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「近くで……って、あそこまで行くのか?」

 ジュンは少し面倒臭そうに答える。
 お目当ての木は山道から離れて立っている為、直に木々の間に入っていかねばならないのだ。
 別に、遠くから眺めるだけで満足だったし……第一、無駄に疲れるのは嫌だった。

「……ダメなの?」

 リュックの口をきゅっと握り締め、俯き加減に真紅が問いかける。
 ジュンの思いに感付いたのか、控えめで縋るような口調だ。

「いや……まあ、良いけどさ」
 実際の気持ちとは裏腹に、ジュンはあっさりそう答えた。
 別に、面倒なら面倒、と言うのが容易ならざると言う訳でもない。
 ただ真紅の声に何時もの気高さとは違った、可憐さと言うか、いたいけさを感じて、思わずそう言ってしまったのだ。
「いい子ね、ジュン」
「何がいい子だよ……行くぞ」

 ジュンはのりに一声掛けて、木々の間に足を踏み入れる。
 人の手が入っているお陰か草も無く、また傾斜も殆ど無い。
 だから、一人と一体で何か話しながら歩いていると、何時の間にか辿り着いていた。


「さて、此処で良いんだろ」

「それじゃあ抱っこして頂戴」
「へいへい」

 ジュンは背嚢から真紅を出してやり、腕に抱きかかえる。
 真紅は抱かれたままジュンに凭れ掛かり、ぴったり体をくっ付けていた。

(……何か、べったりしてるな)

 ふと、真紅の様子を不思議に思うジュン。
 矢鱈と体を密着させている上、木でなく自分を見ているからだ。

「……久し振りなのだわ」

 しかし真紅が零した一言に、ああそうかと納得する。
(……そう言えば)
 そう言えばこのところ、二人で過ごす時間が無かった。
(あいつらが毎日暴れてたからなあ……)
 部屋に雛苺と翠星石、庭に金糸雀、鏡から水銀燈、その中に進化兎。
 昼夜を問わず誰かが間に割って入る所為で、二人で居る時間などある筈が無い。
 故に、此処まで連れて来させたのも、ジュンと二人きりになる為。
 邪魔の入らない場所で、静かに二人だけの時を分かつ為だ。
 ただ、素直にそうと言えなかったので、ジュンの理解が多少遅れた。

「漸く、これで二人きりなのだわ」
「ああ……そうだな」

(で……二人っきりになりたかったって事は、やっぱ……OKなのかな)


 だが、ジュンは何かを大きく勘違いしていたッッッ!!!


 ジュンは手近な木の幹に真紅を押し付けると、唇に吸い付く。
 そして手はスカートに滑り込ませ、ドロワースを掴み、下ろした。

「ジュ、ジュン!? 何をするの!!?」

 余りに突然な下僕の暴走に真紅は平手も縦ロールチョップも忘れ、吃驚仰天。
 だが僅かな隙にも暴走は続き、ドロワースを脱がし切ると、スカートの中に頭を突っ込む。

「!? どうしてこんな事ッ!?」
「だって久し振りの二人水入らず……最近御無沙汰だったじゃないかッッ!」
「わ、私は二人きりで……ただ、幸せな時を……」
「幸せな時と言えば即ち、SEXに行き着くッッ!」
「それはハッテンし過ぎ……ひあぁっ! や、止めえぇぇ!」

 問答無用! とばかりにジュンは股の間に顔を埋め、切れ込みのようなスジに舌を捻じ込む。
 瞬間、真紅の身体がビクリと跳ね上がり、ジュンの舌はくちゃりと音を立てて秘所から離れた。
 追うようにジュンは秘所に顔を付け、今度は貪るように舌で撫で回し、突付き、抉る。
 間も無く、ジュンの舌にはねっとりとした粘液が絡み付き、溢れ出したそれは口内に広がった。

「ふぁ……あふぅ……!」
「嗚呼、可愛いよ、真紅……」

 身体を捩りながら荒い息を吐く真紅。
 しつこく真紅に吸い付くジュンはとうとうズボンを擦り下ろすと、垂直に勃ったモノを露にした。

「ああっ! もう、そんな!」


「折角のムードが、全部台無しなのだわ!」
「僕だってムーディーにオナニーしてブルーに射精するんだぞ!」

 ある意味悲痛な叫びに返される、噛み合わないが、またある意味で悲痛な訴え。
(ああ、人間のオスはやっぱり下劣ね)
 真紅の脳内に以前の情事が再生される。
 あの時も……いや、あの時彼は真っ赤になって、壊れ物を扱う様に慎重な愛撫をした筈であった。
 だが哀しいかな、思春期の性欲を持て余したジュンは日々眠れぬ欲望の奴隷だ。
 真紅の身体を求め、転がる石の如く堕ちて行くのみである。

「うぁっ、んんっ、はうっ、っぁ!」
「はあ、はあ……行くよ、真紅!」

 裂け目に亀頭を当て、擦り付けていく。
 十分に愛液が塗された時点で、ジュンは真紅の中に挿入した。

「ん…あっ、きゃあぁぁぁぁぁっ!」

 激しい侵入に悲鳴が上がる。
 だが構わずジュンは腰を引き、突き上げた。


「ぁぁっ! ジュン! そんなに激しくされたらッ!!」


 激しく、強く、激情に任せてジュンはピストン運動を繰り返す。
 濡れそぼった性器の擦れる淫猥な音がかき鳴らされる度、肉棒を通して全身が快楽に震える。
 真紅も口から涎を垂らし、肉壺をしとどに濡らしながら悶えていた。

「うっ……はあ! 凄い、もうイキそうだ!」

 ジュンは腰砕けになりかけるも辛うじて堪え、最後の足掻きとばかりに突き出す。
 これでもかと幼い肢体を貫いていた分、タイムリミットが早いのは当然だった。

「駄目ぇっ! ジュン! もう抜いてぇ! 中になんて嫌ぁ!」

 膣内に射精さえる事を拒む真紅。
 だが、迫り来るオーガズムに脳を痺れさせた下僕に、その言葉が届く事はなかった。
 彼女のミーディアムは最も深く刺した場所に己の劣情を吐き出したのだ。
 最後の突き上げとともに、少年にしては甲高い声を上げて。

「嗚呼……お腹の中……」


 ……事が終わってから、二人は暫く木に寄り掛かって休んでいた。
 二人ともクタクタで、一言も言葉を交わさなかった。
 ただ、はらはらと舞い散る色鮮やかな葉を見ているだけ。
 お互い小さな身体で激しく貫き貫かれたのだから、無理も無い。
 真紅など息も絶え絶え、腰まで抜けてさえいた。
 それでも、ジュンのSEXへの衝動は枯渇していなかった。

「はあ……さて、次は後ろ向きで……え?」

 突如視界の脇に迫る、紅い旋風。


 次の瞬間、ジュンの認識する時が吹き飛んだ……。


(エピローグ)


 真紅とその下僕が合流したのは、巴とのり一行が弁当を広げる頃だった。

「あらぁ、丁度良かったわ。みんなでお昼にしましょう」
「真紅にチビ人間、さっさと来るですー」

 と、笑顔で迎えられているが、ジュンも真紅も憮然としてシートに座り込む。
 その様子のおかしさに雛苺がひょいと二人の顔を覗き、
「あ――っ! ジュンのほっぺも紅葉してるの――!」
 と、ジュンの頬に出来た楓の葉に似た真っ赤な跡を指差して笑った。

「……桜田君、どうかしたの?」
「別に……」
「乙女に酷い仕打ちをするからだわ」

 巴の心配に口篭るジュンへ、つっけんどんな言動の爆弾を落とす真紅。
 恐らく、まだ可也、いや、思い切り怒っているのだろう。

「お、お前何言って……!」
「あら、本当の事ではなくて? 私は傷付いたのだから」
「そうかよ……はあ」

 溜息を吐くジュン。
 此れで暫くは、二人きりの時があってもきっと手は出せない。
 ムーディにオナニーしてブルーに射精するしかないのだ。
 それも仕方無い。
 真紅とて夢に描いた理想の今日を台無しにされたのだから……。

「真紅……」
「何かしら……?」
「お茶でも飲めよ……紅茶じゃないけど」
「ええ、注いでもらえるかしら」

(……はあ、今日は素敵な一日になる筈だったのに、くすん)

 真紅は心の中でさめざめ泣きながら、茶を啜る。


 その味は、ほんのりしょっぱかった。