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此の世には、信じられないことが沢山ある。
人形が独りでに動いたり、喋ったりするのがそうだ。
本を読んだり絵を描いたり、喧嘩までするのだってそうだ。
お茶やお菓子をせがむまでいくと、もう信じられないどころの話じゃない。
でもその最たるは、人形と裸の付き合いをしてるってこと……。
……僕は、水銀燈と風呂場にいた。
あいつはいそいそと身体に石鹸を塗りたくっている。
水銀燈と二人きり、裸のまま……。
無論、これには深いワケがあった。
此処は珍しく静かな我が家のリビング。
今日は姦しい人形が皆、金糸雀のマスターの所に行っていた。
そのお陰で、平和な夜が過ごせている。
久し振りの開放された夜だ。
ならば、鬼の居ぬ間に……と思った矢先、期待は崩れ去る。
目の前を、はらり、と黒い羽根が過ぎていったのだ。
僕はこれが誰のものかを知っている。
此れがどんなに恐ろしい武器かをも。
そして、その持ち主は既に、僕の背に取り付いている……。
「あらぁ……真紅たちは居ないのぉ……?」
水銀燈……あの恐ろしいドールだ。
いつか焔で焼け落ちた筈のあいつが、今僕の後ろにいる。
「つまんなぁい。しょうがないから、少し遊んで頂戴……」
はらはらと舞い落ちる羽根が、僕の前で次々ポッと青い火を灯す。
眼を焼く淡い光と、空気を伝わって感じる熱に、僕は戦慄した。
その時突然――!
「ジュジュ、ジュン君! 火事かぁぁぁぁッッ!!!」
「うわああぁぁ――――――ッッッ!!?」
キッチンから出てきた姉ちゃんが消火器を発射。
強化液の奔流が、僕とその周囲を呑み込んだ……。
……それから、三十分後。
僕は風呂場の椅子に座っていた。
一応は無事……消化液も中性だったし、水銀燈も襲って来なかった。
あいつは今頃服が洗い終わるのを待っている頃だろう。
全く……姉ちゃんが消火器なんて使ったから大変だった。
液体式だから掃除は楽だったけど……水銀燈の方が楽じゃなかった。
僕とズブ濡れになった後、あいつはいきなり泣き出したのだ。
ドレスと髪をグショグショにされたくらいで、大袈裟もいいとこ。
全く、洗濯させんのも一苦労だもんなあ。
の「えーっとね、水銀燈ちゃん? お洋服洗いましょ……?」
銀「やぁよぉ……触れないでよぉ……うう、グスッ」
の「でも……洗わないとホラ、シミとか臭いとか付いちゃうわよぉ?」
銀「いいわよぉ……水銀燈はどうせジャンクなんだから、臭くて汚いジャンクよぉ……」
の「で、でもジャンクでも綺麗なジャンクの方が素敵よぉ」
銀「ジャ…ン……う、うわぁぁぁぁ――――ん!!!」
の「あぅ」
あんなのは二度と御免だ。
「さあ、さっさと湯にでも漬かって、命の洗濯でもしよ……」
と、僕が風呂の風呂のフタに手を伸ばした時、
ガラリッ、という音とともに、予期せぬ来訪者が――。
「どうゆう積もり? 自分だけさっさと入っちゃって」
水銀燈だ!
「!? ちょっと……」
「おま……お前こそ! ど、どういう積もりなんだよ!」
嗚呼、せっかく呪い人形がいない夜だっていうのに!
冗談じゃあ無いぞっ!
「どういうつもりも何も……お風呂に入りに来ただけじゃない」
「ふざけるな! フツーありえないだろ! 人形が風呂なんて入るか!」
僕が叫ぶと、奴は口元を歪めて笑いながら
「なにそれ……反抗的ぃ」
と呟き、翼をバサリと広げた。
「なんなら……デリケートな柔肌を真黒に飾ってあげても良いのよぉ」
「だ――! 解った、汚れてるんなら勝手に入れよ!」
流石にヤバイと思って咄嗟にそう言う。
超無防備な格好であの羽が飛んできたらと思うと……。
「そう、それでいいわ。私……お馬鹿さんは嫌ぁいなの」
ねっとりと絡み付くような笑みを浮かべ、水銀燈はふわりと浴室の床に降りる。
それから僕の傍までトコトコ歩いて来たと思ったら、くるりと背を向けた。
「背中、洗って――」
「……へ?」
いきなりそんなことをゆわれて、ぼくのときがとまる。
「この身体は翼も背中も洗えないの……だから、洗って」
「え? ……あ、そっか」
水銀燈の言葉に、頭が正常な思考を取り戻す。
「早くなさぁい、愚図な子はきらぁいなの」
見れば水銀燈はひっくり返した洗面器に腰掛けていて、僕を急かしていた。
「ん!? ああ」
僕は水銀燈の背中にお湯をかけると、ボディソープを泡立て、背中と翼に塗りたってやる。
それから、まずは羽の方を直に手で洗い、背中の方はスポンジで軽く擦ってやるのだ。
できるだけ優しく丁寧にやってやると、気持ちいいのか幾らか満足げな様子でいる。
僕は、数分程度でそれを終わらせてしまうと、
その後直ぐ、再びボディソープを泡立て、水銀燈に差し出した。
「ほら、これで前も洗えよ」
差し出された手に、水銀燈は立ち上がって歩み寄る。
僕の手から泡を掬い上げると、自分の体に塗りたくり始めた。
泡で覆われていく胸元、腰、太股――。
僕の目線は、自然とその体の方へ行ってしまう。
でも、ローゼンメイデンも一応……人形とは言え女の子で、体を洗ってる……。
見たら悪いかも……なんて思った矢先、不意に目が合う。
「……人間?」
「な、何だよ……」
「ドールの裸に興味が有るの……?」
「な!? そ、そんなわけないだろッッ!!?」
突然そんな事を言われ、僕は思わず大声で怒鳴ってしまう。
だけど、水銀燈はそんなのは平気の平左で、
「ふぅん……なら、本当にそうじゃないかどうか、試してあげるわぁ」
と言ってひらりと舞うと、僕の二の腕に抱き付いてきた。
「うわぁっ!!??」
腕に伝わる、胸と、お腹と、太股の、ぷにぷにした感触。
それらは体を動かす度、泡で滑って絡み付いてくる。
こいつ胸が大きく出来てるから……凄く気持ち良い。
真紅や雛苺じゃ絶対こうはいかないだろうな……。
と、腕に当たる柔らかさを満喫していると、俄かに下半身が自己主張を始めた。
なだめる間も無く急激に反りあがってしまい、おまけに先洩れする始末。
「…………!」
しかも何時の間にか水銀燈は僕の腕を離れ、真正面から股間をまじまじと見つめていた。
興味津々手を伸ばして、僕の息子に、触れる。
「ば、止め」
「きゃあ!?」
次の瞬間、情けない事に僕は爆発していた。
目の前には直撃こそ免れたものの、白く汚された人形が一人――。
「わ……悪い!」
僕はシャワーの湯を出して、水銀燈の頭から浴びせる。
「ちょっと我慢しろよ」
強めの水流で粘液と白濁を流し、ぬめりを落とす。
ボディソープを多目に泡立て、汚してしまった部分を中心に包んでやる。
ここまでの間、水銀燈は終始無言……と言うより、茫然自失の状態だ。
顔射(?)されたのが余程ショックだったのか、完全に固まっている。
そんな訳で、代わりに僕が洗うことにした。
とりあえず埃の溜まりそうな関節を選んで、極力胸やお尻には触らないようにだ……無理だったけど。
もう、何て言うか、水銀燈の体が僕の体に触れた時には、既にイカレてた感じ。
向こうが動かないのを良いことに、指先を自然と胸やお尻、更にはワレメにまで這わせる。
ふくらみかけの二つの突起はもう固くなってたし、掬い上げた割れ目からは熱い粘液が零れて落ちた。
まだショック状態の水銀燈は、時折僕の責めに弱々しく溜息を吐き、僅かに身じろぐだけだ。
でも、それじゃ何だか物足りない。
ふと悪戯心が湧き、僕は水銀燈を自分の腿の上に座らせる。
そして、割れ目を指で抉りながら、同時に強めのシャワーを当てた。
「あぁ……ふあっ…ん、あ……!」
さっきとは打って変わって、声が激しさを帯び始める。
余程良いのか、だらしなく浮かせた腰の下からは、流しても流しても愛液が溢れていた。
「そろそろ良いかな」
僕は秘裂を指で開くと、シャワーの奔流を押し当てた。
ギシギシ音を立てながら、小さな体が仰け反り、跳ねる。
「あッ……! んぅ! あぁぅ…!!」
ガクガクと震え出し、首があちこち揺れて回る。
体の力もロクに入らず、口から涎の糸を垂らしているあたり、もう限界だろう。
だけど、止めてやる気なんて全く無い。
一度イクまで、放してやらない。
「うぁっ! んあぁ! ああぁぁぁ――ッ!!!」
遂に絶叫し、果てた。
力無く床の上に崩れ落ち、ガクリと頭を垂れる。
……と、僕はここで初めて罪悪感に苛まれる。
ここまですることは無かったんじゃないか、と。
だけどもう遅い。僕はこいつをフラフラになるまで弄んだ。
ならせめて……さほど意味は無いけど、お湯の中で清めてやろうか。
僕は水銀燈を抱き抱え、静かに湯船の中に浸してやる。
「……めないで」
そこで朦朧としながらも、何かを呟いた。
「……やめないで」
苦しげ……だけど、おねだりをするような甘さが混じる……。
「最後までして……」
それは、ほんの一言だった。
刹那の快楽への甘い誘い。
でも気が付いた時には、僕は湯船の中で唇を啄ばみ合っていた。
漆黒の翼を抱き締め、唾液を啜りながら、水銀燈を愛していた。
唇はやがて、名残惜しそうに離される。
だが僕のそれは頬からうなじ伝いに胸まで辿り着き、片方の膨らみをぎゅっと挟んだ。
「ん……ぁん……もお……やぁ……」
舌先で乳房に生った小さな赤い実を捕らえ、転がして遊ぶと、水銀燈の口から吐息が洩れる。
抱き締める手を片方お尻まで滑らせ、指を後ろから秘所に挿し込むと、
「ひぁぁっ! …ッあ!」
悩ましげに姿勢を歪めながら、恐ろしく可愛い声で鳴く。
その上、指をくねらせたり、優しく肉壁を引っ掻いてやったりしようものなら、
「んあぁッ!!! ジュン……! わた、し…も…もおォッ!! あぁんっ!」
泣き叫びながら腰をくねらせて、
「おね……がい……頂戴、ジュンを……!」
僕の挿入をねだった。
だったら、僕がやることは一つ。
僕はギンギンになった息子を秘裂に押し当てると、
ねっとり、しとどに濡れた肉壺の中を目掛けて、
突き上げた。
次の瞬間、頭の中が真っ白になるほどの快楽が股下から頭までを貫いた。
キツくて最高に良い具合で、まるで竿を食い千切らんばかりだ。
「…………!」
一瞬、水銀燈が怖気混じりの表情のままで凍りつく。
しかし、すぐに僕の眼を真っ直ぐ見詰めて
「ねぇ……早く」
と囁いた。
僕はそれが耳に届くか届かないかの内に、再度突き上げていた。
そこから何度も、挿し入れと抜き出しを繰り返す。
「きゃ……! ああッ……凄……凄い……ジュン!」
「う……気持ち良い!」
余りの快感に、僕の意識は飛びそうだった。
水銀燈もさっきからの責めの所為か、今正に絶頂を迎えようとしていた。
「だめぇぇぇ! 私もうイッちゃうぅ!! イッちゃうぅぅ――――ッ!!!」
そう叫んで咽び泣いた時、あそこがギュっと締まる。
僕は一番奥に入れた状態で絞め上げられ、耐え切れず息子から濁った欲望の塊を吐き出した。
いや、搾り出されたのだ。
全てを注ぎ終えると、水銀燈が弱々しく
「おゎ……お、終わったのぉ……」
と訊ねたので、僕は優しく抱きしめて
「ああ、終わったよ」
と言ってやった。
「ん……だったら、普通に抱っこしなさぁい」
「え? 一応抱きしめてるし」
「下を外して抱っこよぉ! その……お姫様みたいに」
「あ、ゴメン」
僕は水銀燈の太股を掴んでぐいと持ち上げる。
その時、僕は思うところがあり、湯船から出るほどに高く揚げてみた。
「「あ……」」
思ったとおり。
行為の際にお腹の中にお湯が入っていた。
それが水銀燈の秘所からチョチョロと零れ落ちたのだ。
目の前でおしっこを見ているような錯覚に、暫し僕は感動する……。
しかし……
「っく……ばかぁ……」
調子に乗りすぎた。
「……ジュンのおばかさぁん!!!」
水銀燈は大泣きした。
ごめん。
それからッ、三十分後ッッッ――――!!!!
僕はソファに座ったまま、ぼうっとしていた。
腕にはバスタオルに包まった水銀燈を抱えている。
あの後、水銀燈は怒ったり泣いたりセックスしたりで疲れたのか、僕の腕でぐっすり眠ってしまったのだ。
こうして黙っていると、すごく可愛い。
僕の前で乱れる姿はもっと可愛いんだけど……。
「ねえ……ジュン」
「あ……起きてたのか?」
「私、貴方を感じてた……」
そう言って、水銀燈は小さな手でお腹に触れる。
「ついこの前まで欠けていたこの場所に……貴方が、不思議なほど満たされているわ……」
柔らかく微笑むその顔には、安堵と充足感があった。
「水銀燈……」
「ジュン……」
僕らはそっと口付けを重ねる。
愛し合う、恋人のキス。
僕も不思議なくらい、満たされている。
……たとえ、この光景を嫉妬に紅く燃え滾るドールズが睥睨していたとしても――。
蔦とか枝とか薔薇とか鋏とか突風とかが間も無く炸裂しそうでも――。
やぱこわい……。
うわなにをす