好む。
どこにも何もない。そのように定義したのだから。そのように求めたのだから。今更。窓の外を眺める。それとも、かきむしりたくなる何かが。
走れ。そこには。どこにも、向かってはいない。どこにもいない。
彼の机の下にため込まれたものたち。まるで、がらくたのようで。すべては、風化していっている。棚の中に納められて、そして、もう二度と外に出てくることのない過去。だけれども、依然としてそこに在る。その空虚ながらくたにしがみついて、そして崩れ落ちる。もう、何も、体にしみこんではこない。いや、しみこんできても中にはとどまらない。行き来する。いや、素通りするだけ。だから、考えないようにと、そう、彼は彼に対して言い聞かせる。すべてをシャットアウトしろと。
向こうへ向かうとき。そして、こちらにいるとき。それが耐えきれなくて。引き裂かれるごとに叫び声を上げていた時。しかし、もし、分裂することができるのなら。それぞれをそれぞれが、ばらばらに。不可能ではない。きっと。そして失われていく。現実の表面を空回りしながら滑り去っていく。
装飾にばかり。機敏に。感情との戦いを放棄して。もう、彼は窓の外を眺めることはないのだろうか。それよりも、走れとばかり。
戦いに敗れて。しかし、帰るべき国もなく。彼は。潜む。とけ込んでいるようで、分離したままに、この街で。それとも、この街であれば。何かがあったとしても、潜入は許さぬように。いずれ、この街であるのだから。悪くない。
試しに彼は、また、窓のそばの椅子に腰かかけてみた。また、何かが、頭をよぎるかもしれないから。また、何かが、彼を駆動するかもしれないから。じっとこらえる。脳が、自由に動いてくれない。ただそこにじっとしていることだけが耐え難く感じて。あれほどまでに好んだ行為であったのに。
戦う力を失ったのだろうか。感情が逃亡したまま。すべては、ただ崩壊に向かうだけだからなのか。何が信用に足るのだろうか。何に、何を託すことができるというのだ。振り返るよりも、前を見て、走れと、向いた方が前なのだから。遠くの景色をみれば、この半球がいかに広いかがわかるだろう。その一点でしかないのだ。だから、時間がないことがわかるだろう。向かう方向はそっちなのだ。本当にそうなのか。感情は、カプセルの中に閉じこめて。私は一体。しかし、半球の中での存在なのだから。彼はつぶやく。一人でのつぶやきがなぜか複数に重なる。互いが互いの意見を打ち消し始める。打ち消しあった結果として、何が残るのか。そこに、残された、言葉。それとも、残らない、言葉。残ることのできない、言葉。
あまりにも空虚だから、だから、歩いていけるのだと、彼は最後につぶやく、そのようにつぶやく、彼。