ホーム 安部公房分析室 現代プログレ聴査室 LINK Word文書作成術他

with Rogi073  .Bookmark  .Diary  .Schedule  .Bookshelf  .Music

注目情報

[文学]ブランショ  [美術]中村宏,Gainer [演劇] [映画] [音楽]Myllarit,Out Trio [製品] [その他]Timeline API

dLINKbRING.com Open : More Music More Literature

眺める人

 

[中編] [短編] [短文]

(Contents)

新作紹介

安部公房について

燃えつきた地図
砂の女
箱男
密会

 

その他の作家について

  <エリアス・カネッティー>

眩暈

  <ドストエフスキー>

白痴

 

  <ガルシア・マルケス>

予告された殺人・・・

  <フランツ・カフカ>


変身
カフカ全集

  <サミュエル・ベケット>

ベケット伝
消尽したもの

 <ヘンリー・ミラー>

クリシーの静かな・・・

  <ロブ=グリエ>

覗く人

 

  <その他の作家>

莫言/豊乳肥臀
モノリ リオタール/震える物語
B.H.レヴィ/サルトルの世紀
ヘッセ/ガラス玉演戯
キニャール/舌の先・・・
山下清/山下清放浪記
ザキ/脳は美をいかに・・・
シミック/コーネルの箱
ハイデッガー/芸術作品・・・
ガモフ/不思議宇宙・・・
サイフェ/異端の数ゼロ
サルツブルグ/統計学を・・・
その他

 眺める人。窓の外を。椅子に座って。机におかれているコーヒー。流れ続けている窓の外の様子を、眺め続ける。

 窓の外を。そうでなければならない。透き通った、しかし、隔絶した、ガラス越し。そこから、ただ眺めているのでなければならない。その目的はと問うてみても。むしろ、その質問への回答の困難さについて考察する方が良いかもしれない。例えば、そのような状態にある人を描きたくなる心境であるとか。

一口、コーヒーをすする。まだ、コップに半分ぐらい。窓の外を、人が通り過ぎていく、どんどんと。人通りの多い街。このカフェにも、ほとんど空席が残されていない。

 コーヒーを飲む以外には、目に付く動きをしない。目玉だけが、窓の外を通り過ぎていく何かを追いかける。確かに、眺める人。その対象に対して、なんらかの意味はなく、ただ、通り過ぎていく何かを目で追っているだけ。

 時間が、流れ続けている、窓の外側には。そして、勿論、内側にも、ほとんど同じように。制御不可能なものとして。通り過ぎていく何か、方向も、服装も、早さも、集団を構成する人数も、その集団の絡まり具合も、それぞれに異なっていて。それぞれが重なり合った効果なのだろうか、まるで、時間が永続するかのように、その時間と同じように流れている。

 また、コーヒーをすする。いつまで、耐え続けることが出来るだろうか。何かが、落ち着きを奪おうとする。隔離されているはずの場所、いや、隔離などされていない場所。どこかで、繋がっていて、しかし、時間から隔離されたかのように感じる状態。

 徐々に天気が悪くなってきた。家を出るときは、まだ晴れていたのに、いつの間にか空は雲に覆われて、今にも雨が降り出してきそうだ。しかし、傘を持ってきていない、こんな時に限って。もう、ここを出るべきかもしれない。あと、コップに四分の一ぐらい。時間の流れと同期をとる。

 目つきが少し強くなる、焦点を絞り込む。じっくりと窓の外を見る、空を見る。客の出入りによって開いた扉から入り込む外側の音に耳をそばだてる。傘が開き始めている、窓の外。雨はもう降り出している。走って行けば、何とかなるかもしれない、まだそれほど雨は強く降っていない。

 あわただしく家を出てきたから、かといって、それほどあわただしくするほどのこともなかったのだが、傘を忘れてしまった。傘があれば、もう少し、ここに落ちついて、窓の外を眺めていることが出来たかもしれない。しかし、安定の平面が移動してしまって、今は雨に気をとられている。雨でなければ、それとも、ここが家であるとしたら、それとも、全く家を持たないとしたら。

 雨の中を小走りに進む。君が待っている。かつて、私も待っていた、駅の改札の横で、私が、背中にしがみつく、自転車の後ろの荷台に座って、びしょ濡れになりながら家に向かった時のよう、遠い過去。迎えに行く、駅の改札の横の庇の下で待っている君、だけれども、傘を持っていない私は、役立たずで、おまけに自転車もない、一緒に家に向かう、雨に濡れながら、少し弱くなった雨、しっとりと張り付いてくる。私に残された最後の確信かもしれない。君はわからないだろうか、私はうまく隠蔽しているだろうか。

 少しの間、あなたを見つめていたくて。あまりに奇妙な注文。いいだろうか。別にいいけれど、どうかしたの。うまくいえないのだけれども、そうしていたい心境で。ときより、ひどく濃く伸びる影に気がつく、近づけば近づくほど、大きく伸びる影、その影の中でゆっくりと昼寝をするのが、とても心地よいのかもしれない、きっと、そう感じる、今は。

 それは、いつなのだろうか、どこなのだろうか、何故なのだろうか。その目的はと問うてみても。

 もう、コップは空。眺められる側の流れの一員になる。

 

(Contents)

 

創作作品について
   <中編>

多重性

切り身

   <短編>

夕立過ぎ
目の取り替え
始まりの時

   <短文>

移転しました
崩壊しそうなそれ
可能性
眺める人
放り込む、穴
箱を運ぶ

堂々巡り
薄板
鼓動
扉と四次元目
終わり、続き
二つの家
いくつもの丘
極限値
再び、再び
窓と椅子
遅刻
小さな壺
モデル
軌跡と膨らみ
穴の前後
機能
ねじり込み
手探り
共犯者
水平
循環参照
時間
伸びる
転回の場
暗い穴
平面考
風吹く丘
状態変化
環境と乱れ
追跡
四角
敷き詰められて
脈拍の乱れ

転がり
劇場
靡く風
躓き
薄氷に対して
その間
固まり
樹形図の杜

石の固まり
待ち合わせ
主語
インサイドアウト・・・
湖畔に辿り着くこと
平地
炎天下
ペンとノートを
風景画
耳元のささやき
掴みかかる意志
生活
部屋の中の椅子
握手した人
木陰
余白における
棒の先端
積み重なり
集まる
ボールペンを握って
抵抗する感覚
逃げようとする感・・・
寒空の下
二日酔いのように
四次元の二次元の・・・
電車にて
倒れた枯れ木
扉とひもについて
あちらとこちら
隊長の物語
空についての対話
植物学者の新たな発見
接続面の考察
標的巡り
痕跡
解読
表現手法の崩壊と・・・
映像の乱れ
拡散性と水玉と針
防寒着を着た人形
壁の中へ
鞄の完成
礼拝堂

↑このページのトップへ↑

ホーム 安部公房分析室 現代プログレ聴査室 LINK Word文書作成術他

with Rogi073  .Bookmark  .Diary  .Schedule  .Bookshelf  .Music

このサイトに含まれる全ての画像、文章等

に対する権利はこのサイトの作者(gcdzdt2)に帰属します。無断での転載、流用は禁じます。