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アクロポリスの丘を降り、市街地から別の丘に登るとアスクレピオンがある。ギリシャ神話の医学の神であるアスクレピウスに捧げられたこの場所は、当時最先端の医学技術を集積した総合病院である。聖なる道(現存150m程度だが当時はおよそ850m)を歩行して辿り着けた者だけが、アスクレピオンでの治療を受けることが出来た。病院といっても、緊急を要する重病傷ははなから受け付けない、いわば高級サナトリウムとでも言おうか。聖なる泉はラジウムを含有しており、現在も湧き出ている。古代は入浴及び飲用して治療に当てたらしいが我々は手を清めるに留める。
此処には劇場、図書館、散歩用の地下道、回廊などがあり、地下道は治療棟と泉を、つまり俗世と治癒の場を結んでいる。天上には小窓。そこから医師達が地下道を歩く患者に小声で「貴方の病気は良くなる 良くなっている・・・」と暗示をかけていたらしい。患者にはこれが「神のお告げ」だったとか。治療棟には病気回復の神テレスポロスを祭っていた。治療方法も、薬草やマッサージに拠り、うとうとしながら神のお告げを待つというもの。すなわちサイコテラピーである。確かに「病は気から」であるし、患者自身の治癒力を最大限に引き出すことも治療法として正論であろう。在る意味で医療の原点なのかもしれない。
近くにはトルコ陸軍の演習場があった。山肌にトルコ国旗の月と星。戦車もちらりと見えた。撮影はさすがに憚られたが、気になって気になって仕方なかった。遺跡の傍に演習場。違和感というより面白さが先立つ。(注、軍事マニアではありません。)
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