ASIA / ASTRA ディスクレビュー前半


僕がはじめて聴いたエイジアのアルバムだ。
同時に、はじめて聴いたプログレ人脈のアルバムでもある。

なぜ今さらエイジアを聴き直しているかというと。
某ファイル交換ソフトで MP3 をナニして、代表曲、Heat of the Moment
を改めて聴いたのがそのきっかけ。
すると、エイジアを聴きまくっていた少年時代の、熱い想いが
甦ってきてしまった。

そして、当時は探しても見つけられなかったレアトラックが
収録されているベスト盤「Very Best of ASIA」を購入。
Lying to Yourself はさておくとして、他の B 面曲、Ride Easy
と Daylight は熱い熱い。素晴らしい。

勢いはもはや止められず、紙ジャケで再発された初期三部作と
「Then &Now」を購入。
パット・スロール在籍時のライブCDすら探している体たらく
である。
この調子ではジェフリー・ダウンズのプロジェクトだった時代
のエイジアまで買ってしまうかもしれない。


そんな流れで「アストラ」のアルバムレビュー。

オリジナルメンバーでの2枚は迷わず買ったものの、正直言って
本作は買うのをためらっていたが(苦笑)、買って良かった。
ほんとイイよ。

流れのままに全曲レビューなどをやってみる。

とその前に。
日本のベテランプログレファンが良く言う、エイジアはデビュー
当時、売れ線に走ったと批判されていた−なる話。

まー多くの人が言うんだから、本当に当時はそうだったんだろう
けれど、日本だけじゃないの?
だって世界中でベストセラーになったんだよ。
と僕は思っていた。

が、All Music Guide の「Very Best of ASIA」のレビュー
を読んで、眼から鱗が落ちた。

そこには、「エイジアが Hip な音楽ファンから、多いに批判された
ことは疑問だ」と、まず書いてある。(思いっきり意訳なので原文
参照のこと)
そして終盤には、「不当にも無視された「ASTRA」」とある。
うーむ、どこでも同じだったのか。
(まるっきり鵜呑みにしているわけではないけれど)

では、かように世界的に無視されたサードアルバム、「アストラ」
をじっくり聴いてみるとしよう。


まず全体的な感想。

僕が本作を買うのをためらっていた最大の理由は、ベースの音色
にあった。
楽曲は好きだし、大げさなキーボードも好きだ。
マンディ・メイヤーのギターも結構好みだ。

だが、このシンセベースちっくな、機械的なベース音だけは
生理的に苦手だった。そしてそれは「Very Best」に収録されている
本作からのテイクを聴いても同様だった。

ところが、この紙ジャケ&リマスター版「ASTRA」では、ちゃんと
ベースの音に聞こえる!
明らかにシンセベースを意識したベース演奏となっている
Countdown to Zero や Rock and Roll Dream でもそうなのである。

そんなわけで、エイジアの紙ジャケ&リマスター盤最大の収穫は本作
じゃないか?

と思う次第。

強いて注文を言えば、92年再発時のライナーノートではなく、発売
当時のライナーノートを使って欲しかった。
ま、再発時のライナーは伊藤秀世さんだから、悪いはずはないんだけ
ど。はじめの2枚が発売当時のライナーを使っているだけに。


次いで全体的な感想2。

前2作では、楽曲ごとにプログレっぽい曲と、ポップな曲にカラーが
別れていた。

だが、本作ではプログレの要素と、ポップの要素がそれぞれの曲に
分散されている。

どの曲もプログレっぽくてポップ。
平たく言えば、どれもアレンジが大げさで、メロディが口ずさみやすい。

はじめて聞いた当時(15〜16才)の僕には、そこが本当に魅力的
だった。今でもこの音は好きだ。


歌詞についても同様のことが言える。

前2作は、実も蓋もないラブソングと、抽象的かつファンタジックな
歌詞の曲で構成されていた。忘れた頃に出てくる自伝的な歌詞と。

本作では、全曲の歌詞のカラーが戦争をモチーフにしているがために、
前作ではありがちなラブソングや、単なる失恋ソングになっていた
歌詞が、宿命的な別れ、困難を乗り越える愛に昇華されている。

既述のサウンド傾向とあいまって、実に哀愁を醸し出している。
たまらない。

タイトルからして、Wishing, Love Now Till Eternity, Suspicion
である。前作のラブソングのタイトルと比較するだけでも、歌詞面の
進歩は明らかであろう。

もう一点、全体的な傾向として挙げておきたいことがある。

それは、楽曲の終盤に繰り返されるサビにおけるアレンジである。
前2作からの変化というよりも、ファーストへの揺り戻しと言った
方が適切かもしれない。

ファーストでは、ボーカル(コーラス)がキャッチーなサビを繰り
返すエンディングの楽曲であっても、手を変え品を変え、スティーヴ・
ハウの見事なソロなどを交えながら、起伏のあるエンディングを作り
出していた。

ところが、セカンドでのこのタイプのエンディングは、よりソング
オリエンテッドな方向性を取ったがために、単なるサビの連呼と
化してしまう。

Never In A Million Years のように、メロディに強烈な魅力がある
曲はそれでいい。しかし、本質的なメロディの劣る曲は、ファンから
しても「売れ線狙い」と判断せざるを得ないものとなった。

だが本作では、ファーストでのアレンジの密度が復活している。

ウエットンが哀愁のメロディを繰り返し、ダウンズが空間を薄く
埋め、カールがモタれば(いや、本作でのカールは上手いよー)、
確かにそれでエイジアの必要条件を満たす。

だが、楽曲がフェイドアウトするに至っても、なお贅沢にソロの
応酬を行う。
そして、次はどうくる?次はどうくる?と次曲まで引っ張る、もとい、
次曲のイントロまで興奮を持続させ、劇的にアルバムを展開させる。

これがエイジア流「プログレ・ポップ」の大きな魅力ではなかった
ろうか。

本作では、それが成功している。
特に後半(B面)は、過剰なまでに。

判で押したように「若さ溢れるカッティングは良い」と評される
マンディ・メイヤーだが、メロディックなソロによる貢献も見逃して
はならない。

(ディスクレビュー後半の全曲レビューを読む)