I. サイバーRCの認証1) Rotary
e-Club One(eクラブ)が2002年1月4日、世界最初のサイバーRCとして認証を受けた。チャーターナイトは5450地区、コロラド州デンバーで行われたが、例会場はホームページ(http://www.rotary5450.org/eclub/)2)に置かれている。「インターネットによる超我の奉仕」をテーマに、24時間365日、接続したときが例会出席。これまでのRCの概念を覆す斬新な手法を取っている。RC入会を希望しながらも、定期的な例会出席が困難なひとは多い。そんな方々にもRCに参加してもらうべく作られたクラブで、ニューモデルRC(パイロットプロジェクト)として注目されている。
II. 電子クラブの実現性 このように新たな形のRCを模索し、ネット社会への対応を試みる姿勢は素晴らしいが、素人考えとして気になる点もいくつかある。
1. 親睦の有名無実化
定期的に集まる場がなければ、会員同士が顔を合わせる機会も極めて少なくなる。接続時刻も限定されていないため、ネット上ですら時間の共有がなされない。そのため同じRCに在籍しながら一度も会うことなく終える会員もいるだろう。そのような、例会場へ集まれないひとのためにeクラブが考案されたのだから、その心配は無駄なことかもしれない。しかし「親睦」を出発点としているRCにおいて、親睦の機会の少ないRCを作る必要性こそあったのだろうか。
通信制大学ではスクーリングという形で、教員と学生が実際に顔を合わせる場が提供されている。通信といえば日本ロータリーハムクラブ(ROAR-JAPAN)3)がある。電波例会と称して定期的に交信しているとのこと。そうした観点からもeクラブでは、チャットなどで定期的に集う場と時間の確保が期待される。
2. サインだけMUのネット版
例会がネット上で行われ、いつどんなときでも接続さえすれば出席したことになる、という形態はeクラブの最大の特徴である。例会であるから当然メーキャップも受け付ける。eクラブHPにはメーキャップ用のフォーマットも用意されている。ビジターフィーは不要。英語の読み書きに不安がないロータリアンなら簡単にログインできる。
一方でこの簡易さは、安易なメーキャップ方法として普及しないだろうか。日本国内では休会時を狙ってメーキャップに訪れ、サインをもって欠席補填に替える方法が一般化している。ビジターフィーはかからないし、少なくとも36分は必要とされる例会参加時間が1分足らずで済んでしまうなど利点は多い。唯一不便なのは、本来あるべき筈の例会時間に間に合うよう例会場まで足を運ばなければならない点である。それがネット上となれば、PCさえあれば会社だろうが自宅だろうが出張先だろうが、どこからでも好きな時間に移動することなくメーキャップが可能となる。
今のところ「会報は休会お知らせ欄だけ読む」と嘯く会員でも、eクラブの話題を口にするひとは非常に少ない。これは
- ロータリー情報に疎いためeクラブの存在を知らない
- 高齢のためPCを操作できない
- 語学が苦手なため英語だらけのHPには端から近付かない
といった要因が考えられる。
III.
RACへの応用 サイバーRCという形態がRIで認められたことを受けて、次に考えるべきはRACへの応用である。多忙、遠方のためにRC例会に出席できないひとの救済策としてのeクラブであれば、そうした不参加要因の排除はRACにもあてはまる。
1. サイバーRACの必要性
RAC入会を拒む最大の理由は「忙しいから」であり、例会場に通いづらいという点も不参加理由に挙げられやすい。学生もその年代なりに遊びや勉強、バイトに「忙しい」といえるが、20代後半に差し掛かると、この忙しさも深刻化しやすい。仕事をようやく覚え始めた時期であり、結婚するひともいれば妊娠出産もこの年代に多い。殆どのRACが夜間に例会を行っているが、少し残業が入れば例会には間に合わない。家庭を持てば月2回の寄り道も家庭不和の立派な要因になり得る。そうした忙しい方々にもRACに参加してもらうには、「例会に来なくてもよい」というサイバーRACの形態は有効である。
遠方のために参加できないというのも切実である。特にRACはRCと違ってあちこちの街に存在するものではなく、勤務先の近くにも自宅の近所にもRACが無いという環境は大いに考えられる。最寄りのRAC例会場まで電車で1時間かかることもある。熱心なアクターならその距離をも乗り越えられるが、入会勧誘には辛い障害である。しかしサイバーRACなら、そんな距離も気にする必要がない。
2. 現実化への胎動
RACとしては非公式であるが、チャット例会は各所で試みられている。全国RACML4)から派生したチャット例会5)は、寺井氏(守口RAC)が会長、淺川氏(河内長野RAC)が幹事を務め、1998年5月16日(土)深夜に第1回の例会を開催した。当初は東大阪東RACのHP内チャットルームを会場にしていた。月2回、主に土曜深夜を基本とし、時間や場所は”移動例会”と称し時々変更になることはあったものの、年度毎に会長幹事を選任し、2001年11月まで77回に渡り続いた。
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最近の事例では2550地区6)において2002年9月24日夜、チャット例会が開催された。これは鹿沼RACの公式例会であり、実際に例会場に集まるアクターと、ネットで参加するアクターとで二元化された例会となった。そのためチャット参加者は例会出席とみなされ、MUカードが発行されるという本格的な試みであった。
IV. 問題点と利点
1. PCを持たざる者
物理的な要因で参加できない人々にとって利便を図るeクラブだが、根本的な要因も検討する必要がある。PCの普及である。2001年2月には札幌北RACと岐阜南RACの姉妹提携10周年を記念し、合同チャット例会が企画されたこともあったが、準備不足のため実現に至らなかった。近隣に適したネットカフェがみつからず、個人宅からの接続も困難という理由もあった。ネットの整備に伴い、個人アドレスは若者の殆どが持つようになったと言われるが、その大半は携帯に依存している。個人レベルでのネット参加は一般化しているとはいえ、クラブ等まとまった団体で動くにはまだしばらく時間がかかるものとみられる。
2. 親睦の喪失
サイバー化にあたっては、上述しているが「親睦」の視点も問題視されるであろう。「奉仕を通じての親睦(Fellowship
Through Service)」を標語に持つ団体として、親睦が無いということはそれ自体、目的の半分を放棄しているようなものである。MLのチャット例会においても、各人がホームクラブに属した上での参加である。全国研修や多地区交流、積極的なアクターなら他クラブへのMUを通じてチャット例会参加者と実際に接することにより、オフ会のような位置付けを作り出している。こうした現実の親睦で補うことによって、ネットでの交流も活きたものになりうる。
3. 幽霊会員の活用
RCとRACが違う点のひとつとして、RACは幽霊会員を抱えやすいことが挙げられる。RCほど出席規定を厳しく運用しないため、例会への参加を怠っても退会に至るケースは稀である。しかしそうして参加しないことによってますます出不精が募り、結局本人は参加する気がすでに失せているのに、名前だけが名簿に残る。これが典型的な幽霊化である。いくつかのクラブでは年度毎に幽霊会員の整理をしているが、整理は会員数の減少に直結するため、整理したくてもできないというクラブは多い。行事の企画・準備が面倒臭いからと、普段は忙しい振りをして例会等に参加せず、イベント当日になって顔を出すという悪質な幽霊会員も存在する。行事当日の動員を考えれば無碍にできないが、その動機は準備に汗する誠実なアクターの士気に影響を及ぼす。当日動員の要員としてはハイパーアクトからのものも見込める7)が、現実には人手不足は切実な問題である。
この解決手段として、極論になるが幽霊会員の実働化が挙げられる。そしてその方法にはサイバーRACが最適であろう。真面目なアクターと幽霊会員を分離し、幽霊会員はサイバーRACに一元化する。いわば遊軍的位置付けである。行事当日の人手不足を補うためだけの要員と割り切れば、その存在にも有効活用の余地がある。幽霊会員にはサイバーRACの会員として定期的に情報を受け取ってもらい、行事出欠もネットで応答してもらう。こうした形もサイバーRACのひとつの活用法といえる。
V.
おわりに 時代と共に団体の形態が変化するのは当然のことである。RCも会員数が伸び悩むとみるや一業種一会員の原則をあっさり外してしまった。国際奉仕にメールでのやり取りは必須となり、交換学生の派遣に際しては個人アドレスを持つよう推奨する地区も増えている。ネットの普及によって世界規模の交流が容易になったのだから、それに対応するべくeクラブが誕生するのも時代の流れであろう。そのような環境下で、ではRACにその応用が効くのだろうか。周知のようにRACがRACを作ることは不可能である。ネットを活動に取り込む手段としてはHPの開設、ML、チャット例会などが挙げられるが、運営手法自体をネット化するにはRACレベルで提案する範疇を超えている。RCのRAC改善への思いやりに期待するところである。
参考文献
[ 2002.10.15 受稿
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